西の魔女が死んだ 梨木香歩

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せっかく「西の魔女」本を読了したので、勾玉三部作へ行く前にちょっと寄り道を・・・・・。  ということで本日の KiKi の読了本はこちらです。  

西の魔女が死んだ
著:梨木香歩  新潮文庫

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中学に進んでまもなく、どうしても学校へ足が向かなくなった少女まいは、季節が初夏へと移り変るひと月あまりを、西の魔女のもとで過した。  西の魔女ことママのママ、つまり大好きなおばあちゃんから、まいは魔女の手ほどきを受けるのだが、魔女修行の肝心かなめは、何でも自分で決める、ということだった。  喜びも希望も、もちろん幸せも...。  その後のまいの物語「渡りの一日」併録。  (文庫本裏表紙より転載)

この本は以前から気にはなっていたのです。  正直なところ、この本といい先日読了した「西の善き魔女」といい、気にはなりつつもどうしても手を出せずにいたのは、やっぱりタイトルのせい(笑)  どうしても「オズの魔法使い」と被っちゃうんですよね~、イメージが・・・・・ ^^;  ま、でも映画にもなったみたいだし、KiKi のLothlórien_山小舎暮らしへの衝動と似ている部分もあるような予感があって、今回せっかく「西の善き魔女」を読了したこともあり、思い切って手を出してみました(笑)

う~ん、心がほっこりしますねぇ、こういうお話。  やっぱり人間は自然の中のちっぽけな生き物に過ぎなくて、自然の中にあって生きるために必要なことを黙々と、粛々とやっていくのがもっとも健全な生き方なんだという確信にも近い想いを新たにしました。  そして、魔女っていうのは魔法の呪文が使えるような人のことではなくて、もっと普通の存在・・・・・。  でも、自分にとって一番大切なものが何かをしっかりと体感できていて、その芯をぶらすことはなく、自分が生かされていることを謙虚に受け止め、その中でできることをきちんとしていくことができる人ということではないかと思いました。

  

魔女とは全然関係ない話だけど、KiKi は20代のときに読んだとある本の中で見つけた1つの言葉を長い間とても大切に思ってきました。  それは「1人を慎む」という言葉です。  物と喧騒に溢れた都会生活にある意味では浮かされて、当時の KiKi は時代や便利さに流された生活を送っていました。  アパートを出て5分と歩かないところにあるコンビニで食べ物を調達したり(そこから後5分でスーパーがあるのに!)、自炊する時間を惜しんで遊びまわり、「埃じゃ死なない」と嘯いて最低限のお掃除しかせず、夜遅くまで飲んで歩いて寝坊癖がつき・・・・・・と不健康極まりない生活を送っていたのです。

自宅で過ごしていた頃には寝巻きのままウロウロするな~んていうことは言語道断だと思っていたのに、「スウェットをパジャマ代わりにすれば、部屋着としても通用するから便利♪」と考え、お味噌汁を作るのに出汁からとるな~んていうのは「オールド・ファッション」な考え方で、せっかくの今の時代には「だしの素」な~んていう便利な商品があるんだからそれを使えば簡単でいいじゃん!と考え、その延長線上で「インスタント味噌汁」を常備し・・・・・。  ふと気がつくと「洗い物の数を減らすためにはお皿に盛らなくてもいいじゃん。  誰も見ているわけじゃなし・・・・・。」と考えている自分がいました。

「忙しいから」「自分で稼いでいるから」「人目があるわけじゃないから」「ほかにもっとやりたいことがいっぱいあるから」・・・・・・・  どんどん自堕落になっていくことに目を瞑る言い訳は驚くほどたくさん、しかも容易くいくつもいくつも思いつくようになりました。  そんな時に出会ったのが「1人を慎む」と言う言葉でした。  その言葉が書かれていた文章に書かれていた「自堕落」のプロトタイプ。  それは KiKi の当時の生活のあちらこちらに顕著にあらわれていました。  

「誰も見ていない」ではなく「自分で自分を見ていない」ということに気がついたのはその時でした。  そして、KiKi は上辺ばかりを着飾る人を心の底で軽蔑していたはずだったのに、「自分で自分を見ていない」状態というのは、その自分が軽蔑しているタイプの人間への入り口であるということにも気がついたのでした。  「凛とした自分」を持つ人は「誰かが見ているから何かをする(しない)」ではなく、「1人であっても何かをする(しない)人」なんだと思いました。  その意識を持つことが「1人を慎む」ということだと合点したのです。

この物語の中のおばあちゃんの「魔女修行のカリキュラム」はこの「1人を慎む」という言葉と根底ではつながっていると思います。  曰く

「おばあちゃんの言う精神力っていうのは、正しい方向をきちんとキャッチするアンテナをしっかりと立てて、身体と心がそれをしっかり受け止めるっていう感じですね。」

「(精神力を鍛えるためには)、まず、早寝早起き。  食事をしっかりとり、よく運動し、規則正しい生活をする。」

「悪魔を防ぐためにも、魔女になるためにも、いちばん大切なのは、意志の力。  自分で決める力、自分で決めたことをやり遂げる力です。  その力が強くなれば、悪魔もそう簡単にはとりつきませんよ。  まいは、そんな簡単なことって言いますけれど、そういう簡単なことが、まいにとってはいちばん難しいことではないかしら。」

「最初は何にも変わらないように思います。  そしてだんだんに疑いの心や、怠け心、あきらめ、投げやりな気持ちが出てきます。  それに打ち勝って、ただ黙々と続けるのです。  そうして、もう永久に何も変わらないんじゃないかと思われるころ、ようやく、以前の自分とは違う自分を発見するような出来事が起こるでしょう。  そしてまた、地道な努力を続ける、退屈な日々の連続で、また、ある日突然、今までの自分とは更に違う自分を見ることになる、それの繰り返しです。」

若いころ、KiKi が自分の自堕落を自覚していなかった時代には「はいはい、ふ~ん・・・・」と右から左に聞き流してしまっていたに違いないこれらの言葉が今の KiKi には生活実感として迫ってきます。  

もう1つこの物語を読んでいて心に残ったのはこの「西の魔女」たるおばあちゃんの死生観です。  イギリス人という設定のおばあちゃんだけど、何だかとっても東洋的・・・・・(笑)  でもね、自然と共に生きるスタンスを貫いているガーデニング好きなイギリス人っていうのは、思想的には案外東洋的な人になるような気がしないでもありません。  このおばあちゃんは子供の頃から日本に憧れていて、若いうちに日本に住み着いて、日本人と結婚した人だから尚更その傾向が強いんだろうと思うけれど、それでもやっぱり彼女の日々の営みが培った死生観っていう気がするんですよね~  

と言うのも、KiKi もLothlórien_山小舎の庭を見ていると、ホント、自然の神秘には驚かされることが多いんですよ。  前年の冬に死に絶えたとしか見えない植物が翌年の春には、忘れた頃に芽吹いてきたりする・・・・・。  自分ではそんな場所に植えたつもりのないところに、こぼれダネだったのか、鳥か虫の悪戯かは定かではないものの、新しい花がつけているのを見つけたりする。  冬の間は寂しいくらいに静かだった庭に春になるとどこから湧いてきたのかわからないけど異様に虫がブンブン飛び回っていたりする。  そういう姿を見ていると「魂」は本当にそこかしこにあって「肉体」という「実体」を転々としているんじゃないかしら?ということが理屈ではなく感覚的に信じられるような気分になるんですよね~。

冬には暖をとるために薪を燃やし、その灰が春になると畑に蒔かれ、夏野菜・秋野菜を育ててくれる。  そして、その枯れ草が翌年にはまた燃やされ、その翌々年の実りを授けてくれる。  哲学的に、生物学的に、カッコ良く専門用語を使って難解に説明することはできないけれど、そこに不思議さと力強さとダイナミズムを感じる心はこの物語のおばあちゃんの言う「正しい方向をきちんとキャッチするアンテナ」に限りなく近いもののような気がします。

最後に・・・・・・

どうでもいいこと・・・・・ではあるけれど、KiKi は昨今(ひょっとしたらもう時代遅れかもしれないけれど)流行の「LOHAS(ロハス)」という言葉が嫌いです。  実際のところ、「LOHAS」の本質・・・・・みたいなものには共感する部分が多いんですよ。  でもね、流行語的に使われている「LOHAS」という言葉には都会人的な、消費衝動に結び付けられた言葉に思えてならないのです。  「LOHAS」を謳い文句にした「人が生きていくために必ずしも必要とは思えない商品」を目にするたびに、ぞっとしてしまうのです。  この「ぞっとする感覚」には「嫌悪感」を通り越して、「眩暈を覚える」ことさえあるぐらいです。

KiKi 自身は「洗濯機のない生活」はもはや考えられない(さすがにおばあちゃんのように大きなたらいで洗濯という生活には戻れない)けれど、本当の意味で「LOHAS」な生活をする人は、その精神性を理解している人は、洗濯機のようなある種の生活必需品であってさえも

「昔はありましたね。  でも、私1人になってからあまり使わなくなって、そのうち壊れてしまいました。」

と悲しそうでありつつも、そこかとぼけた感じで言える人なんだろうと思うのです。  このおばあちゃんのセリフを読むと洗濯機を「生活必需品」と考えている自分が「悲しいほど都市化されている」という現実を突きつけられたようで、ショック(?)を受けてしまいました(笑)

            

P.S. このエントリーは2012年4月15日、風竜胆さんのブログのこちらのエントリーに TB させていただきました。 

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本の宇宙(そら) [風と雲の郷 貴賓館] - 西の魔女が死んだ (2012年4月14日 12:41)

 梨木香歩の「西の魔女が死んだ」(新潮社)。  「魔女」という題名から、最初はてっきりファンタジーものかと思っていたら、全然違っていた。... 続きを読む

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TBの件失礼しました。またTB/コメントともありがとうございました。

最近スパムが急に多くなって、本当は不本意なのですが、やむを得ず少し前から承認制に変えております。いただいたTB/コメントはさっそく公開の方に設定変更させていただきました。

こちらからもりんくさせていただきましたので、今後ともよろしくお願いします。

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このページは、KiKi (Brunnhilde)が2010年5月13日 08:03に書いたブログ記事です。

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