ムソルグスキー 組曲「展覧会の絵」 (ピアノ版)

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KiKi のお気に入りの現役ピアニストの1人がエフゲニー・キーシンです。  前にこのエントリーでもお話したとおり、たまたま件のエントリーでご紹介したCDで彼の演奏を耳にしたときから、ず~っと「最も注目すべき若手ピアニスト」として彼のCDは買い集めてきました。  さて、今日はそんなキーシンの演奏を久しぶりに聴いてみたいと思います。  で、色々迷った結果、購入以来1度しか聴いていないこちらをピックアップしてみました。

ムソルグスキー 組曲「展覧会の絵」 (ピアノ版)
RCA 09026 63884 2 演奏:キーシン(p) 録音:2001年8月

21S8NAHFPXL__SL500_AA130_.jpg     (Amazon)

 

 この曲の演奏に関しては長らくホロヴィッツ盤とリヒテル盤、そしてウゴルスキー盤を愛聴してきた KiKi なのですが、4枚目のお気に入りとしてこのキーシン盤が追加されました。  (その割にはまだ1度しか聴いていないんだけど・・・・ ^^;)

どちらかと言うと管弦楽版の方が聴かれる機会が多いと思われるこの作品、KiKi が最初に聴いたのはピアノ版でした。  (← こういうあたりがいかにもピアノ音楽からクラシック音楽に親しんだ KiKi らしいところなんですけどね~ ^^;)  で、後日管弦楽版を聴いたとき、もの凄い感銘を受けつつも、ことこの曲に関してだけは「ピアノ版」も「管弦楽版」も素晴らしい!!と甲乙つけ難い印象を持ったものでした。  多くの場合、KiKi は「この曲は○○版の方が好きだな」という感想をあっさりと持ちやすいんですけどね~。  

その理由は管弦楽版を聴く前に、あまりにも何回もピアノ版を聴きすぎていて、しかもそれが他の誰でもない、ホロヴィッツの神憑り的な演奏だったから・・・・だと思うんですけどね♪  この演奏を初めて聴いたときのショックは今でもよく覚えています。  ピアノ曲とは思えない壮大さ、奔放にも野性的にも聴こえる音楽に打ちのめされました。  ピアノという楽器がここまで交響的な表現ができるのかと、茫然としました。  何せその頃 KiKi がさらっていたのはクレメンティのソナチネあたりで、左手は ♪ドソミソ、ドソミソ、ドラファラ、ドラファラ♪ な~んていう決まりきった音型を繰り返しているだけだったのですから!!

39歳で急逝した親友の建築家兼画家のヴィクトル・ハルトマンの遺作展に触発されて3週間で書き上げられた音楽と言われており、曲全体は10個の小品から構成されています。  そしてその中のいくつかには「プロムナード(散歩道、そぞろ歩き)」と呼ばれる序奏(間奏曲?)が付されています。  絵画からの印象を音楽的に表現したと言われる10個の小品は以下のとおりです。

 1. グノームス(小人)
 2. 古い城
 3. テュイルリー
 4. ビドゥオ
 5. 卵の殻をつけた雛の踊り
 6. サミュエル・ゴールデンベルクとシゥムイレイ
 7. リモージュの市場
 8. カタコンベ
 9. 鶏の足の上に立つ小屋(バーバ・ヤーガの小屋)
10. キエフの大門

 

ずいぶん前に確かNHKで、この曲で扱われた絵画を特定する推理番組みたいなのが放映されたことがありました。  あの時にその番組で見たそれぞれ「絵」の画像がネット上のどこかにないものかと探し回ってみたところこんなサイトを発見しました。  かすかに記憶に残る、あの番組で紹介されていた絵画とはちょっと違う部分もあるけれど、まあご参考までに。  これらの絵画を観ながらこの曲を聴くのも乙なものです(笑)。  

第1曲の「グノームス」とは地底を守る小人姿の妖怪のことなのだそうです。  スカルボと同じような存在なのかな??  どうでもいいことだけど、RPGなどでお馴染みのピグミーとかドワーフはこのグノームスの亜種みたいです。  ちょっと陰気でグロテスクな感じの音楽。  最後はパチンというくるみ割りの音で音楽は終わります。

第2曲の「古い城」は中世イタリアの古城のそばで吟遊詩人が歌う姿を表しているのだとか。  吟遊詩人が物悲しい歌声を響かせている遠景には、曲を通じて変わる事のない低音の持続が繰り返されています。  何だか時が刻々と進んでいるような、抗いようのない宿命がヒタヒタと近寄ってくるような不思議な感じのする音楽です。  

第3曲の「テュイルリー」はパリのルーブル美術館に隣接するテュイルリー公園で遊ぶ子供たちの姿なんだそうな。  でも、全然フランス的じゃないような・・・・(笑)。  まあ軽やかな音楽ではありますが・・・・。

第4曲の「ビドゥオ」は一般には牛車や牛の群れのこととされているのですが、実はポーランド語で「けだもの」とか「家畜」という意味があるのだそうです。  ムソルグスキーは1839年~1881年という生涯で、世界史年表を見てみると彼の生存中にはポーランドの反乱があったり、農奴解放宣言があったりとなかなか激動の時代を生きていた人であることがわかります。  実際彼はもとはと言えば貴族出身のエレガントな紳士だったにも関わらず、農奴解放の打撃を受けて急速に貧しくなっていき、次第に酒に溺れるようになりアルコール中毒の発作を繰り返すようになり最後は卒中で亡くなった作曲家だったように記憶しています。  そう考えてみるとこの曲の救いのない暗さ、重々しさにはとてつもなく深いものがあるように感じます。  

第5曲の「卵の殻をつけた雛の踊り」。  初めてこのタイトルを目にした時、「それってどんな踊りだよ??」ってものすご~くいぶかしく思ったものでしたが、こ~んな(↓)可愛い雰囲気の仮装をした踊りだったんですかね~ ^^;  何となく「パパゲーノ」を連想してしまった・・・・(笑)。 

egg.jpg

第6曲の「サミュエル・ゴールデンベルクとシゥムイレイ」は有名なユダヤ人の2人組らしいです。  金持ちのゴールデンベルクが傲慢丸出しで貧乏人のシゥムイレイに厳かに何かを言い渡し、貧乏人のシュミュイレは卑屈になりながら何かを言い返す・・・・そんな風景らしい。  で、そんな言い争いも最後は金持ちの一喝でおしまい・・・・みたいな感じ。  いや~、深いなぁ(しみじみ)。

第7曲の「リモージュの市場」は市場の雑踏の中での買い物女たちのにぎやかなおしゃべりなのだそうです。  リモージュの市場っていうところに行ったことがない KiKi なのですが、リモージュと言えばオシャレな高級西洋陶器が思い浮かぶんですけど・・・・ ^^;  それとはあまりにも違いすぎるこの曲想・・・・。

第8曲の「カタコンベ」はキリスト教迫害時代のローマの信者墓地。  何とも不気味な和音とともに陰気に始まる音楽です。  でもこの曲が親友の追悼を期に書かれた音楽であることを考えると、この部分はここまで必死で抑えてきたムソルグスキーのハルトマンに対する慟哭の情・・・・のようなものを歌っている音楽のような気がします。  

第9曲の「鶏の足の上に立つ小屋(バーバ・ヤーガの小屋)」。  バーバ・ヤーガというのはロシアの伝説に出てくる妖婆なのだそうです。  旧ソ連軍の通信記録の中に不利な戦局を伝えられた人が「バーバヤーガに呪われちまえ!」と返答しているのが実際に残っていたりするほど、ロシア人にとっては身近(?)な妖怪らしい・・・・。  で、そのバーバ・ヤーガは、ロシア版「山姥」みたいな存在で、時に人助けをする優しさも持っているのだけれど、大抵は何でも食べてしまう恐ろしい妖婆で、細長い臼に乗って空を飛び、ぴょんぴょん跳ね回る鶏の一本の足の上に建てられた小屋に住んでいるとされているのだそうです。  どおりで何となくピョンピョンと飛び跳ねているような音楽なわけです。

そしてラスト、第10曲の「キエフの大門」。  この門は実際にハルトマンによって建設される準備が行われていたとかいなかったとか・・・・。  何故終曲が「大門」なのか、ちょっと考えてみたのですが、門って1度建設されたら長い年月を同じ場所に建ち続け、さらにそこを通るあらゆる人間を静かに見守り続ける存在ですよね。  だから、ムソルグスキーは亡くなったハルトマンにそんな門と同じように自分たちを見守っていて欲しかったのじゃないかと・・・・。  ちょっと深読みのし過ぎかな??  でも、だからこそこのフィナーレにロシア正教のコラールを使っているような気がするんですよね~。

それにしても・・・・・。  今回このブログのエントリーのためにこうやって各曲を書き出してみてふと気がついたのですが、この曲って案外がっちりと構成された音楽だったんだな・・・・と。  と言うのも、第5曲を挟んで、第4曲と第6曲は普遍的な社会派的主張が見え隠れするような音楽、第3曲と第7曲はフランス人の生活、第2曲と第8曲はイタリア史(?)、第1曲と9曲はロシアの伝承・伝説・・・・・と見事なまでにシンメトリックなんですよね~。  そのうえ、「ロシア」ですべてをサンドイッチしているのがこれまた何とも憎い!!  何となく・・・・ではあるのですが、支配階級としてそれなりの教養・社会思想を持っていたであろうムソルグスキーの目線・・・・のようなものがそこはかとなく感じられるような気がしてきました。

せっかくなので引き続き、管弦楽版も聴いてみようっと♪ 

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このページは、KiKi (Brunnhilde)が2006年7月 4日 00:05に書いたブログ記事です。

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