ローマ人の物語 ローマは一日にして成らず 塩野七生

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知力では、ギリシア人に劣り、体力では、ケルト(ガリア)やゲルマンの人々に劣り、技術力では、エトルリア人に劣り、経済力では、カルタゴ人に劣るのが、自分たちローマ人であると(中略)ローマ人自らが認めていた。  それなのに、なぜローマ人だけが、あれほどの大を成すことができたのか。  一大文明圏を築きあげ、それを長期にわたって維持することができたのか。(中略) あなたも考えてほしい。  「なぜ、ローマ人だけが」と。  (文庫本_第1巻帯より)

ローマ人の真のアイデンティティを求めるとすれば、それは開放性ではなかったか。  軍事力や建設面での業績は、それを確実にするためになされた表面にあらわれた現象であって、それだからこそ、ローマ戦士の軍靴の響きはとうの昔に消え、白亜に輝いた建造物の数々も瓦礫の山と化した現代になってなお、人々は遠い昔のローマを、憧れと敬意の眼差しで眺めるのをやめないのではないだろうか。  (文庫本_第2巻帯より)

 

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ローマの誕生からポエニ戦争の少し前までを扱ったこの2冊。  この本を KiKi が読んでみる気になったのは上記引用した第1巻の帯に書かれている著者本人の言葉に強烈に好奇心がくすぐられたからでした。  「確かに、なぜローマ人だけが・・・・?」と。

 

読了後の今も、正直なところ KiKi には「なぜローマ人だけが?」の答えは見えてきていません。  確かにローマ人の開放性があれだけの勢力範囲を確立するためには吉と働いたのだろうけれど・・・・。  そして、ローマ人の現状分析力(問題抽出能力とそれを解決するうえでの優先順位をつける能力)も高かったのだろうけれど・・・・・。 


歴史は必然によって進展するという考えが真理であると同じくらいに,歴史は偶然のつみ重ねであるとする考え方も真理になるのだ (本書より)


KiKi は別のときにもよく感じるのですが、傍目には「偶然のつみ重ね」もしくは「幸運」に見えることでも、「偶然」もしくは「幸運」を発展に結びつける力というのは確固として別にあるように感じるんですよね。  いわゆる「幸運の尻尾を掴む力」というか・・・・。  恐らくは古代ローマ人はその力に長けていたのではないかと感じました。  そしてそれは彼らが発生当初から優位に立つ民族ではなかったからこそ、育まれた力だったのではないかと・・・・・。

それが端的に表れているのが「敗戦の将を罰しない」という方針だったのではないかと・・・・。  これって現代まで解決をみていない「戦争責任」の考え方に繋がっているように思うのですが、「責任」という言葉はある意味ですご~く曖昧な部分があると思うんですよね。  もちろん「責任感を持つ」ということはすごく大事なことだけど、私たちが往々にして犯しやすい過ちは、誰か一人に責任転嫁してその他大勢の人たちに言い訳の機会を与え、そして時が過ぎるのを亀のように首をすくめてじっと待つ・・・・という状況。  そしてそんな姿勢は傷つく人が少なくて、自信喪失みたいな負の状況を生みにくいという利点はあるものの、「進歩」「発展」という観点に立ったときには、学ぶまでに時間がかかるという弊害になるという部分があるように感じます。


ローマ人には、敗北からは必ず何かを学び、それをもとに既成の概念に囚われないやり方によって自分自身を改良し、そのことによって再び起ちあがる性向があった。  敗けっぷりが、良かったからではない。  敗けっぷりに、良いも悪いもない。  敗北は、敗北であるだけだ。  重要なのは、その敗北からどのようにして起ちあがったか、である。  (本文より)


う~ん、KiKi のつぼにはまる表現ですね~、これは。  特に、太字にした部分。  往々にしてこういう表現をすると「冷たい」とか「思いやりに欠ける」とか言われちゃうことがあるけれど、だからこそ口語でこういう表現を使うことには(特に現代社会で)リスクがあるけれど、こういう考え方ができるということが「現実的」ということなんだと思います。  そして、ローマ人がこんな風に考えられる民族だったのだとしたら、それは彼らが大切にしているものが本当の意味での「名誉」であって、「メンツ」ではなかったからなんだと思います。    

いわゆる「リスク管理」みたいな概念って一度は痛い目にあったほうが培われるものだと思います。  子供に「痛い思いをすること」を一度経験させる(怪我をしない程度に)ことにより覚えさせるのと同じ・・・・。  もちろん「時が癒す」=「忘却」という非常に有難い問題の処し方もあるとは思うけれど、そこにスピーディーな進歩は望みにくいような気がします。
  
恐らくは古代ローマの人たちは現代の私たちよりも生きること、生き抜くことに必死だったんだと思います。  悠長に構えて一歩一歩進歩していくなんていうことが許されるような時代ではなかったんだろうと。  


それにしても・・・・・
彼女の作品を読むといつも感じることなのですが、彼女は物事に対峙したときに常に「なぜ? なぜ? なぜ?」と掘り下げていくタイプの人なんだろうなと思います。  ひょっとしたら彼女の作品の記述のどこかには、いわゆる「間違い」みたいなものもあるのかもしれないけれど、彼女のベースにあるのは「人は理由もなしに行動するものではない」という信念のようなものじゃないかと感じます。  そして、KiKi もどちらかというとそういうタイプ(・・・・というか、そういう面での好奇心が強い)なので、彼女の作品のファンなんだろうな・・・・と。

最後に・・・・
どんな国もいわゆる「建国の物語」みたいなものがあって、その世界は歴史が深い国であればあるほど、神話的な物語になりがちだけど、ローマの場合の「狼に育てられたロムルス、レムス兄弟」という物語には、何となく意味があるように感じます。  KiKi の大好きなワーグナーの「ニーベルングの指環」の「ヴァルキューレ」に出てくるジークムント(ジークフリートのお父さん)を代表とするヴォルズング族という名前も「狼」と関係あるし、北欧神話には意味深な存在として「狼」が登場するし、ローマ神話に出てくる戦いの神マルス(March の語源)の聖獣は「狼」だし・・・・。  古代人にとっての「狼」ってどんな存在だったのか非常に興味深いところです ^o^

 

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このページは、KiKi (Brunnhilde)が2007年10月13日 19:40に書いたブログ記事です。

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