魔女の宅急便(その2) キキと新しい魔法 角野栄子

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KiKi の魔女研究(?)本のご紹介第4弾はこちらの本です。  第1巻と比べると倍ぐらいの厚さの本なんだけど、とっても読みやすくて、読んでいて気分もほんわか、なんとなく軽~くなってくるのであっという間に読み終えちゃった ^^;  ああ、この調子で第3巻まで読み進んでしまったら、KiKi は第4巻以降をどうすればいいんだろう・・・・・。  福音館書店のHPを見る限りではまだ今のところ文庫での発刊は予定されていないみたいだし・・・・・。  これは久しく足を伸ばしていない図書館のお世話になるしかないのかしら・・・・。  とは言っても、KiKi は週末はLothlórien_山小舎にも行かなくちゃいけないから、いつ行って借りてくるか? 借りたとしてもいつ返しに行けばいいのか? という大問題が発生しちゃうんだけどなぁ・・・・・。  こんな時こそ「魔女の宅急便」であっちからこっちへ届けていただきたいものです(笑)。  

魔女の宅急便(その2) ~キキと新しい魔法~
著:角野栄子 絵:広野多珂子  福音館文庫 

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魔女のキキと相棒の黒猫ジジの宅急便屋さんは2年目をむかえ町の人にもすっかりおなじみになりました。  そんなキキに大問題がもちあがり、キキは魔女をやめようか、と悩みます。  人の願いや、やさしさ・・・・見えないものも運ぶ魔女の宅急便のキキは再び新たな旅立ちをむかえます。  (文庫本裏表紙より転載)

第2巻の物語はあのアニメ映画にはほとんど出てこないお話ばかり・・・・だったけれど、やっぱり世界観は同じだったし、以前このエントリーにも書いた「自分が自分自身を信じられなくなってしまった」り「自己否定」することによって唯一の長所「飛ぶこと」に自信がなくなってしまうというプロットが映画よりも穏やかに・ゆるやかに、そして私たちの誰もが知らず知らずのうちに自己嫌悪の負のスパイラルに落ち込んでいくのと同じようにひっそりとキキの気持ちの中に忍び込んでいく様子が描かれています。  うんうん、KiKi はあの映画での描き方よりもこちらの原作の描き方の方が好きだなぁ・・・・。  まあ、映画の場合は上映時間の尺の中で色々なことを描かなくちゃならないから、あれはあれで仕方ないし、こっちのほうが好き♪ではあるけれどあっちも変わらず好き♪なんですけどね(笑)  

でもね、この小説は本当に巧妙に描かれているなぁって思うんですよ。  だってこのお話の前にはちゃんと伏線がはってあるんですもの。  キキがコリコの町に帰ってきて事業年度2年目の最初のお荷物(?)が動物園のカバさんなんだけど、このカバさん、隣の檻のライオンにしっぽをかじられたことによって「中心点行方不明病」という病気になっちゃったことになっていて、その病気の治療をしてもらうためにコリコの町からちょっと離れたところにあるイイナ町というところの獣医さんのところまで運ぶというお話になっているんですよね。  で、キキが終盤で自分のやっていることに迷いを感じ始めたころ、ポロっとつぶやくんですよ。  「私も中心点行方不明病になっちゃったみたい・・・・・」って。

この「中心点行方不明病」っていう聞いたこともない病気。  これは KiKi がず~っと拘っていてこのブログのエントリーの中でも時々ちょっとだけお話している「自分が生きていくうえで大切にしたいと考えている価値観の核みたいなもの」がユラユラしている状態のことだと思うんだけど、キキも小さな女の子に頼まれて「黒い手紙(本当の中身は「ごめんね。  仲良くしてね♪」というものなんだけど、その女の子のコミュニティの中では「のろいの手紙」ということになっている)」を運んでから、自分のやっていることに疑問を感じ始めてしまいます。  そして、その迷いがキキの順調な飛行を妨げ、さらには次のお客さんの大切な荷物を運んでいる真っ最中に、ほうきが壊れ、その大切な荷物をちゃんと届けることができなかった・・・・という最悪の事態まで招いてしまいます。  そしてさらに落ち込むキキ。  

そんな彼女の次のお客さんがず~っとお散歩をしていたけれど、体調を崩してそれができなくなってしまったおじいさんで、そのお仕事っていうのがそのおじいさん愛用の杖を持って、そのおじいさんのかわりに散歩をしてあげる「散歩を運ぶ」というお話。  そしてそのお仕事をしている中で出会ったイクくんの何気ない一言にドキリとさせられるんです。

 

「仕事、楽しい?」

 

 

でね、この「散歩を運ぶ」という物語の中でキキが出会う人は誰もが身近にある些細なことで「楽しんで」いるんですよね~。  おじいさんと公園で出会って「くすの木のくすさん」の向こうにある世界を歩いたことがあるという小さな男の子、おじいさんが散歩の途中で毎日立ち寄って、たった2歩ほどの散歩をヘンテコな歌を歌いながら一緒に楽しむ靴屋のおじさん、そして「心に決めている自分の特別な場所」を持っているイクくん、さらには留守がちな両親についていけず本当はさびしくてしかたないのに、それを素直に言えなくて、突っ張るために「つまらない」を言い続けながらクールを演じているウミちゃんという女の子。  自分にとって大切なもの、核になるものっていうのは決して遠くにある見果てぬ夢の中に隠れているわけではなく、自分の身近なところにあってある種「当たり前」の顔をしている物・事柄の中にあるということを、やんわりと伝えてくれるお話だと思います。

以前このエントリーにも書いたことだけど、人は行き詰ったとき活路を求めてジタバタして、あれやこれやと新しいことに手を出してみたりいろいろして、最初は本人もただ漠然と「得体の知れない何か」を待っているように思って焦ったりもするんだけど、どこかの段階から「やりたいこと」ではなく「自分にできること」を探し始めると思うんですよね。  そうやって見つけた「自分にできること」はいずれ「自分にしかできないこと」に変わっていく・・・・・。  そんな世界がこの物語には広がっているような気がして、何だか KiKi の心の中がポカポカしてきました。

KiKi はね、大人になって仕事をするようになってから「仕事っていうのは厳しいもの。  お金を稼ぐっていうのは楽しいことばかりじゃないもの。」と感じるようになって、逆に「楽しいか否か」というのは仕事をしている時には考えまい・・・・・としていた時期がありました。  でもね、そのうちに思ったのは「昼間の1番いい時間帯を拘束されて毎日毎日していることを楽しまないのはバカじゃないか?」と思うようになって、もちろん楽しいばかりではないのは変わらないんだけど、「楽しいことばかりじゃない仕事をどうやって楽しむか?」を考えるようになりました。  そして、何年かした頃、仕事をしていて「楽しい」と思えるような時期があって、今になって振り返ってみるとその「楽しい」と思えるようになった時期に KiKi の「仕事力」みたいなものがぐ~んと伸びたような気がするんですよね。  そして、今はその時に得たもので食いつないでいる・・・・・そんな気がするんですよ。  

        

そうそう、話は変わるんだけど、第1巻にも記述があって、今回第2巻の冒頭にも出てきた言葉についてもお話しておかなくちゃいけません。  それはね、

どうやら魔法はどんどん弱く、少なくなっているようです。  それはまっくらな夜と、まったく音のないしずけさがなくなったせいだという人もいます。  今は、いつもどこかが明るかったり、いつもどこかで音がするので、気がちって魔法がじょうずに使えなくなってしまったのだというのです。  民俗学者で、妖精や魔女についての昔話や伝説を研究しているとうさんのオキノさんは「そのうち、消えた魔法がもどってくることだってあるかもしれない」というのですが・・・・・・。

という文章。  確かに私たちの生きている時代は科学の時代で、魔法なんていう非科学的なものは「子供っぽい」とされがちで、「暗闇」っていうのは生産効率は下げるわ、人の精神に変な影響を与えることもあることがわかっているわ、犯罪は暗闇で起こることも多いから、明るくすることは「いいこと」だとしてきているわけだけど、KiKi がLothlórien_山小舎へ行くのが好きな理由の1つは、あそこには「夜らしい夜があるから」ということもあるんですよね~。  都会のネオンにはもう辟易としている・・・・というか。

Lothlórien_山小舎のあるところは前にこのエントリーでもご紹介した群馬県立天文台があるんだけど、そこでの天体観測の妨げにならないようにと「照明制限」みたいなのがあって、夜ともなればホント真っ暗なんですよね~。  でね、子供の頃は「暗闇」≒「恐怖」だったんだけど、大人になった KiKi にとってはこの山の「暗闇」≒「神秘的な安らぎ」になっちゃっているんですよね。  暗闇だから考えられること、感じられること、見えることがある・・・・・そんな気がするんですよ。  明るい光の中だと見えている気になっていることっていっぱいあって、でもそれは「見えている」かもしれないけれど「見てはいない」ことだったりする。  そんな風に感じることも多いんです。  う~ん、上手く言葉にできないんだけどなぁ・・・・・。

 

 

さて、この第2巻の副題は「キキと新しい魔法」です。  飛ぶことだけに拘って宅急便屋さんをやってきたキキが、アイデンティティ喪失の危機に陥って、お母さんのコキリさんからの手紙で

かあさんは自分で満足できるようなものを作って、人に喜んでもらえないだろうかって、くしゃみの薬を作るようにしたのよ。  作るって不思議よ。  自分がつくっても、自分がつくっていないのよ。

という不思議な言葉に出会い、この不思議な言葉を自分の中で温め始めました。  そうして、最終盤、キキはお母さんの薬作りをちゃんと習い直そうと決心します。  そして母娘で交わされる会話がとっても不思議なんだけど、素敵だなぁって思うんですよ。

曰く 「キキの薬はかあさんのとはちがう  だってキキが作るんだから。」

曰く 「きっといい畑が見つかる  これこそ私にぴったりと思える畑が  だってそういうものだから。」

曰く 「何もしなくていいっていうわけじゃない。  キキが感じ取る心をもっていることが大切。  それには、いきいきと、充実した毎日を送っていること。  そうやって魔女の計算っていうのができていく。」

曰く 「あれこれ心配しないで、じっとよく見ること。  自分の心の中も、まわりの風景も。  見えないものをじっと見るの。  そしたら必ずみつかるわ。」

 

何だかはぐらかされているような感じもしないじゃない言葉だと思うんだけど、これって何となく KiKi にはわかるような気がするんですよね~。  う~ん、ひょっとしたら KiKi にも魔女の素養があるのかもしれません(笑)

      

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おはようございます。早速参りました。デザイン美しいですよ。センスが凄くいいです。私の無骨なブログがお恥ずかしい。。。勉強します。

仕事、楽しいに越したことはないですよね。でも不思議なことに、若い頃、当時は真夜中(3時と4時とか)まで働いていたんですけれど、そのとき、「仕事楽しかったなあ」と思います。今も苦しいですけれど、何年か経ったら「楽しかったなあ」と思うんだろうなあ、と思っています。

また参りますね。

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このページは、KiKi (Brunnhilde)が2010年3月26日 12:31に書いたブログ記事です。

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