闇の守り人 上橋菜穂子

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KiKi が嵌ってしまった「守り人シリーズ」。  相変わらず図書館では借りられずにいる「闇の守り人」をどうしても読まずにはいられなくなって、かといってこれ以上いつ借りられるようになるのかさえはっきりしない状態で気長に待つこともできなくなって、ふと気がついたときには Amazon の Market Place で軽装版の一気買いという暴挙に走っていました。  まあ、もともと KiKi は大好きなシリーズとか何度も繰り返し読みたいと思う本に関しては蔵書にせずにはいられないという悲しい性を背負っているので、ことこのシリーズに関してはこれが運命だった・・・・・と考えるしかないのかなぁと自分の行動を正当化していたりするのですが・・・・・ ^^;  ま、てなわけで本日の KiKi の読了本はこちらです。

闇の守り人
著:上橋菜穂子 絵:二木真希子  偕成社

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   (Amazon)              (Amazon)

女用心棒のバルサは久しぶりに生まれ故郷のカンバル王国にもどる。  幼い日、カンバル王に父を殺されたバルサは父の親友ジグロに助けられ、生まれ故郷をあとにしたのだった。  しかし、ジグロはそのため汚名を着ることになった。  バルサはジグロの汚名を命がけで晴らそうとする。  野間児童文学賞、産経児童文化賞受賞の『精霊の守り人』の姉妹編。  (Amazon より転載)

軽装版に掲載されている作者・上橋さん自身のあとがきによれば「守り人シリーズの中では、この物語が大人の読者からもっとも支持されているようです。」とのことですが、KiKi は全作を読了したわけではないので「もっとも」かどうかまでは判断できないけれど、この物語が子供よりは大人に愛好されるのは納得できるような気がしました。  やっぱり「愛情」と「憎しみ」というある種の矛盾する感情が交錯する精神世界というのは、子供にはちょっと理解しづらいだろうし、それを子供時代に「読書」という仮想経験の中で感じることにはそれなりに意味があることだと思うけれど、それをわが身の痛みとしても感じられるようだとそれはそれでちょっと問題かなぁ・・・・と思うのです。

そもそも、精霊の守り人で「チャグムの用心棒」という稀有な経験をしたことにより、バルサがジグロの心にようやく触れることができたような気がしたからこそ、バルサの故国カンバルへの旅がある・・・・という彼女の心理的背景自体が、子供にはちょっと難しすぎるような気がするんですよね。  「精霊の守り人」でバルサがタンダに語ったのは「一度カンバルに戻って、ジグロの親戚や友だちに会って、ジグロが何に巻き込まれ、どんな一生を送ったのかを伝えたい。」という理由だったけれど、それも嘘ではなくかなり大きな理由の1つではあるだろうとは思うけれど KiKi には彼女がカンバルに戻ってみようと思った一番大きな理由はほかにあるように感じていたんですよ。

そうしたら案の定、著者はこの「闇の守り人」の序章で KiKi が思っていたとおりの理由をあっさりと書いてくれていました。  曰く  

身体についた傷は、時がたてば癒える。  だが、心の底についた傷は、忘れようとすればするほど、深くなっていくものだ。  それを癒す方法はただひとつ。  -きちんと、その傷を見つめるしかない。

KiKi はねぇ、まだこの本(「闇の守り人」)を読み始める前にあちらこちらにあるこの本の紹介文のいくつかの中にこのバルサのカンバルへの帰還があたかも「ジグロの名誉回復を目的とした旅だった」みたいな書き方をしているのを読んだ時、正直言ってものすご~い違和感があったんですよね。  結果的にはそういう行動になったのかもしれないけれど、所詮は裏稼業で生きてきたジグロとバルサ。  最初から「名誉がどうしたこうした」というようなある面きわめて利己的な発想を持っていたら、用心棒なんていう稼業では生きられないだろうと思うのです。  

それよりも KiKi がバルサだったら、もっと異なる感情で動いたと思うのです。  理由もわからず(ある程度はジグロから聞かされていたとは言え)、なぜ自分が幼い身で父親と引き離され、ジグロと逃亡の人生を歩まなければならなかったのか?  惨殺された父の一生は何だったのか?  そしてジグロは親友から頼まれたから・・・・とはいえ、なぜそれまでの生活のすべてを捨ててまで自分を連れて故郷を出ることを決意できたのか?  あの気の遠くなるような逃亡と特訓の日々は本当に必要だったのか?  自分はなぜ、用心棒稼業に身を置いているのか?  自分のこれまでの人生には意味があったのか?  ジグロの人生にはどんな意味があったのか??  

ある意味で刹那的とも言える生き方を余儀なくされてきて、それが身に染み付いてしまっていたバルサにそんなある種の迷いにも似た感情を起こさせたのは「タンダの愛情」によるところもあるだろうし、「精霊の守り人」のラストで自分の生き方を決然と決めたチャグムの影響も無視できないような気がします。  あの「精霊の守り人」のラストで、第一皇太子が病死し、第二皇太子だったチャグムが追われる者から世継ぎ人に運命を一転させたその瞬間に「おれ、行きたくない!  おれ、皇太子になんか、なりたくないよ!  ずっとバルサとタンダと旅していたいよ!」と泣きつかれたとき、

「・・・・・わたしと逃げるかい?  チャグム。  え?  ひとあばれしてやろうか?」

と応じたバルサ。  彼女はチャグムを「あるべき場所に戻したい」という想いもあったかもしれないけれど、もしもチャグムが「うん♪」と答えたら、おそらくは本気でひとあばれして逃げてやろうと思っていたと思うんですよ。  ただ、同時に彼女はおそらくチャグムが最後はそれを選ばないだろうことを理解していたし、実際、彼が「いるべき場所に戻る」ことを選んだとき、このついこの間まで自分が守らなければ散ってしまいそうに弱々しく見えた少年でさえ、「自分が生きるべき道は何かを選ぶ」・・・・というより「選ばされることを受け入れる力がある」という方が正確なのかもしれませんが、それを持っていることに感動したんじゃないかと思うんですよね。  じゃあ、裏稼業に身をやつしている自分は・・・・・?と思わずにはいられなかったんじゃないかと。 

  

帰国に際しバルサが選んだルート(裏道)で図らずも最初に出会うことになったのがジグロの親類縁者だったというのはちょっとできすぎのような気がしたけれど、最後まで読んでみてその「できすぎ」にも「必然性」があったことがスンナリ受け入れられたし、ヒョウル(闇の守り人)の正体を知ったときには唖然としたけれど、「山の王」の姿とカンバル人の糧となる「ルイシャ」と「山の民」(牧童)の描写という全体の構成の中で、何だか妙な説得力で説き伏せられちゃったような感じです(笑)

それにしてもヒョウルとバルサの「槍舞い」のシーンはものすごい!!  闘いそのものの描写もリアルなら、そこで交わされるヒョウルとバルサの想いも身を切るように切実に迫ってきて、久々に「読まされている感」を味わいました。  そして最後にヒョウルがバルサを抱きしめた格好になっているシーンでは「流れ行く者」で初めてバルサが人を殺し、嘔吐しながら泣き叫んでいるのをしっかりと抱きしめたジグロのシーンとオーバーラップして、ジグロの思いの深さとバルサのある種の「悟り」のようなものが感じられ、胸が打たれました。  あまりにも悲しいお話ではあるけれど、これってバルサが超えなければならなかった試練の1つだったんでしょうね。  今際の際のジグロが語った「バルサが抱え持っている怒りの向こう側へ行くため」の試練。

個人的にはティティ・ラン(オコジョを駆る狩人)と「山の王の民」(牧童)が存在する世界、そして、傍系であるがゆえにバルサも認める短槍の素質を持ちながらも「カンバル王の槍」にはなれないかもしれなくて、でも本来なら「王の槍」しか知りえないことを知り、「山の王の民」(牧童)と心を通わせる少年カッサのこれからに、半端じゃない興味があります。  バルサと手合わせしたときに言われた

「槍を使うのは、いざという時だけ、か。  ・・・・・・・それが、幸せなことかもしれないと、考えたことはあるかい?」

という言葉。  おそらくカッサは、今ではこのバルサの言葉の重みを理解できているだろうし、「牧童の仕事も王の槍の仕事も根っこの部分では同じなんだ」という確信を持てるようになっているし、バルサからジグロ - バルサ と伝えられてきた「短槍の輪」も受け継いだことだし・・・・・。  う~ん、カッサのその後を知りたいなぁ・・・・・・。  それからティティ・ランについてももっともっと知りたい!!  何だか最近ではちょっと忘れかけていたような気がする子供時代には KiKi も持っていた「なぜ?  どうして??  それから???」という好奇心をここまでかきたててくれる物語には久々に出会ったような気がします。

 

      

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このページは、KiKi (Brunnhilde)が2010年4月14日 23:27に書いたブログ記事です。

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