坂の上の雲(三) 司馬遼太郎

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先週末、 KiKi は実家に行かなくてはならない事情があり、新幹線で移動しました。  その往復の移動中に何とか第三巻を読了することができました。  全八巻のうち第三巻という未だ半分にも達していないところで、主人公の1人、正岡子規を失ってしまいました。  初めてこの物語を読んだとき(何年も前)には主役一人をこんなタイミングで失って、この物語はどうなっちゃうんだ????という素朴な疑問に包まれてしまった KiKi でしたが、何度目かの再読・・・・・ということで今回はそのあたりに関してはなんとな~く過ごしてしまうことができました(笑)

坂の上の雲(三)
著:司馬遼太郎  文春文庫

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日清戦争から十年 - じりじりと南下する巨大な軍事国家ロシアの脅威に、日本は恐れおののいた。  「戦争はありえない。  なぜならば私が欲しないから。」とロシア皇帝ニコライ二世はいった。  しかし、両国の激突はもはや避けえない。  病の床で数々の偉業をなしとげた正岡子規は戦争の足音を聞きつつ燃えつきるようにして、逝った。  (文庫本裏表紙より転載)

第三巻の最初の一章でこの物語の主人公、正岡子規を見送った司馬遼太郎さん & 読者。  で、それに続く章の書き出しで

この小説をどう書こうかということを、まだ悩んでいる。  子規は死んだ。  好古と真之は、やがては日露戦争のなかに入ってゆくだろう。

とさらっと言ってのけられる司馬さんに思わず失笑。  正直なところ KiKi の個人的な感想としては同じ司馬さんの長編小説「竜馬がゆく」はもっと「小説・小説風」しているのに対し、この作品ではご本人自身が「どう書き進めるべきか迷いつつ書きあげた」作品だったことが、この第三巻あたりから如実に表れてくるような気がします。  うまく説明できないんだけど、小説としてプロットがきっちりとできあがっていてそれに沿ってフィクションを交えながら筋書きを追っていく・・・・・という手法ではなく、極力司馬さんが入手した資料の事実のみをピックアップし、折に触れその資料を読んでいる司馬さんご自身の主観的な記述を心がけている・・・・・そんな風に感じるんですよね~。  とは言うものの、元が新聞小説だったという制約(その新聞の立ち位置とか)はないはずもなく・・・・・・。

  

ま、それはさておき(^^;)、この巻で KiKi が一番心に残った場面。  それは主役3人に関連する場面・・・・・とにはあらず、小説的には脇役(?)のはずの山本権兵衛さん & 時の内務大臣西郷従道さんのシーン とか これまた作品的には脇役(?)のはずの児玉源太郎さんのシーンでした。  

山本 & 西郷のシーンは後に日露戦争で「だいじなもの」となった戦艦「三笠」を英国に発注したものの貧乏国日本のキャッシュフローが追いつかずどうにもならない・・・・という場面。  西郷隆盛の弟であり、偉大なる兄ちゃんの影で日本の歴史教育では若干存在感が薄い弟が語ったセリフがとにかくすごい!

「それは山本さん、買わねばいけません。  だから、予算を流用するのです。  むろん違憲です。  議会で追及されて許してくれなんだら、ああたと私とふたり二重橋の前まで出かけて行って腹を切りましょう。  二人が死んで主力艦ができればそれで結構です。」

まあ、個人的には大事な命を散らしてまで・・・・という想いも一方では持ちつつも、やっぱりこれだけの覚悟をもった「男気」みたいなものには感銘せずにはいられないし、現代社会において蔓延している「無責任」「無関心」気質と比べた時、この時代の男達のこの豪胆さは「一国として立たねば亡国の憂き目を見る」という危機感からくる必死さ故なのか、はたまた時代だけは民主国家に向かっているものの、彼らの中に未だに根強く息づいていた「武士道」故なのか・・・・・。  いずれにしろ、この真剣味には学ぶべきところが多いと感じました。  (命がけ・・・・とはいかないけれど 苦笑)

そしてもう1人、児玉源太郎さんのシーンは児玉さんがそれまでの官職(内務大臣とか文部大臣)を辞し、序列的にはそれよりもひくい陸軍参謀本部次長の席に自ら志願して就き、渋沢栄一と戦費調達の必要性を打ち合わせる場面。

「児玉さんはいくさの指揮をされることになるのだが、勝つ見込みはどの程度です。」
「勝つというところまでゆかない。  国家の総力をあげて、なんとか優勢なあたりでひきわけにしたいということが、せいいっぱいの見とおしです。」
「そこまでゆきますか?」
「作戦の妙を得、将士が死力をつくせばなんとかゆくでしょう。  あとは外交です。  それと戦費調達です。  ともかく・・・・このまま時がうつればうつるほどロシア側に有利で、日本側に不利です。  二年もたてば極東ロシア軍の兵力はぼう大なものになり、その兵力を背景にいよいよ日本を圧迫するでしょう。  そのとき起ちあがっても、もはや勝負にもなにもなりません。  いまなら、なんとかなる。  日本としては万死に一生を期して戦うほか、残された道がない。」
とまでいうと、児玉は両眼からおびただしい涙を流した。  明治後三十数年にわたってようやくこんにちの域に達した日本国はこの一戦であるいはほろびるかもしれない。  そのことを陸軍作戦のすべてを担当する児玉自身がいっているのである。

日露戦争は侵略戦争ではなく、あくまでも防衛戦だったというスタンス全開の記述で、事の真相がどうだったのか・・・・は KiKi 自身未だに自分なりの結論を持てずにいるけれど、これがすべて事実に基づく記述だとするならば、児玉源太郎さんはちっちゃな自分ひとりの名誉欲やら権力欲とは縁遠いところで、自らを降格させてでも、この国を立たせるための礎を築こうという、やはり想像を絶するような覚悟をしています。

こんな日本男児がいた国の末裔にも関わらず、我が身を振り返ったとき、何とお気楽、無関心、無責任な生き方を許している自分か・・・・・ということを感じずにはいられず、もしもあの世で西郷さん(弟)やら山本さんやら児玉さんにお会いしたら、正面切ってご挨拶はとてもできそうになく、穴があったら入りたくなっちゃうんだろうなぁ・・・・・・(苦笑)

  

この第三巻を読み終えてみると、意外な人が語ったのほほんとした言葉に実は真実が隠されていたような気がして仕方がありません。  それは第1巻の秋山兄弟のおとうちゃん、八十九翁のセリフです。

「古今の英雄豪傑はみな貧窮のなかから生まれた。  あしに働きがないのはいわば子のためにやっているのだ。」

まあ、親としては無責任極まりない(笑)セリフだとは思うけれど、やはり人は恵まれすぎていると余計なことに目移りして「本当に欲しいもの、本当に必要なもの」が見えなくなる生き物なのかもしれません。  あの時代の日本は「サル」と列強から蔑まれつつも、当の日本人は真面目すぎるほど真面目に「欲しいものに向かって必死だった」からこそ、こんなカッコイイ男たち(決してスマートではないけれど)がいた・・・・・それが真実なのかもしれません。

 

 

さて、とりあえず物語の方は日露戦争までいってしまったわけですが、スペシャルドラマの方は年内は真之のアメリカ留学まで・・・・ということのようなので、とりあえずここで一休止し、今回のドラマで「読みたい熱」を煽ってもらっちゃった「学問のススメ」に寄り道したいと思います。

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このページは、KiKi (Brunnhilde)が2009年11月30日 19:14に書いたブログ記事です。

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