ぼくの伯父さん

| コメント(0) | トラックバック(0)

ぼくの伯父さん
1958年 フランス・イタリア 監督・脚本:ジャック・タチ


41JERHPGX1L__SL500_AA240_.jpg  (Amazon)   
 

超モダンな邸宅に暮らす工場の社長・アルペル氏。  その息子のジェラールは堅苦しいうちにいるよりも、下町に住む無職の伯父ユロ氏と遊ぶのが大好き。  アルペル夫妻はきままなユロ氏に結婚相手を紹介させたり、就職させようとするが...。
                                 Amazon サイトより転載  
  


この映画はオシャレですね~。  たまたま衛星映画劇場でやっていたのでな~んとなく観ていたのですが、こういう映画を KiKi は大好きです。  とにかく「あざとさ」がないのがいい!!  一応コメディなんだけど、「ワッハッハ」と笑わせるようなコメディじゃなくて、思わず「クスッ」と笑ってその笑いを周りに気づかれちゃったんじゃないかとキョロキョロ見回してしまうような、とってもナイーブな笑いなのが KiKi のツボです。  こういうのを「品がいい笑い」って言うんだろうなぁ~と、映画そのものの感想なんかどうでもよくて、その幸福感に満たされちゃうような、そんな映画です。

そもそも最初のクレジットがいいんですよね。  騒々しい工事現場みたいなところに金属製と思しきプレートが立ち並んでいて、そこに役者さんやら監督さんやらの名前がずら~っと並んでいて・・・・・。  映画本編の描写の中には文明だとか近代化に対する風刺みたいな部分もあるんだけど、それでも自分はその文明社会の中で生きている人間なんだというある種「あるがままを受け入れる」心の広さみたいなもの(決して諦めではない)があのオープニングにはあるような気がして、不思議な感覚に囚われました。  で、それに続くのが古き良き時代の街並み(しかも下町?) & 手書きのいたづら書きで映画タイトル。  そして何とも軽快なテーマ・ソングに乗って街中を走り回る犬たち。  そんな風景に言ってみれば「原風景への郷愁」みたいなものが感じられます。

 

冒頭で買い物籠からのぞいている魚の頭に向かって、闘争心をかきたてられている犬の描写も可笑しいし、ユロ伯父さんが同じアパートに住む女の子から飴を貰って、そのやり場に困る何ともとぼけた表情も最高です。  ユロ伯父さんを観ているとチャップリンのようでもあり、Mr. ビーンのようでもあり・・・・・。  でも、そのどちらでもなくてほとんど「毒」というものを持たないこの伯父さんはそれだけで魅力的 ア~ンド とっても身近なキャラに感じられます。  セリフらしいセリフは1つもなくて、無声映画のようでもありパントマイムのようでもあり。  自分の世界を確立して飄々と生きている伯父さんは子供じゃなくてもついつい気になって仕方のない好人物(でも、できれば自分の周りにはあまりいて欲しくない・・・・^^; )なんですよね~(笑)。

ストーリーらしいストーリーもほとんどないんだけど、全編を通じて映画を観ている・・・・・というよりは、エスプリの効いた詩の朗読を聴いているような感じがしてくるんですよ。  (でも言葉じゃなくて、映像の詩なんだけど・・・・。)  2つの相反する立場にいる者の対比がとっても小粋な作品で、方やアルベル氏が住む邸宅はオートメ化がすすんだモダンな家なのに対し、方やユロ氏のアパートはメカとは縁のない階段を何段もあがっていくボロアパート(でも風情がある)。  方や体裁やら見栄を取り繕った世界に生きるアルベル夫妻に対し、方や現実社会には対応しきれない子供のまま大人になってしまったようなユロ伯父さん。  どちらもあまりにも極端なんだけど、目の前で起こる様々なできごとが極端であるがゆえに「ほどほどっていいよね。」と素直に思わせてくれるんですよね~。  

映画の冒頭と映画の最後が犬たちっていうのもすご~くオシャレだと思うんですよ。  野良犬の中に1匹だけ混じってアルベル家の飼い犬がいるんだけど、あれってアルベル氏の息子のジェラール(ひいては現代社会に生きる私たち)の象徴みたいなものだと思うんですよね。  お金があって、豪奢な生活を送っている自分の家や自分の家族のことを決して嫌いではないんだけど、でも居心地の悪さを感じている彼の心の代弁者が野良犬たちと街中を走り回っているあの犬だと思うんですよね。  ジェラール少年と伯父さんとの絡みは案外少ないんだけど、彼が子供の心を子供と同じ目線で理解してくれるこの伯父さんのことが大好きだっていうことは、タイトルが「ぼくの伯父さん」というタイトルだから・・・・・というだけではなく、映画のそこかしこから漂ってくるんですよね。

でもあんな伯父さんが実際に自分の周りにいたらかなり鬱陶しいだろうし、同じ会社でデスクを並べていたとしたら、自分の部下だったとしたらすご~くはた迷惑な奴だなぁと感じちゃうと思うんですよね。  映画という虚構の世界の中の住人だからあの伯父さんの魅力に気がついてあげられるんだけど・・・・・。  だからそのユロ伯父さんを地方に飛ばしちゃう経営者たるアルベル氏の想いにも思いっきり共感できるんです(笑)。  でもね、見栄と意地にまみれているかに見えなくもないこのアルベル氏が、映画のラストでユロ氏を見送る際にジェラール少年と心を通わせるシーンがあって、彼も決して悪い奴でも冷たい奴でもないことがわかるのがすご~く心地いいんですよね。  普段は「大人の事情」の中で生きているパパにだって少年の心がないわけじゃない・・・・・・。  そこまでの描写がどちらかというと正反対のものを対比させて「現代化」とか「文明」とか「消費社会生活」への風刺に満ちているのに、この最後のシーンで一挙に同化させちゃって「でも一皮剥いたら皆同じ~」と言っているようで、今の自分を肯定してもらったかのような安心感があるんですよ。

KiKi も日々の生活の中で、どうしても今自分が生きている時代だとか風潮、文化に否定的な目線を持ちがちなんだけど、この映画は最後の最後に「でも、そんな時代に生きている自分を丸ごと認めて、自分が生きている時代・環境に愛着を持たなくちゃね♪」と言ってくれているようなそんな気がしました。  旅立つユロ伯父さんを乗せた車が走りすぎる街並みは再開発(?)によって取り壊されていく、過去のものとなりつつある風景なんですよね。  それに郷愁を覚えるのもいい。  でも、そんな変わっていく街並みを相も変わらず走り回っている犬たちの姿で迎えるエンディングを見ていると、どんどん変わっていく街の中で明日もあさっても1年後もこの犬たちは走り回っていてくれるんじゃないか・・・・・そんな風に感じ、環境がどんな風に変わろうとも「原風景を大切に思う心を持ちながら、その変わっていく景色の中で些細なことに一喜一憂しながら生きていくさもない人生」を愛しく思える自分に気がつかされる・・・・・そんな映画だと思いました。

おフランスの映画はどちらかというと苦手な KiKi だったのですが、この映画にはどっぷりと嵌ってしまったようです(笑)。  ネットなどで調べてみるとこの「ぼくの伯父さん」には他にもシリーズ作があるみたいですね。  いずれそれらの作品も是非観てみたいと思いました。

 

 

トラックバック(0)

トラックバックURL: http://poco-a-poco.chu.jp/mt/mt-tb.cgi/135

コメントする

2015年2月

1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28

Current Moon

CURRENT MOON

東京のお天気


山小舎のお天気


Booklog



ブクログ

アーカイブ

ウェブページ

Powered by Movable Type 4.261

TrackbackPeople

クラシック・ピープルの Trackback People Site


チェロ ラヴァーズの Trackback People Site


Piano~ぴあの Trackback People Site


ピアノオススメ教本の Trackback People Site


ピアノ教室の Trackback People Site


Book Love Peopleの Trackback People Site


本好きPeople・ぴーぷるの Trackback People Site


今日読んだ本の Trackback People Site


ファンタジーが好き♪の Trackback People Site


この絵本がすごい!の Tackback People Site


児童書大好き♪の Trackback People Site


ハヤカワepi文庫の Trackback People Site


岩波少年文庫応援団の Trackback People Site


薪ストーブの Trackback People Site


週末は田舎暮らしの Trackback People Site


野菜育てPeopleの Trackback People Site


ガーデニングの Trackback People Site


パッチワークキルトの Trackback People Site


あなたの訪問は?


日めくりカレンダー


Real Time News


カテゴリ

ノルンはいくつ?

本が好き!


読書メーター

KiKiさんの読書メーター
KiKiさんの読書メーター

最近読んだ本

KiKiの最近読んだ本

今読んでいる本

KiKiの今読んでる本

読了目標





今やってるゲーム

KiKiの今やってるゲーム

このブログ記事について

このページは、KiKi (Brunnhilde)が2007年12月10日 22:40に書いたブログ記事です。

ひとつ前のブログ記事は「カストラート」です。

次のブログ記事は「光文社古典新訳文庫の Index」です。

最近のコンテンツはインデックスページで見られます。過去に書かれたものはアーカイブのページで見られます。

高速運賃





Edita

ブロガー(ブログ)交流空間 エディタコミュニティ

名言黒板


作家別タグ