カサブランカ

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カサブランカ
1942年 アメリカ 監督:マイケル・カーチス


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 「君の瞳に乾杯」をはじめ、数々の名セリフと名場面で、いまもハリウッドを代表する作品として、世界中にファンを持つ「カサブランカ」。

老練マイケル・カーチス監督が描いたラブ・ストーリー。  1943年度のアカデミー賞では、作品賞・監督賞・脚本賞を受賞。  主題歌「時のすぎゆくまま」は、今も歌い継がれている名曲である。
 
  


NHK BS で過去のアカデミー賞受賞作品を連日放映する・・・・・ということで、毎日のように番宣を見せられているうちに、とうとうこの映画の Review に手を出してしまうことになりました。  この映画に関しては KiKi はちょっと複雑な感想を持っているんですよね~。  初めてこの映画を観た20代の頃には、この映画の持つロマンチック&エキゾチックな雰囲気にしてやられ、音楽とバーグマンの美しさにうっとりとするばかりだった KiKi なのですが、DVD を購入して何度も見直しているうちに、ちょっと違う感想を持つようになりました。  

確かにボギーはカッコイイ。  バーグマンもこのうえなく美しい。  主題歌  A Time Goes By もメロウだし、ライナーノーツにも書いてあるようにオシャレな名セリフもふんだんにあるすごい映画だと思います。  でも、一歩ひいて冷静になってみると「戦時下のプロパガンダ映画色」もかなり濃厚で、ちょっとそれが鼻についちゃったりもするんですよね~。


因みに Wikipedia の解説がなかなかいいと思うのでちょっと引用しておきたいと思います。

"第二次世界大戦中の1942年に、当時太平洋戦線、ヨーロッパ戦線ともに劣勢であったアメリカの国威発揚のための国策映画として製作された。  当時ナチス・ドイツに占領されていたフランスと自由フランスを支持し、ナチス・ドイツとその傀儡政権であったヴィシー政権に対する憎悪を掻き立てる内容になっているのもその為である。
なお、ポール・ヘンリード演ずる反ナチ抵抗運動の指導者、ヴィクター・ラズロのモデルは、実在の汎ヨーロッパ提唱者で、「EUの父」と呼ばれるリヒャルト・クーデンホーフ・カレルギーであると言われている。"


 

だいたい映画の出だしから「ラ・マルセイエーズ」を高らかに鳴らしていて幕の時もまた「ラ・マルセイエーズ」なんですよね、この映画。  そして映画の中盤でも何度も何度も繰り返し流れる「ラ・マルセイエーズ」。  「自由・平等・博愛」を謳ったフランス革命の時に一躍注目されて、フランス国歌にまでなって、まるで「自由のテーマソング」みたいな扱いをされがちなこの「ラ・マルセイエーズ」をこれでもかっていうほど繰り返す必要がどうしてあるんだろう・・・・・とか思っちゃうわけです。  (答えは国威発揚のための国策映画だから・・・・・ということだと思うんだけどね 笑)。

で、カサブランカっていうのは本来アフリカのはずじゃないですか。  当時モロッコが仏領だったからまあ仕方ないといえば仕方ないんだけど、人様の国に勝手に押し入って自国領にしちゃっている「連合国側の強い国々」がそんな状況を省みることなく「自由」を旗印にして、「悲恋」で人々の涙を誘うのはいかがなものか・・・・とか思ってしまわないでもないわけです。 ^^;  ボギー演じるリックだって屈折したヒーロー、弱者の味方という描き方をしているけれど、人の国に土足で入っていって金儲けをしているアメリカ人という側面もあるわけですし・・・・。  

まあ、「自由」っていうのは耳障りのいい言葉だし、理念としては素晴らしいものだと思うけれど、この映画のように、悪=ドイツ 善=連合国 というプロトタイプを強調する描写にちょっと引いてしまうようになったのはいつの頃からだろう・・・・。  あ、別に KiKi はヒットラーの崇拝者でもなければナチス賛同者でもありませんが・・・・。

戦時中という特殊な状況下、ましてナチスドイツの迫害を逃れて自由の国・アメリカを目指す難民(というと言い過ぎかな?)の物語だから、愛国心を鼓舞するには絶好の舞台設定だけど、リックの店でドイツ兵士達が「ラインの狩」を唄うのに対抗して、ラズロが「ラ・マルセイエーズ」を唄いだし、全員総立ちの合唱になる場面は初見の時にはちょっと感動したりもしたけれど、何度も観ているうちにこのメロドラマの中に必ずしも必要ではないこのシーンを敢えて挿入したそのこと自体にある種の「力」の存在を感じてしまいます。  まあ、当時は検閲なんかもあったはずだから、仕方ないのかもしれませんが・・・・・。


そんな風な目線でこの映画を観始めると正直なところ、「ボギ~ 、 かっこいいなぁ」 とか 「バーグマン 、 素敵~」とばかりは言っていられないような気分に陥るのです。

ただ、そんな懐疑心にも似たような感想を抱きつつも、この映画に魅せられてしまうのは、やはり名セリフと音楽の力が大きいように思います。  この時代の映画の字幕って本当に素晴らしいと思うんですよね。  最近では映画の字幕論争がなかなか過激で、積極的に物申している方たちの気持ちもわからないではないのですが、でもね、字数制限のある中でその物語の雰囲気を保ちつつ、半端ではなく美しい日本語をあてるという作業は、ある意味ではすご~い知性を要求される作業だと思うんですよね。  直訳すればいいというものではないと思うし・・・・・。  昨今のようにカタカナを並べればいいというものでもないとも思ったりするわけです。  (もっとも字幕によってセリフの意味が違っちゃったり、登場人物の性格が変わっちゃったり、言葉を切り詰めすぎて作品の持つ情緒が台無し・・・・・なんていう風になってしまう場合は問題あると思うけれど・・・・・。)

ず~っと昔、KiKi が英文学部の学生だった頃、とある戯曲の和訳・・・・というか解釈をゼミで論じ合っていたとき、ある登場人物の "Maybe" というセリフについて教授が例として挙げられた解釈が今でも KiKi の心の片隅に残っています。  状況としてはとある男性がとある女性(逆だったかもしれない)に「明日会える?」と聞いたのに対する返答がこの "Maybe" なんだけど、そのゼミの教授はこの "Maybe" に「気が向いたらね。」という訳を与えました。  Maybe なんていうのはそんなに難しい英語じゃないから辞書をひくまでもなく「多分ね。」というような解釈でさらっと読み流していた KiKi だったのですが、教授のこの「気が向いたらね。」を心の中で反芻してみると、この "Maybe" の訳はそれ以外はありえないような、そんな気分になりました。  何て言ったらいいんだろう、描かれている登場人物のちょっとシニカルな性格を考えると「多分ね。」では充分ではない・・・・とでも言ったらいいでしょうか。  

この映画の名台詞としても有名な「君の瞳に乾杯!」は英語では "Here's looking at you, kid" なんだけど、この英語にこの「君の瞳に乾杯!」をつけたのは本当に素晴らしいと思います。  ボギーをボギーたらしめている(ここでは敢えてリックとは言いません)セリフですよね。  ボギーのキザ度をさらに盛り上げている「そんな昔のことは覚えてないね。」 ( " That's so long ago, I don't remember" ) とか「そんな先のことはわからない。」 ( "I never make plans that far ahead." ) の訳も「そんな」と「否定文」の組み合わせを重ねてリズム感を出しつつも、言葉をきりっと切り詰めた素晴らしい訳だと思います。

まあ、文句(?)をいっぱい書いたけれど、それでも時折観たくなる映画であることも否定できず、そういう意味では KiKi もまんまと国策に踊らされる人間で、基本的にはこの映画が嫌いではないんだろうなぁ・・・・・。  まあ、一応この映画に惹かれる理由は「キラ星のごとく出てくる名セリフを聞きたいから」とか「"A Time Goes By" が聴きたいから」なんていう言い訳を用意しつつ・・・・・ではありますが ^^;

そうそう、書き忘れそうになっちゃったけれど、 KiKi はこの映画の中のルノー(警察署長さん)が結構好きです。  ビザ発給をエサに女漁りをする「女の敵」みたいなイヤな奴 あ~んど 小人物なんだけど、ドイツ軍将校シュトラッサ-の命を受けてリックの店を閉店させなくちゃいけない時、その大義名分を「自分で考えろ」と言われて、「店の奥でやっている闇賭博はけしからん。」という難癖をつけることにしたこの署長さん。  でも実は自分自身もその「けしからん闇賭博」を楽しんでいて、「おめでとうございます。  勝ちましたよ。」と渡される戦利金を受け取りながら悪びれもせず "Thank you" と言うあたり、人間臭さが滲み出ています。

そんな人だからこそリックと「美しき友情」を育むことができちゃうんですよね。(笑)

 

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