ニーベルングの指環が象徴するもの その3

| コメント(0) | トラックバック(0)

さて、今日も引き続き「指環が象徴するもの」です。  指環はアルベリヒの手からヴォータンの手に渡りました。  ここで「ヴァルハラ城建築請負契約」の代金支払いを求める巨人族の兄弟が登場します。

フライアの代わりにアルベリヒからぶんどった「ニーベルング族の宝」で支払いを済まそうとするヴォータンですが、巨人族の兄弟はなんじゃかんじゃといちゃもんをつけて、隠れ頭巾を、さらには指環を要求します。  ここでローゲは「そもそもあれはラインの乙女から盗難届けが出されたもの;ヴォータンに所有権はないもの」と言って「本来あるべきところ」に返そうとしますが、指環の魅力に屈してしまった神々の長・ヴォータンはそれを却下します。  「これはわしのものだ!」  ここでヴォータンが素直にローゲの言葉に従っていたら、ラインの乙女たちに指環を返していたらどうなったのでしょうか??  まあ、せいぜいが「ラインのゴールド・ラッシュ」な~んていう名前のチンケな作品ができあがっておしまい・・・・だったのでしょうね(笑)

巨人族兄弟に「お前さんのものだったら、支払いのたしにしろ!」と迫られても動じなかったヴォータンですが、智の女神エルダの進言もありしぶしぶ指環を手放します。  するとさっそくアルベリヒの呪いが効を奏し、巨人族兄弟の骨肉の争いが勃発します。  そしてその争いの勝利者ファフナーがすべての宝を独り占めにして森の中へ姿を消します。  

さて、次なる指環の持ち主となったファフナーですが、彼はこの指環に「アルベリヒの呪い」がかけられていることは知らないはずなのですが、何故か「力の指環」の魔力を行使しません。  個人的には、当初あれだけ権力欲(?)のあったファフナーのこの変貌ぶりには唖然とするばかり・・・・ではあるのですが、まあ、彼はファゾルトを殺し、ジークフリートに殺されるための捨てキャラだったということでしょうか??  いずれにしろ宝を抱えてその上で惰眠を貪るばかりです。  こうして「富と力」「死」「屈従」という意味づけを持っていたはずの指環は再び単なる「金色に輝く小間物」(by フリッカ)の姿に戻ってしまったかのようです。

 

 

そしてここに英雄が登場します。  この英雄は勇者を名乗りタイトル・ロールなんていう重責を背負いながらも、まともな教育もまっとうな愛も恐れも奸智も何も知らない(本人に責任はないけれど)、「愛すべき可愛い無鉄砲なお馬鹿さん」です。  まともな教育を受けていないので彼には抽象的な概念な~んていうのは到底理解できるはずもありません。  優秀な鍛冶屋にさえ鍛えられなかった剣を鍛えることができても、鳥の言葉を理解することができても、恐ろしい火の海を乗り越えることができても、世間にはびこる権謀術数には頓着しないし、富にも権力にも興味を持ちません。  彼がファフナーの洞窟から「隠れ頭巾」と「指環」を持ち出したのはただ単に小鳥がそうしろと囁いたから・・・・にすぎないのです。

 

隠れ頭巾と指環を手に、洞窟から出てきたジークフリートは、菩提樹の下に立ち止まって、考え込む。
「何の役に立つか知らないけれど、うず高く積もった黄金の山からお前たちを選んできた。
 親切な小鳥が、そうしろと教えてくれたからだ。
 とにかくこの飾り物は今日という日の記念にはなる。
 ファフナーと戦って倒したこと、それでも恐れを学ぶことができなかったことを、
 思い出すよすがにはなるだろう。」

 

ファフナーがその上で惰眠を貪っている間に、単なる「金色に輝く小間物」(by フリッカ)に戻ってしまったかのような指環はここで新たな意味づけ・価値をジークフリートによって与えられました。  それは「記念品」です。  「愛の断念」「死」という呪いがかかっていたはずの指環なのに、記念品とはねぇ。  無知というのはかくも強いものなのです(笑)。  でも忘れてはならないのは、この時点でこの指環はまだ浄化されておらず、単なる「金色に輝く小間物」(by フリッカ)に戻ってしまったかのように見えているだけだということです。  これまでの歴史で「愛の断念」「力と富」「屈従」「死」を知ってしまった指環はもはや「金色に輝く小間物」「記念品」ではいられないのです。  こうしてファフナーと共に惰眠を貪っていた指環はジークフリートにも「愛の断念」と「死」への「屈従」をふりかけ始めます。  このことは今後のジークフリートの運命を暗示しています。  

さて、その「記念品」にさらに新たな価値・意味づけを与えたのもジークフリートでした。  ブリュンヒルデと巡り会い彼女の愛を得たジークフリートは、旅立ちにあたりこの指環を新妻に捧げます。  「愛の証」として・・・・。  ブリュンヒルデはこの指環があの「ニーベルングの指環」であることを知っていたはずです。  彼女が神格を失うきっかけとなった「ジークムント & ジークリンデ救出作戦」の前に、戦いの父ヴォータンの人格を破壊しそうなほどまでの苦悩を聞かされ、ヴォータンのジレンマを彼の半身として共有した乙女だったはずなのです。  でも、この時点で彼女はジークフリートとの愛に満たされ愛の至高性を信じ、さらにはルーネ文字の賜物である智をジークフリートに気前よくすべて受け渡してしまっていたので、自分が渡された指環が元々持っていたはずの意味づけ・価値に目を向けようともしません。  今目の前で提示された新しい価値「愛の証」にうっとりと酔いしれてしまいます。  こうして指環はゆっくりと彼女をも蝕み始めます。

 

その4へ続く

 

 

トラックバック(0)

トラックバックURL: http://poco-a-poco.chu.jp/mt/mt-tb.cgi/62

コメントする

2015年2月

1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28

Current Moon

CURRENT MOON

東京のお天気


山小舎のお天気


Booklog



ブクログ

アーカイブ

ウェブページ

Powered by Movable Type 4.261

TrackbackPeople

クラシック・ピープルの Trackback People Site


チェロ ラヴァーズの Trackback People Site


Piano~ぴあの Trackback People Site


ピアノオススメ教本の Trackback People Site


ピアノ教室の Trackback People Site


Book Love Peopleの Trackback People Site


本好きPeople・ぴーぷるの Trackback People Site


今日読んだ本の Trackback People Site


ファンタジーが好き♪の Trackback People Site


この絵本がすごい!の Tackback People Site


児童書大好き♪の Trackback People Site


ハヤカワepi文庫の Trackback People Site


岩波少年文庫応援団の Trackback People Site


薪ストーブの Trackback People Site


週末は田舎暮らしの Trackback People Site


野菜育てPeopleの Trackback People Site


ガーデニングの Trackback People Site


パッチワークキルトの Trackback People Site


あなたの訪問は?


日めくりカレンダー


Real Time News


カテゴリ

ノルンはいくつ?

本が好き!


読書メーター

KiKiさんの読書メーター
KiKiさんの読書メーター

最近読んだ本

KiKiの最近読んだ本

今読んでいる本

KiKiの今読んでる本

読了目標





今やってるゲーム

KiKiの今やってるゲーム

このブログ記事について

このページは、KiKi (Brunnhilde)が2006年7月19日 20:20に書いたブログ記事です。

ひとつ前のブログ記事は「ブラームス 弦楽六重奏曲第1番 Op. 18」です。

次のブログ記事は「シベリウス 交響曲第1番 Op. 39」です。

最近のコンテンツはインデックスページで見られます。過去に書かれたものはアーカイブのページで見られます。

高速運賃





Edita

ブロガー(ブログ)交流空間 エディタコミュニティ

名言黒板


作家別タグ