隠れ頭巾について

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さて、今日は隠れ頭巾について考えてみたいと思います。  あらゆる神話、あらゆる伝承の中に人が姿を消したり、何かに化けたりするお話がでてきます。  これは世界広しと言えども、文化や価値観が違えども、人間が持っている欲望・・・・というか夢想だったようです。  日本にも「隠れ蓑」っていうやつがありますしねぇ(笑)。  さて、この隠れ頭巾。  いつでも好きなときに姿を隠したり、望むものの姿に自分を変えたりできるというスグレモノです。

もっとも現代の「自分」を主張したい人たちにとって、この「隠れ頭巾」がどの程度魅力的なアイテムかというと、多分あんまり魅力を感じない代物なんじゃないかと思うんですよね。  「自分探し」「自己実現」に躍起になっている現代人たちは、どちらかというと社会の中で「隠れ頭巾で姿を消しているかのごとき存在感のない自分」に苛立ち、嘆き、社会の坩堝の中でいかにして「己の存在」を際立たせるかに夢中です。  現代でもこの「隠れ頭巾」で身を隠したいと思っている人がいるとしたら、それは借金取りに追われていたり、検察や警察に追われている人なんじゃないかしら・・・・(笑)。  あ、でも「陰の黒幕」っていう人も隠れ頭巾は欲しいのかな??

あ! でも「姿を隠す」機能には興味がなかったとしても、「望むものの姿になれる」は現代人にとっても結構魅力的な要素かもしれません。  美容院に行くと「今日はどんな風になさいますか??  芸能人だとどんな感じ??」な~んて聞かれることがよくあるけれど、隠れ頭巾さえあれば、そんなことにお金を使わなくたってその憧れのルックスの○○さんの姿になれちゃうわけだから、大枚(?)はたいて時間も消耗した上に「どんなに頑張っても○○さんにはなれない私(涙) 」と落胆する必要もないわけだし・・・・。

「1日だけ神様があなたに別の誰か、何かになるチャンスをあげますと言われたら、あなたは何になって何をしますか?」な~んていう質問が現代社会でも健在であることを考えると、「自分ではない何者かになる」は昔も今も人々の夢なのかもしれません。

 

 

でもちょっと待って・・・。  どうして人は自分以外の者になりたがるのでしょうか??  憧れ?  嫉妬??  それとも単なる好奇心???  決して己は否定しないままに、他者になりすましたいという欲望。  これこそが「欺瞞」のオリジナル形態のように KiKi には思えます。  「欺瞞」の具体的なアクション・プラン(具体的とアクションだと言葉がダブっていますが ^^;)が「策略」「陰謀」です。  「隠れ頭巾」は「欺瞞」「策略」「陰謀」の象徴です。

隠れ頭巾を作ったのはミーメです。  彼はもとはと言えば「ニーベルング族」の大勢の中の1人にすぎない存在でした。  このエントリーでも触れたように、他のニーベルング族の隷属奴隷の皆さんと同様、プロレタリアートの1人に過ぎません。  でも彼だけが奸智を働かせてのし上がろうとしている人物となり、残りの皆さんは奸智を働かせないまじめな市民であり続けます。  恐らくニーベルング族っていうのは本質的にはまじめでコツコツと働く勤勉な種族なんだろうと思います。  生まれ育った環境(地下)のせいもあるだろうけれど、額に汗して働き「小間物」を作ることを得意とする真面目な人たちなんです。  (北欧神話によればもともとはユミルの肉塊にたかるウジ虫だけど・・・・ ^^;)  KiKi は思うのですが、もしもミーメがアルベリヒの命令で隠れ頭巾を作ることがなかったら、彼は今でも真面目で勤勉で優秀な鍛冶屋の1人で、ニーベルング族の中の顔のない1人のままだったのではないかと。  あの頭巾を作ることにより彼は「欺瞞」を知ってしまったのではないかと。

と同時に、地上を知らずいつも暗がりの中で生活していたニーベルング族だからこそ作れた代物であったとも思います。  彼らは地上に、光に憧れていたと思います。  だからこそ人一倍憧れ心の強いアルベリヒはニーベルハイムから這い出してライン河に行き、美しいラインの乙女たちに魅せられたとも言える訳で・・・・。  憧れが屈折すると欺瞞を生み、欺瞞を実行するために策略や陰謀が生まれます。

さて、この「欺瞞」。  ある意味では「契約」の対極にある概念です。  で、契約を重んじる神々の長であるはずのヴォータンなんですが、隠れ頭巾には興味の欠片も示しません。  これはホントはマズイんじゃないかと KiKi は思うんですよね~。  いくら指環に目が眩んじゃったと言えども、こんなものが世に出たらそれこそこの世界(契約で統べられている世界)の秩序は崩れちゃうわけで・・・・。  ま、もっともそのヴォータン自身もこの後神々の長からヴェルズング族のヴェルゼへ、さらにはさすらい人と姿を変えるわけですからこれも「欺瞞」の一種なわけですが・・・・ ^^;  おお!  ヴォータンとは何と矛盾に満ちた人物か!!  

そんな隠れ頭巾に興味を示し、握りしめているのがローゲです。  ローゲが隠れ頭巾に興味を示した理由はこちらのエントリーで推測してみたのでそちらをご覧ください。  そして彼もこの物語の中ではかなり存在感のある策士です。

その後この隠れ頭巾の力でファフナーは大蛇に化け、「ヴァルハラ城建築代金」の対価を守り続けます。  そして、頭巾はジークフリートの手に。  当初、ジークフリートはこの頭巾を持ち歩いてはいるものの、なんの役に立つものか全く理解せずにそれを使うことを考えようともしません。  まあ、「愛すべき可愛い無鉄砲なお馬鹿さん」だから・・・・とも言えるわけですが、別の面から見るとこれは「英雄」の名に恥じない行動だと思います。  だって彼は敵に背中を見せるようなことはしない、真っ向勝負の男なんです。  当然姿を隠したり、何かに化けたりなんてしちゃいけません。  常に己のあるがままの姿で戦う、それが英雄っていうモンです。

ところが「忘れ薬」を飲まされた途端、彼はこの隠れ頭巾をとんでもないことをするために利用します。  あの「忘れ薬」。  一見すると過去に出会った女を忘れちゃうという「女限定の特効薬」に見えますが、彼が忘れちゃったのは「英雄たる自分」「英雄の精神」だったのかもしれません。 

それにしても・・・・。  あの隠れ頭巾。  ジークフリートがグンターに身をやつして以来、登場しなくなっちゃうんですけどどうなっちゃったんでしょうか??  当然、ジークフリートと共に荼毘にふされたんですよねぇ???  「力の指環」も浄化されなくちゃいけないけれど、あんなものだけこの世に残されても甚だ迷惑なんですけど・・・・ ^^; 

 

              

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このページは、KiKi (Brunnhilde)が2006年8月 5日 21:18に書いたブログ記事です。

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