ニーベルングの指環が象徴するもの その1

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さて、本日のお題は「ニーベルングの指環が象徴するもの」です。  このオペラのタイトルは言わずと知れた「ニーベルングの指環」なわけですが、不思議なことに第1夜の物語「ヴァルキューレ」には指環はチラリとも姿を見せません。  ま、もちろん全4夜の4話を通したときの総称が「ニーベルングの指環」であって、それぞれの物語には「ラインの黄金」「ヴァルキューレ」「ジークフリート」「神々の黄昏」という立派なタイトルがついているので、指環が出てこなくてもいいと言えばいいことなんですけど、正直、KiKi が初めてこのオペラ(特に「ヴァルキューレ」)を鑑賞したときには「へ?  指環は??  どこいっちゃったの??  ファフナーはどうなったの??  ヴァルキューレって何さ??」と訝しく思ったものでした。  まるでお預けを食らって「待て」と言われている子犬の気分・・・・(笑)

でね、「何故このオペラのタイトルがニーベルングの指環なのか??」っていうのは、結構マジな疑問だったのですよ。  で、これについて云々するためには、この「ニーベルングの指環」という言葉を2つに分けたいと思うんですよね。  1つは「ニーベルングの」で、もう1つは「指環」です。  (← って言うのもこれをまとめて論じると長くなりすぎちゃうから・・・・なんですけどね。)  つまり「力(権力)の指環」じゃなくて「ニーベルングの指環」である理由を考えるのがまず1つ。  そしてもう1つが「指環」が象徴するものは何かです。

で、今日はまず「指環が象徴するもの」について考えてみたいと思います。

 

   

先日もこのエントリーでちょっと触れたけれどこの指環の原材料はラインの黄金でした。  で、この黄金がラインの川底に静かに眠っている間はこれといって価値のあるものではありませんでした。  せいぜいが「ラインの乙女たちの水遊びのおもちゃ」(by アルベリヒ)ぐらいの意味しかなかったのです。  ところがこの黄金から作られた指環に意味・価値を与えた人が2人いました。  その1人目がニーベルング族のアルベリヒです。  アルベリヒは「愛を諦める」という代償を支払う代わりに「力、権力」という意味づけを指環に与えました。  

本来単なる「金色に輝く小間物」(by フリッカ)であるにも関わらず、ローゲが語る指環がもたらす権力・富の話にまず魅せられてしまうのは神々の長・ヴォータンです。  彼はその指環を、さらにはその指環がアルベリヒにもたらした権力・富を見てもいないうちから「その指環、どうやら私の手元に置くのが1番よさそうだ。」などと仰ってご執心です。  これには彼の妻のフリッカも一役買っています。  自分の妹が人身(神身)売買されようかというまっ最中、ついさっきまで夫が結んだとんでもない契約の支払条項に文句を言っていたのも忘れ、その黄金の指環で我が身を飾れば夫の浮気が収まるのではないかと考えその考えに夢中になってしまいます。  さらに追い討ちをかけるように雷神ドンナーは指環のもつ魔力により神々の覇権が奪われ、ニーベルングの配下に下る不安を口にします。

そんな神々の様子を眺めていた奸智に長ける巨人族の兄弟の弟ファフナーは「永遠の若さをもたらす黄金のりんごを育てているフライヤよりも、そのリンゴの方が役に立つ」(永遠と思われていた神々を有限の存在として神々の没落を待つより「権力の指環」を手に入れ覇権を奪ってしまったほうが手っ取り早い)と判断し、フライヤの愛を切望していた兄のファゾルトを言いくるめてしまいます。  そして契約の支払い条件変更を申し出ます。  

肝心の「指環」はまだ舞台に姿を見せていないのにも関わらず、既に人々の心を蝕み始めています。  彼らはローゲ1人を除き、いかにして自分がその黄金の指環を手に入れるかしか考えていません。  つい先ほどまでは「愛を、女神を取引の対象とすることの是非」について話し合っていたにも関わらず・・・・です。  ふと気がつけばヴォータンは彼の最初のジレンマに陥っていました。  「愛」と「権力」というお世辞にも相性がいいとは言いがたい2つの価値観の板ばさみになってしまっていたのです。  ただはっきりしていることはいずれにしろ「契約遵守」という価値観で世界を統べているヴォータンは「愛」か「権力」か、いずれかで支払いをしなければならないのです。  どちらとも決めかねたまま、でも一方がヴォータンのものではない以上、まずはヴォータンが指環を何らかの形で所有しなければなりません。  ヴォータンはローゲを伴い地下のニーベルハイムに下りて行きます。

その頃地下のニーベルハイムでは、「権力の指環」を作り上げたアルベリヒが同族のニーベルング族を服従させ、強制労働を強いていました。  奴隷のように働かされているニーベルング族がカンカンと耳障りな騒音を立てている中指環を光らせたアルベリヒが登場します。(=指環の初登場)  「自然の賜物」から「金色に輝く小間物」に姿を変えた黄金は、今一度ここで「資本」に姿を変えます。

こき使われているニーベルング族には労働を強いている者が見えていません(隠れ頭巾着用)。  見えない者にせっつかれるまま彼らは一所懸命に働きます。  彼らの仕事は地下資源の採掘と黄金鍛造です。  しかしその労働は労働者たるニーベルング族を富ませることはありません。  その富を独占するのは「資本家」たるアルベリヒのみです。  そして富を得たアルベリヒはその富をバックにさらに力を蓄えます。  ここに至り現在の私たちにも馴染み深い「勝ち組、負け組み構図」と「環境破壊」のいっちょあがり(にちょあがりと言うべきか?)です。  こうしてアルベリヒは指環に新たな価値・意味づけ、「屈従」を与えました。  ま、もっとも「屈従」は「力」「権力」のおまけみたいなものではありますが・・・・。

さて、そんなところに姿を現した神々の長、ヴォータンです。  普通の御伽噺の世界であれば彼はこの状況の救い主になってもおかしくない存在です。  何せ「愛を重んじる神々の長」なのですから。  ところがここでヴォータンはこともあろうに強盗に変身してしまいます ^^;  こうして指環はその製作者にして所有者(?)、指環に価値を与えたアルベリヒを裏切ります。  トールキンの指輪物語の指輪は少なくともサウロンだけは裏切らなかったみたいだけど(でもイシルドアに肉体を滅ぼされちゃったんだからやっぱり裏切ったとも言えるのかな?)、こっちの指環はあっちの指環よりももっと強い意志を持っているようです(笑)。

 

その2へ続く

 

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