背教者ユリアヌス(下) 辻邦生

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今週末のLothlórien_山小舎はお天気に恵まれず、色々気になる野良作業がありつつもほとんど庭や畑に出ることができませんでした。  今年の5月は晴天に恵まれた GW と同じくドピーカンだったその後の週末で「筋肉痛とお友達」状態がず~っと続いていたのですが、ようやくちょっとした小休止といった感じでした。  で、本来ならば「晴耕雨読」の雨読に没頭しているはず・・・・・ではあったのですが、ちょっと大きなお買い物の下見にかなりの時間を費やすことになってしまいました。  その大きなお買い物とはです。  そろそろ買い替え時が来ているということもあるし、KiKi の愛車は都会生活に照準を合わせたいわゆる「シティ・カー」だったので、今後の人生に合わせてそろそろ「山向きの車」「田舎向きの車」に変更しようかな・・・・・と。  ま、てなわけでちょっぴり読書の方がスピードダウンしてしまった週末でした。  そんな中、お布団読書でようやく読了したのがこちらの図書館本です。

背教者ユリアヌス(下)
著:辻邦生  中公文庫

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永遠のローマよ。  日の神は今わが生を見棄てられた!  ペルシア兵の槍に斃れたユリアヌスは、皇帝旗に包まれてメソポタミアの砂漠へと消えてゆく。  毎日芸術賞にかがやく記念碑的大作!  (文庫本裏表紙より転載) 

ず~っと昔、KiKi がまだ高校生だった頃、世界史の授業でこのユリアヌス帝時代のローマの歴史に関しては何を学んだのか??  この3冊を読みながら一所懸命思い返してみたのですが、正直なところほとんど記憶の端に浮かんでくるものがありませんでした。  それでも、「背教者ユリアヌス」という言葉だけは漠然と覚えている・・・・・・そんな感じです。  

今回この大著を読むことによって、挿話1つ1つの真偽はともかくとして、人となりに関してはかなり明確にイメージできるようになったような気がするし、以前このエントリーでもちょっとだけ触れた、学校時代の世界史の授業では結局のところ理解することができなかった「宗教」と「政治」がどんな風に絡まっていたのかに関してもかなり明確に頭の中が整理できたような気がします。

 

学究肌の皇帝であったからこそ、ユリアヌスが求めた「理想の哲人政治」。  複雑怪奇な現代社会の政治にさらされている現代人の KiKi にとってはあまりに「夢想的」というか「理想主義的」な考え方・アプローチに見えなくもないユリアヌスの姿勢に、胸が痛むと共に、それでも「政治にこそ」このようなある種の理想主義は必要なものなのかもしれないと感じました。

一般人の日々の生活は「理想ばかりは言っていられない」「理想だけではおなかいっぱいにはならない」「理想だけでは雨露を凌げない」という現実の重さ・・・・というか、生活の切実さがあるけれど、今だけではなく将来の礎ともなる「政治」にはもっともっと青臭さが必要なのかもしれません。

KiKi の大好きなアメリカTVドラマに「The West Wing (ザ・ホワイトハウス)」という番組があるんだけど、その中でロブ・ロウが演じるサム・シーボーンという大統領の側近が口にする言葉に

「政府は楽観的であるべきだ」

というセリフがあります。  初めてそのシーンを観た時には正直なところ「え???」って思って、でも2回、3回と観直すうちに「うん、そうかもしれない」と少しずつ感じるようになり、某社でマネージメント会議に参加している時に思ったことがあります。  それは「リスクを認識する」ということと、「リスクへの対処方法」というのはある意味で1つの区切りをつけるべきだろう・・・・ということでした。

人は何らかのリスクを感じた時に、特にその解決にスピードを求める時には「対処療法」に走りがちで、その「対処方法を正当化する理屈」を作るために、「危機意識を煽る」傾向があると思うんですよね。  でもね、危機意識を煽りに煽って、対処療法だけに邁進していると置き去りにされるものがたくさんあって、その最たるものが「思考停止」という弊害であるのは多くの実例があるように思うんですよ。  「今そこにある危機を回避することがとにかく優先順位 No. 1!」みたいな雰囲気・・・・・。  もちろん、そういう事例があることを KiKi も否定はしないけれど、やはりどこかにそれでも「それって本当はどういうことなんだろうか?」と踏みとどまって熟考するというのはとても重要なことだと思うんですよね。

熱狂的な絶対探求者たちに対して、いかにして地上の相対的な調和感覚の意味を納得させるか。  おそらく人間の歴史はこの2つの生き方、考え方のあいだで揺れ動くことでしょう。  一方は厳しく、他方は柔弱です。  一方は渇いたような眼をし、他方は距離を置いた眼をしています。  (中略)  人間の品位はただこの限界を知って、そこで踏みとどまり、その宿命を背負うところにしか生まれません。

諸君がこの世で最も信じ難い、謎に満ちた、不気味な怪物を見たいと思うなら、通りに出て、向こうから来る人間を見るがいい。  それがたとえ顔を白く塗った女であっても、それがその怪物なのだ。  これが一千年たとうが、一万年たとうが、絶対に正義や美が優しさに関知することのない化け物なのだ。  

KiKi はね、恐らく「人間とはどういう存在なのか?」という疑問を問い続けるために読書をしているような気がするんだけど、いつも感じるのは悲しいまでに愚かで、悲しいまでに感情的で、悲しいまでに利己的な人間の姿なんですよね。  でもね、それでもそんな風に愚かで感情的で利己的な人間の中に「絶望」ではない何らかの「希望」を見出すために、様々な物語を読んでいる・・・・そんな気がします。  そして、KiKi のそんな考え方の根っこにあるものは、やはりある種の「理想主義」なのかもしれません。

さて、この本を読んでいるうちに KiKi はず~っと放置しているある本のことが気になり始めてしまいました。  それは KiKi の大好きな塩野七生さんの「ローマ人の物語」です。  正直なところ、チョロチョロとつまみ読みだけはしてきているのですが、このブログできちんと取り上げる予定であったはずなのに今のところ「ローマは一日にして成らず」「ハンニバル戦記」「勝者の混迷」の3作でストップしてしまっている状況です。  

ユリアヌスが登場するまでのローマ帝国の歴史を、そしてユリアヌス後のローマ帝国の衰亡の歴史を俯瞰してみたい欲求がムラムラと湧きあがってきてしまったので、頭が硬化してしまう前に、「ファンタジー」を封印してこのブログ(・・・・というより「落ちこぼれ会計人の本棚」という以前のブログ)を始める動機の1つだった「塩野七生さんの作品集」に暫くは没頭してみようかと思います。

 

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 初めまして。ブログ村の本関係のコミュニティーからお邪魔します。よろしくお願いします。

 すごい中味ですね。圧倒されてしまいます。見るだけでも何日もかかりそうです。そのエネルギーと持続力に敬意を表して、ワンクリック。私ときたら、なかなか書くことが浮かんできませんし、浮かんでも、書くのがとても遅いのです。

 さて、児童文学も興味はあるのですが、私のお薦めの本でもある『背教者ユリアヌス』についての短文をトラックバックさせて頂こうとしました。ところが、うまくいきませんでした。そこで、URLを・・・。http://blog.livedoor.jp/kokoro_no_fukei/archives/51789118.html#more よろしかったら、どうぞご覧ください。

 ユリアヌスは現実と果敢に戦って敗れたからこそ、しばしば小説の主人公として取り上げられるのではないかと思います。

 それでは失礼します。

 ご説明、ありがとうございました。TB、わざわざ恐縮です。
 私も題材に興味があるのでローマ帝国シリーズを読みましたし、内容もとてもいいと思うのですが、その文章については、推敲してるんだろうか、と首をひねることがけっこうありました。似たような印象をお持ちの方もやはりいらっしゃるんだと納得した次第です。その原因は「売れ過ぎ」だったのですか・・・。
 シリーズ完結時に新聞の書評で「至高の作家」と絶賛していましたが、長大なシリーズを完結させた力量には拍手を惜しみませんが、文章が今一つの「至高の作家」なんているのだろうか、とこれまた「え?」と思いました。新聞の書評も必ずしも当てにならないのでは・・・と。
 それでは失礼します。他のページも拝見いたします。

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