ニーベルンゲンの歌 & ニーベルンゲンの宝 G. シャルク

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今日はここ何回か連載した石川栄作教授の「ニーベルンゲン関連」の著作のベースにある叙事詩の傑作「ニーベルンゲンの歌」をご紹介したいと思います。  当分の間 KiKi の読書カテゴリーのエントリーはこの「ニーベルンゲン関連本」に関するエントリーが続いちゃうと思いますが、悪しからず・・・・。  何せ今年のテーマなもんで ^^;

ニーベルンゲンの歌
訳: 相良守峯  岩波文庫

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51TJFY8XGRL__SL500_AA240_.jpg  (Amazon)  (Amazon)

ニーベルンゲンの宝を守る竜の血を浴びて不死身となったジーフリト。  だが妃クリエムヒルトの兄グンテル王の重臣ハゲネの奸計により殺されてしまう。  妃の嘆き、そして復讐の誓い。  こうして骨肉相喰む凄惨な闘いがゲルマン的忠誠心の土壌のうちに展開する。  均整のとれた美しい形式と劇的な構成をもち、ドイツの「イーリアス」と称せられる。  (前編表紙より転載)

夫ジーフリト暗殺に対する復讐を誓ったクリエムヒルトは、その手段としてフン族のエッツェル王の求婚に応じた。  そして10余年、宮廷に兄グンテル王、めざす仇ハゲネらを招いた彼女は壮絶な闘いの上これを皆殺しにする。  しかし自身も東ゴート族の老将の手で首をはねられる。  戦いは終り、あとにエッツェル王ら生者の悲嘆を残して幕は閉じられる。  (後編表紙より転載)

 

ニーベルンゲンの宝
著:G. シャルク 訳:相良守峯  岩波少年文庫(特装版)

2010Jan11_001.JPG  (単独では販売していないようです。
                    特装版_30冊セットで Amazon)

 ドイツのえら~い学者さんが、「ドイツ文学史」というたいそうな本の第1巻に 「ドイツの作家精神の生んだ最大の産物、ドイツ人気質をもっとも完全に、かつ明瞭にあらわしている作品、そして万一ドイツ民族がこの世から消え失せた暁に、この民族の名をもっとも輝かしく世にのこすべき作品をあげよとならば、我々はそれをただ二編の文学に局限することができるであろう。  それはすなわちニーベルンゲンの歌ゲーテのファウストである。」と絶賛した・・・・とされる、「ドイツのイリヤス」とも呼ばれる作品です。  この本をこの文庫で通して読んでみるのは何年ぶりのことでしょうか。  せっかくリングで年明けを迎えた今年だからこそ再読する気になった本・・・・と言えるかもしれません。

イリヤスの方が古いにも関わらず、一応あちらは「ホメロス作」ということで全世界共通認識が持たれているのに対し、こちらの方が新しいにも関わらずこちらは「パッサウからウィーンに至るドナウ地方出身の詩人」という以上には作者に関して世界的な統一見解というものが持たれていません。  そしてこの叙事詩は「ニーベルンゲン詩節」と呼ばれる一種独特の形式、リズム感で書かれている韻文なのだそうですが、ドイツ語の読めない KiKi にはそれがどれほど素晴らしいものなのか、正直なところ漠然・・・・としかわかりません。  もっともこの韻文を翻訳されていらっしゃる相良守峯さんのご努力のおかげで、とっても味わいのある訳文がいかにも「歌」という雰囲気を醸し出してくれています。

前編は19歌章、後編は20歌章から成り、ゲーテは「前編はより多く華麗、後編はより多く強烈。  しかし両編ともその内容において、また形式において、相互にまったく均衡を保っている。」と仰っているとか・・・・、確かにその通りで前編はきらびやかな宮廷生活描写や明るいジーフリトのおかげでゴージャス感に溢れています。  これに対して後編はクリエムヒルトの結婚 & リュエデゲールの元での祝宴あたりまでは辛うじて華麗な感じを保っているものの、それでもどこかに最後にぱっと燃えさかるロウソクの炎のような、そして仇花的な雰囲気もあり、グンテル王御一行様がエッツェル王の宮殿に到着してからは血みどろ、力(Power)のインフレ、火責め、壮絶・・・・・と恐ろしい世界が繰り広げられ、そして誰もいなくなった・・・・(嘆息) っていう感じです。

過去にこの本を読んだときはゲーテのいう「両編とも内容 & 形式において、均衡を保っている」というのが理解できなかったんですよね。  どちらかというと、前編では貞淑な乙女チックなクリエムヒルトの変貌がおよよ・・・・だったり、前編であれだけ存在感を示していたプリュンヒルトが後編では消え去ってしまっておよよ・・・・だったり。  でもね、今回は例の石川教授の2つの著作 (1) (2) と並行して読み進めていたために、ゲーテのいう「保たれている均衡」というのがどういうことなのか KiKi にもよく理解できたように思います。 

(注:  以下↓ の添付ファイルはPDFファイルで KiKi の備忘録として添付してあります。  開くのに時間がかかる可能性がありますので、「『ニーベルンゲンの歌』を読む」をお持ちの方は参照ページを見て本を開いていただいた方がいいかもしれません。)  

IMG_0002.pdf   (「『ニーベルンゲンの歌』を読む」の P. 206 - 207;  前編-後編における結婚と招待
            における旅と場所
の二重構造を図解したもののコピー) 

IMG_0003.pdf  (「『ニーベルンゲンの歌』を読む」の P. 210 - 211;  前編-後編における結婚と招待
            における人の動き & 役割の二重構造を図解したもののコピー)

なるほどね~。  確かに石川先生が仰る通り、前編と後編では同じきっかけ(出来事)が立場や場所を変えて発生し、そこに絡む人たちの性格やら動機やらが異なることにより、別の結果(出来事)が発生している物語になっていることがよくわかります。  そういう意味ではバランスのとれた構成・・・・とでも言いましょうか。  「詩」とか「歌」っていうのはやっぱりどこかで「形式美」みたいなものに対する意識があるんでしょうね。

ところで・・・・・・

同じ「ニーベルンゲンの~」で始まる物語なのに「ニーベルンゲンの歌」だとプリュンヒルトって悲しいぐらい困った子ちゃんの王妃様で終わっちゃうんですねぇ~。  前編のプリュンヒルトとクリエムヒルトの口喧嘩のシーンなんかは、正直「まったく女ってヤツは・・・・ ^^;」って同じ♀ながらも思ってしまう(笑)  登場した段階ではハゲネも真っ青な女丈夫だったのにねぇ。  ジーフリトに帯を奪われてからは泣くは喚くは、大笑いはするは・・・・・ ^^;  でもジーフリト暗殺が終わっちゃった途端にお役目終了・・・・・。

で、後編にはチラリ・・・・としか(それもホントにチラリ・・・・ ぐらいと言ってもいいかもしれない。)出てきません。  っていうかあの程度だと出てこなかったと一緒でしょう。  生き残っていて仮にもグンテル王の妃なのにねぇ・・・・・。  グンテル王は最後に一族もろとも死んじゃうのにねぇ。  せめてクリエムヒルトに結婚話が持ちあがったあたりのところではもう少し出番を増やしてあげてもよさそうなものだ・・・・と思わないわけではないけれど、そうすると上記(↑)の全体のバランスが崩れちゃうんでしょうね。  前半での役割が強烈だっただけに・・・・・(笑)

でもねぇ、Brunnhilde というHN(別名)を持つ KiKi としては寂しい限り・・・・・なのですよ。  で、それが悔しいから・・・・というわけじゃないけれど、かのゲーテさんはこの叙事詩を評して「モティーフは徹頭徹尾異教的」と仰ったらしいけれど、KiKi にはプリュンヒルトの存在感が薄くなっちゃったということだけでも「異教的要素は薄くなっちゃっているよなぁ」と思えてしまうのです。

 

さて、最後に・・・・・

一応岩波少年文庫の「ニーベルンゲンの宝」についても簡単に触れておきますね。  これは「ニーベルンゲンの歌」が95%、残りの5%がジークフリートの鍛冶屋修業 & 竜退治エピソードについて語っている子供向けの散文の物語です。  因みにジークフリートはニーデルランド王国の王子様(両親はジークムントとジーゲリント)なんですけど、彼らはヴェルズンゲン族でその先祖はオーディンである・・・・としっかりと書かれています。  で、ジークフリートは世界に旅立ってとある森で鍛冶屋に出くわし、何故か 「ぼくもひとつ、鍛冶屋の職人になって剣をつくってみたいものだ。  これは勇士にふさわしい仕事だからな。」 などと仰います。  鍛冶屋さんのどこが勇士にふさわしい仕事なのか KiKi にはよくわからないけれど、まあ、鍛冶屋さんの親方の名前がミーメルなので、大目に見てあげることにします(笑)

で、この親方に森の奥に住む炭焼きを訪ねるように言われ(実際は彼らはその炭焼きの側に住む竜にジークフリートを始末してもらうためにおつかいに出した)、自分で鍛えた剣を手に出かけ・・・・・と、ある意味、いろいろなタイプの物語から少しずつ要素を頂戴してまとめあげた物語・・・・という感じです。

ニーベルンゲンの歌ではあっさりとハーゲンに語られちゃう「ジークフリートの冒険」部分にそこそこページを割いている(1章分)ところが、KiKi にとっては嬉しいところです。  で、残りの18章はすべて「ニーベルンゲンの歌」をあっさりとまとめた・・・・っていう感じです。  ま、「ニーベルンゲンの歌」は「歌」なだけに、現代の私たちが読むとちょっとくどいなぁと思わないでもない繰り返しがあったりするけれど、そこはバッサリと切り落として物語風にまとめています。  でもね、さすがに相良守峯さんの訳なだけに、ところどこにはちゃ~んと「ニーベルンゲンの歌」が引用されているんですよね~。  こういうところが「岩波少年文庫」の侮れないところだと KiKi は思うんですよね(笑)

 

追記: このエントリーは2010年1月11日、四季さんのブログの関連記事に TB させていただきました。


追記2): 宮崎駿50選の中での宮崎氏のコメント

なんとおそろしく、血なまぐさく激しい物語でしょう。  英雄は倒れ、復讐は殺し尽くすまでつづきます。  すべてが亡びゆく、それこそが人間の運命であると、ニーベルンゲンの歌は語ります。  どう受けとめていいのか判らないまま、子供のぼくは強くこの物語にひかれました。  今もそうです。  (2011年12月15日転記)     

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コメント(2)

KiKiさん、こんにちは。
やっぱり形式美というのは、こういう作品の重要ポイントですね。
物語の構成はもちろんですし、詩自体の形としても。
その言ってしまえば窮屈な形式の中でいかに歌い上げるかというのが
私としてはものすごーくそそられるところです。
形式に捉われない自由詩は、それはそれでいいと思うんですけどね。
やっぱり形式美のある作品の方が好き~。
まあ、日本語で読む限り、あまり韻文的な部分は分からないんですけど
そこはそれ、想像力で補って読めば…(それでいいのか・笑)
でも、例えば日本の茶道なんかも、あのきっちり決められた所作が
あるからこその美しさがあるんですものね。

岩波少年文庫の30冊セットの内容が知りたくて検索していたのですが
ネットにはなかなかその30冊のリストがなく…
でもふと気がつけば「なつかしい本の記憶」という岩波少年文庫50年の
特別本を持っていたので、そっちで分かりました。…わはは。
「ニーベルンゲンの宝」は、元々1953年の本だったのですね。古いなあー。
でね、今調べてみたら図書館には復刻版がありましたよ。
今度借りてこようと思います。楽しみです♪

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このページは、KiKi (Brunnhilde)が2010年1月11日 11:51に書いたブログ記事です。

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