ドライビング Miss デイジー

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ドライビング Miss デイジー
1989年 アメリカ 監督:ブルース・ベレスフォード


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人種への偏見が根強いアメリカ南部の町。  老いてもなお、威厳だけは失わない未亡人・デイジーに、黒人の専属運転手・ホークは従順に仕えていた。  主従関係にありながらも、固いきずなで結ばれていくふたりの25年間を描き、派手な作品ではないにもかかわらず、作品賞ほかアカデミー賞4部門を受賞した珠玉作。

 主演女優賞を受賞したジェシカ・タンディが、伝統に縛られる南部の女主人を凛とした表情で演じつつ、時折見せる慈しみにあふれた眼差しが絶品。  彼女が初めて海を見たときを回想する演技は見事と言うしかない!   息子役ダン・エイクロイドの首まわりの肉づきなど、25年の年月を再現するメイクアップや、ホークの運転とともに、心地よく映像に滑りこんでくるメインスコアのメロディといった、細部の完成度も高い。  人種差別にまつわる事件を絡めた時代表現は、ややあざとくも感じられるが、俳優たちの演技が些細な欠点を覆い隠し、繊細で感動的なラストシーンにたどり着く。(斉藤博昭)
                                    Amazon サイトより転載 
  


つい先日観たのが「ショーシャンクの空に」で久しぶりにモーガン・フリーマンを観てちょっと思い出しちゃったから・・・・というのもあるし、昨年末に TV で仲代達也さんのドキュメンタリー番組を観ていて、無名塾が民藝と組んでこの脚本の舞台劇をやっているという紹介があり、懐かしくなっちゃったから・・・・・というのもあって、久しぶりに観たくなってしまった映画がこの「ドライビング Miss デイジー」です。  (それとここ1ヶ月ぐらいの間、自分の父親の「老い」を再認識しちゃったから・・・・というのも、この映画を観たくなった理由のひとつなのかもしれません ^^;)

この映画は KiKi の大々だ~い好きな1本です。  淡々としたお話だし、ハンサムなお兄ちゃんが出てくるわけでも、綺麗なお姉ちゃんがでてくるわけでもないし、オーバーな演出がある映画でもないけれど、何度も観たい、しかも3年とか5年とか少し時間をおいてから又観る・・・・・というような観方をしたいと思っている映画です。  

そもそもこの映画、題名自体がとってもウィットに富んでいると思うんですよね。  邦題をつけたときもあえて Miss だけを英語にしてあるのはそのためじゃないかと思うんだけど、この Miss って Mr., Mrs., Miss の Miss であるのと同時に 「Driving Miss ≒ 運転に失敗した デイジーさん」っていう意味も含んでいるんじゃないかと思うんですよ。  さらに、さらに深読みすれば、 Drive っていう単語には「(人・物を)追う、追い払う」という意味もあるから、「ホークを追い出すのに失敗したデイジーさん」 っていう意味もあるような気がするんですよね~。  ね、結構笑えるでしょ♪

さてこの映画、とかく主演の2人(ジェシカ・タンディ & モーガン・フリーマン)に目がいってしまいがちだけど、デイジーさんの息子・ブーリーを演じているダン・エクロイドも素晴らしいと思います。  それは徐々に貫禄がついていく特殊メイクのリアルさ・・・・というよりは(それも結構すごいと思うけれど)、彼が発するあの「Mama」の言い方にあるような気がします。  とうに夫を亡くしていて息子夫婦とは同居していない、ちょっと(というかかなり)頑固な母親に対する様々な感情があの呼びかけには含まれているような気がして、「素晴らしい息子だなぁ」と感じ入ることしばしば・・・・・・。  彼はホークの人となりをいち早く見抜き、彼に全幅の信頼をおいて彼が愛してやまない、でもかなり扱いにくいミス・デイジーを預けていると思うんですよね。  だから、KiKi 的にはミス・デイジー & ホークのつながりもとっても感動的だけど、息子のブーリー & ホークのつながりに、より人対人の強い絆を感じます。

 

この映画にはいくつものサブ・テーマが含まれていると思うんですよね。  誰もが避けて通れない「老い」の問題、そして「核家族」の問題。  公民権運動が始まったばかりのアメリカ南部が舞台であることにより、比較的さらっと描かれている「人種差別」の問題。  でも最終的にこの映画が伝えてくれることは、「無邪気な善意の差別主義者への批判」のような気がするのは気のせいでしょうか?

確かに映画終盤でミス・デイジーはホークのことを「友達」と呼んだけれど、それは彼女が抗い続けてきた自分の「老い」に負けたことを否応なしに思い知らされた直後(つまりちょっと痴呆状態に陥って、正気を取り戻して、そして初めて)であって、彼女が矍鑠としている間はかなり厳格に雇い人と使用人という関係を守っているように見えるんですよね。  吹雪の中いつもどおりに出勤してきたホークのことを電話で息子に伝えた時、「珍しいこともあるもんだ。  ママがホークのことを褒めた。」と言う彼に「褒めてなんていません。  重宝するって言っただけです。」なんていう反論をするほどに・・・・。  

もちろんミス・デイジーはホークの実直な姿に少しずつ少しずつ心を開き、ある面では彼のことを認めているんだけど決して1人の対等な人間として認めているわけではないと思うんですよね。  それを証拠に「私は一度も偏見なんて持ったことがないわ」と宣言している彼女が招待されているマーティン・ルーサー・キング牧師の夕食会に、ホークを自分のパートナーとして誘うなんていうのはありえないことだと思っている・・・・・。  (運転手として会場の外までは同行させるけれど)。  そしてその夕食会に集まっているのは白人ばかりで、黒人は給仕をしているという現実にも全く気がつきません。  

「南部に住む多くの良心的な白人の声はいまだ聞こえてきません。  道は未だ示されず、勇敢な行動も未だ見えない。  そういう人々に訴えます。  勇気を持って声をあげ、道を開いてください。  歴史に示されるように変革の時代における最大の悲劇は、悪しき人々の暴言や暴力的行為ではなく、善意の人々の無関心と沈黙です。  我々の世代が恥じるのは "闇の子" の言動ではなく、 "光の子" の恐怖と無関心なのです。」

という夕食会会場に流れるキング牧師のスピーチ。  これってまさにミス・デイジーのことだと思うんですよね。  彼女はホークとの25年間の触れ合いの中で、頑固で偏屈ながらも何度も根っこの優しさを見せています。  初めて州を出る旅に出た時に出会った白人の警察官の態度(特にホークに対する)に憤り、ホークの幼馴染のお父さんが黒人ゆえに与えられた暴力の話を聞いて涙したりします。  ちゃんと教育を受ける機会も与えられなかった文盲のホークに文字を教え、「クリスマスにはユダヤ教では贈り物をしないのだけど」と何度も言い訳しながら、自分が教師のときに使っていた文字の練習帳をプレゼントしたりもします。  でも、KiKi が思うに、ミス・デイジーはやっぱり最後まで無邪気な人種差別者だったと思うんですよね。  ホークとの触れ合いの中で、少しずつ少しずつ牙を剥いたような暴言こそ吐かなくなってはいたけれど・・・・・。

まだホークを信頼していなかった頃のシャケ缶横領疑惑事件のエピと言い、映画終盤のキング牧師の夕食会のエピと言い、さらには彼のことを「友達」と呼ぶ直前であってさえも彼が自分のお古の車に乗っていることに何の疑問も感じていないというエピと言い・・・・・。  彼女は自分の中にある、一種の差別意識にはまったく気がついていないんです。  彼女自身がユダヤ人であるというのもそういう意味では絶妙な設定で、アメリカ南部では少数派だったユダヤ人として、必ずしも恵まれていたとはいえない少女時代を送ってきたから、人種差別に対してはそれなりの見識を持っているつもりになっているということもあるんじゃないかと思うんですよね。  でもミス・デイジーは、自分たちユダヤ人がもう既に「すご~く恵まれない人種」ではなくなっていることには気がついていない。  (それでも白人警官に「ユダヤばあさんと黒人じいさんか、いい取り合わせだぜ。」なんて言われちゃうし、ユダヤ教会が何者かに爆破されたりしちゃうんだけど・・・・。)  ましてミス・デイジーの息子のブーリーは成功者の1人だから、彼女がどんなに否定しても彼女はもはや「裕福な白人」の1人なわけだけど、そのことも頑なに認めようとしません。  でもそんな彼女は、彼女自身がどんなに否定しても、ホークにとっては違う世界のすご~く恵まれた人なわけで・・・・・。

だから夕食会へ向かう車の中で「世の中はいい方に変わっているわ。」と他人事のように(いや、実際に他人事なんだけど・・・・・。)さらっと言ってのけ、その言葉を自分よりもさらに虐げられた立場にいるホークがどんな気持ちで聞いているのかには考えも及ばないんですよね。  でも、これはたまたま映画で、モーガン・フリーマンの演技力もあって、ホークの透徹した目を通して見ているから、KiKi もミス・デイジーが無邪気な善意の差別者だと感じることができるけれど、恐らくこれが実世界のことだで自分がミス・デイジーだったら、KiKi は自分自身にも同じ一面があるんじゃないだろうか?と思うんですよね。  いえ、KiKi だけではなく、恐らくは多くの善意の日本人はそうなんじゃないかと・・・・・。  そして皆がそのことに気付かなくて、いつまでもいつまでも善意の差別者であり続けてしまうんじゃないかと・・・・。  そして無関心 & 沈黙を守り続けてしまうのではないかと・・・・・。

一方のホークは黒人に生まれ、まともな教育を受けることができなかったために文字さえ読めないけれど、実はとっても賢い人です。  最初はホークのことを毛嫌いしている、憎まれ口を絶やさないミス・デイジーを相手に一歩も引かず、あれやこれやと口説き落として、結局天地創造と同じ日数でまんまと自分が運転する車に乗せることに成功します。  そしてその後彼はいつでもこの扱いにくい女主人に忠実に尽くすけれど、理不尽な要求にはさりげなく反論することを忘れません。  給与アップの交渉もなかなかスマートです。  でも、彼はつねに引き際を心得ています。  だから、ミス・デイジーと不必要な水掛け論を繰り広げようとはしません。  

結構笑えるエピだったのが、長くミス・デイジーに使えていた給仕係のマンデラが亡くなったあと、ミス・デイジーが自ら台所に立ってチキンを揚げているのにホークが口を出すシーン。  「もっと火を弱くして、チキンがくっつかないように」とまるで小姑のように口を挟んだホークに当然のごとく反論するミス・デイジー。  でもそんな時、ホークは決してこの議論には乗っかりません。  「ま、奥様のチキンですからお好きに・・・・・。」とあっさりと引いちゃいます。  でもここで笑えるのは、ホークがそんな捨て台詞(?)を吐いてその場を立ち去るとミス・デイジーが彼に気付かれないかを気にしながら、そっとホークのアドバイスに従うところ(笑)。  やれやれ・・・、お年寄りなんてこんなものです。

映画の終盤、KiKi にとってとても印象的だったのはもはや自身も運転できなくなってしまったホークが孫娘の運転する車でミス・デイジーとの思い出の家を訪ね、さらにブーリーと共にミス・デイジーが入所している老人ホームを訪ねるという一連のシーン。  文盲だったホークの孫娘が大学で生物学を教えていたり(教育を受ける機会に恵まれるようになった)、ブーリーが運転する車の助手席にホークが座っているというのはインパクトがありました。  確実に彼の暮らし向きはよくなっていることを実感させてくれます。  もちろんホークはブーリーの主人ではないから後部座席には座らせてもらえないけれど、同じ車の助手席に当たり前のように座っている姿には感動を覚えました。  (映画の中盤ではスタンドのトイレにさえ入れなかったのに・・・・・。)  そして、ブーリーが仕事を引退したホークにまるで終身年金かのように未だにペイを支払い続けている関係であることにも驚嘆しました。  う~ん、確かに「世の中はいい方に変わった」のかも・・・・・。

最後の最後、ミス・デイジーが何もわからない状態だったら切ない映画になっちゃうだろうな・・・・・と心配していたのですが、彼らが訪ねたその日はお日柄もよろしく、ミス・デイジーはちゃんとホークのことを認識し、さらに息子のブーリーを邪魔者扱いするほどにホークに親しみを見せます。  そして既に自分ひとりでは全てのことが造作なくできるとはお世辞にも言い難くなってしまった 2人はお互いが何とかやっていることを確認しあって「人生とはそんなもの」と同じ思いを共有します。  ラストで感謝祭のパイをホークが切り分け、ミス・デイジーに食べさせてあげるシーン。  彼女はどんな気持ちだったんだろう??  KiKi には唯一無二の対等な友人に食べさせてもらっている・・・・というよりは、信頼してやまない使用人(乳母のような)に食べさせてもらって安心しきっている子供のように見えました。  多分、あの年齢まで齢を重ねれば、色々なことが浄化されてしまうんだろうな・・・・と。  

25年間という年月をよくある映画のようにテロップで「19xx年」とか「○年後」とかって見せて表現するのではなく、変わっていく車の型式とファッション、そして登場人物のメイクと演技力だけで表現しきった作りにはとってもセンスを感じました。

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