ショーシャンクの空に

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ショーシャンクの空に
1994年 アメリカ 監督・脚本:フランク・ダラボン


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とある刑務所の受刑者が勝ち取り、分け与えた解放と救い・・・・。  誰の心にも静かに、爽やかな感動が訪れる・・・・。

ショーシャンク刑務所に、若き銀行の副頭取だったアンディ・デュフレーン(ティム・ロビンス)が、妻と間男を殺害した罪で入所してきた。  最初は刑務所の「しきたり」にも逆らい孤立していたアンディだったが、刑務所内の古株で "調達係" のレッド(モーガン・フリーマン)は彼に他の受刑者たちとは違う何かを感じていた。  そんなアンディが入所した2年後のある時、アンディは監視役のハドレー主任(クランシー・ブラウン)が抱えていた遺産相続問題を解決する事の報酬として、受刑者仲間たちへのビールを獲得する。  この一件を機に、アンディは刑務所職員からも受刑者仲間からも、一目置かれる存在になっていく・・・・。 
  


この映画は KiKi の大好きな映画の1本なのですが、Review を書くのがちょっと難しい映画でもあります。  ・・・・と言うのも、考えさせられることがあまりにも多いんですよね~。  で、KiKi にとってこの映画は「感動」を呼び起こす映画というよりは、どんどん自分の中にある様々な価値観を混乱させていく映画とも言えるんです。  混乱・・・・と言うとちょっと言葉が厳しすぎるかもしれません。  要はシロクロをつけることの難しさをしみじみと感じる映画なのです。

この映画はある意味ではとってもズルイ(笑)トリックを使っているんですよね。  ズルイトリックその1)は、この物語の主人公アンディ(ティム・ロビンス)が冤罪で投獄された人物であるということ。  映画を観ている人間は確信こそないけれど、アンディが無実であることを感じながらこの映画を観始めているので、どうしてもこの刑務所の囚人に対して最初から同情的・・・・というか、あまり悪感情を持たないような作りになっていると思うんですよね。  そして、それに輪をかけるようにレッドを始めとするアンディの仲間となる囚人たちに根っからの悪者がいないんですよね。  ことレッドに関しては殺人による服役囚ということが映画の中で語られているけれど、それ以外の仲間の囚人たちは「いったいあなたは何したの??」と聞きたくなるほど、まっとう(?)な人ばかり・・・・。  新しく収容されてきた服役犯の最初の晩に彼らを野次ったり「誰が最初に泣き出すか」で賭けをしたりはするけれど、それ以上の凶暴性もなければ変質性もなし。  あ、アンディをレイプする集団だけは別ですが・・・・。  だからブルックスという年老いた服役囚がいるんだけど、この人が保護観察付きで仮釈放になった時、一般社会にどうしても馴染めないでいるその姿が気の毒で仕方ない・・・・。  ひょっとしたら刑務所に入る前にはものすご~く極悪非道なことをしていた人なのかもしれない・・・・なんていうことを忘れちゃうほどです。

で、ズルイトリックその2)は刑務所の所長さんやそこで働いている人たちがすご~く悪いヤツだっていうこと。  力を過信しちゃっているというだけでなく、ホントに悪いヤツなんですよね~。  半ば変質狂のように囚人を殴ったり蹴ったりするヤツもいれば、自分に都合の悪いことを口にする囚人を殺しちゃったりするし、刑務所の囚人というタダの労働力を使って公共事業(・・・・とは限らないけれど)なんかに入札して、そこで得た収益を着服しちゃうほどに・・・・・。  だから、本来であれば真っ当な一般市民であるはずの(と言うかそうであってほしい)「刑務所勤務」の人たちが悪であることによって、アンディやレッド、そしてその仲間の囚人たちがいやでも善に見えちゃう。

これに追い討ちをかけるように、アンディ役を演じているのがティム・ロビンスでレッド役を演じているのがモーガン・フリーマンというあまりにも実直な役者達だということがズルイトリックその3)。  DVDの音声解説で監督のフランク・ダラボンが語っているんだけど、モーガン・フリーマンはCMには出演しない役者なんだそうです。  で、どうして彼がCMに出演しないのかというと「彼がCMに出ると観ている人が "本当だ! 本物だ!!" と何の疑問も持たずに信じてしまう傾向があるのだそうで、その人にとって本当に必要なものとは限らない物を買わせてしまうのが忍びないから」ということだったのですが、そんな人が罪人の役をやって、悪いヤツに見えるはずがない!!!  この映画の中の彼の演技がどうのこうのということではなく、要は彼はある意味では「アメリカの良心の権化」みたいな存在なわけです。  もちろん劇中の彼(レッド)は最後の面談の際に言っていたように、「人を殺してしまったその瞬間から後悔しなかったことはなかった」ほど、根っこは真っ当な人だったわけだけど、やはり罪人であることに間違いはないわけで・・・・・。  でも、この映画を観ている間中、レッドに悪感情を抱く人はほとんどいないと思います。

 

これらのちょっとズルイトリックで視聴者が頭に描くとってもシンプルな状況設定の構図は、善なる囚人たち vs. 悪いやつらだから、アンディが強い精神力を示し希望を持ち続け、最後には解放を勝ち取る様に拍手喝采し、彼の行為の全てを崇高なものに感じてしまうんですよね。  極めつけはあのモーツァルトのアリアだし・・・・・。  あのシーンは「人が人間らしく生きるっていうのはどういうことか??」を考えさせられる秀逸なシーンだと思います。  さらにアンディの脱獄。  もうこの時点ではこの映画を観る大半の人は彼を応援せずにはいられないだろうと思います。  KiKi も初見の時はそうでした。  あんな不条理な世界から絶対に無事に抜け出してほしいと心から思いました。  まして彼は冤罪の身なわけだし・・・・。  

そして保護観察付きで仮出所したレッドがアンディの後を追うことになるシーン。  「刑務所慣れ」についての説明を説得力抜群のモーガン・フリーマンから聞かされ、レッドよりも一足先に仮出所したブルックスの悲劇の最期を見、さらにスーパーの店員として働きつつもどうしても一般社会に馴染めずに戸惑っているレッドの姿を見ていると、彼が再び銃を手にとって他人や自分を傷つけてしまう前に、レッドにも早く解放されてほしいと切に願ってしまう・・・・・・。  だから「町を出ても追っては来ないさ、こんな老いぼれ1人を」なんて言われると思わず「うん、うん」と頷いてしまうし、「希望は危険なものだ」と言っていたレッドが
I HOPE I can make it across the border.
 「国境を越えられるといいが」
I HOPE to see my friend and shake his hand.
 「親友に会って握手ができるといいが」
I HOPE the pacific is as blue as it has been in my dreams.
 「太平洋が夢で見たように青いといいが」
I HOPE.
 「俺の希望だ」
なんていうように「HOPE」を連呼すると、きっと彼はもう大丈夫だと思って何となくホッとしてしまう・・・・。

そして目にしみるほど美しい青い海をバックにアンディとレッドが抱き合うのを見て、
初見時:  ああよかった!!  感動!!!
2回目:   よかった・・・んだよね
3回目:   よかった・・・・の・・・かな
今回:    よかった・・・・んだけど・・・・でも・・・・・。

4回目の視聴にして気付いてしまったある事実があるんですよね。  それは、こんなことがまかり通ってしまったら、そしてこの結末に単純に酔いしれていてしまっては「法治国家は成り立たない」ということ。  確かにアンディは冤罪だったし、あのショーシャンク刑務所は酷い所だったけれど、一応法に書かれている手続きどおりに逮捕され、身柄を拘束され、裁判も行われて収監されていて、仮出所の審査も受けていて・・・・・。  そのプロセスには何の落ち度もないのに脱獄。  (もっとも脱獄直前にアンディーのケースの真犯人判明&その情報をもたらした青年の非業死というエピがあるので、単なる脱獄犯とは違うっていう説明にはなっているんだけど・・・・)  そのうえアンディは所長が不正をして溜め込んだ財産を横領もしているわけで・・・・・。  (確かに退職金がわりとも言えるけれど・・・・)  レッドは罪を償うために40年も刑務所にいたから殺人の罪はそれで償えたと考えるべきなのかもしれないけれど(そして40年という収監期間が妥当だったのかどうかはよくわからないけれど)、保護観察違反はやっぱり罪なわけで・・・・・。  (希望に目覚めて人間らしい感情を持てたことは素晴らしいけれど・・・・。)  いみじくもレッドが言っていたように「更正」というのは国家権力が作った言葉であって、その言葉にどんな意味があるのかはとっても曖昧だとも思うけれど・・・・・・。  

KiKi がこの映画を今回観て、強く感じたのは「人が人を裁くことの難しさ、怖さ、恐ろしさ」と、「人が作った法制度の危うさ」です。  アンディは状況証拠だけで逮捕され、冤罪のまま、銀行の副頭取というポジションを追われ約20年という年月を囚人として暮らさざるを得ませんでした。  その間、彼は彼なりに様々な生き甲斐を見つけ、そんな彼の姿に仲間の囚人たち(良い囚人たち)に様々な影響を与えたけれど、彼の失った20年は誰にも返してあげられません。  レッドは収監されてから10年ごとに「仮釈放審査」を受け続けてきたけれど、40年間を刑務所で過ごさなくてはならなくなり、「刑務所慣れ」になってしまいました。  アンディもレッドも自分以外の人間に裁かれ、そういう人生を送ることを余儀なくされました。  レッドがどんな惨い殺人を行ったのかは詳しく語られていなかったのでその40年という年月が妥当なのかどうかはよくわからないけれど、レッドに殺されてしまった人の家族にしてみればそれでも足りないと感じる長さなのかもしれません。  この映画を観て「ああ、良かった!!」と感じる感情は法制度の根幹を揺るがす思想なのかもしれません。

日本ではこれから「裁判員制度」が導入されようとしています。  裁判員制度導入のスローガン(?)になっている言葉は「国民みんなが参加できる、身近で、早くて、頼りがいのある司法を目指します。」というもののようです。  言葉だけ聞くと何だかとってもフェアなことのように感じるし、今の時間ばかりかかる裁判には懐疑的な KiKi にとって「早くなることはいいことだ!」と思えるけれど、裁判の時間短縮は裁判のプロセスの問題であって、国民が参加することによって短くなるっていうものではないと思います。  それよりも KiKi がこの制度導入について感じるのは、日頃から「罪」だとか「刑罰」だとか「拘束力」について熟考するトレーニングを受けていない人間に人を裁くことができるのだろうかという危惧です。  

因みに最高裁のHPを訪ねてみるとこの制度導入の目的のところには「国民のみなさんが刑事裁判に参加することにより、裁判が身近で分かりやすいものとなり、司法に対する国民のみなさんの信頼の向上につながることが期待されています。  国民が裁判に参加する制度は、アメリカ,イギリス,フランス,ドイツ,イタリア等でも行われています。」とあります。  つまり「刑事罰」を与える裁判に参加するっていうことですよね。  刑事罰っていうことは最悪「死刑判決」もありうるっていうことですよね。  量刑も決めなくちゃいけないっていうことですよね。  アンディはアメリカの陪審員制度のもとで判決を受け、20年を刑務所で過ごすことになりました。  アンディにその判決をもたらしたのは善意の市民だったのだろうと考えるととても複雑です。

 

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