モーツァルト ドン・ジョヴァンニ K.527

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同じこの「勝手にモーツァルト」企画の中で、KiKi が尊敬する garjyu さんがとっても素晴らしいこの曲のエントリーを書いていらっしゃるので、1度は断念しかかったこのオペラに関するエントリー。  でも、「フィガロ」と「魔笛」を聴いて「ドン・ジョヴァンニ」だけ聴かないのは何とも収まりが悪い・・・・ ^^;  てなわけで、やっぱり初志貫徹で今日は無謀にもこいつにいってみたいと思います♪

モーツァルト オペラ「ドン・ジョヴァンニ」 K.527
BMG BVLO-101/2 演奏:ムーティ指揮 & ミラノ・スカラ座管弦楽団 & ミラノ・スカラ座合唱団 収録:1987年12月
配役: ドン・ジョヴァンニ; トーマス・アレン (Br)
    騎士長; セルゲイ・コプチャク (Bs)
    ドンナ・アンナ; エディタ・グロベローヴァ (S)
    ドン・オッターヴィオ; フランシスコ・アライサ (T)
    ドンナ・エルヴィーラ; アン・マレイ (Ms)
    レポッレロ; クラウディオ・デスデリー (Br)
    マゼット; ナターレ・デ・カロリス (Bs)
    ツェルリーナ; シュザンヌ・メンツァー (Ms)

Mozart_Don_Giovanni_2.jpg

(↑ 最近の DVD のパッケージはこうなっているらしい・・・)

えっとご多聞にもれず今回のオペラ鑑賞も KiKi の場合は LD なのでちょっと画像入手には困難を極め・・・・ ^^;  KiKi が持っている LD のパッケージデザインに使われていた画像はこんな感じ(↓)だったんですけどねぇ。

Mozart_Don_Giovanni.jpg

KiKi はねぇ、実はマエストロ・ムーティの密かなファンだったりするのですよ。  で、ムーティの棒とモーツァルトのオペラの組み合わせだとやっぱり「ドン・ジョヴァンニ」かなと思ってこの LD を購入したのでした。  とっても伝統にのっとったオーソドックスな演出で、画像がちょっと暗め・・・・ではあるんだけど、基本的には好色なドン・ファンの話なのであれやこれやと事件が起こるのは圧倒的に夜が多いわけでその暗さもあまり気になりません。  で、この演出は光の使い方がすご~く巧いと思うんですよね。  ちょっと粋な感じが画面全体から漂ってくる、そんなドン・ジョヴァンニだと思います♪

さて、物語のあらすじはこの間「魔笛」でももお世話になったこちらのサイトをご参考に♪  素敵なイラストつきで KiKi はいっぺんにファンになっちゃいました (^o^)v

KiKi は、モーツァルトのオペラの中の最高傑作はこの「ドン・ジョヴァンニ」だと思っていて、同時にこのオペラを観ると必ず・・・・と言っていいほどその後にワーグナーの耽美的 & 官能的な世界に浸りたくなるんですよね~。  特に「トリスタンとイゾルデ」あたりを(笑)。  で、実は今もその欲求と闘いながらこのエントリーを書いています。  一応オペラ・ブッファにカテゴライズされている作品だけど、本来ブッファが持つ喜劇性を備えつつも、暗くて激しい情念の世界がこれでもかっていうぐらいに描かれていて、その明暗の交錯とシナリオ及び音楽のもつ劇的緊張感で観る者をグイグイと惹きつけていく不思議な作品です。  やっぱり天才の描く世界は違うなぁ、わかったよ、脱帽するよ・・・・そんな感じ。

今日 KiKi が鑑賞した演奏は garjyu さんのエントリーとは異なるものですが、この音楽の素晴らしさについては彼のエントリー以上のものを書ける自信がないので、KiKi はちょっと趣向を変えてこのオペラが描いているものについての私見でも書いてみようかな・・・・と。

このオペラ、読んで字のごとくタイトル・ロールは好色な貴族ドン・ジョヴァンニであることは明らかなんだけど、KiKi はどちらかというと女性陣(決して誰か1人ではない)が主役だと思うんですよね。  それを証拠に肝心要のタイトル・ロールに「これ」という長大で印象的なアリアがないんですよ。  ドン・ジョヴァンニのソロですご~く印象的なのは第1幕の通称「シャンペンの歌」と第2幕のセレナーデ「おいで窓辺に、かわいい娘」だと思うんだけど、通常のオペラのタイトル・ロールやらその相手役が歌う壮大な歌とはチト違う。  そういう意味ではドン・ジョヴァンニの対極にいるドン・オッターヴィオ(ドンナ・アンナの婚約者)の方が普通のオペラ作品だったら主役が歌うような印象的なアリアを2つも持っているんですよね。  (第1幕の「彼女の幸せこそ私の願い」と第2幕の「私の恋人を慰めて」)  でもね、このオッターヴィオも素敵なアリアを持っているくせにイマイチ全体のストーリーの中では影が薄いんです(笑)。

で、タイトル・ロールであるはずのドン・ジョヴァンニが歌う歌の中で最も印象的な歌は彼が百姓娘のツェルリーナを必死にかき口説く時に彼女と一緒に歌う二重唱「手を取り合って一緒になろう」(上の写真のシーン)だったり、彼の騎士としての仮面がはがされる場面での四重唱の「この悪者の心を信じてはいけません」とかだったりするんです。  要はドン・ジョヴァンニって様々な出来事のきっかけを作る人物ではあるんだけど、主役はそんな彼に翻弄される(と言うか好んで関わろうとする)周りの人間(特に女性)の心の奥で燻るちょっと混乱気味の感情と、そんな周りの人間とドン・ジョヴァンニの人間関係なんですよね。

だから、ドン・ジョヴァンニをとりまく女性陣には「これぞ!!」という歌が次から次へと与えられています。  半ばジョヴァンニのストーカー(?)と化しているエルヴィーラの「ああ! あの酷い人はどこへ」、「さあ、この裏切り者を避けて」、「あの薄情な男は私を裏切り」なんていうのはどれもこれも身悶えんばかりの激しい恋心・・・。  ツェルリーナの「ぶってよマゼット」や通称薬の歌「恋人よ、さあこの薬で」なんていうのはこれはどこをどう聴こうとも女が男をたぶらかす歌だし・・・・ ^^;  彼女の恋人(夫?)のマゼットが「うまいもんだ、悪女め、誘惑する術を知っているよ。」とつぶやくけれど、まさにその通り♪  そしてドンナ・アンナにも「残酷ですって!!」とか「だから言わないでください、私の愛する人よ」なんていうおすまし系たぶらかしの歌があります。

要はこのオペラ、徹底的な刹那主義・快楽主義のドン・ジョヴァンニの色遊びと最終的な地獄落ちを主軸にはしているんだけど、実際のところは表面的には愛だの心だのととりすましたことを言っている女性たちの本質的な「女の性」みたいなものが丹念に描かれているオペラなんですよね。

キリスト教的道徳観・価値観からすると許されないドン・ジョヴァンニの享楽的で刹那的な生き方を実は人は根っこの部分では憧れているんですよ。  で、このオペラの中では男より女の方がそういう面では素直(?)で、女性たちは誰もが表面上はとりすましているけれど実はすご~く♀の本性むき出しだったりするんですよ。  それを証拠にドンナ・アンナはジョヴァンニの地獄落ちの後で婚約者であるオッターヴィオに「あと1年待って、私の気持ちの整理ができるまで・・・・でもあなたを愛しているのよ、わかってね♪」なんていう虫のいいことを言うし、エルヴィーラに至ってはさんざんストーカーまがいの行為をした挙句「ああ、でもやっぱり私は彼を愛しているわ」と言ってみたり、彼の地獄落ちの後では「私は修道院に行くわ」なんて言い出すし・・・・(笑)

でね、外見(?)とは異なり1番狡猾でリアリストだったのはツェルリーナなんですよね~。  だって彼女だけは彼の地獄落ちの後、まるで何事もなかったかのようにさっさとマゼットと一緒に2人の家に帰るそうですから・・・・ ^^;  KiKi はねぇ、このオペラの中の1番の悪者はツェルリーナだと思うんですよね。  だって上でもちょっとご紹介した色男ドン・ジョヴァンニとの二重唱では「誘われ上手」の仮面を被り、相手が純朴なマゼットになると「ぶってよマゼット」とか「恋人よ、さあこの薬で」で今度は「誘い上手」の仮面を被るんですよ。  こんな究極の2枚舌を使い分けられる女性はそうそういるもんじゃありません ^^;  挙句、最後は何事もなかったかのように元の鞘に納まっちゃうんだもの。  なんて女だ!(笑)  

だから KiKi はドン・ジョヴァンニの地獄落ちの後、残りのメンバーが全員で「善良なる私たちは昔からある歌を歌いましょう。」なんて合唱し始めるとすご~くシニカルな気持ちがふつふつと湧き上がってくるのですよ。

善良って誰が??  正義って何??

ってね (^o^)v

さて、最後に簡単にこのディスクについて触れておこうと思います。  まずはムーティのリードですが、とってもこ気味よいテンポでいいですね~。  ただでさえ人の感情を煽るような音型の多いこの音楽をあんまりゆったりと情感たっぷりにやられちゃうと KiKi はちょっと消化不良を起こしそうな気分になっちゃいます(笑)。  で、テンポこそはきびきびしているんだけど、明暗、生と死、喜びと哀しみ(もしくは絶望)という2つの対立軸が序曲から明確に歌われていて、これから起こる悲劇を見事に暗示しています。  歌手は誰もが素晴らしいと思うのですが特にいいのはアライサ。  KiKi は彼の歌はか・な・り・好みですね♪  特に彼のアリア「彼女の幸せこそ私の願い」なんてすご~く繊細な歌だと思うんだけど見事に聴かせてくれます。  声も申し分ないし・・・・。  それからエルヴィーラのマレイの歌はお見事!!の一言。  外見はちょっと??っていう部分もなきにしもあらずなんだけど(ごめんなさい)、でも揺れる女心を充分に歌いきってくれていて好感が持てます。  さらにツェルリーナも生き生きとしていてどことなく小悪魔的でとっても魅力たっぷりでした。  タイトル・ロールのアレンは色気もあるし好演しているとは思うんだけど、ちょっと食い足りない感じがしないでもない。  でもその食い足りなさは演出とムーティのサポートで充分補われているように感じます。  

あ、ダメだ。  そろそろ限界・・・・。  やっぱりどうしても「トリスタン」が聴きたくなってきた。  てなわけで今日の Review はこれでお終い♪  

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