JFK

| コメント(0) | トラックバック(0)

JFK
1991年 アメリカ 監督:オリバー・ストーン


41AJX4EDWTL__SL500_AA240_.jpg  (Amazon)   

オリバー・ストーン監督が60年代4部作の完結編として今世紀最大の謎に迫った問題作。  1963年にテキサス州ダラスで起きた事件は、米社会の基盤をゆるがし、米国そのものの運命をも変えた。  国民の政府への見方を永遠に変えてしまったこの事件は未だ解決されていない。  ストーンは実力派揃いのキャストと、恐ろしいほどのリアルな台詞、ヴィジュアルによって自らの道を失った時代の年代記を、あらゆる技法を駆使して描いている。

(9シーン 約17分の追加、新たなシーン構成でオリバー・ストーン自ら再編集した特別版。: ディレクターズカットの特別編集版 DVD を鑑賞) 
  


巷では「社会派」と呼ばれているらしいオリバー・ストーン監督の大ヒット作です。  KiKi は彼のことを「社会派」とは思っていなくて、「社会派のフリをしたエンターテイメント派」だと思うんですが、少なくとも彼が描き続けた60年代4部作(「プラトーン」、「7月4日に生まれて」 そして本作。  残りの1つは何だろう?  「天と地」か「ニクソン」かだとは思うんだけど、「ニクソン」は大統領に就任した年が辛うじて60年代なだけだからなぁ・・・・。)を観る限りにおいては、「彼はこの時代を描きたいがために映画監督になったんだろうなぁ」と思わさせられます。  1943年生まれの監督にとって60年代というのは青春の日々 & 多感な日々です。  そしてそんな彼が1967年に陸軍に志願して、ヴェトナムで従軍。  この映画の最後でケビン・コスナー扮するジム・ギャリソンが法廷で語る次の一言。  これを言いたいがために彼は映画作りの道を選んだんだと思うんですよね。

「我々が子供の頃、みんなこう思っていた。  正義は自然に生まれると。  美徳は価値があり、善は悪に勝つと。  でもこれは真実じゃない。  正義は人間が作るもので簡単じゃない。」

彼に社会派の一面があるとすると、それは「一般市民の純粋な想いは時に国家権力によって利用され、裏切られることもある。」という彼がヴェトナム戦争体験から学んだ1つの哲学を吐露しているという部分だと思うんですよね。  ず~っと昔、「プラトーン」が上映された際のパンフレットか何かで読んだことがあるんだけど、地方の学校に軍隊へのリクルートに来た人の言葉に感銘を受けた監督自身が、愛国心を鼓舞されて、親の反対を押し切ってまでして志願兵としてヴェトナム戦争に従軍したんだけど、どんどん泥沼化していくその戦争の中で彼が得た結論が「この戦争には正義がない。」ということだったのだそうです。  だから彼にはあのアメリカが迷走していた「暗い60年代」については語っても語りきれない想いがあるんだと思います。  とにかくこの監督、ヴェトナム戦争が絡むと熱く燃えちゃうんですよね。  そんな彼の強い想いが見事に結集しているのが「プラトーン」とこの「JFK」だと KiKi は感じます。  (「7月4日に生まれて」は KiKi の中でさほど評価の高くない作品です。)

「13デイズ」の Review にも書いたように、JFK を政治家として彼の熱狂的なファンほどは評価していない KiKi なので、この映画の中で JFK をやたら持ち上げている描写にはちょっと首をかしげちゃうんだけど、それはこの映画の主題ではないと思うので、ちょっと放置(笑)。

この映画のキモは何といっても映画の最後、エンドクレジットに出てくる監督から観客へのメッセージだと思うんですよね。  曰く、「この作品を真実を探求する若者にささげる。」  KiKi はこのメッセージを監督は真実を明らかにするために、事実を描こうとしたのではないと読み解きました。  彼は巧みに娯楽性を計算して、この映画を「ドキュメンタリー・タッチの、社会派のエンターテイメント」として飾り付けて、娯楽性にばかり興味を持っている今の一般大衆に言いたいんだと思うんです。  風化しそうなこの歴史に興味を持ってもらえましたか?・・・・と。  無気力・無関心・無感動であるなかれ・・・・・と。  当時、リアルタイムに生きていてショックと共にこの事件に遭遇し、真実を知りたいと思った人間がみんな死んじゃった頃に、ようやく様々な資料が公開されるんだぞ・・・・と。  映画の中のギャリソンのセリフではないけれど一族で語り継ぎ、自分がダメなら子供でも孫でもいいから、真相をちゃんと知ろうとすることを忘れないようにしようね・・・・・と。  

 

オズワルド単独犯行説(ウォーレン委員会の公式結論)、共産主義者犯行説、ベトナム犯人説、保守派層犯人説、シークレットサービス犯人説、マフィア犯人説、CIA犯人説、軍部謀略説・・・・。  様々な憶測を生みつつ万人が納得できる結論を得ていないこの事件。  2038年まで封印されているウォーレン委員会の「オズワルド単独犯行説」を導くに至った全ての証拠を見ることができるのは、この事件に何の興味も関心も持たない世代になってしまうかもしれないことを憂い、それを許している国民の無関心・従順さに異議を唱えている映画なんだと思います。  そういう意味で、この映画の公開直後、賛否両論の議論が持ち上がったという事実は監督にしてみるとまさに「してやったり」だったのではないかと。

それにしても凄い作りの映画だと思います。  実際の記録フィルムをふんだんに盛り込み、どこまでが歴史的事実でどこからが創作なのかは、それなりの知識を持ってかなり注意深く見つめないと、この映画全体が「真実」に思えてしまう危険性があるほどに・・・・。  この映画ほど「復習」と「ディスカッション」を要求する映画を KiKi は知りません。  映画を観ている間、観客に冷静に考える余裕を与えず、この物語にぐいぐいと引き摺り込んでいくパワーにはホント脱帽です。  でも、この映画のフィクションの部分に振り回されてしまってはいけないと思うんです。  これは暴露映画ではないんですから・・・・・。

この映画のアイディアのベースにあるのは、事件当時ルイジアナ州ニューオーリンズの地方検事だったジム・ギャリソンが著した 「JFK - ネディ暗殺犯を追え」 と、 地元ダラスの新聞記者ジム・マースの著した「クロスファイア(十字砲火)」。  それなりに多くの人に読まれていたこれらの作品のエッセンスを取り込みつつ、この監督は観客を「なぜ?」と考える方向に誘導したかったんだと思います。

この Review を書いているのが 2006年3月で、この事件の様々な資料が公開されるのが2038年9月。  今から32年後です。  この映画を観てこの事件に興味を持った人間の何人が生きているんでしょうか?  その時 KiKi 自身は何をしているんでしょうか??

 

この映画に描かれていることの真偽はともかくとして、KiKi がとても遺憾に思うのは、これだけの疑問・異説があるのにもかかわらず、又多くの一般人や歴史家が疑っているのにもかかわらず、全体としてはかの国でギャリソンの言う「情報コミュニティ」、落合信彦の言う「軍産複合体」が権力を掌握しているという構造にはほとんど変化が無いということです。  それが「政治」だと言ってしまえばそれまでだけど、イラク戦争の勃発も止める事ができなかった私たちは歴史の学び方を間違えているのかもしれません。  

「我々が子供の頃、みんなこう思っていた。  正義は自然に生まれると。  美徳は価値があり、善は悪に勝つと。  でもこれは真実じゃない。  正義は人間が作るもので簡単じゃない。」

この言葉は本当に重いと感じます。  「正義は立場が変われば異なるもの」であるだけに・・・・・。

 

トラックバック(0)

トラックバックURL: http://poco-a-poco.chu.jp/mt/mt-tb.cgi/122

コメントする

2015年2月

1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28

Current Moon

CURRENT MOON

東京のお天気


山小舎のお天気


Booklog



ブクログ

アーカイブ

ウェブページ

Powered by Movable Type 4.261

TrackbackPeople

クラシック・ピープルの Trackback People Site


チェロ ラヴァーズの Trackback People Site


Piano~ぴあの Trackback People Site


ピアノオススメ教本の Trackback People Site


ピアノ教室の Trackback People Site


Book Love Peopleの Trackback People Site


本好きPeople・ぴーぷるの Trackback People Site


今日読んだ本の Trackback People Site


ファンタジーが好き♪の Trackback People Site


この絵本がすごい!の Tackback People Site


児童書大好き♪の Trackback People Site


ハヤカワepi文庫の Trackback People Site


岩波少年文庫応援団の Trackback People Site


薪ストーブの Trackback People Site


週末は田舎暮らしの Trackback People Site


野菜育てPeopleの Trackback People Site


ガーデニングの Trackback People Site


パッチワークキルトの Trackback People Site


あなたの訪問は?


日めくりカレンダー


Real Time News


カテゴリ

ノルンはいくつ?

本が好き!


読書メーター

KiKiさんの読書メーター
KiKiさんの読書メーター

最近読んだ本

KiKiの最近読んだ本

今読んでいる本

KiKiの今読んでる本

読了目標





今やってるゲーム

KiKiの今やってるゲーム

このブログ記事について

このページは、KiKi (Brunnhilde)が2008年10月20日 19:44に書いたブログ記事です。

ひとつ前のブログ記事は「13デイズ」です。

次のブログ記事は「ルリユールおじさん いせひでこ」です。

最近のコンテンツはインデックスページで見られます。過去に書かれたものはアーカイブのページで見られます。

高速運賃





Edita

ブロガー(ブログ)交流空間 エディタコミュニティ

名言黒板


作家別タグ