ニーベルングの指環が象徴するもの その4

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さて、今日も引き続き「指環が象徴するもの」です。  

アルベリヒ → ヴォータン → ファフナー → ジークフリートと持ち主(というより保管者)を変えてきた指環はブリュンヒルデの指に「ジークフリートとの愛の証」として輝いています。  そこにヴァルキューレの1人、ヴァルトラウテが神々の掟破りをしてまでして訪ねてきます。  ところが智を持っていた頃のブリュンヒルデならいざ知らず、彼女は妹のこの「神々の掟破りをしてまでの行動」のもつ重要性をまったく理解しません。  それどころか彼女に伝えられるヴォータンの悲願「あの子が深きラインの娘たちに指環を返しさえしたら、神たる身も世界も、呪いの重荷より救われるのだが」にも耳を傾けようともしません。  かつてヴォータンは怒りと絶望の中で

「彼女ほど、私の心に深く秘めた秘密を知り、私の意志の奥底まで見通したものはいなかった」

とブリュンヒルデを評しました。  そしてブリュンヒルデ自身も

「お父さまの心を私は裏切りはしませんでした。  たとえご命令に背いたとは言え・・・・。」

と応じていました。  その彼女が・・・・です。

 

「そんな恐ろしげな夢物語なんかして、かわいそうに。
 神の領分である聖なる雲の上の世界から、愚かな1人の女として、私は抜け出してきた。
 そういう私にはあたなの話はさっぱりわからないわ。
 おかしなたわごとにしか聞こえないの。」

「ヴァルハラの悦楽よりも、永遠の神の誉れよりも、私に大切なのが、この指環。
 この輝く黄金を一瞬見るだけで、この聖なる輝きが一閃するだけで、神々の永久の悦楽は
 私にとってむなしいものになる。
 ここにはジークフリートの愛が、至福の光として輝いています!
 ジークフリートの愛が!」

 

 

    

こうしてヴォータンはかつて最愛の娘であった、彼の半身でもあった、そして心ならずも彼が裏切らなければならなかった娘からの復讐を受けます。  もちろんブリュンヒルデには悪意も恨みもありません。  これは「エルダの予言 - ブリュンヒルデ編 ヴォータン、ブーメラン効果により報復を受けるの巻」です。

  

「反抗の精神を教える者が、どうして反抗するものを罰せるのです?
 けしかけておいて、そのとおりになると腹をたてるのですか?
 正義を守り、誓約を保護する者が、正しいことを妨げ、偽誓によって治めるのですか?
 私を地の底にもどらせてください。
 眠りのうちに知恵を閉ざしてしまいたい!」

 

母エルダ同様に知恵を閉ざしてしまっているブリュンヒルデには今やヴォータンの言葉は届きません。  かつてヴォータンの半身であったはずの乙女はもはや彼の半身ではなく、ジークフリートと合一した「2人は1人状態」なのです。  ヴォータンのことなんか、神々のことなんか、ヴァルハラのことなんか知ったこっちゃないのです。  

一方、新妻を残し旅に出た世間知らずの「愛すべき可愛い無鉄砲なお馬鹿さん」はギービヒ家でハーゲンの奸智にひっかかり、得体の知れない飲み物を飲まされ、ブリュンヒルデのことを忘れてしまいます。  まず最初にジークフリートを屈従させようとした指環の呪いは「愛の断念」でした。  (本人には断念した自覚さえないけれど・・・・ ^^;)  そしてこともあろうに自分の妻を別の男に嫁がせるためのパシリとなってブリュンヒルデの前に姿を現します。  隠れ頭巾の力でグンターに姿を変えて・・・・。  

ヴォータンとジークフリートの共同作業によりもはや戦乙女ではなく身を守る防具も武器も持たないブリュンヒルデは、今の彼女の最終兵器、「ジークフリートの愛の証」をかざして身を守ろうと試みますが、見かけはグンターでも中身はジークフリートである侵入者には何の効力も発せず、逆にその指環を奪われてしまいます。  こうしてブリュンヒルデを屈従させようとした最初の指環の呪いも「愛の断念」でした。

と、同時に指環の上に至福の光として輝いていたはずのジークフリートの愛という意味づけ・価値がブリュンヒルデの心の中で色褪せ始めてしまいました。  もはや指環はジークフリートの愛の証ではありえなくなってしまったのです。  (辛うじてかすかな光は残っているけれど・・・・。)

 

その5へ続く

 

 

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