丹生都比売 梨木香歩

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本日も図書館から借りてきた本を読み進めています。  あ、因みに今回図書館から借りてきたのは以下の9冊。

梨木香歩作品

  この庭に - 黒いミンクの話
  丹生都比売(におつひめ)
  水辺にて

辻邦生作品

  背教者ユリアヌス (上)
  背教者ユリアヌス (中)
  背教者ユリアヌス (下)

茅田砂胡作品

  デルフィニア戦記 第一部放浪の戦士 (1)
  デルフィニア戦記 第一部放浪の戦士 (2)
  デルフィニア戦記 第一部放浪の戦士 (3)

一応、今のところこの順番(↑)で読み進めていきたいと思っています。  で、昨日の読了本が「この庭に」で、本日の読了本はこちらです。

丹生都比売
著:梨木香歩  原生林

513ZI7ODN7L__SL500_AA300_.jpeg (Amazon)

持統天皇の治世を舞台に、丹生都比売という姫神と、水と、銀とに彩られた、草壁皇子の少年の日々を描く。  (Amazon より転載)

この図書館本に入る前に読んでいたのが「空色勾玉」。  たまたま今 KiKi が集中して視聴している Podcast が「歴史ラジオ」「NipponArchives 万葉集~ココロ・ニ・マド・ヲ~」と何故か「日本探訪モード」に入っているのは偶然なんでしょうか?  それとも何かのめぐり合わせなのでしょうか??  日本人なのに案外日本のことを知らないという反省とも焦燥ともつかない想いを KiKi が抱くようになったのが10年くらい前からのこと・・・・。  そしてLothlórien_山小舎を構えてからは特に「万葉集」には興味を抱くようになっていきました。  それは意外と万葉集には「東歌(あずまうた)」が多く収録されていることに気がついたからです。

そして万葉集の中でも超有名な歌、高校の古文の授業でも学んだ歌がいわゆる相聞歌で、

あかねさす 紫野行き 標野行き
  野守は見ずや 君が袖振る    額田王

紫草の にほへる妹を 憎くあらば
  人妻ゆえに われ恋ひめやも   大海人皇子

こんなにもおおらかな恋歌を交わした人たちはどんな人たちだったんだろう?  それが KiKi が大海人皇子に興味を持った最初のきっかけでした。  そして、壬申の乱を知り、天智・天武・持統の3天皇を知り、その物語の中で大海人皇子(後の天武天皇)と鸛野讃良皇女(後の持統天皇)の息子である草壁皇子という存在を知りました。  

でもね、この時代の政権争いにおける悲劇のヒーローとしては、どうしても大友皇子や大津皇子に座を譲らざるを得ない皇子様だと思うんですよね~。  草壁皇子も若くして亡くなられる方だし、時代も時代なので、今はまだ知られていない(KiKi が知らないだけかもしれませんけど ^^;)何らかの物語があるのかもしれませんが、恐らくはこの物語で描かれているように「強者」というよりは、線が細い人だったんでしょうね。  いすれにしろちょっと地味・・・・というか、存在感が薄い・・・・皇子様、そんな草壁皇子が主人公の物語なのですから、梨木さんも面白い人に目をつけたものです(笑)

 

 いかにも「武人」という雰囲気のある大海人皇子を父に、女傑という言葉を体現したかのような鸛野讃良皇女(後の持統天皇)を母にもつ草壁皇子。  2人の子供とは思えないほど、線が細く、気持ちが柔らかで、生き抜くことが困難だった混沌とした時代のリーダーにはおよそ向いていない感じがします。  でも、逆にその「細さ」ゆえに見えること、感じられること、引き寄せられるものが美しい日本語で繊細に描かれている物語だと思います。

梨木さんの文章って、いかにも日本的だと思うんですよね。  彼女がそして日本人ならたいていの人が心の奥底のどこかに隠し持っている「諦念」みたいな感覚・・・・を、決して開き直ることなく、決して自堕落にも陥らず、そして決して力任せに抗うわけでもなく「受容」していく・・・・・  その様子を選び抜かれた「日本的な言葉」で淡々と描写する力にものすご~く長けた人という印象です。

草壁皇子が半分夢うつつ状態で見る、父や母の姿は彼の幼さ・純さには邪悪なものと見えるけれど、「綺麗なだけではいられない」大人の事情と「純なままでいたい」子供の事情が手触りの良い絹織物のような言葉で紡がれているのを読み進めていると思わず「ほぅ・・・・」とため息が出てしまいます。  KiKi はね、なまじ草壁皇子が若くして亡くなることを知識として知っているだけに、どこかに「死を受容している皇子様」という心理的な前提があって、その前提があるがゆえの純粋さが彼の子供の事情の核にあるような気がしちゃうんですよね~  これに対し、彼の父母はものすご~く生に執着しているし、「殺らなければ殺られる」ぐらいの危機感・焦燥感が溢れていると思うんですよ。

まだまだ天皇制も中央集権も確立しているとはおよそ言い難い時代。  生き残ることに必死な父母と、争いごとの苦手な皇子。  考え方には大きな違いはあるものの、そこには親子の情もしっかりと流れているのが憐れです。

・・・・・・ああ、それもおかあさまの真実・・・・・・。  (草壁皇子)

・・・・・・ああ、私は本当におかあさまが好きだ。  おかあさまのためならば、おかあさまのなさることならば、何がこの身におきようと、私の魂は、平らかに安んじていよう・・・・・・。  (草壁皇子)

---草壁をかわいい、愛しいとお思いなら、離れておいで、と。  そんな道理にあわぬことを、と、手を伸ばそうとした、そのとき、私はその自分の肩の後ろでほかでもないこの鬼が、背中合わせにひっそりとたたずんでいるのに気がついたのだった・・・・・ (中略)  誰の咎か。  誰がこの責めを負うのか。  誰が過った。  ・・・・・・・過ったものなどいない。  誰も過たなかった。  おとうさまもおつらかったことであろう。  ---おとうさまはおつらかっただろうか。  おとうさまはおつらかった。  だがどうにもならぬことであった。  (鸛野讃良皇女)

安易なヒューマニズムでは決して断罪できない重みがこの言葉から匂いたちます。

KiKi はね、ある時期から「命の大切さ」というのはひょっとしたら人間が考え出した1つの幻想のようなものかもしれない・・・・と思うようになったところがあります。  あ、決して「命を軽んじてもいい」ということではないんですよ。  でもね、「他生物を殺す」という業は「かわいい」とか「かわいそう」というような感傷で論じるべきことではなくて、そこに「愛がないから」と決めつけるべきものでもなくて、実はその行為の果てに物凄い返り討ちのリスクや恐怖を感じることにこそ大事なポイントがある・・・・・・そんな風に思うんですよ。  これを考え始めたのはず~っと前に「いただきます。」を学校給食で言うことに関してなんじゃかんじゃと世間(マスコミ)が姦しかった頃のこと。

人は自らの生を全うするために、食するために、多くの動物や植物の生命をそれこそ「頂戴」しています。  KiKi にとって「いただきます。」という言葉は、料理をしてくれた人の労を労うための言葉ではなく、「私が生き抜くために、あなた(肉や魚や野菜)の生命を奪い、ありがたく頂戴させていただきます。  私が生き抜くという極めて利己的な価値観の中で、他生物の生殺与奪を決定する権利が自分にあるのかないのか、私には正直なところ自信がありません。  でも、すでに殺しちゃったのは事実です。  だからこそあなたの命をありがたくいただきます。  貴方からいただいて生き永らえるこの命、大切にすることをお約束します。  だから願わくば返り討ちはご容赦ください。」という言葉だというのが KiKi の結論でした。

そしてね、じゃあ、なぜ 「KiKi が他生物を殺して日々の糧を得て、生き延びることを妥当と考えることができるのか?」を自問してみると、それは人間が高等生物で万物の霊長だから・・・・・ではなく、人間の生命が他生物の生命と比較して一際価値があるからでは断じてなく、ただ単に「KiKi (個)が生き延びるためにはそうせざるをえないから・・・・」に過ぎないというのが本当のところなのだろうな・・・・と。  

でも「そうせざるをえなかったから・・・・」ではあまりにも利己的な感じがするし、「その時にはそうせざるをえなかったとしても、時期が来ればその方法論ではない別の選択肢があったかもしれない」という恐怖、「何が正しいのか本当のところはわからない」ことに対する恐怖があって、そこから生まれてきたのが「自分に取り付いた他者」の存在でそれが「鬼」だったりするんじゃないかと・・・・・。  つまり、「鬼」っていうのは恐れの気持ちの表れ・・・・・とでもいいましょうか。

恐らく、鸛野讃良皇女(持統天皇)が大津皇子のみならず草壁皇子までもを殺め、皇位についたというのは真実味のある話だろうと思います。  そしてそこには彼女なりの「そうせざるをえなかった」何かがあったのだろうと思います。  「尊属殺人」なんていう言葉のまだない時代。  持統天皇が最も生き延びさせたかったものはいったい何だったのでしょうか?

 

  

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このページは、KiKi (Brunnhilde)が2010年5月20日 20:44に書いたブログ記事です。

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