13デイズ

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13デイズ
2000年 アメリカ 監督:ロジャー・ドナルドソン


21VWRYHAFGL__SL500_AA130_.jpg   (Amazon)   

1962年、米軍偵察機が捉えた衝撃の映像。  それはソ連軍がキューバに配備したと思われる、最強の破壊力を持つ核ミサイルの姿だった。

迫りくる第三次世界大戦の危機。  これに真っ向から立ち向かったのは、米国史上最年少の大統領ジョン・F・ケネディ、司法長官ロバート・ケネディ、そして有能と謳われた大統領補佐官ケネス・オドネル。  彼らはいかにしてこの最悪の事態から世界を救ったのか...。
                                 角川ヘラルド Site より転載 
  


初めてこの映画を観たときにはかなりショックを受けました。  この映画の物語の背景は「キューバ危機」。  この出来事は中学・高校時代の歴史の授業では既に駆け足状態になってしまっていてじっくりと学ぶことができなかったし、参考書などにもさらっとしか書かれていなかったという記憶があるんですが、それがどんなにシリアスの状況だったのか、「海上封鎖」とはどんなことをしたのか・・・・等々を初めて実感することができた作品だったからです。  「うわ~、事実は小説よりはるかにドラマチック!」と感動しました。  でも1回目の視聴の後色々調べている中で、この作品がこの映画の登場人物(&実在人物)のロバート・F・ケネディの著作をベースにしていることを知りました。  

そうなってくると根が天邪鬼の KiKi のこと。  いきなり物語の展開に「マユツバ」になって、さらに色々調べたりしているうちに、リアリティみたいな部分にはちょっと(と言うかだいぶ)懐疑的になってしまいました。  でもまあ、これは歴史の教科書じゃないから、その懐疑的な部分は極力抑えた Review を書きたいと思います。  でもね、最初に一言だけいいですか?  この映画って「ケネディ神話」の急先鋒っていう感じの作品だよねぇ(笑)。  

ま、それはさておき、タイトルの「13デイズ」とは、この映画で描かれるソ連がキューバに配備したミサイルの撤去をアメリカが求め、ソ連との外交的駆け引きが続いた13日間(1962年10月16日から10月28日)のことです。

この映画を観ていて1つ気をつけなくちゃいけないなぁと感じたのは、アメリカと仲良しの日本の歴史教科書でも、この映画でも、ある日突然トチ狂ったロシア(と言うかソ連)がキューバにミサイルを配備したことによって核戦争勃発の危機が起こったかのような描き方をしているんだけど、そこはちゃんと歴史のお勉強をしなくちゃいけないと思います。  第二次大戦戦勝国の2つの雄、米ソのその後の外交政策やら冷戦、軍拡、核兵器開発競争等々について、ちゃんと理解したうえでこの映画を観ないと、本当にアメリカの自己正当化映画にしか見えませんから・・・・。  KiKi は思うんだけど、唯一の核被爆国の国民としてこのあたりの歴史は、「鳴くよ鶯、平安京」よりも「いい国作ろう鎌倉幕府」よりも、ず~っとず~っと注意深く見つめなくちゃいけない歴史だと思うんですよね。  この映画の中では、この事件がどんなにシリアスだったのかを表すために、何度も何度もあの忌まわしい「キノコ雲」の映像が流れるんだけど、あの「キノコ雲」の下でどんな惨事が起こっていたのかを一番よく知っているのは日本人だけだということは忘れちゃいけないと思います。  少なくともこの映画を観た世界中の人たちの半数以上は広島・長崎の悲惨さを想像だにできないんだから・・・・・。

 

 

さて、この映画の一番の見所はやっぱり、核戦争勃発かもしれないなんていう切迫した世界情勢の命運があまりにも少数の人間の手に握られていたという恐ろしい事実と、ギリギリの状態に追い詰められて必死で解決策を模索しなくちゃいけなかった人たちのお腹が痛くなっちゃいそうな苦悩(実際映画の中の JFK は胃薬か精神安定剤か、何らかのピルを飲んでいたし)、そしてそんな状況下であっても立場が異なると正反対の意見を持つに至る優秀な(であると思いたい)人たちによる議論の紛糾、そしてそんな人間の愚かしさではないでしょうか。  そうそう、それと情報 & 危機管理の重要性っていうのもあるかもね。  今に比べると情報伝達速度も遅かったあの時代、下手をすれば核戦争かもしれないなんていう状況なのに、ホワイトハウスがクレムリンの状況さえ把握できていなかったとは・・・・。  (クーデターが起こりフルシチョフには実権がなくなったのかもしれない・・・・なんて言ってたし。)

このシリアスな物語の中でちょっと豆知識 & 笑えたのが「海上封鎖」を決定した際の以下の会話です。

「封鎖(Blockade)は戦争行為。  だから海上臨検(Quarantine)と呼びましょう。」
「ロシア語にもそう翻訳されればいいけどね。」

 

で、これに呼応するようなシーンがこの後に用意されているんですが、そこは KiKi のお気に入りのシーンです。  キューバに向かっていたほとんどの船が封鎖線直前で踵を返して帰っていったんだけど、わずか数隻はまるで強行突破を目論むかのように突っ込んできます。  1時間にも及ぶ米軍からの「引き返し命令」の呼びかけにも応じなかったことにより、アメリカ海軍がその船に向かって定められた手順に従って威嚇射撃(曳光弾)をしてしまうんですよね。  その時にマクナマラ国防長官が海軍の偉い人を叱り付けて発する次のセリフがすご~く印象的なんです。


「何も分かってない!  これは "封鎖" ではない。  これは "言語" だ。  世界が初めて知る言語だ。  大統領がフルシチョフとこれで対話しているのだ!」

う~ん、政治的駆け引きって難しい!!

映画ではできるだけ波風をたてずに穏便に事を納めたいと考えている大統領とその側近に対し、軍部ではまるでソ連と JFK の両方を挑発するかのようにキューバの目と鼻の先で軍事演習を始めちゃったり、水爆実験を行っちゃったり、領空侵犯を犯すヤツが出てきたり・・・・・。  外との戦争よりアメリカ内部の戦争の方が大変そう・・・・というよくあるようなお話が続きます。  まあ、内部抗争なんていうのはよくある話だけれど、核戦争の危機を前にしてそんなことをやっていてもらっちゃあ困るなぁ。  まあ、アメリカらしいっていえばアメリカらしいけれど・・・・。  で、KiKi はこのあたりの描写はかなり史実に近いんじゃないかと思うんですよね。  

当時は冷戦の真っ只中で、自由をかけた善(民主主義) vs. 悪(共産主義)という単純化された構図で物事が動いていたわけだし、この構図をベースに内外の危機感を煽れば、軍やら国防省やらは議会から予算をいっぱいもらえるし、海外からもアメリカの国策産業、武器ビジネスへの注文が殺到して懐が潤うという仕組だったわけだし・・・。  そして、それに拍車をかけちゃうのがホワイトハウスのトップに君臨する JFK & RFK & オドネルが、老獪な軍部上層部の目から見れば青二才に過ぎなかったって言うこと。  せっかく訪れたこの緊張を利用して、ここぞとばかりに自分たちの勢力拡大を狙っていたっていうのもあるだろうし・・・・・。

軍部の人たちの物言いもやっぱりとってもアメリカ的。  「国民への義務としてミサイルを取り除き、戦略的均衡状態を回復せねば!」だもん。  まあ、悪の枢軸を叩くっていうのは彼らの常套句だからさもありなんていう感じがします。  あれ?  でも、このセリフ、どこかで聞いたことがあるような・・・・。  特に「悪の枢軸」っていうヤツ。  進歩のない人たちだなぁ・・・・。 

学んでいないと言えばもう1つ。  国連でのアドレイ・スティーブンソン大使のスピーチのシーンは、このニュース映像そのものを観たことがあるような気がするんだけど(もちろんリアルタイムではありませんが)、「私は地獄が凍りつくまであなたの答えをお待ちします。」はこの映画を観るまで忘れていました。  そう言えばそんな発言をしていたような・・・・・。  でその発言の真偽はともかくとして、このシーンもちょっとデ・ジャ・ヴだと思いませんか??  つい数年前にも同じ国連の席で、軍出身の政府要人が「大量破壊兵器」がどうのこうのと言っていたのを・・・・・。  キューバ危機の時にはその背景の裏事情はともかくとして、とりあえずそれなりの証拠があったわけだけど、今回のはちょっとお粗末でしたよねぇ。  あのキューバ危機での経験から何1つ学んでいない現政権・・・・(注:オリジナルエントリー当時)という感じがするのは気のせいでしょうか??

で、その証拠写真にまつわるエピは、この映画のストーリーを盛り上げるためのフィクションっぽさ全開だけど、ちょっと感動ものでした。  キューバの軍備のより明確な証拠写真を撮ってくる任務を与えられたエッカー中佐という人にオドネルがかけた電話 & その後のその中佐の「スズメの群にぶつかった」発言。  仮にフィクションだったとしても、あの状況で戦争を回避したいと考えていた人の本音ではあったような気がします。  まあ無茶な注文だとは思うけれど・・・・・。


「絶対に撃墜されるな。  メカのトラブルで落ちるのは構わん。  山に衝突するのも構わんが、敵の攻撃だけは受けてはならない。」 

もう1つ、強烈に KiKi の心に残ったシーンは、海上封鎖を大統領特別番組で発表した直後、オドネルとスピーチライターさんの会話です。  「決定が空爆だったら何と?(どんなスピーチを?)」と聞くオドネルに彼が答えます。


「実は、書けなかった・・・。  想像を超えることを書くのは難しい。  努力はしてみたんだけど、とても・・・・・。」


このセリフだけで、いかに事態が深刻なものだったのかをよく表していると感じました。

もっとも KiKi はキューバー危機を回避できたのはケネディ大統領 & その側近の力だったとは思っていないし、彼らが強い信念を持って内外の圧力に負けない強いリーダーシップを発揮したとも思っていません。  ただ私たちがあの歴史的事実から学ばなくちゃいけなかったのは、「あの時点でもう既に核抑止理論は為政者にはコントロールできないところまでいってしまっていた」ということだったと思うんですよね。  だからこそ、映画の最後にもあるケネディ大統領のアメリカン大学でのスピーチ(平和の戦略)に意義があったと思うんです。

「我々の求める平和とは?  それは真の平和。  生きることに価値を与える平和。  一時でなく永遠に続く平和です。  人間がもたらした問題は人間が解決できるはずです。  我々は究極には同じ輪で繋がっているのです。  誰もがこの小さな地球に住み、同じ空気を吸い、子供の未来を思いやり、命を終えるのです。」(ここまでが映画で紹介された部分。)

でももっと大事なのはそのず~っと後の方にある部分だと思うんですよ。

「アメリカとその同盟国、およびソ連とその同盟国は共に、真の公正な平和の確立と軍拡の停止に、相互に大きな利害を持つているのです。  この目的に対する協定は、アメリカばかりでなくソ連の利益にもなることでしょう。  そしてどんな敵対的な国家でも、こうした条約義務だけは受諾し遵守することを期待してよいのではないでしょうか。  だから、われわれは両国の相違点に盲目であるべきではありませんが、同時に両国共通の利益とこれらの相違点を解消することのできる方策に注意をむけようではありませんか。  またこれらの相違点を今すぐなくすことはできないにしても、少なくともこの世界に多様性が安全に存在することはできることでしょう。」

そしてこの後にさらに、彼は当時としては信じれらないぐらいすごい発言をしました。

「この件に関するわれわれの誠意と厳粛な信念をあきらかにするために、私は他国が使用しない限り、アメリカは大気圏での核実験をしないことをここに宣言します。  アメリカは、核実験を再開する最初の国にはなりません。  こうした宣言は、拘束力のある正式の条約にかわるものではありませんが、私のこの発言が(核実験停止)条約達成の助けになる事を期待しています。  またこうした条約が軍縮の助けになることを期待しています。」

ここらへんには全く触れないで(触れちゃうと現在のアメリカの核保有の説明がつかない)、耳障りのよい抽象的な平和論だけを映画の最後で聞かせているあたりが、この映画のかなり胡散臭いところです(笑)。

KiKi は思うのですが、キューバ危機を経て、JFK は1つの教訓を得たんだと思うんですよね。  反目と無理解は世界を覆う緊張を増すことはあっても、解決することはできないということを。  核の抑止力というのはそれなりに理にはかなっているけれど、世界の緊張状態の解決にはならず、常に一触即発の核戦争の危機と背中合わせであるということを。  そして、核と人間は共存できないということを。  人間は核のなかった時代に戻る努力をするしかないということを。

さて、こうなったらこの延長戦で次の Review は同じケビン・コスナーが出ている「JFK」にしてみたいと思います。

最後に余談ではありますが、 RFK を演じていたのが「デスパレートな妻たち」のマゾ趣味のレックスだったり、JFK がキューバ危機の記事差し止めを直接電話でお願いした相手が「ER」のアンスポー先生だったりしたのに気がついたのはちょっと嬉しかったです。  何せ初見の時には気がつきもしなかったので・・・・(笑)

 

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このページは、KiKi (Brunnhilde)が2008年9月20日 19:32に書いたブログ記事です。

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