NHK「坂の上の雲」第3回 Review

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第3回 国家鳴動 2009年12月13日(日) 放映
 【総合テレビ】 午後8時00分
 【デジタル衛星ハイビジョン】 午後5時30分
 【衛星第2】 午後10時00分

西欧列強の荒波の中に漕ぎ出した「少年の国」明治日本もまた、主人公たちと同じように、世界という舞台で悩んでいた。

明治22年(1889年)、大日本憲法発布、日本は近代国家の基礎を固め始めた。  この年の夏、子規(香川照之)は病気療養のため松山に帰郷。  真之(本木雅 弘)も江田島から帰省し、二人は3年ぶりに再会。  子規は俳句の道をいくと打ち明ける。

明治24年5月、来日中のロシア皇太子ニコライ2世が暴漢に襲われ、ヨーロッパの大国ロシアとの間に緊張が走る。  その頃、海軍兵学校を卒業し海軍にいた真之(本木雅弘)は 後の連合艦隊司令長官となる東郷平八郎(渡哲也)と出会う。

フランスから帰国し陸軍士官学校の馬術教官になっていた好古(阿部寛)は、児玉源太郎(高橋英樹)の勧めで多美(松たか子)と結婚。  そして二人は海軍、陸軍でそれぞれに臨戦態勢に入るのだった。

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NHK松山放送局のHPより転載)

第1回及び第2回では、この物語の主人公たちはまずは自分がどのように生きるべきかに迷い、悩み、何かを選択し、その中で転機を迎えという「青春群像劇」という感じがしていたものが、この第3回を迎え、彼らはようやく個人から公へ、明治という時代の中で母国日本のために自分が何をなすべきか・・・・という生き方への転換が見られるようになった・・・・そんな気がします。  そう、要するに本当の意味での「大河ドラマ」になってきた・・・・そんな感じです。  もちろん彼らの青春時代は KiKi が過ごしてきたそれと比べるとはるかに己よりも国をいかにすべきか、その中で自分は何をなすべきかという意識が強いという印象があるんだけど、好古さんはちょっとだけ年長なので若干別格としても第1回及び第2回の真之さん & 子規さんはやっぱり何のかんのと言ってもよくも悪くも「書生さん」だったと思うんですよね。  「書生さん」っていうのがどういうステータスなのか?と問われれば、好古さんが小説の中で至極明快な定義をされています。  「要するに何者でもない存在」・・・・・と。  好古さんだけは第1回からして、かなり大人びた子供だったと思うけれど、真之さんはある意味本当にヤンチャ坊主で、第2回にして「海軍兵学校へ行く」と決めたものの、まだまだ駆け出しのヒヨッコだったし、子規さんは「俳句をやっていく」と目指す方向こそ決めたもののやっぱり書生さんのままだったのが、みんな本当にたくましくなられました。    

子規が初めて吐血したのが、まだ学生帽を被っていた「書生さん」の年齢であったことがとてもショックでした。  当然小説を読んでいて知っていたはずなんだけど実は KiKi は実感できていなかったんですよね~、そこまで若い時代だっていうことは。  でもね、今回のドラマでそれを映像で見せつけられた時、何とも言えない感情が湧きあがってきました。  帝国大学を辞めてまで「新聞日本」に居場所を見出そうとした子規。  残された時間が短いことに焦り、とにかく「何かを遺さずには終われない」という意識を持った子規。  自分の生きた証を残すことにそこまで必死でいられたのは、明治と言う時代故なのか、病身故なのか、それとも武士の時代に生を受けた人間特有の生きざまなのか・・・・・。  相変わらず自分が何者なのか迷い続けている KiKi にしてみると、本当にスゴイことだと思います。

そしてもう一つ、今回の子規を観ていてあらためて感じたのは KiKi は現代にはびこる拝金主義を軽蔑しているつもりだったけれど、実はそれが欺瞞だったことに気がついてしまいました。  KiKi は子規のように「人の偉さを測る尺度は色々あるけれど、10円で10円分の仕事をする人間よりも1円で10円分の仕事をする人間の方が偉いんじゃ」と思ったことはただの一度もありません。  「楽して儲ける」という発想は KiKi の中にはなかったと自信を持って言えるけれど、外資系の会社で長く仕事をしてきたせいか心のどこかに Pay for Performance という意識があって、「やればやったなり、やらなければそれなり」という考え方が軸にあるんですよね。  やればやったなりだから拝金主義とはちょっとは違う・・・・・と思いたいけれど、でも「やればやったなりに稼げる」ことが前提になっている時点でやっぱりどこか子規や真之、そして好古とは根本のところで価値観が違ってしまっている自分を再発見してしまったような気がします。  それにそもそも Pay for Performance という考え方自体が金に価値観を置いているわけで・・・・・。  ひょっとしたらこれが KiKi には愛国心がないという自負があるということと広義では同じこと・・・・なのかもしれません。  少なくとも利己主義であることだけは間違いのない事実・・・・だと思うんですよね。

ここまでのお話の中で KiKi はどうも好古さんがことのほかお気に入り・・・・・のような気がしていたんですけど、この回をもってそれは確信に変わりました。  何ていうか KiKi が理想とするプライドを持っている人だと思うんですよ。  そして、大切にすべきものが何かという美意識に近いものに共感 もしくは 憧れを感じることができる人・・・・そんな風に感じたんです。  今回のドラマの中で一番好きだったエピソードが秋山家の当主八十九翁の死に際し、好古が真之に送った手紙です。  筆まめだっていうこともポイントが高いんだけど(笑)、その文面に溢れている弟や家族に対する思いやりの心、そしてそれ以上にフランス式に八十九翁の言わば「死亡通知」をフランス語でしたため、それを知人に配って「秋山好古大尉の父としてその名がフランスに知れ渡った」と言う好古さんの心意気みたいなものにものすご~く感じ入ってしまいました。  

この回で印象的だったのは主役3人もさることながら、実は脇を固めている名優の皆さんが演じていらっしゃる「教科書にも名前が載っている皆さん」だったりします。  初代首相の伊藤博文さん。  実は KiKi は伊藤博文という人のことをほとんど知らなかったなぁ・・・・と思うんですよね。  彼が政治家としてどんな政治信条を持っていたのか、どんな理念で国を動かしていたのか、あまり考えたことがない。  だいたい教科書にこそ載っているけれど、伊藤博文が主役の小説を読んだこともなければ、ドラマを観たこともない。  KiKi が知っているのは「大日本帝国憲法」の起草に関わった人で、初代首相で(その後何回か首相を経験)、元はと言えば下級武士の出身で高杉晋作の使いっ走りで、激動の幕末~明治を生き抜き最後まで立っていた男で、旧日本円のお札になって、韓国で暗殺された・・・・・ことぐらい。

でも日本が日清戦争を始める時の首相だったんですねぇ。  日清戦争は元寇や秀吉の朝鮮出兵以来、初めて日本が対外戦争に踏み出していった戦争なだけに、それを決断しなければならなかった時の苦悩、自分の下す決断への迷い等々はいかばかりのものだったか・・・・・。  「夢の中で今でも高杉さんに叱られちょる」と語る伊藤博文さんの姿に、リーダーの孤独をしみじみと感じました。  「臆病なほどの平和主義者」という陰口がたたかれていることを承知しつつ、戦争を回避しようとする姿勢を貫こうとする・・・・そんな首相だったんですねぇ。

そして「カミソリ」と言われたらしい、外相・陸奥宗光さん。  陸奥宗光と言えば列強と日本の間で結ばれていた「不平等条約」の改正に辣腕を揮った人という教科書的な知識しかなかったんだけど、対清強硬路線の人だった・・・・ということもこのドラマで初めて実感したことでした。  でもこの頃から既に彼の命を奪うことになる肺結核に冒され始めていたんですねぇ。  正岡子規も陸奥宗光も、ちょっと古い所では新撰組の沖田総司もみ~んな肺結核。  やっぱり栄養と衛生状況の問題なんでしょうか?  そう言えば最近あちらこちらで「結核は過去の病気ではない」という言葉(スローガン?)を見かけるけど、現代日本にもこの病に罹患している方は多いのでしょうか?

好古さんが出陣する前に残した、生まれ来る子供の名前。  KiKi はね、「子供の名前に親が籠める想い」に関しては、「こんな子になって欲しい」という言わば夢・・・・というかそういうものがあるように思っているところがあるんだけど、このシーンを見ていてこれから戦に赴く人たちにとっては、帰れないかもしれない自分の分身・・・・みたいな想いの方が大きかったのかな・・・・・と改めて思いました。  もちろん今でも「おじいちゃんから一字もらった」とか「お父さんとお母さんから一字ずつもらった」という命名もあるけれど、昨今ではそういうのってめっきり減ったように思うんですよね。  それは言ってみれば何よりも明確な平和の証・・・・・なのかもしれません。

地方の一巡査がロシア皇太子に斬りかからずにはいられなかった時代。  清国の親善名目の北洋艦隊にそれを目にした日本人は誰もが度肝を抜かれた時代。  列強の足音を感じずにはいられなかった時代。  富国強兵・文明開化に焦らずにはいられなかった時代。  その延長線上にいるはずの自分たち。  考えさせられることが多い「明治という時代」だなぁと改めて思います。  う~ん、明治生まれの祖父母の話をどうしてもっと聞いておかなかったんだろう。  

      

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このページは、KiKi (Brunnhilde)が2009年12月15日 06:33に書いたブログ記事です。

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