アミスタッド

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アミスタッド
2001年 アメリカ 監督・脚本:スティーブン・スピルバーグ


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奴隷船「アミスタッド」の中で暴動が起きた。  奴隷貿易の商品として船に乗せられた西アフリカ人53名をめぐる1840年代の裁判を、スティーヴン・スピルバーグ監督が映画化した。  アメリカの歴史をざっと知るにはこの映画を見ればいい。  作品の物語性や技術の高さに定評のあるスピルバーグ監督だが、『シンドラーのリスト』や最近では『プライベート・ライアン』でもそうだったように、その持ち味にこだわってはいないようだ。  どちらかと言えば、作品を美しい映像で飾り、感動を誘おうとしているように思える。  壮大なメッセージを込めたかったのだろうが、奴隷制度の描き方は単純で、月並みなものになってしまった。  登場人物は、ハリウッド映画におなじみの役割を与えられている。  「悪党」役に、スペイン人の奴隷商人を配置。  熱心なアボリショニスト(奴隷制度廃止論者)の描き方も一方通行で、側面は描かれていない。  そんな中、奴隷を輸送する中で起きる一連のシーンは、リアリティにあふれており残酷さをよく伝えている。  

『アミスタッド』は、法廷ものとして考えた方がよさそうだ。  若く理想に燃える弁護士(マシュー・マコノヒー)がゆがんだ政治システムと戦い犠牲者を助けようとする、よくあるタイプの法廷ものだ。  奴隷制度の描き方は、『E.T.』の設定にあてはめることができる。  アフリカ人による暴動のリーダーとなるシンケ(ジーモン・ホウンソウ)は、『E.T.』で言うところの宇宙人。  仲間とはぐれ、言葉の通じないところで家に帰る道を探すという意味ではそっくりだ。  砂に絵を描いて地理を尋ねるシーンや、表情を真似させてコミュニケーションを取らせようとするところなど、マシュー・マコノヒーは、さながら『E.T.』をかくまうエリオットだろう。  少年と迷子になった宇宙人の心の交流を描いたSFファンタジーでは文句なしに感動をよびおこした設定である。  しかし、複雑に絡み合った歴史という真実を扱うには弱かったと言わざるをえない。(Dave McCoy, Amazon.com)
                                 Amazon サイトより転載  
  


この映画の扱っている題材は史実です。  それだけにかなり残酷なシーンもあるけれど決して目をそらさずに見なくちゃいけないんだろうな~などと思いながら姿勢を正して(?)観始めたのですが、あまりにも多くの理不尽、不条理に目をそむけたくなってしまうことがしばしばありました。  映画冒頭のアミスタッド号内で起こった反乱のシーンはその悲惨さというよりは光のチカチカする映像でちょっと気分が悪くなりかかり、このまま最後まで観ることができるんだろうかとちょっと不安になりました。  どうも KiKi はああいう作りこんだ映像は苦手みたいです ^^;。  映画全体の作りとしてはやはりアメリカ映画(というかハリウッド作品)の典型的パターンの域を出ておらず、建国の精神に目覚めたアメリカ人がこの事件で被告となったアフリカ人を無罪放免にしてあげてよかったよかったというノリなんだけど、実際にはこの後もアメリカでは奴隷制度が続き南北戦争もこの後で、奴隷解放宣言もさらに後で、黒人差別の問題は今も現代アメリカに(ひいては世界に)根強く残っていることを忘れてはいけないと思います。  とは言うもののこの映画の焦点はこの「アミスタッド号の反乱事件に関する裁判」にあるわけで、奴隷制度の是非だとか人種差別の不条理みたいなお話とはちょっと切り離してあるんですよね。  まあ、奴隷制度そのものを語ろうとするのに映画の時間枠は短すぎると思うので、それはそれで致し方ないこと。  でも、KiKi はこの映画をきっかけにしてシンベたち53名のストーリーよりも「奴隷制度のストーリー」こそを考えなくちゃいけないんじゃないか・・・・・そんな風に感じました。  

それにしてもこの物語の発端となる奴隷船「アミスタッド号」。  このアミスタッドという言葉が「友情」を意味しているというのは何ともいえない皮肉です。  日本語には「名は体を表す」っていう言葉があるけれど、そして子供の頃の KiKi はどちらかというとそれを信じていた部分があるけれど、成長するにしたがって「美名の裏に隠れた悪事・陰謀」みたいなものにとっても sensitive になってきているので、この船名に何だかとても象徴的なものを感じます。  そして KiKi にとってもう1つとても象徴的に思えたことがあったんだけど、それはこの物語の主人公(?)シンベ君が奴隷として捕獲される際に、その捕獲行為を行っているのがスペインの奴隷商人その人ではなく、シンべ君と同じ黒人であるということ・・・・・。  人間って自分が生きるためならどんな残酷なことでもできちゃう生き物なんだなぁと改めて空恐ろしさを感じてしまいました。  又、過去にこの映画についてとある友人と話していたらその人に「俺、あの小説読んだことがあるんだけど小説の方が深いよ。  あれはやっぱり典型的なハリウッド映画だよね。  あの映画には描かれていなかったけれど小説では、シンベってあの事件の後、奴隷商人になるって知ってた?」とさらっと言われちゃったことがあるんですよね。  (実話かどうかは不明らしい。)  いつか小説で確認してみようと思いつつず~っとそのままになってしまっているので定かではないんですけど、もしもそれが本当だとしたら、この物語はやっぱり「正義に目覚めたアメリカ万歳!!」じゃなくて、もっと違う描き方をしなくちゃいけなかったんじゃなかろうか・・・・・などと思ってしまったり(笑)。

 

 

奴隷制度を初めて KiKi が意識したのは子供の頃、当時自宅にあった世界子供文学全集に入っていた「アンクルトムの小屋」を読んだ時でした。  でもね、あの物語を読んでから数年前に至るまで「奴隷制度」の裏で何が行われていたのかについてどのくらいのことを考えてきたのかなとわが身を振り返ってみるとすご~く表面的なことしか考えてこなかったような気がするんですよね。  そういう意味ではこの映画は KiKi にとってかなり印象深い映画で、この映画を初めて観たときちょっと思ったのは「この映画は奴隷売買という行為を歴史の暗部として捉えるストーリー」なんだよなぁということでした。  映画の中でアンソニー・ホプキンス演じるジョン・クインシー・アダムズが「ストーリーを語れ」と言い、マシュー・マコノヒー演じる若い弁護士ボールドウィンがシンベたちの苦難を語ります。  もちろんシンベたちが味わってきたおぞましい体験はそれだけで刺激的なストーリーなんだけど、奴隷売買の歴史そのものにはもっと深くて悲しいストーリーがいっぱい詰まっていると思うんですよ。  そして、そのストーリーは今も続いていてその延長線上に南北問題が根強く残っているわけで・・・・・。  更にはこれと同じ根っこを持つ様々な問題が今、世界のあちこちでくすぶっているわけで・・・・・・。

何故、奴隷が必要だったのか?  何故イギリスはいち早く奴隷制廃止に踏み切ることができたのか?  そこには人道的な問題以前に政治と経済活動があることを見逃してはいけないような気がします。  この映画の中で最も秀逸だと KiKi が感じたのは、この黒人たちの解放を訴える善意の人々が考えている人道問題に対する意識と、この裁判に関わりたがる政治・経済に携わる人々との意識のギャップです。  「自由」とか「平等」という言葉は耳障りはいいし、基本的人権の根本にある崇高なる思想ではあるけれど、実は実体のないすご~くあやふやな言葉だと思うんですよね。  で、その言葉を発していると何だかとても崇高なことをしているような、自分は「良い人間だ」と感じられるようなある種の陶酔感を与えてくれる言葉だと思うんですよ。  自己満足を満たしてくれる言葉と言ったほうがいいかもしれません。  この映画の中で KiKi がもっとも気になったのは、英語を理解しないシンベが初めて理解した英語が「自由」で裁判の席で「自分たちに自由を!」を何度も連呼するシーンです。  確かにある意味ではとっても感動的なんだけど、KiKi はそこにうそ臭さを感じてしまいました。  もちろん奴隷という立場に貶められた1人の人間が自由を求めるのはとても自然なことだし、そのこと自体がうそ臭いとは思わないんですよ。  でもね、何て言ったらいいんだろう?  もしも KiKi が彼の立場だったら「自由を!」なんていうあやふやなことは言わないような気がするんです。  多分「この鎖を外してくれ!」とか「家に帰らせてくれ!」とか「自分が何故こんな風に扱われなくちゃいけないんだ!」とか、そういうことを言うような気がするんですよね。

ここで「自由」という言葉を持ち出して、さらにはアメリカの建国精神やら独立宣言を持ち出して観念的な世界に引きずり込むことによって、この物語が歴史のひとコマに過ぎなくなってしまって、善意に目覚めたアメリカがその後南北戦争やら奴隷解放宣言、さらには黒人への参政権付与という歴史を辿り、その延長線上にいる私たちは良識ある現代人・・・・・というようなストーリーではいけないんじゃないか。  そんな風に感じるのです。  それじゃあ、映画の末尾でイギリス軍がロンボコ砦を破壊して「シエラレオネに奴隷砦は存在しません。」と言ってのけちゃうのと同じ(そういう意味ではこのセリフは重いと思う。)で、「歴史の暗部」としてこの体験を私たちの現実世界から切り離して手の届かない(目の届かないと言うべきか)所に塗りこめちゃうのと同じ・・・・・のような気がします。  この物語で奴隷制度の理不尽さだとかアフリカ系の人々の苦難を知るのは素晴らしいことだと思うけれど、それと同時にどうしてこの事件が原告:アメリカ合衆国 vs 被告:アミスタッド号で反乱を起こした黒人奴隷だったのか?、なぜスペイン女王がこの事件に関してこんなにも干渉してきたのか?、なぜイギリスはああいうスタンスを取っていたのか?、奴隷制度とは何だったのか? etc. etc.  この映画では語られていないそういうストーリーこそ見逃してしまってはいけないような気がしました。  そしてそこにこそ、本当の意味での歴史があると思うし、現代社会に生きる私たちが学ばなければいけない教訓が眠っているような気がします。

それにしても・・・・・。  この映画の中の黒人奴隷の皆さんは、ずいぶんと又ナイス・バディの方々ばかりで・・・・・(笑)。  本当に奴隷船に乗せられていた人々は恐らくはあんなにナイス・バディ & 肌の色艶がよかったとは思えませんねぇ。  あ、これは別にリアリティに欠けるとかそういうことが言いたいわけじゃなくて、現実はあの映画よりももっとず~っとショッキングな画だったんじゃないかなと思うわけです。  そして、そんな奴隷を扱う商売をしている側に自分がいたとしたら、何を感じるんだろう??ということを考えたとき、今の自分が考えるような不快感・居心地の悪さを感じることができるのかどうか・・・・・・。  

 

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コメント(2)

>本当に奴隷船に乗せられていた人々は恐らくはあんなにナイス・バディ & 肌の色艶がよかったとは思えませんねぇ。
昔のアフリカで昔ながらの生活をしていた人たちならあれくらいマッチョでも不思議じゃないような気もします
それに、ナイスバディで肌艶がいい人たちじゃないと良い値段はつかないんじゃないかな

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