魔女の宅急便

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魔女の宅急便
1989年 日本 プロデュース/脚本/監督:宮崎駿


51MBVKZ1ZDL__SL500_AA240_.jpg  (Amazon)   

おちこんだりもしたけれど、私はげんきです。

魔女の子は13歳になると、一人前の魔女になるために、一年間の修行に出なければなりません。  黒猫のジジと連れだって、海辺の街コリコにやってきた13歳の魔女キキ。  初めて訪れた大都会で、様々な出来事や人々とのふれあいの中で、孤独や挫折を経験しながら成長してゆきます。 
  

KiKi が宮崎アニメの中でもっとも好きな作品がこの「魔女の宅急便」です。  先日、「耳をすませば」の Review を書いていたら、無性にこの映画が観たくなってしまったので、早速観てみました。  独りの女の子の成長物語 & 人は自分ひとりだけでいきているわけではない & 自分に自信を持とう ということ以上には余計な下手に深遠なメッセージがないこの作品。  そのシンプルさが何よりも KiKi にとっては心地よいです。  やっぱりアニメにはあまり難解で複雑なテーマがあってはいけません! (って言うのは KiKi の手前勝手なアニメ論ですが・・・ ^^; )

この映画、主人公が魔女だし、テーマソングはユーミンだし、登場人物は善人ばかりだし(強いて悪役と呼ぶ人間を探すとしたら、せっかくのおばあちゃんの心づくしのお料理を「私、嫌いなのよね、これ。」と愛想もへったくりもなく言ってのけたちょっとタカビーな女の子ぐらい??)、セル DVD のパッケージはピンクだし(笑)、派手なバトルもファンファーレもないし、ついでにこの映画のコピーも「おちこんだりもしたけれど、私はげんきです。」という女の子向けのものだし、どう考えても「女性向け作品」っぽさ満開だけど、KiKi はこれを人生賛歌だと思っています。

「耳をすませば」の Review にも書いたことなんだけど(以下転載)、

  
KiKi が「魔女の宅急便」を最高傑作だと思っているのは、あの物語の主人公のキキが魔女界の掟によって、独り立ちをしなくちゃいけない境遇に陥って、自分が持っている才能を生かして何とか「生活」することを考えるところからスタートしている物語だから・・・・というのもあるんですよね。  彼女は「生きるために」宅急便屋さんをやってみることにするのであって、別に子供の頃からず~っと「宅急便屋さん」になりたいと思っていたわけじゃない。  彼女はとにかくまず「自活」しなくちゃならなかったんです。  で、必要に迫られてその仕事を始めた彼女(そういう意味では「夢」とは程遠い)が、今自分にできることを精一杯やって、そしてお客さんと触れ合っているうちに彼女はその仕事に「やり甲斐」だとか「自分の存在価値」を見出していく物語になっているんですよね。  で、ちゃんと挫折も経験するし、そこから立ち直りもする(笑)。  あの映画を観ると、大きな夢を抱くのも大切なことだし素敵なことだけど、彼女のようにその時の自分にできることを一生懸命やりながら「自分探し」をするのも素敵なことだと思うんですよね。  「大きな夢」がないことは悪いことだ・・・・なんていうのは、KiKi はまやかしだと思うんです。 
  

というのが、KiKi がこの作品を大好きな理由のひとつ。  彼女がコリコの街で暮らすことを決意して、生活必需品を買い揃えるシーンでなけなしのお金を手に握り締めて、レジが表示する金額を心配気に見つめ、ほんの小銭のお釣りしかもらえなかったときにため息混じりにもらす「暮らすって物入りね・・・・。」は名言だと思います。  KiKi も社会人になったばかりの頃、同期入社の自宅通勤のお友達に、やれテニスだ、やれスキーだ、やれディスコだ、やれ飲み会だ(時代がわかる・・・)と誘われたとき、よく思いましたもん。  「暮らすって物入りなんだから、(みんなと同じように)そんなにしょっちゅう遊んでばかりはいられないの!!」って(笑)。

 

仕事でいやなことがあって、そんな時に同い年ぐらいの人たちが遊んでいるのを見て「どうして自分だけが・・・・」と卑屈になったこともありました。  しかもその仕事が誰にでもできる仕事であることを認識した直後なんていうのは、ホント、おちこんだりもしました。  でも、そんな日々の中で、自分の名前を覚えてもらったり、誰かに感謝されたり、というとっても些細なことで「自分という存在」を肯定できたと感じたときのあの嬉しさ。  そんなものが余すことなく表現されている映画だと思います。

終盤で、キキは自分の唯一の長所(だと本人は思っている)、「飛ぶこと」ができなくなってしまいます。  あの時、彼女はようやくできた友達(トンボ)が、自分とは相容れそうもない友達を持つ人種であることにショックを感じたんだと思うんですよね。  彼女は流行とはおよそ縁がない黒服に身を包み、箒に乗って飛ぶなんていうめちゃくちゃレトロな存在であることを心の中のどこかで卑下していたんだと思うんですよ。  でもトンボはそんな自分を「すごいねぇ。」と認めてくれたし、1つの自転車に一緒に乗って同じ恐怖心も共有できたしということで、彼に対して張り巡らしていた鎧を1つ脱ごうとしたと思うんですよね。  でも、そんな彼が次の瞬間、車に乗って現代的なファッションに身を包んだ友達に呼ばれれば自分を置いてそっちへ行ってしまうし、挙句の果てに近代技術の粋を集めた飛行船に興味を移してしまった・・・・。  オシャレな女の子たち vs. 黒服の自分 (自分の負け)。  箒 vs. 飛行船 (箒の負け)。  ・・・・・・みたいな感じ(笑)。  彼に好意を持ち始めたばかりのところでそんな風に感じちゃったから、彼女は必要以上に自分を卑下・・・・と言うか、「自分という存在」に自信が持てなくなってしまったんだと思うんです。

でも恐らく彼女は自分が自分自身信を信じられなくなってしまったことや、自己否定していることには気がついていないんだと思うんですよね。  自分が本来比べたところであまり意味がないのに人と自分を比べて、自信を失っているっていうことに・・・・。

「私、前は何も考えなくても飛べたの。  でも、今はどうやって飛べたのかわからなくなっちゃった・・・・。」
(致命的な、絶望的なまでの自信喪失なんだけど自覚がない・・・・という状態ががこの言葉によく表れていると思います。)

「そういうときはジタバタするしかないよ。」
(自信をなくしちゃった人には何を言っても、どうなぐさめても何の解決にもならないことを彼女はよく知っているのです。)

で、ジタバタしても何をしてもどうしても飛べなかったら?(自信を取り戻すことができなかったら?)と聞くキキに彼女は答えます。

「(描くのを)やめる。  散歩をしたり、景色を見たり、昼寝をしたり。  何もしない。  そのうちに急に描きたくなるんだよ。」

と答えます。  これって、次の「魔女の血」と同じで、「自分にできることはやっぱりこれなんだ。」と思えるようになるまではジタバタするか、時を待つしかないっていうことだと思うんですよね。  人は何もしないでいる時間にそうそう耐えられるものじゃないと思うんです。  例えば何かに行き詰ったとき、趣味になりそうなものを探してみたり、お稽古事を始めてみたり、お洒落して街に出てみたりする。  これって要はジタバタしている状態だと思うんですよ。  でも、それが本当に自分のやりたいことでなければ、または自分には不向きなものであればそんなには長続きせず、どこかで飽きちゃうか挫折しちゃうと思うんですよね。  で、ジタバタしてもどうにもならなかったら、自分の中から何らかの欲求が出てくるまであがくのはやめる・・・・・。  で、最初は本人もただ漠然と「得体の知れない何か」を待っているように思って焦ったりもするんだけど、どこかの段階から「やりたいこと」ではなく「自分にできること」を探し始めると思うんです。  そうやって見つけた「自分にできること」はいずれ「自分にしかできないこと」に変わっていく。  だから彼女の次のセリフがあると思うんですよね。

「私さぁ、キキくらいんときに絵描きになろうって決めたの。  絵描くの楽しくってさ。  寝るのが惜しいくらいだったんだよ。  それがね、ある日全然描けなくなっちゃった。  描いても描いても気に入らないの。  それまでの絵は誰かの真似だったってわかったんだよ。  どこかで見たことがあるってね。  自分の絵を描かなきゃって。  でもね、その後少し前より絵を描くってことがわかったみたい。」

これって自信を取り戻した瞬間の感覚だと思うんですよね。  誰よりも上手に描く必要はないし、自信っていうのはナンバーワンにならない限り持てないっていうものではない・・・・・っていうメッセージ。

こんな会話を通して少しだけ心が軽くなり、自分を否定する気持ちが薄れたキキが町に帰ると、あの孫に相手にしてもらえなかったおばあさんがキキに会いたがっているという伝言を聞きます。  で、彼女の家に行って、又1人ありのままの自分を認めてくれる人に会って、又少しだけ自信を取り戻すキキ。

そこへ飛行船の事故のニュースです。  そしてその事故に巻き込まれているトンボの姿をニュース映像で見たキキはいてもたってもいられずに現場に急行します。  町中の人たちが固唾を呑んで見守るしかないという状況の中で、空に宙釣りになっているトンボを助けられるのは自分だけ・・・・という思いがキキの中で膨れ上がります。  そんな思いと自己否定から立ち直りつつあるキキの自信が呼応して、およそ飛びにくそうなデッキブラシを箒に見立てて彼女は空を飛びます。  かなり危なっかしいけれど・・・・(笑)。  「しっかり飛びなさい。  燃やしちゃうわよ!」なんて言いつつだけど・・・・(笑)。

あの物語の中で魔女は彼女1人じゃなくて、世界中を探し回れば空を飛べる人(魔女)は他にも何人かはいるわけだけど、あの街(与えられた、もしくは自分で選んだ環境の中)では「自分だけ」という強い思いが彼女を再び空中に戻してくれました。  これってどんなに優秀な人でも凡才でも1つの会社や1つの家庭でその人が演じる役割はその人だけのもの・・・・というのと同じことだと思うんですよね。  だから人は与えられた(本当は自分で選んだ)環境の中で、自分ができることを精一杯やることが必要なんだと思います。  そして、そうやってその役割に真剣に取り組めば、人は必ず「やり甲斐」だとか「生き甲斐」をその中で感じられるものなのだと思います。  多くの場合、「こんなはずじゃなかった・・・・」という思いは、自分の足元には見向きもせず、自分とは遠い世界の出来事や単なる憧れと自分を比較して、自己卑下しているのにすぎないのだと思うのです。

もちろん人間だから、そんな憧れとの対比でがっかりしたりすることもあっていい。  でも、そこで常に自分が何と現状を比べてがっかりしているのかについては振り返る必要があると思うんですよね。  で、多くの場合、そこで冷静に振り返ってみると案外あっさりと自分に納得できたりするものだと思うのです。  そうして発する言葉、それが・・・・・

おちこんだりもしたけれど、わたしは元気です!!

なのではないかなと・・・・。  いや~、それにしてもこのコピーを考えた糸井さん、やっぱりあなたは偉大です!!

 

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このページは、KiKi (Brunnhilde)が2008年2月15日 22:54に書いたブログ記事です。

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