科学と科学者のはなし 寺田寅彦エッセイ集

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このブログを開設して以来、ず~っと「物語本」か「絵本」しか扱ってこなかったので、ここらでちょっと毛色の変わった本をとりあげてみたくなりました。  それにね、そもそもこのブログ開設の一番の動機は「岩波少年文庫読破計画」という大層な目標があったはずだったのです。  でもふと気がつくと「絵本」の世界に偏りつつある今日この頃。  このままでは、いかに「数をこなすような読み方だけは避けたい」と思っていたとはいえ、「こなせるはずのものもこなせない状況」に陥ってしまいそうな気配がぷんぷん漂ってきているような気がするんですよね~(苦笑)  だいたいからして KiKi の場合にはほぼ月次更新という著しく低い更新頻度の問題も抱えちゃっているわけでして・・・・。  ま、てなわけで、本日は久々に岩波少年文庫に戻り、尚且つ、「物語」とはちょっと違う世界のこの本をとりあげてみたいと思います。

科学と科学者のはなし 寺田寅彦エッセイ集
編:池内了

1145100.jpg    (Amazon)

 

 

いや~、面白かった!!!  一読後の KiKi の最初の想いは「しまった~! どうしてこの本を子供のうちに読んでおかなかったんだろう!!!」というものでした。  

電車の混雑には法則があるのか?  虫たちはいったい何を考えているのか?  日常生活の身近なことがらを細やかに観察しながら、科学的に考えることのおもしろさを書きつづった、明治うまれの物理学者による随筆。 (中学以上)

これ(↑)が背表紙に記載されている岩波書店さんのいわゆるこの本の紹介文なんですけど、中学時代の KiKi は「岩波少年文庫は小学生が読むもの」と勝手に決めてかかっていたようなところがあって、かといって随筆とかエッセイを楽しめるほどは成熟していなくて、もうちょっと「知識の本」っぽい本を読み漁っていたようなところがあるんですよね~。  

でね、人のせいにするのはちょっと気が引けるんだけど、この本に今の今まで出会うことができなかったのには岩波書店さんのネーミングもちょっとした原因になっているような気がするんですよね。  だって「少年文庫」って、どうも「子供(≒小学生以下)向け」っていうイメージが先行しちゃって、ちょっと背伸びしたい気持ちがでてきている中学時代にはなかなか堂々とは手に取れない、そんなものじゃありませんか??  で、岩波書店さんの場合は「少年文庫」とは別のシリーズに「ジュニア新書」な~んていうのもあったりするわけですよ。  「ジュニア≒ Junior High School」みたいな錯覚を中学時代の KiKi は無意識のうちに持っていた・・・・そんな気がするんです。  ちょうど英語を学び始めた頃だったし・・・・。  今になって考えてみるとね、 KiKi は知らず知らずのうちに勝手に自分なりの選書の法則を構築しちゃっていたような気がするんですよ。  つまり・・・・・

岩波少年文庫    小学生向け
岩波ジュニア新書  中学生向け
岩波文庫      高校生以上
岩波新書      高卒以上

みたいな感じで・・・・。  で、結果としてこの「科学と科学者のはあなし」あたりは、小学生の頃に背伸びをして読んでみたいと思わない限り、KiKi には出会うタイミングがなかった本になっちゃった・・・・・  ほ~らね、やっぱり岩波書店さんのせい!!!(大笑)  

もっと言うと、もしも小学生時代の KiKi がちょっと背伸びをしてこの本を手に取ったと仮定すると、じゃあその頃にこの本を通して読めたかっていうと、それは恐らく×。  というのもこの本はやっぱり物理学者さんが書いた本なので、文章そのものは比較的平易な言葉で書いてあるとはいえたま~に出てくる物理法則の名前やら何やらが小学生にはちょっとハードルが高い。  で、その言葉に出会うとチンプンカンプンになっちゃって、結局途中でポイッと放り出しちゃった可能性が高い・・・・そんな気がするんですよね~。  つまり、この本に出会うべきベスト・タイミングはやっぱり中学生ぐらいなんじゃないかなぁ・・・・と。  で、中学生にとっては「少年文庫」という名前はちょっと抵抗あり・・・・・。  ほ~らね、やっぱり岩波書店さんのせい!!!!!!(爆)

まあ、そんなことはさておき、この本です。  身近にある様々な不思議、自然の脅威に対してある意味で子供っぽい興味、「なぜ? どうして?」を持ち、じ~っくりと観察をし、論考する・・・・・その素晴らしさがひしひしと伝わってくる本当に楽しい読み物だと思います。  個人的にとっても好きだったのは以下の章。

茶碗の湯:  
身近な茶碗の湯の観察から「霧」「竜巻」「かげろう」「気流」「台風」にまで言及する文章の何と心地よいことか!!

電車の混雑について:  
電車の遅れ、込み具合に関しての論考なんだけど、感覚的には KiKi も似たようなことは感じていたものの、ここまで掘り下げて考える人がいたとは恐れ入りました・・・・という感じ(笑)

化け物の進化:  
化け物 - 神秘 - 科学の発展の関係をこんな風に関連付けて考えたことはなかったけれど、読み進むうちになんだか「なるほど~」と納得させられちゃったような気がするのは KiKi だけなんだろうか???  
「科学教育はやはり昔の化け物教育のごとくすべきものではないか?  法律の条文を暗記させるように教え込むべきものではなくて、自然の不思議への憧憬を吹き込むことが第一義ではないか?」  うんうん、この言葉、KiKi が卒業した某進学校の物理や化学の先生に聞かせたい気分・・・・(笑)

風呂の寒暖計:  
このエッセイはここに書かれていることそのもの・・・・というよりは、別のことを色々考えてしまいました。  思い起こせば KiKi が子供の頃、お風呂にお湯を入れるのは KiKi の役目でした。  夕食がすむと KiKi はお風呂に行ってまずはお湯を入れるために蛇口をひねり、蛇口から出てくるお湯の温度を指先で確認しました。  しばらくして、浴槽がいっぱいになったら蛇口を閉めに行き、お湯をかき混ぜて、今度は浴槽に満たされたお湯の温度を手で確認しました。  で、「今日はちょうどよい湯加減で入った」とか「ちょっと熱い」とか「ちょっとぬるい」ということを家人に伝えて・・・・というのがいわゆるルーティン手順だったんですよね。  でもこの一連の動作をしなくなって久しいなぁ・・・・と。  今では蛇口はひねらない、出てくるお湯の温度は確認しない。  蛇口を閉めることもない。  さらには入ったお湯の温度を確認することもない。  やっているのは、湯沸かし器のデジタル表示の温度を確認することと、スタートボタンを押すことだけ・・・・・。  そうすると自動的にお風呂に適量のお湯が入り、勝手にお湯が止まってそこからご丁寧にも保温までしてくれちゃう!!  誰も適温かどうか自分の手で確認していないのに、デジタル表示の温度(というより数字?)を全面的に信頼して、脱衣所で無防備にも裸になっちゃう・・・・、そんな生活をしているわけですよ。  そんな環境で育ったら寺田さんみたいな発想はでてくるはずもないよなぁ・・・。  明治時代であれば「風呂場に寒暖計を常備するのも一策」だったかもしれないけれど、今ではそんな発想さえ浮かばないのが当たり前・・・・。  それって本当にいいことなんだろうか???  そんなことを考えました。

夏目漱石先生の追憶:  先生と生徒の関係がそれらしかった時代への羨望・・・・そんな気持ちが湧いてきました。  現代で考えれば英文学者(もしくは作家)と物理学者の師弟関係ということ自体がある意味で想像の範疇を超えてしまうような気がするんですよね。  でね、そんな摩訶不思議な関係でありながらも、当時の師弟というのは人生の通過点でのちょっとしたすれ違い以上のものだった・・・・・  そんな風に感じるんですよね。  で、そんな時代が羨ましいやら、ねたましいやら・・・・。  KiKi の場合、自分の人生の中で生涯を通して「師」と呼べる人が何人いるのかを考えたら、「○○時代の先生」はいても夏目漱石先生と寺田寅彦さんの間の師弟関係に匹敵するような「師」はいないんじゃないか・・・・・そんな風に感じて、何だか心もとなくて、いったい自分は何をしてきたんだろう・・・・と考え込んでしまいました。  と、同時にここに描かれているような人間関係が「師と弟子」の間でさえ成立しにくい現代社会において、本当の意味での「人との出会い」を果たすことができるんだろうか??  結局はみんなが勝手気ままに生きているのと大差ないんじゃないか??  そんなことを考えてしまい、ますます落ち込んでしまいました。  今頃こんなことを考えてみても手遅れなのかなぁ・・・・。

涼味数題:  
これも「なるほど~」と思わずうなってしまったエッセイでした。  
「涼しさは瞬間の記憶である。  持続すれば寒さに変わってしまう。」という出だしからして凄い!!  余計な言葉は何一つ差し挟んでいない、言わば事実を淡々と述べている文章なんだけど、ここに文学的な匂いがプンプンと漂っているのがまず凄い!!!(笑)  で、日本人の感覚にある「涼しさ」というのがある意味では日本特有の感覚であることを推論し、それを証明するために日本という国が存在する気候学的、地理学的なポジションを持ち出し、そして俳句の季語に代表される日本固有のいわゆる「やまとことば」にまで言及していく・・・・。  いや~ここまでくるともはや天晴れとしか言いようがありません!!  暑い夏が終わり、朝晩めっきり涼しくなったこの季節に読んだから、なおさら印象に残ったのかもしれませんけれど・・・・・ ^^;

蛆の効用
昨今の「抗菌ブーム」を迎えるず~っと前に、このエッセイで寺田さんが論考しているようなことを真剣に考える風土・・・・というか、文化・・・・というかを、寺田さんの提言があったにも関わらず無視してきた自分たちを恥じ入る気分になりました。  


全編を通じて感じたのは、本当の科学者というのはとても奥行きの広い(寺田さんの言葉を借りれば料簡の広い)人種なんだなぁということ、そして、その広さを支えているのは、本来日本人がもっともすぐれた美徳として備えていた(と思われる)謙虚さにあるような気がしました。  現在のある意味で傲慢になってしまった日本人を見たら、寺田さんは何と表現されるんだろう・・・・・。  その言葉を聞いてみたいような、聞くのが怖いようなそんな気分です。

いや~、何はともあれ良書です。

 

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このページは、KiKi (Brunnhilde)が2009年9月18日 00:27に書いたブログ記事です。

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