現代語訳 学問のすすめ 福澤諭吉

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先日のNHKスペシャルドラマ「坂の上の雲」視聴をきっかけに、遅まきながら読んでみたくなってしまった福澤諭吉の「学問のすすめ」。  さすがに文語体の原文では敷居が高そうだったので、まずは現代語訳のこちらを手に取ってみました。  それにしても・・・・同じ日本語のはずなのに文語体ではどうにもこうにも読みにくい・・・・というのが最高学府を終了しているはずの人間の言うことなんだろうか? ^^;  恐らくあの世の福澤諭吉先生も天の上から我々を見下ろして、深々とため息をついていらっしゃることでしょう。  「だから、あれほどよく学べと諭したつもりだったのに・・・・・」と。

現代語訳 学問のすすめ
著:福澤諭吉 訳:斎藤孝  ちくま新書

41JxEYDGqGL__SL500_AA240_.jpgのサムネール画像    (Amazon)

この本、「学問のすすめ」というタイトルが冠されているために、不勉強な KiKi は学生向きの勉学の推奨本なのかなぁ・・・・と勝手に思い込んでいました。  で、大学生の頃、一度だけ岩波文庫に収録されている文語調の「学問のススメ」を手にとってみたこともあるのですが、英文科の学生だった KiKi にとって英語以上に外国語に思えてしまい(^^;)、結果的に読了することができませんでした。  文語調って格調が高すぎて当時の KiKi にとって(ひょっとすると今も?)は敷居が高すぎたんですよね~。  でも、KiKi が矛盾していたのは英文科で「シェイクスピア」なんかは結構読んでいて、日本語の古い言葉は敬遠していたのに、古英語にはチャレンジしていたのは何だったんだろう?(笑)

ま、それはさておき、実際に今回この「現代語訳 学問のすすめ」を読んでみて思ったのは、これって決して学生向きの勉学推奨本な~んていう類の本ではないなぁ・・・・と。  まあ、読み進めていく中で「読み易く」はあったんだけど、正直なところあまりにも表現がくだけていて(ふざけているということではなく、現代風にかみくだいてあって)、どこまで原典に忠実なんだろうか?という疑問は持ったものの、「気概」を持って生きるとはどういうことか とか 物事の「筋」を見極めるためには学問(勉強のための勉強ではない真の学問)が必要である とか、現代にも通じる様々な問題提起がなされているのがとても新鮮であるのと同時に、これを書かれたのがいまだサムライ精神が死に絶えていなかった明治初期であることに強烈な驚きを感じました。

 

「天は人の上に人を造らず、人の下に人を造らず」というあまりにも有名な出だしで始まるこの本。  でもそのクロージングが「人間のくせに、人間を毛嫌いするのはよろしくない」というものだったということは、今回初めて知りました。  恐らく福澤諭吉という人は、ものすご~く賢くて、頭の回転も速く、物事の本質を見抜く力や物事の先を見通す力の長けた人だったんだろうと思うけれど、同時にものすご~く人間好きの人だったんだろうな・・・・と思います。  そして当時は精神的に卑屈な人間が多い中で、それでも人間の可能性を信じ、何を根拠にしてか・・・・はわからないけれど、人間の成長と進歩を切実に、でもある意味無邪気に信じることができた人なんだろうな・・・・・と。  

読了してみて驚いたことに、この本の中で福澤諭吉が述べていたことのほとんどが、現代にも当てはまる・・・・ということです。  逆に言えば明治以後平成まで、我が日本国は経済的には潤ったし、悲しい歴史を経たうえではあったけれど今では平和な生活が享受できているし、先進諸国の仲間入りをして重要な国際会議にも参加できるようになったし、大学&短大への進学率も50%を超えたけれど、思想的にはさほど成長していないのではないか・・・・・という想いが強くなりました。

福澤諭吉の重要な論旨の1つに「個々人の精神的独立が一国の独立の基礎となる」というものがあるように思うのですが、果たして現代人は「精神的に独立」できているのでしょうか?  例えば我が身を振り返ってみても、KiKi はある意味で「自分のことしか考えず、非常に利己的な人間で、愛国心のかけらもない」という自覚があります。  「誰かが自分のために何かをしてくれる」的な他力本願の考え方を持っていないことにより、逆に言えばその反作用的に、「自分のことは自分で何とかする ≒ 人や国に過剰な期待をしない ≒ 自己責任において何とかするから放っておいてくれ ≒ 社会への貢献意識が希薄」という症状に近い・・・・それが KiKi なんじゃないかと思うんですよね。  で、そうなると本当の意味での「精神的独立」というのは何だろう?  愛国心に結びつくような「精神的独立」というのはどんなものなのか?が見当つかなかったりするわけです。

そのヒントとなるのが「一国は会社のようであり、人民は会社の人間のようであって、ひとりで主人と客の2つの役目をつとめるべきなのだ。」という部分と「文明とは、世界中の過去の人々が一体となって、今の世界中の人=我々に譲り渡してくれた遺産なのであって、その大きく広いことは、土地や財産とは比べ物にならない。  (中略)  要するに、我々の仕事というのは、今日この世の中にいて、我々の生きた証を残して、これを長く後世の子孫に伝えることにある。」という部分にあるんだろうな・・・・と思います。  が、概念的・抽象論的・感覚的にはわかるんだけど、じゃあどうする?がなかなかしっくりとこない。

まあ、KiKi は未だに福澤先生が仰る「蟻レベルで満足している蟻の弟子」程度の人間なんだろうなぁ。  「万物の霊長たる人間としての目的を達したものとはいえない。」のはまさに今の KiKi です ^^;    

もう1つ、今回の現代語訳を読んでいて非常に印象に残ったのは「権利」(right) という言葉を敢えて「権理」という文字(≒言葉)で繰り返していることです。  訳者の斎藤孝さんが「あとがき」でも述べていらっしゃるように、「権利」だと「自分の利益ばかりを主張すること」に繋がり易いが、「権理」だと「きちんとした理が通っている」というニュアンスになるので、敢えて福澤諭吉が使っている「権理」を採用したとのこと。  冒頭、1ページ目のあの超有名な一語の後にいきなり出てくるので最初は「へぇ、昔はこの字を使っていたのか」ぐらいにしか思わなかったけれど、何度も繰り返し出てくるのを読んでいるうちに何だかこちらの「権理」の方が KiKi にとってはしっくりくるような気がしてしまいました。

こういうときにどちらの文字を選ぶのか・・・・とか、文字(言葉)にこめられた真意を考えるということがある意味、「役に立つ学問」のスタート地点なのかもしれません。  

 

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