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北欧神話 P. コラム

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せっかく「リング祭り」を開催(?)しているので、それに因んで、今日はこちらの本をご紹介したいと思います。  ワーグナーが「リング」を構成するにあたり、その原典を求めた「ゲルマン神話」「ゲルマン伝説」の1つ、北欧神話の「エッダ」をコラムというアイルランドの詩人でもあり、劇作家でもある方が「子供にもわかりやすく再話、再構築した物語」、北欧神話です。

北欧神話
著:P. コラム 訳:尾崎義  岩波少年文庫

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神の都アースガルド。  威厳にみちたオージン、力自慢のトール、いたずら好きのローキ、美しい首飾りとひきかえに夫を失った女神フレイヤなど、個性的な神々の活躍を描きます。  「エッダ」に基づいて書かれた少年少女のための北欧神話。  (文庫本裏表紙より転載)

 

今、KiKi はこれと並行して「エッダ」を読み進めているんですけど、あちらは韻文テイストを残している上に、ところどころ欠落部分があったり、話があっちへ飛んだりこっちへ飛んだりしているのに比べて、こちらは組み立て直しが行われているのでスンナリ読めるところが楽チンです(笑)  実はこの本は KiKi は子供時代から何度も読んでいるので、北欧神話のスタンダードは KiKi の中ではこの本になってしまっています(笑)

KiKi はね、子供時代は「神話」って大好きで、当時図書館で手にすることができるありとあらゆる神話を読み耽っては想像をたくましくしていたようなところがあるんですけど、成長するにつれて、神話と宗教の関係性(?)がよくわからなくなっていっちゃったんですよね~。  で、同時に特定の宗教に帰依していないということもあって、自分を無神論者だと思う時期があったり、一神教を胡散臭いと思う時期があったりして、30代に入ってからまた神話の世界に惹かれるようになって・・・・・という感じで「神話」とお付き合いしてきています。

そんな「神話とのお付き合い」の中で、KiKi は北欧神話ってギリシャ・ローマ神話とかエジプト神話以上に惹かれるものがあるんですよね~。  エジプト神話の神様っていうのはやっぱり神様然としていると思うんだけど、ギリシャ・ローマ神話の神様も北欧神話の神様も、神様ではあるんだけど神々しいだけじゃなくて人間臭い・・・・・というか、欠点もいっぱいあって親しみが持てるところがいっぱいあると思うんですよね。  でも、ギリシャ・ローマ神話の神様はどことなく洗練されていて優雅さを湛えているのに対し、北欧神話の神様ってもっと素朴な感じ(野暮とも言える ^^;)がして、およそ完全無欠とは言い難い・・・・・その曖昧さが好きなんですよ。

だいたい神様のちょっとした行為が、その時には目に見えるような何かを引き起こすところまでは至らないのに、結果的に「神々の黄昏」を導いていく・・・・・というのは人間の業にも通じるものがあるような気がして、神話でありながら我が事のように読むことができるというのがかなり特異だと思うんですよね。  神々の長、オージンが自分の片目を捧げてまでして得た「知恵」を持ちながらも、とある出来事で発生した賠償問題で「金・宝」による取引をしてしまう話、その取引の結果として「金・宝」に執着する一度はアースガルドから追放した強欲女の入国を許してしまう話、その女に撒き散らした毒の話、本来であればラグナロクで威力を発揮するはずだった武器を、ひとめぼれした乙女との結婚の代償として手放してしまっていた神様の話、等々が全部ラグナロクに集結していくというのがものすご~く強烈であるのと同時に、金権主義にまみれている今の自分の生活にふと引き寄せて色々なことを考えさせられるし・・・・・・。

 

さて、昨日に引き続き西洋の神話において「神様」というのがどういう位置づけだったのかを考察するその2です。  昨日は「キリスト教」と「ギリシャ神話」の神様について考えてみました。  今日はこの「ニーベルングの指環」の背景になっている「北欧神話」の神様です。  

氷と火炎がぶつかり合うところで、最初の生命が誕生した。  南方にはムスペルと呼ばれるところがあって、そこは踊り狂う炎でゆらめいていた。  北方にはニヴルヘイムと呼ばれるところがあって、氷で固められ、広漠とした一面の雪で被われていた。  このふたつの世界の間には、裂け目(がらんどう)があり、ギンヌンガガップ(あくびする裂け目の意)と呼ばれていた。  この世界には大地も天もなかった。  ムスペルから流れてくる暖かい空気と、ニヴルヘイムからの白霜がぶつかり合って、解けたしずくの中から最初の生命が生まれた。

それは、ひとりの巨人で、霜の巨人「ユミル」と呼ばれ、邪悪な心を持っていた。  彼が眠っている間にかいた汗により右のわきの下から一組の男女が生まれ、こすりあわせた足の間からも別の息子が生まれた。  そうして、「ユミル」はすべての霜の巨人の祖先となり、「アウルゲルミル」と呼ばれるようになった。

ギンヌンガガップでもっとたくさんの氷が溶けるようになると、今度はその流動物が一頭の牝牛となった。  この牝牛の名は「アウドムラ」である。  ユミルはこの牛から流れ出る乳の川から乳を飲んでいた。  又、この牝牛は氷を食料としていた。  あるとき、「アウドムラ」が塩辛い塊を舐めていると、その中から人間の体の一部が現われ始め、3日目には全身が現われた。  彼の名前は「ブーリ」、神々の先祖である。  彼は背が高く、美しかった。  彼は、「ボル」という息子を持ち、その「ボル」は霜の巨人族のボルソルンの娘「ベストラ」と結婚し、3人の男の子をもうけた。  その子たちの名前が上から「オーディン」、「ヴィリ」、「ヴェー」であった。 

「ボル」の3人の息子は、狂暴な霜の巨人族が気に入らず、時が経つにつれて憎むようになっていった。  彼ら3人は「ユミル」と戦い、そして「ユミル」を殺してしまった。  「ユミル」から流れ出た血はあまりにも夥しく、しかもその勢いがあまりにも強かったのでその血の洪水で霜の巨人族はベルゲルミルとその妻以外は悉く滅んでしまった。  (この2人だけは小舟に乗っていたので助かった。)

さて「オーディン」たち3人兄弟は、死んだ「ユミル」の体をギンヌンガガップの中央に運び、そこでその身体から世界を創った。   ユミルの肉塊からは大地を、骨からは山脈を、歯と顎と骨のかけらからは岩や小石を、血からは大地の回りをめぐる海や湖を、頭蓋骨からは天空を創ったのである。  さらに、炎の国ムスペルから飛んでくる炎、火の粉を捕らえ、太陽、月、星を天空に創り、ユミールの脳みそから雲を創った。  

大地の辺境の浜辺ヨーツンヘイムには生き残った霜の巨人を住まわせ(3兄弟とは犬猿の仲)、大地の内陸部にはユミルの眉毛で造った垣根で囲まれたミッドガルドと呼ぶ領域を創り、そこは人間のための領域とした。

ある日、3兄弟が海辺を歩いていると、根のついた2本の木が倒れていた。  1本はトネリコ、もう1本はニレの木である。  兄弟はそれを使って人類の男と女を創り、オーディンが魂を、ヴィリが知力と心を、ヴェーが感覚を与えた。  男は「アスク」、女は「エムブラ」と呼ばれた。  この2人がすべての人類の祖先である。

さらに3兄弟はユミルの肉塊の中で身もだえしていたウジムシに人間と同様の知力と姿を与え、彼らは岩の部屋や小さなほら穴や洞窟に住み着いた。  この人間に似たウジムシが小人と呼ばれるようになった。  

最後に3兄弟は、ミッドガルドの上に新たな世界を創り、自分たちの住みかとした。  それが彼ら神々がすむ国アースガルドである。  アースガルドは城壁に守られており、ミッドガルドとの間を虹の橋ビフレストで結んでいる。  神々は全部で24人(男神12人、女神12人)。  最年長のオーディンが神々の長老となった。

こうして起こったことの全てと世界の全ての地域は、樹の中で最も偉大で最善のトネリコの樹、ユグドラシルの枝々の下に広がることになった。  その根はアースガルドとヨーツンヘイムとニヴルヘイムに張り巡らされていて、それぞれの下には泉があり、一羽の鷹と鷲がその枝に止まっていて、一匹のリスが上へ下へと走り回り、鹿はその枝の中で跳ねながらそれを少しずつ齧り、一匹の竜ががつがつと食んでいるのである。  その樹は露を注がれているが、それは樹そのものに生命を与え、まだ生まれていないものにも生命を与えている。  ユグドラシルは過去にも現在にも存在し、またいつまでも存在し続けるのである。
(参考図書: 北欧神話物語) 


「ニーベルングの指環」の物語をより深く楽しむためには、この物語のベースとなっている北欧神話の世界観を知っておいたほうがより自由に様々な空想の世界で遊ぶことができると思います。  そこで今日からしばらくは世界各地の神話世界の中で「神様」がどのような位置づけの存在だったのかについて色々と考えてみたいと思います。

どんな神話の世界にも1番最初に出てくる物語。  それは天地創造の物語です。  例えば世界のトップ・セラー、聖書を紐解いてみましょう。  聖書の第1節はその名も「創世記」です。  どんな風に始まるのかちょっと引用してみると・・・・。

初めに、神は天地を創造された。  地は混沌であって、闇が深淵の面にあり、神の霊が水の面を動いていた。  神は言われた。
「光あれ。」
こうして、光があった。  神は光を見て、良しとされた。  神は光と闇を分け、光を昼と呼び、闇を夜と呼ばれた。  夕べがあり、第一の日である。  
(日本聖書協会 聖書 新共同訳より)

ここを読んでわかることは、神様っていうのは最初から存在していたっていうこと、そして何にもないところからこの世界を1から創り出した創造主であるっていうこと、さらには神はひとりだったっていうことです。  神様がどうやって生まれたのかは誰にもわかりません。  どこから来たのかもわかりません。  とにかく最初からそこにいたんです。  そして最初は神様しか存在しないんです。  天と地さえも・・・・。  さすが、砂漠地帯で生まれた宗教だと思いませんか?  砂漠には草も木も水もありません。  あるのは荒涼たる大地と空だけです。  昼と夜だけです。  でもその荒涼たる大地と空さえも神様より以前にあったわけじゃありません。  だから聖書(ユダヤ)の神様はまず最初に天地を創造し、光を創造した・・・・と考えられた(つまり砂漠を創造された)のでしょうね。

この世ができる前からいたのが神様で、この世を創ったのも神様なんですから、当然そんな神様は1番偉いに決まっています。  誰に教えられることもなく創造できちゃうぐらいですから全知全能なんです。  独りぼっちだから禁欲生活は当たり前、寂しさにだって慣れちゃってます。  独りぼっちだから誰かと争う必要もないので、武力は必要なくてとっても温厚で思慮に富んでいるんです。  他にすることがないから、とっても働き者なんです。  たった6日で色々な新製品を作り上げちゃうんです。  

神様はご自分に模って人を作られます。  そして「産めよ、増えよ、地に満ちて地を従わせよ。」と仰ったものの、人が産んだり増えたりするパートナーを自分では見出せずにいるのを見てはたと考えます。  ご自身がひとりで何でもできちゃうから、人も同じようにできると勘違いしていらしたようです ^^;    

人はあらゆる家畜、空の鳥、野のあらゆる獣に名を付けたが、自分に合う助けるものは見つけることができなかった。  主なる神はそこで、人を深い眠りに落とされた。  人が眠り込むと、あばら骨の1部を抜き取り、その跡を肉でふさがれた。  そして、人から抜き取ったあばら骨で女を造り上げられた。  主なる神が彼女を人のところへ連れてこられると、人は言った。
「ついに、これこそ わたしの骨の骨 わたしの肉の肉。
 これをこそ女(イシャー)と呼ぼう
 まさに、男(イシュ)から取られたものだから。」  
(日本聖書協会 聖書 新共同訳より) 

人として創造されたのがまず「男」だったことがわかります。(同時に神様が「男」であったことも示唆しています。)  で、「女」はその男を助け、産んだり増やしたりするための補助要員、男の従属物だったこともわかります。  ユダヤの神様は最初から男尊女卑なんですよね~。  さすが、母から生まれてきたわけじゃない神様は考え方が違います。  「母」という概念が最初から(創造の段階から)欠如しています。  

 

 

昨日のエントリーで「ニーベルングの指環」に出てくる「だいじなもの」について不充分ながらご紹介させていただきました。  今日のこのエントリーはそこからもう一歩踏み込んで、この物語の背景にある「北欧神話」の世界の中で「世界樹(ユグドラシル) - トネリコの木」がどういう存在だったのかについて触れておきたいと思います。

「ニーベルングの指環」はドイツ中世の叙事詩「ニーベルンゲンの歌」や北欧神話「エッダ」、「ヴェルズンガ・サーガ」などに題材を求めた作品ではありますが、決してそれらの神話から何らかのエピソードを抜粋した物語ではありません。  ワーグナーという稀有の天才がいったんそれらの物語を吸収し、そのエッセンスを彼の頭の中で様々な空想・妄想を働かせて分解・再構築し、それをオリジナルの脚本として編み出したものです。  ですから必ずしも元の題材にあるがままの姿で全ての事象が描かれている物語ではありません。  でも、神話の世界で「ある出来事の象徴」として考えられている事物に関しては、やはり原本の持つ強いイメージが何らかの影響を与えていることは否定できないと KiKi は考えます。

ましてヴォータンの持ち物としての「槍」やノートゥング登場の舞台として選ばれたトネリコの木に関しては、この「ニーベルングの指環」の中ではあまり多くが語られることがありません。  逆に KiKi などは生まれて初めてこのオペラを観たときには第3夜の「神々の黄昏」冒頭で、3人のノルンがこの世界で起こったこと、起こりつつあることをかいつまんで語ってくれるレチタティーヴォを聴いて初めて、トネリコの木が「ものすご~くだいじなもの」であったことに気がついたくらいぼけ~っとしていました。  そしてトネリコの重要性に気がついたときに初めて、北欧神話を読み直してみて世界樹(ユグドラシル)がトネリコの木であったことを思い出したのです。  てなわけで、今日は「ニーベルングの指環」本編からはちょっと離れますが、世界樹(ユグドラシル)のご紹介をしておきたいと思います。  尚、このエントリーを書くにあたり、KiKi が参考にしたのは以下の文献です。

「北欧神話物語」 
 出版:青土社 著者:K.クロイスリーホランド 訳:山室静 & 米原まり子

 

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「ニーベルングの指環 神々の黄昏」
 出版:新書館 作:R.ワーグナー 訳:高橋康也 & 高橋宣也

 

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