トムは真夜中の庭で フィリパ・ピアス

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Podcast な~んていう新しいものにチャレンジしようと悪戦苦闘しつつも、ノスタルジーの世界にもどっぷり浸りたい・・・・という相矛盾する衝動とのお付き合いを余儀なくされている(・・・・・って、別に誰に強制されたわけでもなし、好きであっちにもこっちにも手を出しているだけなんですけど・・・・)最近の KiKi。  KiKi の子供時代にはなかったものとの遭遇と、子供時代には身の回りにあふれていたのに長い間ちょっとほったらかし気味だったものの再発見。  あっちの時間軸、こっちの時間軸を与えられた24時間の中でウロウロしている KiKi にとって、「本来なら時計が刻むはずのない、プラスαのもう1時間」な~んていうものは、「是非是非、どんなことをしてでも手に入れたいものリスト」のトップ3に楽々ランクインしちゃうんじゃないかしら・・・・・。  本日の KiKi の1冊はそんな時間のお話です。  

トムは真夜中の庭で
著:フィリパ・ピアス 訳:高杉一郎  岩波少年文庫

1140410.gif   (Amazon)

知り合いの家にあずけられて、友だちもなく退屈しきっていたトムは、真夜中に古時計が13も時を打つのをきき、昼間はなかったはずの庭園に誘い出されて、ヴィクトリア時代のふしぎな少女ハティと友だちになります。  「時間」という抽象的な問題と取り組みながら、理屈っぽさを全く感じさせない、カーネギー賞受賞の傑作です。  (岩波少年文庫HPより転載)

トムとハティが遊んだ「庭園」の描写に心を奪われ、「なんて素敵なお庭なんだろう!!」と憧れとも羨望ともつかない想いを抱き、何度も何度も読み返していた自分の姿がページを進めるにつれて鮮明に蘇ってきました。  でもね、当時の KiKi は「時間」ということに対する感性・・・・・のようなものは、未だに育まれておらず、どちらかというとおばあさん(バーソロミュー夫人)の夢とトムの夢がたまたま一致した・・・・ぐらいの認識しかしていなかったように思います。  だいたい子供時代というものは「もう時がない」な~んていうことは考えもしないし、まして、今日と明日・・・・ぐらいしか意識の底にはなくて、過ぎてしまった過去を振り返ることも滅多になく、果てしない未来はただひたすらはてしない先の事・・・・だったように思うんですよね。

でも、大人になった今、読み返してみると、当時は風景描写にばかり気が向いていたけれど、(そしてその描写は相変わらず雄弁でワクワク・ドキドキはさせてくれるんだけど、)それ以上に「トムにとってのこの時間の意味」だとか、「ハティにとってのこの時間の意味」により多くの興味が移行していることに気がつきます。  と、同時に子供時代は大人っていうのは何だかとてつもなくすごいもんで、色々なことを知っているし、子供よりも多くの楽しみがありそうだし、自由そうだし羨ましいなぁ・・・・な~んていうことを思っていたところもあったような気がするけれど、結局のところ、実は大人だとか子供だとかそんなことは、関係ないような、そんな気分にさせられます。  特に最後にトムがバーソロミュー夫人を抱きしめるシーンに至っては、ヘンテコな恋愛小説よりもず~っとずっと、素敵なラブシーンだなぁ・・・・と。

 

この物語ではありえない時間を告げる大きな古時計が、いわばタイムマシーンみたいな位置づけなんだけど、これがまた幻想的でとっても素敵♪  この時計はおそらく調度品としても品格があってとても素敵なものだろうことは、作者の繊細な描写からも窺い知れるんだけど、KiKi は仮にこれがもっと普通の古時計(昭和初期ぐらいまで、多くの日本の家の茶の間の壁にかかっていたようなタイプの時計)であったとしても、何だかとっても素敵だと思えちゃうような気がします。  好きなんですよね~。  カチカチと小さな音をたてる振り子タイプのアナログ時計って・・・・・・。

イマドキのデジタル式の時計では絶対にこんなイマジネーションは沸かないと思うんですよね。  KiKiはね、どうもデジタル式の数字表示型の時計って好きになれないんですよ。  時間って言うのはやっぱり過去 - 現在 - 未来をつなぐ1つのツールなわけで、デジタル式の数字表示型の時計ってその中の「現在」だけを切り取ってひょいって見せられているような気がして・・・・・・。

時間の中には人の想いもあれば、営みもあって、本質的にはパーツパーツを切り取るような類のものじゃないと思うんですよ。  逆にそうやってパーツパーツで切り取ってしまうことによって、人間が本質的には体内に持っているはずの大切な何かを 「Done」 と 「To Do」に振り分けて切り捨てていっているような・・・・・そんな気がしちゃうんですよね。

今回 KiKi はこの物語をこのエントリーでお話した「岩波少年文庫 特装版」で読んだんだけど、手元にある今現在入手できる「ソフトカバー版」(このエントリーで画像紹介させていただいている版)の巻末にある作者の言葉がずっしりと心に残りましたのでご紹介しておきますね♪

庭園は、子供であるトムとハティの遊び場 - 共通の広場であった。  その庭園が、幼年時代の力強いイメージをはぐくんだ。  塀で囲まれた庭園 - 古い「閉ざされた庭」 は、幼年時代の、保護されている安全を意味する。  しかし、トムは庭園の高い煉瓦塀にのぼって、遠くの方に広がっている、子供の心を誘うような風景のことをハティに教えてやる。  そして、あとになると、こんどはハティが庭園をはなれ、川に沿ってイーリーの町までくだってゆく。  川というのは、人生の象徴であって、たえず流れ、変化し、人間をはこびさってゆく。  

キャム川は、その凍りついた水面の上を、イーリーの塔のまがりかどのところまでハティをはこんでいった。  ハティはトムといっしょにイーリーへ行ったが、トムをおき忘れて、ひとりでかえってきた。  すくなくとも、ハティはトムを文字どおりの友だちだとは見なくなった。  遊び友達としての少年を追いぬいて成長してしまったのである。  ハティはおばあさんになって、思い出の中にふたたび自分の過去を生き始めたときに、トムをもう一度ちゃんと見ることができた。  完全にみとめあったその瞬間に、ハティはむかしのままの少女として、トムの抱擁を受けるのである。  おばあさんは、自分の中に子供を持っていた。  私たちはみんな、自分の中に子供を持っているのだ。

う~ん、ひょっとしたら「大人になって児童文学を読み直す」という行為は、「過去を生き始める」まではいかないけれど、「自分の中の子供」を意識しだした際に、手っ取り早く手をつける、今生きることを余儀なくされている現実との「折り合いのつけ方」・・・・・みたいな部分があるような気がしてきました(笑)。    

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コメント(4)

こんにちは。
この小説は私も好きです。
時間ファンタジーものの古典的名作、
といわれますが
全編を貫く詩情、切なさがなんとも言えません。
ラストシーンは本当に美しいです。

「自分の中の子供」はいつまでたっても消えてなくなりませんね。

KiKiさん、こんにちは。
すっかり間があいてしまってごめんなさい~。

>ヘンテコな恋愛小説よりもず~っとずっと、素敵なラブシーン

確かに確かに!
あのシーンは本当に素敵ですよね。心が暖まります。

私は祖母の家にある古い時計をイメージして読んでましたよー。
多分明治時代の… 鍵みたいのでねじを回す古い時計です。
やっぱりアナログな時計っていいですよね。
ほんとイマジネーションが広がります♪

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このページは、KiKi (Brunnhilde)が2010年3月19日 22:06に書いたブログ記事です。

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