長い冬 ローラ・インガルス・ワイルダー

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雪に閉ざされたLothlórien_山小舎で、あまりの寒さに震えているさなか、「いやいや、こんな程度でオタオタしてはいけない!  もっとすごい寒さもあるんだから・・・・・  例えば・・・・・・」ということで記憶の壺を覗いてみました。  そして最初に思い出したのが小学校高学年の頃、何度も読み返したこのローラの物語でした。

長い冬
著:ローラ・インガルス・ワイルダー 訳:谷口由美子  岩波少年文庫

1145150.gif  (Amazon)

ローラたちの一家が住む大草原の小さな町を、長くて厳しい冬がおそう - 大自然とたたかいながら、力強く生きていったアメリカ開拓期の人々の生活がいきいきと描かれる。  (文庫本裏表紙より転載)  

でもね、当初は大好きだったこの物語なんだけど、ある時期を境に KiKi はこの物語には手を出さないようになってしまいました。  それは、「大草原の小さな家」というTVドラマがNHKで放映されるようになってからでした。  

物語だけを読んでいた頃の KiKi の中のチャールズ父さんは筋骨隆々ではあるんだけど、どちらかというと細面の髭面で、爽やかさみたなものとはちょっと無縁な無骨な男だったんだけど、ドラマを観るようになってからはマイケル・ランドンの顔しか思い浮かばないんですよね~。  ドラマとしてはハマリ役だったと思うけれど、チャールズ父さんにはあんな都会的なカッコよさは思い描いていなかった KiKi はそのギャップになかなか慣れることができなくてねぇ・・・・・。  慣れないにも関わらず、KiKi がイメージしていた父さんはどんどん薄れていっちゃうのが怖くもあり、淋しくもあり・・・・・・。  

TVや映画(要は映像)で作品を観ると「なるほど、こうだったのかぁ」と理解しやすい部分も多い半面、想像の愉しみがなくなっちゃうなぁ・・・・・・

それが子供ながらも KiKi が感じたことでした。  でね、そうなると本を読む楽しさが半減しちゃったような気がしたんです。  KiKi の場合、読書っていう行為のモチベーションになっていたのは「知識を得たい」とか「正しいことを知りたい」というような高尚(?)なものじゃなくて(それも皆無とは言わないけれど)、ある種のものすご~い手前勝手な自己満足を得るための娯楽だったんですよね~。  それがどんな自己満足かと言えば、物語に言葉で描かれている世界を色々想像してみて脳内映画化をすること(笑)  これがもっと上手にできて物語の全編が映像化できるようであれば KiKi は映画監督とか舞台監督のお仕事ができると思うんだけど、残念なことに多くの場合はシーンブツ切れなんですよ ^^;  特に外国の物語だと想像できる限界・・・・・みたいなものが多かったし。  そんな調子だからその想像は極めて個人的で凡そ万人受けするかどうかわからないようなシロモノではあるんだけど、そこがたまらなく楽しかったんですよね~。

 

 

 

230px-Michael_Landon.jpg 都会的なカッコよさを湛えるチャールズ父さんマイケル・ランドン  

ま、そういう意味では KiKi は決してドラマも映画もアニメも嫌いなわけじゃないけれど、正直、自分がまず本で出会って大好きになった物語が映像化されるな~んていう話にはどちらかと言えば懐疑的になっちゃう(笑)傾向があります。  でもね、これが逆だったらいいんですよ。  映像作品が先で小説が後ならね。  想像力は物語が先の場合よりも働かないのは事実だけど、その作品を知ることができた・・・・という満足感があるし、時間が限られている映像作品ではカットされているシーンが楽しめちゃうから(笑)  その典型的な例が、「ティファニーで朝食を」だった(カポーティの小説は大学生になるまで読んだことがなかった ^^;)し、「魔女の宅急便」でした。  ま、身勝手な話だ・・・・とわかってはいるんですけど、所詮娯楽なんだから、目いっぱい身勝手でもいいんじゃないかと自己擁護しちゃうチャッカリ者です(笑)

ま、今回、久々にこの本を読んでみようと思ったのは、もちろんこのブログの「岩波少年文庫読破企画」の一環でもあるんだけど、それ以上に、さすがにあのドラマの印象はだいぶ薄れてきたのでそろそろいいかな・・・・・と思ったからでもあるんですよね。  さて、では何はともあれ、この物語のお話をしましょう。

   

雪に閉ざされた極限とも言える世界を描いているのに、そこかしこに色彩感が溢れています。  そして音楽も。  物にあふれているのに虚無感を感じることが多い現代人に比較して、ローラたちには屋根と壁のある家以外にはほとんど何もないのに、虚無感だけはありません。  それは生き抜くことに真剣だったからこそ得られる充実感でもあるだろうし、「あるもので満足する」人間の防衛本能でもあるだろうし、実はしぶとい人間の底力が試されている緊張感からでもあるのだろうなぁと感じます。  

凡そ想像を絶するような7か月も続く猛吹雪の中、インガルス一家は備蓄してあった石炭を燃やし尽くし、パンを作る小麦粉もなくなり、明かり取りの油もなくなって、ついでに家の外は真っ白な世界で隣近所の様子さえ伺えません。  (そう言えば今回、雪の中から車を掘り出している時、ご近所の奥さんが仰っていました。  「ここに引っ越してきていただいて良かった~。  お宅の煙突から煙が出ているのを見て、『大丈夫。  私たちは孤立していない』って感じられて心強かったのよ~」ってね 笑)  そんな中で交わされるキャロライン母さんとチャールズ父さんの会話が KiKi の胸に突き刺さります。

「ほんの少しでいいから、油があれば、なにか明かりを工夫できるんですけど」  考えながらかあさんが言った。  「子供の頃は、こういう新式の灯油ランプなど聞いたこともなかったけど、明かりに不自由したときなんか、ありませんでしたよ。」

「その通りだ。」  とうさんがうなずく。  「時代は進みすぎているよ。  すべてがとてつもない早さで進んでしまった。  鉄道、電信、灯油、石炭ストーブ、こういうものはあれば便利だが、問題は、人々がそれに頼りすぎてしまうという点だね。」

開拓時代以上にすべてがとてつもない早さで進んでしまった現代。  もはやあるのが当たり前になってしまった多くの道具が私たちの生活を便利にしてくれたし、その物質的な充実度が進歩であり文明であると私たちは思い込んでいるけれど、それに安住し、頼りすぎていることに気づかされることは滅多にありません。  今回の一連の山小舎での騒動(?)で、いちいちオタオタしている KiKi への戒めの言葉のようです。

クリスマスだというのに、パイの材料も、ケーキを作りたくてもバターも卵も砂糖も小麦粉もない・・・・という状況でも、ある物の中から家族へのプレゼントを準備するローラと、6人家族のクリスマス・ディナーのためにカキの缶詰2つとわずかなミルクを準備する父さん。  そして、その乏しい食材で暖かく美味しいディナーを工夫する母さん。  人間の気持ちほどありがたいものはない・・・・ということに改めて気がつかされます。

町の商店から全ての商品が消えてなくなり(売れ尽くし、補充の電車が積雪のために来られない)、ホワイトアウト状態の雪の中、町の人たちのために小麦を入手しようと出かけるのが19歳の少年二人です。  日本でも昔の元服は17歳、早ければ14~5歳だったわけだから、19歳というのは決して子供とは言えない年齢なのかもしれないけれど、現代日本では一応20歳が成人で19歳は子供の範疇であることを考えると、彼らのなんと頼もしいことか!  しかも自分の持っている種小麦を放出しても、翌年の町の暮らしが成り立たないばかりか春まで生き延びることさえ難しいかもしれない・・・・ということまでをも考え抜いた末に、決断するアルマンゾの何と社会的なことか!

1つ1つのエピソードが、子供時代以上に感慨深く、雪に閉ざされた「静」の世界の物語であることにより逆にいっそう際立って人間の生命力の強さや生きることの躍動感が感じられます。  ああ、人はこうやって命を繋いできたのだ・・・・・と。

あとがきに著者のローラ・インガルス・ワイルダーさんが最初の日本語訳本が発刊される際に書かれたというメッセージが載っていました。

 

親愛なる日本の子どもたちに

あなた方は遠い国に住み、ちがった言葉を話しても、それでも、人間の生きていくうちに本当に値打ちのある物事は、私が、ずっと前に子供であった時と同じく、私たちみんなにとっても同じであると思います。  本当の値打ちのある物事は、年月が過ぎても、1つの国から他の国に移っても変わることはありません。

そういうものは、きっとあなた方も持っていると思います。  いつも一番いいことは、正直で誠実であること、自分に与えられているものを充分に生かせて使うこと、小さな日常のよろこびで幸福だと感じること、苦しい時にも元気にしていて、危険な時に勇気を持つことです。

あなた方みんなに対する愛と、あなた方の幸福に対するこの上ない願いとをお送りします。

1948年7月8日  心からなるあなた方の友 ローラ・インガルス・ワイルダー

 

1948年と言えば第2次世界大戦が終わってからまだ3年。  極東国際軍事裁判(いわゆる東京裁判)がまだ終わっていない時期です。  そんな時代(実際にこの物語が本として発刊されたのは1949年なのだそうです)にこの物語が初めて日本に紹介されたことに、時代を感じます。  そしてもっと感慨深いのは、著者のローラは2000年1月15日に93歳で亡くなったのだそうで、ずいぶん昔の出来事が描かれている物語のようでありながら、ほんの100年ほど前のことなんですよね~。  当時のアメリカはこんなだった(ニューヨークやワシントンは別世界だっただろうけれど)とは、俄かには信じ難い気分です。 

「時代は進みすぎているよ。  すべてがとてつもない早さで進んでしまった。」

このチャールズ父さんの言葉が、実感として響きます。

 

追記) 宮崎駿50選の中での宮崎氏のコメント

インガルス一家の物語として知られる作品の一編です。  長い冬は、町に住むようになってからのものですが、農夫の娘として生まれ育った幼年時代から少女時代、そして後に農夫と結婚してからのつづきも書いています。  苦しみだけでなく喜びにもあふれるこういう本が、日本の農民にもあったらなあと思います。  そうしたら、アニメーション映画にするのにって・・・。  (2011年12月15日転記)


追記2) 2012年2月1日に Koron さんからご指摘いただきました。  ローラが亡くなったのは2000年ではなく、1957年とのこと。  今となっては2000年1月に亡くなったのが誰だったのか、確認のしようがないのですが、間違った情報であることは確認できましたのでその一文を訂正(というより削除)しました。


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コメント(2)

私も大好きな本です。
とっても丁寧ねレビューで素晴らしかったです。
父さんの時代は進み過ぎているよは大人になるほどに、グサっときますね…

ちょっと気になったのですが、ローラが亡くなったのは1957年のはずです。1991年の段階で、マイケルランドンさんも亡くなっているので…それよりローラが長生きってのはおかしいような…

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このページは、KiKi (Brunnhilde)が2010年2月13日 10:08に書いたブログ記事です。

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