ラインの黄金は誰のもの?

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さて、今日のお題は「ラインの黄金は誰のもの?」です。

ワーグナーのオペラ「ニーベルングの指環」の序夜「ラインの黄金」でこのラインの黄金の見張りをしているのは3人のラインの乙女たちです。  3人には一応名前があります。  ヴォークリンデ(波)、ヴェルグンデ(大波)、フロースヒルデ(河)と言います。  3人は「お父さま」の命令によりラインの黄金を守っている・・・・ことになっています。  ここで今日のお題の疑問が発生します。

 

そもそもこのラインの黄金の正当な(?)、もしくは本来の(?)所有者って誰なんだろうか??? 

 

この肝心の問いに関してラインの乙女たちは何も語ってくれません。  ただ「お父さまが気を配って守るようにと仰った」としか・・・・。  でも現在ほど組織ヒエラルキーが分化していなかっただろう神話の時代に、本来の持ち主の依頼を取締役が受けてそれを担当部長、担当課長、現場リーダー、末端のスタッフに繰り下げているとはあまり思えません。  順当に考えれば「ラインの黄金」の正当な持ち主は「お父さま」であっただろうと予測されます。

  

じゃあ、そのお父さまっていったい誰???  

 

ラインの乙女たちは水の精とされています。  じゃあ「精」って何??  そこで広辞苑を調べてみました。

<精>
たましい。  不思議な力をもつもの。  もののけ。
精神・精霊・妖精

<精霊>
① 万物の根源をなすという不思議な気。  精気。
② 草木・動物・人・無生物などの個々に宿っているとされる超自然的な存在。
③ 肉体又は物体から開放された自由な霊。

<妖精>
西洋の伝説・物語に見える自然物の精霊。  美しく親切な女性などの姿をとる。

 

なるほど・・・・。  

 

KiKi はね、彼女たちの「お父さま」っていうのは「ライン河」そのものだったんじゃないかと思うんですよね。  因みにドイツ語の名詞には性別があったりするするわけですが、ライン河は♂ですから性別的にも合ってます。  (これに対しドナウ河は♀です。)

 

 

さて、「黄金の本来の持ち主=ライン河」だとして、話を先に進めましょう。  つまり黄金は自然の賜物っていうことです。  水や風や酸素や二酸化炭素や鉄や銅と同じで、自然の中に「あるがままの姿でそこにあるもの」の1つに過ぎませんでした。  その「黄金」に価値を与えたのは誰だったか、歴史を紐解いてよ~く考えてみるとそれは人間だったんですよね。  人間は本来であれば1つの自然物にすぎない「黄金」、腹の足しにも暖をとるにも役に立たない「ただキラキラと光っているだけのもの」の美しさに魅入られ、そして自ら働く必要のない「有力者」「権力者」「富めるもの」の身を飾るために重用するようになり、結果として地位や権力、富の象徴という「意味づけ」を与えちゃったわけです。

 

ラインの黄金の「前奏曲」はまず「原始状態の動機」が、次いでそれに折り重なるように「自然生成の動機」「波の動機」が響いていくわけですが、ワーグナーはこの壮大な物語の幕開けを「天地創造」から始めたんですよね。  そしてそこに暮らす精霊や小人族と同じ「ただそこにあるもの」として「ラインの黄金」を登場させたのです。

そしてその何の役にも立たない「寝たり起きたり」を繰り返しているだけの黄金をラインの乙女たちは守っていたわけです。  でも彼女たちは自然物の精霊ですから、「富」とか「権力」とか「地位」とははまったく無縁な存在です。  だから「お父さま」から聞かされていた黄金の秘密の重要性も理解できていなかったんでしょうね。  まして、自然というやつは古来から「与えるもの」であったことはあっても「与えられるもの」であったことはなかったある種善意の塊みたいな存在です。  だからそんなにだいじなものを気を配って守らなくちゃいけなかったにも関わらず、武装もせずのんびりとまるで遊び道具の1つでもあるかのように見守っているだけです。

 

「お前たちの水遊びのおもちゃか?  そんなものなら俺には用はない。」

 

アルベリヒの最初のラインの黄金の認識はこんなものだったのです。

では、この「ラインの黄金」は無防備に無責任なラインの乙女たちにただ預けられていたものなのかと言えばさにあらず。  実はこのラインの黄金はそれまでの価値観であれば絶対ともいえる最強の最終兵器に守られていたのです。  それがこの黄金の魔力を有効にするためには愛を諦めなければならないという掟です。  でも、これは善意の塊である自然の価値観に過ぎませんでした。  自然は愛の力を信頼していたのです。  でもそのゆるぎない価値を持つはずだった愛があっさりと物語の冒頭で敗北を喫するのです。

黄金の本来の持ち主は、善意を、愛を信じすぎました。  でも、それは「与えるもの」として存在している彼らにとっては当たり前のことだったのかもしれません。

 

        

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このページは、KiKi (Brunnhilde)が2006年7月14日 19:55に書いたブログ記事です。

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