獣の奏者(探求編 & 完結編) 上橋菜穂子

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GW突入!  皆さんはいかがお過ごしでしょうか?  KiKi は当然のごとくLothlórien_山小舎に来ています。  GW初日に東京からこちらへ移動。  予想に反してさしたる渋滞にも巻き込まれず、あっさりと山小舎に到着しました。  でもねぇ、今回は6日に歯医者の予約やらお仕事やらの予定が詰まっているので5日のうちに移動しなくちゃいけないんですけど、ここ2日ほどの渋滞情報を見ていると帰りはとんでもないことになりそうで今から戦々恐々です・・・・ ^^;  ま、それはさておき、本日(ではなく、厳密には4月30日)の KiKi の読了本はこちらです。

獣の奏者(探求編 & 完結編)
著:上橋菜穂子  講談社

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あの「降臨の野」での奇跡から11年後ー。  ある闘蛇村で突然「牙」の大量死が起こる。  大公にその原因を探るよう命じられたエリンは、「牙」の死の真相を探るうちに、歴史の闇に埋もれていた、驚くべき事実に行きあたる。  最古の闘蛇村に連綿と伝えられてきた、遠き民の血筋。  王祖ジェと闘蛇との思いがけぬつながり。  そして、母ソヨンの死に秘められていた思い。  自らも母となったエリンは、すべてを知ったとき、母とは別の道を歩み始める・・・・・。  (探求編表紙扉より転載)

王獣たちを武器に変えるために、ひたすら訓練をくり返すエリン。 -決してすまいと思っていたすべてを、エリンは自らの意志で行っていく。  はるか東方の隊商都市群の領有権をめぐって、激化していくラーザとの戦の中で、王獣たちを解き放ち、夫と息子と穏やかに暮らしたいと願う、エリンの思いは叶うのか。  王獣が天に舞い、闘蛇が地をおおい、「災い」が、ついにその正体を現すとき、物語は大いなる結末を迎える。  (完結編表紙扉より転載)

優れた文筆家の手にかかると、続編と言えどもかくも完成度の高い物語ができるのか!  これが KiKi の読書中の驚嘆でした。  多くの場合、作家がいったんは筆を置いた物語の続編というのは、どことなく「ついで感」が漂い、1作目・・・・というか本作の勢いが感じられず「まあ・・・まあ・・・・、こんなもんか・・・・」的な思いがぬぐえなかったりすることが多いものです。  でも、この「獣の王者」の「探求編」と「完結編」に関しては、続編と言えば続編、新作と言えば新作という雰囲気がそこかしこに漂っていると思います。  それほどまでに、前2作と登場人物や世界観を共有しつつも別個の物語として存在していると思います。

KiKi は「闘蛇編」と「王獣編」のエントリー

KiKi にとって興味があるのは実はエリンとリランよりも、「真王(ヨジェ):セィミヤ」と「大公(アルハン)の長男:シュナン」のこれからだったり、「堅き盾(セザン):イアル」のこれからだったり、リョザ神王国のこれからだったりするのですが・・・・・・(笑)

と書いたわけだけど、この2編はまさにそのあたりを描いている物語というのが、KiKi にとっては Good! でした。  「真王(ヨジェ):セィミヤ」と「大公(アルハン)の長男:シュナン」が何を選択し、リョザ神王国が何に巻き込まれ、「堅き盾(セザン):イアル」や「エリン & リラン」が何をどう消化していくのか・・・・・  そのあたりに関してはきっちりと描かれていると思いました。  まあ、さすがにエリンとイアルの間に子供ができているとは思いませんでしたけれど・・・・・(苦笑)

 

全体的には本当に素晴らしい世界を堪能させてもらったと思います。  扱うテーマが大きすぎて若干踏み込みが足りないんじゃないかと思わないでもないところもあったけれど、上橋作品のひとつの特徴は「語り過ぎないところ」だと思っている KiKi にとっては多くのことを「自分なりに考えさせてもらえる」作品だと思います。  ただ、ねぇ・・・・・・。

1つだけ KiKi が「えぇ!!  そうなの??  どうしてそうなっちゃうの???  何で????」と思ったのは最終章、「エリンの木」です。  「エリンの木」のすべてが「えぇ!!!  何で????」となってしまったわけではなく、そこで語られている

真王セィミヤは母の前に伏し、王獣を完全に解き放つことを誓った。  王威を示す象徴として飼うことも、もはやけっしてしないと。  (中略)  母は、ついに、王獣たちを解き放ったのだった。

というくだりです。  エリンは確かに「闘蛇編」「王獣編」では野生の生き物たちを解き放ち、それぞれが「在るがまま」に「在らしめたい」と考えていたわけだけれど、この「探求編」と「王獣編」では自らのその思いにはある種のケリをつけて、「王獣」を兵力として使うための道を選んできたのだし、ましてその過程で教えを請うた王獣捕獲者オラムの言葉

「あんた、昔言ってたな。  あいつらを野に帰したいってよ。  -そりゃ、無理だろうぜ。  あいつらにゃ牙がねぇわ。  がつがつ獲物を食らう牙がよ。  こんな暮らしに慣れちまったやつらが、谷筋で、野生の王獣相手に自分の縄張りが張れるわけがねぇわ。」

はどうなっちゃうんでしょうか??  KiKi はねぇ、このくだりだけは上橋さんらしくないなぁと思うのですよ。  王威を示す象徴として王獣を飼い馴らそうと考えるのはやめるのはいい。  でもねぇ。  この物語では人はすでに手を出してはいけない自然の領域に手を出しちゃっていたわけですよ。  それを野に帰してチャンチャン♪というのはちょっといただけないなぁ・・・・・と。  そして、知識を秘さないできちんと伝え、「掟」というようなもので人を縛り思考停止を促さない・・・・というのは大切なことだと思うけれど、いわゆる「知識だけを残せば、それでいい」というのもどうなのかなぁ・・・・と。  あのカザルム学舎にあってさえも王獣がいないのが、いいことなのか、悪いことなのか・・・・・。

上橋さんがこの物語の中でもっとも伝えたかったことは、ジェシに語るエリンの言葉にあるような気がするんですよね。  曰く

「人は、自分たちがなにをしていて、それがどんな結末を招くのか知るべきだと思う。  どんな知識も、隠されるべきではないと思う。  人という生き物が愚かで・・・・どうしようもなく愚かで、知識を得たときに、それを誤った道に使ってしまうとしても、・・・・それでも。」

「人は殺し合いをやめない。  これからも、きっと戦は続いていくでしょう。  わたしたちは、ばらばらで、言葉を持っていても、思いは決して、思うようには伝わらない。  でも・・・・・それでも人は、道を探し続ける。  きっと、人というものは、そういう生き物でもあるのよ。」

「人は、知れば、考える。  多くの人がいて、それぞれが、それぞれの思いで考え続ける。  1人が死んでも、別の人が、新たな道を探していく。 -人という生き物の群れは、そうやって長い年月を、なんとか行き続けてきた。  知らねば、道は探せない。  自分たちが、なぜこんな災いを引き起こしたのか、人という生き物は、どういうふうに愚かなのか、どんなことを考え、どうしてこう動いてしまうのか、そういうことを考えて、考えて、考え抜いた果てしにしか、ほんとうに意味のある道は、見えてこない・・・・・・。」

KiKi はね、このエリンの言葉には間違いなく「真実」と読んでもいいと思えるものが含まれていると感じるのです。  でもね、同時に思うのです。  「人が多くを知り、言葉や知識を正しく伝え、考えて、考えて、考え抜いたとしても『ほんとうに意味のある道』にたどり着けるとは限らないし、多くの場合、仮にある時点では良かれと思って選択した何かがあったとして、それが何かの拍子に『ほんとうに意味のある道』から外れてしまったと気がついたとしても、そこでさっと方向転換できるとは限らない生き物」なんじゃないかと・・・・・・。

いやはや、いずれにしろ上橋さんの物語はただ単に「楽しむ」という以上に、本当にいろいろなことを考えさせられます。  

さて、次は「狐笛のかなた」を読んでみたいと思います。  (実は今日5月2日現在、「狐笛のかなた」もほぼ読了・・・・っていう感じなんですよね~ 笑)

  

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このページは、KiKi (Brunnhilde)が2010年5月 2日 10:43に書いたブログ記事です。

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