アドルフの画集

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アドルフの画集 
2002年 ハンガリー/カナダ/イギリス 監督・脚本 メノ・メイエス


21F2SK1R96L__SL500_AA140_.jpg  (Amazon)   

1918年のドイツ。  第一次世界大戦終結後、ミュンヘンで2人の男が出会う。  戦争に参加し、右腕を失ったマックス(ジョン・キューザック)は画家への路を絶たれ、今は画商を営んでいた。  また戦地から引き揚げ画家を目指すアドルフ・ヒトラー(ノア・テイラー)だがその才能は開花せず、次第に政治運動に傾倒して行った...。

 ヒトラーが画家を目指していたという事実をもとに、マックスという画商と彼とを対比する形で描くあたりがおもしろい。  飄々(ひょうひょう)としたジョン・キューザックのマックスに対して、神経症的なアドルフに扮したノア・テイラーの演技が出色。  自らの内面をキャンパスに叩きつけようと悶え苦しむ様子から、エネルギッシュな演説で大衆を魅了し陶酔する若き日の独裁者の姿を熱く演じている。  肉体と精神に傷を負った男ふたりの、屈折した友情物語。(斉藤守彦)
                            アマゾン・サイトより転載  
  


だいぶ前に自宅近くの GEO で発見して以来、ずっと観たいと思っていたこの映画。  ようやく借りることができました。  アドルフとはかのアドルフ・ヒトラーさんのこと。  ("さん"付けなんてするとファシストだと思われちゃうかな?)  ヒトラーがドイツ独裁者になるずっと前、美術を志していたことは結構有名なお話だと思うのですが、そんな史実に架空のユダヤ人画商マックスを絡ませたストーリーということだったので、「もしもヒトラーが高名な画家になっていたら・・・・」なんていう空想を膨らませつつこの映画を観始めました。  でも、あれ??  あれれ???  ちょっとテーマは違うのかも・・・・ ^^;

原題は「Max」。  つまりヒトラーよりも Max が主役なんだね~、きっと。  でも誰が主役かなんていうのは、ことこの映画に関してはどうでもいいことのような気がします。  KiKi はアドルフ(つまりヒトラー)の狂信的ともいえるあの行動の背後にどんな思いがあったのか、ず~っとよくわからないと思っていたのですが、この映画を観て、「な~るほど、そういうことだったのかもしれない!」とある意味でスンナリとこのストーリーを受け入れちゃうことができました。

 

舞台は1918年、第一次大戦後のドイツ、ミュンヘン。  荒んだ様子の街、人々の様子が戦争の傷跡を物語ります。  そこで暮らす2人の男。  1人は金もない、酒も飲まなきゃ煙草も吸わない、家族もいない、ないないづくしのドイツ人。  もう1人は金はある、酒は飲む、煙草は吸う、家族もいれば愛人までいるあるあるづくしのユダヤ人。  ユダヤ人の方にないのは右腕ぐらい・・・。  彼はドイツ国民の一員として参戦した戦場で右腕を失いました。  ドイツ人の名はアドルフ、ユダヤ人の名はマックスです。

戦後の荒廃した街の中で、明日をも知れない暮らしを続けるアドルフと、溢れんばかりの親の財産を元手に新たな活路を絵画の売買に見出したマックスは「売れない画家」 vs. 「新進気鋭の画商」として出会います。  アドルフの画集を見たマックスは、彼の中に一抹の才能を見出すものの、「何か伝わってくるものがない」と酷評します。  がっかりするアドルフでしたがマックスはそんな彼にシンパシーのようなものを感じ、彼を勇気づけたり生活の援助をしたりしながら彼の心の叫びを絵に描き表すようにと助言します。  

認められた喜びがアドルフの中でわき上がり、迸る怒りや鬱積した感情を次々にキャンバスにぶつけます。  でもそんな時、彼は軍部から頼まれて反ユダヤ思想の演説をすることになります。  どうやら若い頃のヒトラーはさほど反ユダヤというような思想を持っていたわけではなかったみたい・・・。  そんな彼に反ユダヤ思想を植えつけていったのは「天文学的数字」の賠償金補償をドイツに突きつけたベルサイユ条約の締結という世界史的一大事件がきっかけだったということのようです。  

第1次世界大戦後にドイツと戦勝国であるイギリス・アメリカ・フランス等の連合国との間で締結されたこの講和条約により、ドイツは徴兵制を廃止、陸軍兵力を10万人以下に制限、ライン川左右岸50kmの非武装地帯を設定、輸出入の全面禁止、大半の軍事物資生産の禁止、「国際信義に対する最大の侵犯」の罪で前皇帝ウィルヘルム2世を国際裁判にかけることを同意させられる(実施はされなかった)等々の苦渋を飲まされることに・・・・。  こんな風に痛めつけられちゃったら、我慢ならないというのはそりゃあそうだよねぇ。  こうして彼等の中に「背中から刺された」(だったかな?  ちょっと度忘れ・・・)というような被害者意識というか、要するに不当に痛めつけられちゃっているドイツ人・・・というような感覚が生まれちゃったわけです。  そして、苦しい生活を余儀なくされているドイツ人たちの目に映る「ヴェニスの商人」もとい「ユダヤの商人」たちのデカダンスな雰囲気、パーティー三昧の生活は許しがたいものになっちゃったりもするわけで・・・・。

余裕のない生活の影響もあってか、普段はひどく陰鬱で常にイライラしているような表情をしているアドルフが、軍部から頼まれた反ユダヤ思想の演説をしているうちに、自分自身の演説に自己陶酔していくありさま、そしてそんな生活から抜け出したいという欲求から美術と政治の間で葛藤していくようになる過程はショッキングでもあり、何となく理解できちゃうようでもあり・・・。  結局、人間最後は衣・食・住が足りなければ鬼にも蛇にもなっちゃうんだよなぁ・・・とか。  産業革命以降の世界紛争って、ホント、カネと関係のない話はないんだなぁ・・・・とか。  因みに、今ちょっと読んでいる本によると第一次大戦後の戦債によるお金の流れで断然優位に立ったのがアメリカだったりするらしく・・・。 

ま、それはさておき、この映画のアドルフはユダヤ人マックスに対して最初は敵意なんて持っていなかったと思うんですよね。  どちらかと言うと憧れとか羨望といった類の思いを抱いていたんだと思うんです。  でも、同じ大戦を命懸けで戦って帰ってきて、方や片腕こそないけれど他は何でも持っている人間がいて、方や何ひとつ持っていない自分のような人間がいて・・・・。  そしてユダヤ人たちは自分達の純血と富を守り続けていて・・・。  マックス個人には何の恨みもないけれど、そのあまりにも不平等な社会に、そんな不条理に、マックスが身近にいるからこそなおさらそれを直視しなくちゃいけなくて、そうこうしているうちにパンパンに膨らんだ風船が弾けるように耐え切れなくなっていっちゃったんだろうと思います。
  
映画の結末はちょっとショッキング。  この延長線上にあのホロコーストが、あのジェノサイドがあったのかと感じさせるエンディングでした。  で、今日の KiKi の鑑賞後の結論。  

やっぱり人間は、どんなことがあろうとも、相手を追いつめちゃいけないんだ。

 

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このページは、KiKi (Brunnhilde)が2007年3月28日 16:22に書いたブログ記事です。

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