農場の少年 ローラ・インガルス・ワイルダー

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この日曜日は静岡県の実家で過ごしていた KiKi。  このブログでは実家のお話にはあまり触れてこなかったんだけど、実は昨年の春ぐらいから実家でちょっと問題が発生していて、KiKi はLothlórien_山小舎での生活と東京での生活と実家での生活の3重生活(?)をしています。  この3つの中で今までは実家での生活はちょっとだけ距離を置くようにしてきていたのですが、そろそろそうも言っていられない雰囲気になってきたなぁ・・・・と強く思った週末でした。  ま、そのお話は、気が向いたらこのブログでお話しすることもあるかもしれないけれど、いずれにしろブログの趣旨からは大きく外れるので、今日はこれ以上は触れないようにしたいと思いますが、色々なことを考えさせられている中で、やっとこさっとここちらを読了することができました。

農場の少年
著:ローラ・インガルス・ワイルダー 訳:こだまともこ 渡辺南都子  講談社青い鳥文庫

21YGN8E9WJL__SL500_AA140_.jpg  (Amazon)

ワイルダー一家のアルマンゾは4人兄妹の末っ子。  学校へ行くより、父さんのすばらしい馬や牛のせわができるようになりたいとねがっていました。  9歳の春、父さんは子牛のしこみ方やミルクじたてのかぼちゃの作り方を教えてくれました。  のちにローラの夫となったアルマンゾの少年時代をつづった物語。  (文庫本裏表紙より転載)

この「農場の少年」を読むと、あの「長い冬」での成熟したアルマンゾの行動や、あの「はじめの四年間」での農業にかける思い入れの深さは、一朝一夕で培われたものではなく、彼の少年時代からの興味、時間の過ごし方の延長線上にあるものだったんだなぁ・・・・としみじみ思いました。  そして、ひょっとしたらこのアルマンゾの生き方自体が、ほんの100年ぐらい前までの国を問わない人間の生き方の最大公約数だったのかもしれません。

「まったくひどい世の中になったものね。  ねこもしゃくしも農場を捨てて町に出て行くのが世の中の進歩だっていうの?  パドックさんにしたって、お客のごきげんをとらなければ、お金は手に入らないんでしょうに。  百姓の気に入るような荷馬車をつくらなかったら、やっていけないはずでしょ。」

「ローヤル(アルマンゾのお兄さん)が商人になるなんてくだらないことを言い出すだけで、もうたくさん!  そりゃあ、あの子は金持ちになるかもしれませんよ。  でも、あなたのようにりっぱな男には、ぜったいなれっこありません。  一生、毎日、毎日、他人にぺこぺこするなんて。  ・・・・あの子は、死ぬまで、自分の意にそまないくらしをすることになるんだわ。」

「お父さんはおまえに、自分で気持ちを決めて欲しいんだ。  パドックのところに行けば、いろんな点でらくな暮らしができるだろう。  どんな天気だろうと、外に出なくてもいい。  寒い冬の夜は、ぬくぬくベッドの中でねてればいいんだ。  わかい牛や馬がこごえるかもしれないなんて心配はせずにな。  降ろうと照ろうと、風の日も雪の日も、屋根の下にいられる。  かべの中にこもっていればいいんだ。  おまけに、いつでも、着るものも食べ物もいっぱいあって、銀行には金ががあずけてある、というわけだ。  しかし、違う面もあるんだよ、アルマンゾ。  町では、他人に頼らなければならない。  お前が稼ぐ金は、他人からもらう金だ。  農民というのは頼りにするのは、自分と土地と天気だ。  もし、農民になれば、自分の手で食べるものを育て、着るものを作り、自分の森で切り出してきた薪であたたまることになる。  仕事はきついけれど、自分がやりたいようにやればいい。  ぼうず、農場ではな、自由で独立した人間になれるんだ。」

アルマンゾのところに初めてきたヘッドハンティングのお話(馬車大工のパドックさんの後継者にならないかというお誘い)に対する、アルマンゾのお父さんとお母さんの言葉です。  この言葉の一つ一つから、「実は農業国、アメリカ」の実態と当時の一般的なアメリカ人の考え方がにじみ出ていると思うし、アメリカが本来掲げていた「自由」の本質というものが垣間見えるような気がします。

当のアルマンゾは全編を通して、「早く大きくなって1人で馬の世話をし、自分の力で馬を馭せるようになりたい!」と思い続けていた少年だっただけに、親の心配(特に母親)はどこ吹く風、はなから農場を捨てるなんていうことは考えてもいなくて、「お父さんと、まったく同じ生活をしたく」て、あっさりと「僕が本当に欲しいものは子馬なんだ。」と言います。  このくだりを読んでいて、KiKi は大学時代に読んだ村上龍の小説のどれか(多分「コインロッカー・ベイビーズ」だったんじゃないかと思うんだけど)にあった一節を思い出していました。

自分が最も欲しいものが何かわかっていない奴は、欲しいものを手に入れることが絶対できない

そんな言葉だったと思います。  アルマンゾは自分が最も欲しいものが何かわかっていました。  もちろん「自分で育てて自分で馭せる子馬」を手にした次は、具体的な対象物は変わっていったのかもしれません。  でも、アルマンゾが欲しかったもの。  それは「お父さんのような男らしい自分」であることに揺らぎはなかったんだろうと思うのです。

 

 

ローラの物語を読んでいる中で、立場や場所を変えて何回か「独立記念日」のお話が出てきます。  KiKi にはこの「独立記念日」関連のエピソードがとても興味深く感じられました。  新興国だった「アメリカ」、現代の世界をリードする超巨大国家になる前の「アメリカ」の存在理由やその理念、そして理念を信じる人たちの真剣さが垣間見えるお話だからこそ・・・・だと思うんですよね。  

この「農場の少年」の中の「独立記念日」の物語で最も印象深いのはアルマンゾのお父さんのアルマンゾへの「経済学の授業」のエピソードです。  独立記念日のイベント真っ盛りの町の片隅で、レモネード売りの屋台が出ていて、アルマンゾのいとこのフランクはお父さんからもらったお小遣いでレモネードを飲んでいます。  お小遣いな~んていうものをもらったことがないアルマンゾは当然、手持ちの小銭がないため、レモネードを飲むことができません。

で、フランクに囃し立てられたアルマンゾはお父さんにお小遣いをもらいにいきます。  それもしぶしぶ・・・と。  レモネードは飲みたいけれど、お小遣いをもらうということ自体に居心地の悪さを感じているアルマンゾの心理描写がとっても巧みな一節です。  で、5セントを欲しいといったアルマンゾにアルマンゾのお父さんは50セント銀貨を握らせて、経済学の講義を始めるのです。

「50セントは労働なんだよ、ぼうず。  金というのはそういうものだ。  これはつらい労働なんだ。  (中略)  半ブッシェルのじゃがいもを育てた労働が、この中にこもっているんだ。  これをやろう、アルマンゾ。  もし、そうしたかったら、生まれたばかりの子豚を買うこともできる。  それを育てれば、いまに何匹も子を産むかもしれない。  そうすれば、1匹が4,5ドルになる。  その50セントでレモネードを買って飲んでもいい。  好きなようにしなさい、お前の金だからな。」

そしてアルマンゾは一時の快楽を与えてくれるレモネードではなく、購入すれば労働が自ずとついてくる(そのかわりひょっとしたら Return も得られるかもしれない)、子豚を購入します。

そして、この「独立宣言の章」の結びは、アルマンゾとお父さんのこんな会話で結ばれています。

「お父さん、おのとすきがこの国をつくったってどういうこと?  イギリスとたたかってつくったんじゃなかったの?

「我々は、独立のために戦った。  しかし、我々の祖先がもっていた土地は、山と海のあいだにある、この国のほんの切れっぱしにすぎなかった。  ここから西の土地は、インディアンの国で、スペインとフランスとイギリスの国だったんだよ。  その土地全部を自分のものにして、アメリカを作ったのは農民というわけだ。」

「どうやって?」

「そこだよ、ぼうず。  スペイン人は軍人で、金(きん)にしか目がない、いばりくさった紳士だった。  フランス人は毛皮商人で、てっとりばやく金(かね)を手に入れようとした。  そして、イギリス人ときたら、戦争に大忙し。  ところが、我々は農民だろう、ぼうず。  ほしいのは土地だ。  山脈をのりこえ、土地を切り開き、住みついて耕し、頑張って農地にした。  この国は、今では5,000キロも西に広がっている。  カンザスの先、大アメリカ砂漠をこえ、このへんの山脈よりずっと大きな山脈を越えて、太平洋にまで達している。  ここは、世界でも一番大きな国なんだ。  そして、この国土全部を自分のものにしてアメリカをつくったのが農民なんだよ、ぼうず。  いいか、このことは、決して忘れるんじゃないぞ。」

まあ、ここまで読み進めてきた「ローラ物語」からもそこはかとなく伝わってくるように、開拓民の皆さんのご苦労はすごいものだったのもわかるし、「アメリカという国の礎を作ったのは農民である」というのも事実だと思うんですよね。  で、その農民たちは、帝国主義時代のスペインの軍人や、フランスの商人たちよりも、もっと地に足のついた、清貧を旨とした真摯なクリスチャンであったことも理解できるんですよ。  そういう面では尊敬もできるし、インガルス一家のローラ・父も、ワイルダー一家のアルマンゾ・父も生命力に富んだ、とっても頼もしい男たちであることは間違いないと思うんですよ。

でもね・・・・。  何となく素直にこのアルマンゾ・父の言葉を読むことができないのが大人になった KiKi なんですよね~。  子供時代の KiKi は、多分、ものすご~く素直に、「そうだよなぁ。  やっぱり昔のアメリカの開拓者≒農民は偉かったよなぁ。  私たちは感謝しなくちゃ・・・・。」と思っちゃったけれど、今の KiKi は、

「いやいや、スペイン人やフランス人やイギリス人よりはましだったかもしれないけれど、もともとはインディアンの国だったのにそれを追い出しちゃったことについてはどうよ??」

とか

「あいつら全員はダメダメだったけれど、俺たちって最高!  だから俺たちの言うことを聞け! 的な世界規模のおせっかいの萌芽はこんなところから発生しているのか?」

とか思っちゃうんですよね~(笑)

 

まあ、いずれにしろ、久々のローラの物語。  なかなか楽しむことができたし、久々に色々なことを考えさせられました。  と☆こ☆ろ☆で・・・・・・

ローラ関連本は実はこれらの物語以外にも2冊購入してあって、1冊は「ローラからのおくりもの」というエッセイ集。  そしてもう1冊は「小さな家の料理の本」という本で、こちらはローラ物語に出てくる様々なお料理のレシピ本です。  エッセイ集のほうはさほど時期をおかずに読んでみたいと思っているのですが、お料理のレシピ本に関しては、「Lothlórien_山小舎通信」の中の「山小舎の食生活」の中に新しいエントリーをたてて、実際にどれかを作ってみたときに何かを書く・・・・というカタチでご紹介していければな・・・・・と思っています。   

 

      

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このページは、KiKi (Brunnhilde)が2010年3月14日 23:17に書いたブログ記事です。

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