ヒットラー

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ヒットラー 
2002年 アメリカ 監督:クリスチャン・デュゲイ


11ZSZ65858L__SL500_AA140_.jpg  (Amazon)   

1899年オーストリア。  ヒットラー少年は劣等生で、時に父親から体罰を加えられることもあった。  1913年、ウィーンに移住した翌年、第一次世界大戦にドイツ兵として参加し、熾烈な最前線を体験。  敗戦後、「ドイツ労働者党」に入党し、アジテーターとしての才能を発揮、1921年その党名をあらためた「国家社会主義ドイツ労働者党(ナチ党)」の党首に就任。  1923年に起こした反乱で投獄されるも、獄中で「我が闘争」を執筆。  出所後、激しいプロパガンダや遊説によってナチ党を第一政党に押し上げ、首相に任命される。  そして翌1934年、とうとうドイツの大統領に就任するが...。  
  


これって映画かと思っていたのですが、実は TV Drama だったんですね~。  KiKi はこの DVD の存在を「アドルフの画集」を借りたときに知って、(行きつけのレンタル DVD 屋さんで、「アドルフの画集」と並んで置いてあったんです。  当時、「ヒトラー最後の12日間」がロードショーにかかっていて便乗レンタルを狙っていた模様 ^o^ )それ以来ずっと1度は観てみたいと思っていたのがなぜかず~っと貸し出し中で借りることができずにいました。  まあ、お正月早々観るような内容の映画ではないと思ったのですが、この時期を外すといつまた借りられる状態になるかわからないし、2本立て(要するに長い)の作品なのでお正月の暇つぶしにはちょうどいいかもと考えて借りてきました。

全米CBSネットワークが、2003年5月に2夜にわたって放送し大評判となった作品なんだそうで、同年秋の"TV界のアカデミー賞"エミー賞でミニシリーズ作品賞など7部門にノミネートされ、結局ミニシリーズ/TVムービー/スペシャル部門の美術賞と音響編集賞を受賞したのだそうです。  そう言われて見ると確かに映像やカメラワークは本当に素晴らしいです。

さて、この作品のディテイルについてお話しする前に、まずは出演陣についてコメントを少々。  主役のアドルフ・ヒトラーを演じたのがロバート・カーライルなんですが、彼の演技がなかなか素晴らしいです!!  ヒトラーの演説シーンは記録映画などでよく眼にしますが、あの迫力はドイツ語という言語の持つ力も多分にあるのではないかしらと思っていたのが、英語でこれだけの迫力を出すことにまず脱帽です。  さらに、彼が演じるちょっと病的な繊細さはヒトラーという人物、実は器の小さい小心者の独裁者という側面を余すところなく表現していたように感じました。  次の注目パーソンは出番こそ少なかったものの、ヒンデンブルク大統領に扮した名優ピーター・オトゥールです。  やっぱりすごい存在感!!  さらには1度はヒトラーに心酔しかけたものの途中で軌道修正した新聞記者・フリッツ役にマシュー・モディン。  彼はこういう立ち位置の役が本当に良く似合います。  

これだけでもかなり嬉しいところへ持ってきて KiKi にとってさらに、さらに嬉しかったのは、ヒトラーのお母さんに扮していたのがストッカード・チャニング(アビー大統領夫人@ザ・ホワイトハウス)だったのと、ヒットラーが政権を掌握するまでの間に彼を信奉し支えることになるアメリカ帰りの美しい人妻へレナに扮していたのが、ジュリアナ・マルグリース(キャロル・ハサウェイ婦長@ER)だったこと。  ザ・ホワイトハウスと ER は KiKi のお気に入りのTVドラマで、毎回欠かさず観ています。  でもキャロルに会うのはホント久しぶりだったから彼女の初登場シーンでは思わず身を乗り出してしまいました。

さて、物語の方はヒットラーの幼少期から政権獲得までが、どちらかと言うと淡々と描かれています。  ですから、ホロコースト(こちらはちょっぴりその片鱗が伺えますが)やら彼の最期 & 敗戦までは観ることができません。  その代わりと言っては何ですが彼の人格形成に少なからず影響を与えたと思われる幼少期に受けた虐待(これって事実なんだろうか?)やら、家庭内不和などが冒頭で簡単に描かれます。  どちらかと言うと史実(というか年表)に基づき、彼が歩んできた道のりをそのまま描き、そこに彼の私生活を絡めて物語は進んでいきます。  そして、彼の歪んだ人格形成のベースにあったものを個人の資質だけによるものではなく、不況や人種差別といった普遍的な社会問題にもよると捉え、あの悲惨な歴史を反省するという観点で描かれた作品だと思います。

 

 

KiKi は以前からヒットラーの思想を形作った核にあるものは何だったのか、それは自分も陥る可能性の高いものなのかどうかにとても興味があったのですが、「アドルフの画集」とこの作品を観て思うのは、もちろん彼個人の資質に負う部分も少なからずあるとは思うけれど、「人」を「怪物」に変えてしまうのは個人の素養だけではないのではないかしら・・・・ということです。  「人」と「怪物」を分けるきっかけとなるものは「貧困」であり「搾取」であり「暴力」なのではないかしら。  そしてそれらによって生まれる「被害者意識」「病的な羨望」と言った負の感情なのではないかと・・・・。  人は誰しも常に「最低限の安心」を求めているような気がします。  仮にどんなに「刺激」を求める人であったとしても、ベースには「最低限の安心」っていうやつがあって、それさえ満たされない状態で「刺激」を求める人というのは少ないような気がします。  「刺激」は持てる者の贅沢品。 

もしもあの時代、第一大戦後のヴェルサイユ条約がなかったら、そして天文学的数字とまで言われた戦争賠償責任がドイツに課せられていなかったら・・・・・。  もしも終戦後のドイツ国民の生活が生きていくのに必要な最低限の生活物資にさえ恵まれていたならば・・・・・。  あそこまで人々は彼を熱狂的には迎え入れなかった、そんな気がします。

KiKi は随分昔に彼の著書「我が闘争」を読んでみた事があるのですが、はっきり言って彼の言いたいことや、彼の哲学みたいなものがよく分かりませんでした。  いや、わからないというのとはちょっと違うなぁ。  言っていることはわかるんだけど、素直に理解できないと言うか納得できないと言うか・・・・。  結構ご都合主義的な文章でもあるし・・・・。  でも、KiKi がよく分からないと感じた理由の一端は KiKi 自身が彼らが生きていた時代に感じていたのと同種の閉塞感やら貧しさやらとは無縁だから・・・・ということもあるような、そんな気がします。

映画の中でマシュー・ディモン演じる新聞記者フリッツがヒットラーを評して言います。  彼の根底にあるものは恐怖。  そして彼は人々の恐怖と憎悪を利用していると。  でも人類は歴史の中でずっとその2つに翻弄されてきているのもまた事実。  ヒットラーだけじゃない。  近くは例のイラク戦争の大量破壊兵器だって同じこと。  今のアメリカ人がかつてのドイツ人とまったく同じ道を歩まないのは、過去への反省・・・・というのもあるけれど、それより何より、今のアメリカ人は当時のドイツ人より裕福だから、食べるのに困っていないから、国力が衰えていないから・・・・とも言えるような気がします。

KiKi はこれまで色々な歴史書を読み、ヒットラーの著作にも挑戦し(恐ろしいほど眠くなる本だった)、この作品やその他ヒットラーを扱っている様々な作品を読んだり観たりしてきて思うのですが、とどのつまり彼は結局最初から最期まで大いなる敗者だったんじゃないかしら。  もちろん政権を掌握し、彼が握った権力によって数多くの失われなくてもよかったはずの命が失われたのですから、そういう意味では「敗者」の一言で片付けてしまったら失われた命に申し訳ないのですが・・・・。  でも、彼はずっと自分には生まれながらには与えられていなかったものを執拗に追い求め、自分なりにどんなに努力しても得られないものを欲しがり、そしてそれらを得られないことによる敗北感・挫折感・焦燥感・そして持てるものへの憎悪を自分自身の中でどんどん増幅させ、そこに正義という言葉のスパイスをまぶして自己陶酔していった、そんな人物に見えます。  そして、ある意味では彼は当時のドイツ社会に利用され(何と言っても有能なアジテーターだったし)、祭り上げられ、そして自分の個人的な成功を錯覚してしまうほどまでに救いようのない敗者だったのではないかと・・・・。  

「アドルフの画集」を観たときにも感じたことですが、昨今多くの人が口にする「勝ち組」「負け組」という言葉があるけれど、これって人種主義的世界観に相通じるものがあるような気がします。  自分自身を「負け組」と嘯き、笑いのネタにしているうちはまだいい。  でも、今の日本人がそうできているのは私たちが食べるのに困っていないから・・・・。  とりあえず雨露を凌げているから・・・・。  戦争に駆り出される心配がないから・・・・にすぎなくて、一皮向けば(と言うか、憎悪をこめてその気持ちを増幅していけば)「自分が本来手にするべきものを独占している(もしくは搾取している)ヤツらから取り返したい!」という思いと紙一重のところにあるような、そんな気がします。


 

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このページは、KiKi (Brunnhilde)が2007年10月10日 22:23に書いたブログ記事です。

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