ローマ人の物語 勝者の混迷 塩野七生

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ティベリウスとガイウスのグラックス兄弟は、兄が7ヶ月、弟は2年の実働期間しかもてなかったにしても、そしてその間に実行された改革のほぼすべてが無に帰してしまったにしても、成長一路であった時代を終って新時代に入ったローマにとって、最初の道標、つまり一里塚を打ち立てたのである。  これが彼らの、歴史上の存在理由である。  なぜなら、ローマ人も紆余曲折はしながらも、結局は兄弟の立てた道標の示す道を行くことになるのだから。  (文庫本_第6巻帯より)

ルキウス・コルネリウス・スッラは、「元老院体制」としてもよいローマ特有の共和制という「革袋」を、懸命に修繕しようと努めたのである。  あちこちのほころびもただ単に古くなったがゆえであり、丈夫な革きれをあてて補強した革袋の中には、新しい葡萄酒を入れれば、まだ充分に使用可能であると信じていたのだった。 (中略)  「革袋」はもはや捨てるしかなく、捨てて新しいものを創り出すしかないという考えは、彼らの理解を越えていたのである。  (文庫本_第7巻帯より)

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世界史の授業を受けていた頃、ローマ史の中で「ポエニ戦争」と「カエサル」とその後のアウグストゥスから始まる帝政と五賢帝の時代だけはそこそこちゃんと勉強した自負もあり、そこそこどんなお話も「そうそう、こういう時代だと習ったっけ・・・・。」というような記憶があるのですが、「ポエニ戦争後」から「カエサル登場」までの時代に関することに関してはまったく記憶の欠片にありません。  おおかたその時代を扱っていた授業の時は気を失っていたか、友達に代返を頼んでクラブの部室に篭っていたか、はたまた思春期に入ったばかりで気になる異性のことで頭がいっぱいだったのか、のいずれかであろうと思われます ^^;  

本当であれば「習ってないよ!」と嘯きたいところなんですけど、今 KiKi の手元にある山川出版の参考書(詳説 世界史研究 2003年第11刷)を見る限りでは「内乱の一世紀」という標題で約1ページが割かれているのできっと授業でも何らかの説明があったことでしょう。

で、塩野さんのタイトルが「勝者の混迷」で山川の参考書のタイトルが「内乱の一世紀」ですから、ゴタゴタ、グチャグチャ、斬った張ったのハチャメチャな時代であったこと間違いなしです。  と言うことで、安定成長の時代よりはこういうドロドロした時代に興味が出てきた最近の KiKi にとっては楽しみなシリーズに突入です。

文庫本で2冊のこのシリーズ、1冊目はグラックス兄弟の悲劇と主にマリウスの時代を、2冊目はマリウスとどことなく似ているところもありながら、でも実態はおそらく相反する個性を持っていたと考えられるスッラの時代とそれに続くポンペイウスの時代を扱っています。

う~ん、どんな人たちで何をしたのかはまったく記憶にないけれど、上記の名前だけを見ると、どこかで聞き覚えのある名前ばかり・・・・。  っていうことは、やっぱり受験勉強の丸暗記では何か覚えたことがあるんだろうなぁ・・・・。

 

 

この本の扉に次のようなハンニバルの言葉が書かれていました。

 

いかなる強大国といえども、長期にわたって安泰でありつづけることはできない。  国外には敵をもたなくなっても、国内に敵をもつようになる。  外からの敵は寄せつけない頑健そのものの肉体でも、身体の内部の疾患に、肉体の成長に従いていけなかったがゆえの内臓疾患に、苦しまされることがあるのに似ている。
(リヴィウス著『ローマ史』より)

 

苦しかったハンニバル戦争に勝ち抜き、強敵カルタゴを滅亡させ、地中海世界の覇者となったローマ。  本来であれば繁栄を謳歌できるはずだったローマが蝕まれていった内部疾患の実態とは何だったのか、そしてそんな内部疾患を克服し、さらに大きなローマ帝国を築いていくことができたのは何故か、とても興味深い時代です。

扉に書かれたハンニバルの言葉だけを読むと、我が祖国日本の名著、「平家物語」の冒頭の一節になっていってもおかしくなさそうなのに・・・・。

 

祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり。
沙羅双樹の花の色、盛者必衰の理をあらわす。
驕れる者久しからず、ただ春の夜の夢の如し。
猛き人もついに滅びぬ、ひとへに風の前の塵に同じ。

 

まずは、ローマの内部疾患です。  ここはたまたま昨晩放映されていたTBSの番組「ローマ1000年史」にお誂え向きのキーワードが出ていたのでそれを借用させていただきます。^^;  内部疾患のカルテを見ると以下の文字が躍っています。  因みにコレは今朝の朝刊からの抜粋ではありませんので、悪しからず・・・・。

利権集団    政治腐敗    格差社会

長引く戦争の担い手であったローマ軍の構成員、自営小作農の戦死や戦争参加による土地の荒廃によって生まれた無産市民階級(無産市民には兵役の義務なし)、自営小作農から買い上げた土地で大規模農園を営むようになりますます富んでいく貴族階級、そして地中海の覇者として貿易・通商で富を蓄えていく新興階級である騎士階級(騎士は騎士でも中世の騎士とは異なり上層市民ほどの意味)の台頭。  大きな帝国を抱え、ますます強力化していく必要性だけは目に見えているのに、担い手を失いつつある正規ローマ軍。

この危機的状況をいち早く察知し、何とか梃入れをと考えたのがグラックス兄弟の兄、ティベリウスでしたが、彼が発案した「農地法」は既得権益を守りたい利権集団にとっては歓迎できない法案であり、その当時の勝ち組 vs. 負け組の政治理念争いの中で殺害されてしまいます。  兄の遺志を継いだ弟ガイウスも結果として兄同様に志半ばで殺害され、ローマ社会の貧富の差は増大するばかり、正規ローマ軍の弱体化は進むばかり・・・・。

そこに登場したのが下層平民出身のマリウスですが、彼はローマ軍の梃入れにこそ成功したものの、肝心の社会不安(格差社会)には手をつけずじまい。  そうこうしているうちにマリウスとは立場を異にしつつも、どこか似ているところもあるスッラが登場し、この二人はある意味交互に権力を握っては相手の派閥を殺しあい。  いやはやホントはちゃめちゃです。

国内で内乱が起これば、国外でも問題発生でローマ市民権を持たない同盟諸国の反乱が勃発。  それに乗じて東方のポントス王ミトリダテス6世が反ローマの態度を表明。  国力が弱まったローマの実情に乗じて海賊の台頭。  さらには国内で剣闘士スパルタクスがリードした反乱が勃発・・・・・と、このまま地中海の覇者ローマ滅亡・・・・となっても不思議ではない状態に陥ります。 

そこに彗星のように現れた救世主もどき、常勝将軍のポンペイウスの登場。

とまあ、目まぐるしい時代を文庫本2冊に収めてしまった塩野女史なんですが、実はこの巻、KiKi は何となく不満なんですよね~。  この後に続くのが「ユリウス・カエサル」シリーズで気持ちがそっちへいっちゃっているのか、はたまたハンニバルやカエサルと比較して彼女の執筆準備の資料の分量が圧倒的に足りないのか、はたまた彼女だけではなく歴史も、ローマも、(ついでに KiKi も)誰もが次の英雄の登場をひたすら待ち焦がれているので、そんな気持ちが表われちゃっているのかはよくわからないのですが、何となく気忙しい「混迷の時代」の描写なんですよね~。   

 

 

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このページは、KiKi (Brunnhilde)が2008年1月 4日 12:13に書いたブログ記事です。

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