ヴォータンの考察 その2

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さて、昨日に引き続き今日のお題は「ヴォータンの考察 その2」です。  この物語の中でず~っと KiKi が不思議に思っていて、今でも最終結論が出ていない問題について今日は整理してみたいと思います。  (最終結論ではないので、いずれ訂正することになるかもしれませんが・・・・)  それは、ヴォータン vs. ジークフリート対決のシーンです。  ヴォータンはジークフリートと話しているうちに怒りを爆発させて何が何でもブリュンヒルデのもとには行かせない!とばかりにジークフリートの前に立ちはだかります。

自ら神々の滅亡をもはや受け入れてしまっているはずのヴォータン、しかもジークフリートとブリュンヒルデが結ばれることを期待していた(と言うより予定していた)はずのヴォータンが何故ジークフリートの行く手を阻もうとするのか??  いったいぜんたい何が起こったんだ??  ここはヴォータンさんのご意見を伺いながら整理してみたいと思います。
  

ことここに及んで「花嫁の父」の気分になっちゃった??

 

V: 「お若い方、どちらへ行かれるのかな?」
J: 「ある岩山を探しているんだ。  そのてっぺんは焔に囲まれていて、
   そこに1人の女が眠っている。  俺は、その人を起こすつもりなんだ。」
V: 「誰に言われたんだね?  その岩を探せ、その女を恋い慕えと?」
J: 「森の小鳥さ。  歌で案内してくれて、色々教えてくれたよ。」
V: 「小鳥ってのはおしゃべりだからな。  だけど鳥の言葉は人間には通じないぞ。
   どうしてお前は、鳥の言っていることがわかったのだ?」
J: 「それは竜の血のせいさ。  ナイトヘーレの洞窟で、俺は恐ろしい竜を退治して、
   その時竜の血をなめたんだ。 
   焼けるように熱い血が口に触れた途端、小鳥の声が、はっきり判るようになったのさ。」
V: 「つまり巨人を殺したというわけだな。
   だがそんなに手ごわい竜と戦えと、誰にそそのかされたのだ?」
J: 「俺を連れてきたのは邪な小人のミーメだった。  俺に恐れを教えようとしたんだ。
   しかし、俺に剣を抜かせたのは竜自身だった。  凄い歯で俺を噛み砕こうと
   襲ってきたんだから。」
V: 「そんな強敵を倒せるほど鋭くて強い剣を、いったい誰が作ったのかね。」
J: 「鍛冶屋の手に余ったので、俺が自分で鍛えた。  
   さもなければ、いまも丸腰でいるだろうよ。」
V: 「ではお前が鍛えたと言う剣の破片の、その元の強い剣は誰が作ったのか?」
J: 「そんなこと、知るものか!  俺に分っていたのは、自分でつなぎあわせなければ、
   折れた剣など役立たずだっていうことだけさ。」
V: 「そりゃ、もっともだ!」

さすらい人は機嫌よく笑って、ジークフリートを頼もしげに見つめる。

(中略)

V: 「これほどいとしく思っている者から脅しを受けるのは悲しいことだ。
   そなたの栄えある一族をわしは格別愛してきたが、激しい怒りで恐ろしい目に
   あわせたこともある。  わしが、かくまで愛しているあまりにも気高い英雄よ。」

 

↑ う~ん、これは却下!!  だって仮に花嫁の父の気分だったとしたら相手の男が頼もしげじゃなかったのならいざ知らず、自分が「こいつは!」と認めた男だったら不承不承ではあっても納得するでしょう。  それにそもそも、「お前は以後今あるそのままの存在であればよい」なんて言って、当初はそれこそ相手がどこの誰でもいいかのような罰を与えた張本人が自分であることを神々の長ともあろう者が忘れちゃったとは思えない・・・・。  それにもっと肝心なことはジークフリートはヴォータンにとってそんじょそこらの見ず知らずの軟弱なナンパ男じゃなくて、愛すべき孫なんだし・・・・。  


ことここに及んで「やっぱり権力の座はわしのもの」と思っちゃった??

 

V: 「わしの憤怒をかきたてるでない。  もしわしが怒れば、そなたもわしも、
   ともに滅びることになるだろう!」

 

↑ う~ん、これも却下!!  少なくとも彼はジークフリートの前に立ちはだかった時点では、世界の権力はまだ自分の手にあると信じていたわけだし・・・・。  それにもしも権力の座に未練があってそれを守りたいと思っているなら、いでたちが間違っているような気がする・・・・。  もしそうなら最低限「さすらい人」の格好じゃなくて、「神々の長」の格好で威厳を持って彼の前に立ちはだかるべきだったと思うし・・・・。  さらにこの時点でのヴォータンのセリフには「絶対に行かせない!」という意志のようなものはあまり感じられないし・・・・。


じゃあジークフリートの力試し??

 

さすらい人は怒りを爆発させ、傲然と言う。

(中略)

V: 「怖れるがよい、わしは岩山の守護者だ!  眠る乙女を包んでいる魔力はわしのもの。
   乙女を目覚めさせる者、そしてその腕に勝ち取る者は、わしから永久に力を奪うだろう。
   焔の海が娘を取り囲み、岩をなめて燃えさかっている。  
   花嫁を求める者は焔の壁に立ち向かわねばならぬ。

   (中略)

   遠からずあの燃えさかる火はお前を捕らえ、焼き尽くすだろう。
   さがるがいい、無分別な子よ。」
V: 「もし、火がこわくないと言うのなら、この槍が、お前の道をさえぎる!
   わしの手にあるのは、世に君臨する力ある槍、
   お前のふるう剣は、かつてこの槍の柄で砕かれたのだぞ。
   今ふたたび、この不易の槍で同じように叩き折ってやろう!
J: 「さては、俺は父親の仇にめぐりあったのか?  願ってもない復讐の機会だ!
   その槍でかかってこい。  この剣で粉微塵にしてやる!」

(中略)

足元に砕けて散った槍を、さすらい人は落ち着いて拾いあげる。

V: 「行くがいい!  わしにはお前を止めることはできぬ!」

 

↑う~ん、これも却下!!  だってヴォータンはジークフリートと話しているうちに、怒りを爆発させちゃうんだし、最後のセリフからはヴォータンの諦め・・・・というか、止めることができたなら本気で止めるつもりだったようなニュアンスが漂っているから・・・・・。    

でね、KiKi の現時点での解釈はどうかって言うとね、ヴォータンは最初は自分の孫、ジークフリートがどういう人物か見極めようとしていただけなんだと思います。  で、ジークフリートと語り合っている間、ずっと自分がしてきたことを反芻しながら孫の成長を目を細めて眺めていたんだと思うんですよね。  でも、ある瞬間にきっと気がついちゃったんです。  自分が後進に道を譲ろうとしている世界がすでに過去の美しい世界じゃなくなってしまっていることに・・・・。  さらにはその美しい世界を汚してきたのが他ならぬ自分だったということに・・・・。  だとするとそんな世界にどれほどの意味があるのか??  自分が目論んだ未来(つまり自分の血を受け継いだ、本来半神半人であるヴェルズングの英雄が後を継ぐこと)にどれくらいの意味があるのか??  だとしたら彼をこれ以上進ませることに何の意味があるのか????  そんな気分になってしまったのではないかと・・・・。

まだはっきりとは理解できていないのですが、KiKi はヴォータンの「お前は私の欠けたほうの目のおかげで、私に残されたほうの目を見ているのだ。」というセリフがキーのような気がします。  ヴォータンが失った片目は彼が知恵と「契約という価値観」を得るための代償でした。  そしてその時ヴォータンは世界樹から枝を1本折り取って槍を作り、その槍に契約のルーン文字を刻みました。  ヴォータンの権勢はその契約という価値観によって成り立っていたけれど、その契約を象徴する彼の槍がまず世界樹を、ひいては世界を汚してしまっていました。(ヴォータンには自覚はなかったのだろうけれど・・・・)  そして自らが核としていたはずの「契約の罠」にとらわれて身動きできなくなったとき、ヴォータンはその契約という価値観に抗い、知恵を働かせ良かれと思っていろいろな行動をとってきました。  でもそんな彼の行動は結果としてヴェルズングの双子を裏切り、ヴァルキューレたるブリュンヒルデを裏切り、契約の守護神フリッカを傷つけ、大地と智の女神エルダをも傷つけてしまいました。  そんな彼の「悪意なき悪行」の結晶のような存在がジークフリートであることに、彼は気がついてしまったのではないかと・・・・。

それに気がついたとき、ヴォータンは最後に抗わずにはいられなかったのではないでしょうか?  と、同時に彼はもう未来を見たくなくなってしまったのではないでしょうか?  で、自分に残された最後のもてる力のすべてをかけて「契約で全てを美しく統べていた世界」へ、過去へ戻ろうと欲したのではないかと思うのです。  権力に対する欲からではなく、自分が権勢を振るう前の時代、かつて「あるべきままにそこにあった世界」を志向したのではないかと思うのです。  幸い、ヴェルズングの英雄が手にしているのはかつて彼が英雄の父親に与えたもので、1度はヴォータンの契約の槍の前に倒れた武器です。  彼は最後にもう1度だけ自分が手にしている「世に君臨する力ある槍、不易の槍」の力を信じてみたのだと思います。

でも、結果は・・・・・。

ジークフリートが手にしていたノートゥングはもはやヴォータンがヴェルズングの英雄に与えた武器ではありませんでした。  ジークフリートは祖父が、父・ジークムントに与えた「約束の剣」(「約束の剣」でありながら肝心なところでジークムントを裏切った「約束違反の剣」)をあっさりと粉砕して鍛えなおすことによって、契約の価値を、祖父と父との約束を、ひいてはヴェルズングの血筋をも無意識のうちに自らの意志で断ち切り否定してしまっていたのではないでしょうか?  だからこの鍛えなおされた剣はもはやヴォータンの槍の敵ではなかったのだと思います。  

そしてヴォータンはこのときようやくエルダの予言を理解したのだと思います。

 「目覚めたばかりのせいか、頭が朦朧としている。
 世界が乱れてぐるぐる廻っている!
 ヴァーラの娘のヴァルキューレが、罪の償いのために眠りに呪縛されているのですって! 
 全知の母がまどろんでいる間に?
 反抗の精神を教える者が、どうして反抗するものを罰せるのです?
 けしかけておいて、そのとおりになると腹をたてるのですか?
 正義を守り、誓約を保護する者が、正しいことを妨げ、偽誓によって治めるのですか?
 私を地の底にもどらせてください。
 眠りのうちに知恵を閉ざしてしまいたい!」

全てを統べ、世界を征服する権力者であったはずのヴォータンは究極のブーメラン効果(?)で、自分が与えた罰によって自分が罰せられる立場に立たされたことを認めざるをえなくなってしまったのだと思います。  だから彼は足元に転がる槍の破片を落ち着いて拾い集め、「わしにはお前を止めることはできぬ!」の言葉を残しその場を立ち去るしかなかったのではないかと思います。  そして、ヴォータンは罰が与えられる日、神々の終焉の日をヴァルハラで静かに待ちます。  正義を守りきれなかった、誓約を保護しきれなかった自分を体現している砕かれた槍をしっかりと握りしめながら・・・・。

ただ彼にはもうわかっていたのだと思います。  神々は滅びるけれど、愛すべき孫、ヴェルズングの末裔もまた滅びなければならないことを・・・・。  それは呪いの指環を持っているから・・・・でもあるけれど、それ以上に彼は自分が正義に反してこの世に産み出した存在だからです。  同じことはブリュンヒルデにも言えます。  彼ら2人とその子孫が自分の跡を継ぎ、栄えることはないのです。  すべて「かつてあったがままに」戻らなければならないのですから・・・・。  だからこそ、彼の最後の気がかりは指環でした。  誰かがそれを使って力を奮うからとかそんなケチな話ではもうありません。  指環も「かつてあったがままに」戻らなければならないのです。  そして・・・・・

悲しみの溜息とともに目を閉じ、夢を見ているかのように、こう呟かれた。

「あの子が深きラインの娘たちに指環を返しさえしたら、神たる身も世界も、
 呪いの重荷より救われるのだが・・・・。」

そしてヴォータンがたどり着いたこの境地は、娘のブリュンヒルデがしっかりと受け継ぎます。  彼女はジークフリートの亡骸を見つめているうちにすべてを理解するのです。

 「誓いを立てて、これほどの律儀さ、契りを結んで、これほどの誠実さ、
 人を愛してこれほどの純粋さは、またとない。
 しかもまた、すべての誓い、すべての契り、至高の愛を彼ほど無残に破ってしまった
 者はいない。

 なぜそうなったか、おわかりですか?
 おお、誓約の永遠なる護り神よ!
 ごらんください、私のやむことなき苦悩を、
 そして、あなた方の終わりなき罪業を!
 私の訴えを聞いてください、神々の長よ!
 あの人は、世にも勇敢な行為によって、あなたの切なる望みを成就しました。
 そしてそのために、あなたに降りかかった呪いをその身に受けてしまったのです。
 
 (中略)

 これは私に遺されたもの、今この手にいただきましょう。
 呪われた指環よ!  恐ろしい指環よ!
 その黄金をこの手に取り、そして捨てます。

 (中略)

 奪われて禍の種となったこの黄金を、川の流れで洗い清め、
 純粋な輝きをいつまでも保たせるのは、あなたがたの大事な務め」
    

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このページは、KiKi (Brunnhilde)が2006年7月16日 16:27に書いたブログ記事です。

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