ローマ人の物語 ユリウス・カエサル ルビコン以前 塩野七生

| コメント(0) | トラックバック(0)

「背教者ユリアヌス」を読んでしまったことにより、再燃してしまった KiKi の「歴史物熱」(笑)  その勢いでこのブログでも長らく放置状態だった「ローマ人の物語」に着手することになってしまいました。  過去において(もうずいぶん前のことにはなってしまったのですが・・・・ ^^;)「ローマは一日にして成らず」「ハンニバル戦記」「勝者の混迷」と読み進め、エントリーも書いていたので、今回は文庫本にして第8巻。  「ユリウス・カエサル ルビコン以前」からの再スタートとなります。

ローマ人の物語 ユリウス・カエサル ルビコン以前 (8), (9), (10)
著:塩野七生  新潮文庫

41QNTEY1ZSL__SL500_AA300_.jpeg  410NZ6E00QL__SL500_AA300_.jpeg  41BFAZF4WEL__SL500_AA300_.jpeg

     (Amazon)   (Amazon)   (Amazon)

生涯を通じて彼を特徴づけたことの1つは、絶望的な状態になっても機嫌の良さを失わなかった点であった。  楽天的でいられたのも、ゆるぎない自信があったからだ。  そして、男にとって最初に自負心をもたせてくれるのは、母親が彼にそそぐ愛情である。  幼時に母の愛情に恵まれて育てば、人は自然に、自信に裏打ちされたバランス感覚も会得する。  そして、過去に捕われずに未来に目を向ける積極性も、知らず知らずのうちに身につけてくる。  (文庫本第8巻カバーより転載)

ガリア戦役の叙述を試みる私は、キケロが軽蔑した「諸々のことをくっつけて歴史を書く馬鹿者」にあえてなるだろう。  なぜなら、カエサルは、相当に事情に通じている同時代人に向けて書いたのである。  (中略)  私は、諸々のことをくっつけながらも、カエサルの叙述の仕方、ないし彼の肉声に、可能なかぎり近づこうと努めるだろう。  なぜなら、私の書こうと試みているのは、カエサルという人間である。  そして、人間の肉声は、その人のものする文章に表れる。  (文庫本第9巻カバーより転載)

カエサル生涯、自分の考えに忠実に生きることを自らに課した男でもある。  それは、ローマの国体の改造であり、ローマ世界の新秩序の樹立であった。  ルビコンを越えなければ、「元老院最終勧告」に屈して軍団を手離せば、内戦は回避されるだろうが新秩序の樹立は夢に終わる。  それでは、これまで50年を生きてきた甲斐がない。  甲斐のない人生を生きたと認めさせられるのでは、彼の誇りが許さなかった。  (文庫本第10巻カバーより転載)

さすが、塩野さんが「永遠の片想いの相手」と公言して憚らない相手、ユリウス・カエサルの物語だけのことはあります。  文庫本にして、全部で6冊!!!  本日読了したのはその6冊のうちの最初の3冊で、世の中に数ある「シーザー伝」の中でも比較的語られることが少ないルビコン以前(「賽は投げられた!」の前)の物語です。  KiKi はね、どうしてカエサルの「ガリア戦役」を書いた本が比較的少ないのか以前から不思議に思っていたのですが、どうやらその責任(?)の一端はキケロさんにあったみたいですねぇ。  「諸々のことをくっつけて歴史を書く馬鹿者」なんて言われちゃあ、塩野さんのように「熱烈な片想い」でもしていなくちゃ、なかなか書き物をしてみような~んていう心意気は湧いてこないものです(笑)

だからこそ・・・・・というわけでもないのでしょうが、カエサルの残した「ガリア戦記」や「内乱期」以前の物語にも章を割いているのが塩野さんのこの「ローマ人の物語」の楽しいところではないでしょうか?  どちらかというとシニカルな目線を持っていらっしゃる(・・・・と KiKi は感じているのですが)塩野さんの真骨頂なのが「カエサルと金」、「カエサルと女」の章だと思うんですよね。  KiKi はね、人の持っている本質的な部分っていうのはそれが「仕事」に於いても、「私生活」に於いても、「恋愛」に於いても共通して表れると思っているんだけど、そういう観点でこの2つの章を読むと「カエサルがカエサルたりえていた本質」が凝縮されているように思うんですよ。

  

「金」に対するスタンスは極論すれば「蓄財」に走るのか、「目的を果たすための1つの要素に過ぎない」と考えているのかという2種類の考え方のどちらに思考が向いているのか・・・・みたいなところがあると思うんだけど、それがカエサルの考える「私利私欲には走らないが、私益を公益と一致させる」という思想的な土台を形作っていて、だからこそ若い頃から「借金王」になっても平然としていられたんだと思うんですよね。  これは「マリウスの時代」「スッラの時代」を生き延びてきたカエサルだからこそ持てた発想だったように感じます。  「いつ死んでもおかしくない」という想いを抱き続けてきた人間は現世において自身では使い切れないほどの「富を残す」ことよりも、後世に「名を残す」ことや「公共物を残す」こと、「文化を残す」ことに己の「生まれてきた意義」を託したくなるのではないのかなぁ・・・・と。  

「女」に対するスタンスは極論すれば「人の心理」に対するスタンスのベースにあると思うんですよ。  もちろん「ダンディなモテ男・カエサル」が「つきあったことのある女に決して恨まれない」というのは、話としては面白いけれど、KiKi 個人としてはそこにこれまた「いつ殺されるかわからない」時代を生きてきた人間ならではの、人間観察のしたたかさ、人の心理を手玉にとる(・・・・というとちょっと語弊がありすぎかもしれないけれど)逞しさの表れがあるように感じます。  そういう心理操作の達人だったからこそ、少ない兵力でも多大な兵力でも組織を自在に動かすことができたし、ガリアという敵地に乗り込んで行ってそこを平定しようとする人間たりえたんだと思うんです。

KiKi が一番不思議だったのはカエサルの「土木工事センス」がどこから来たのか?なんだけど、これだけは未だに謎のままです。  いつだったかTVの番組で、「カエサルのライン渡河の突貫工事橋の再現」みたいなものをやっていて、楽しく観ることができたんだけど、現代の土木学の知識 & 重機の力をもってしても色々トラブル続出だったその橋の建設を現実化することができた、その「土木工事センス」っていうのはどこで培われたものだったんだろう???  企画するところまでだったら、紀元前という時代であったことを除けば、同じようなことを考えつく人間は他にもいたかもしれない(いても不思議ではない)と思えるんだけど、それを現実のものとするという遂行力には、ホント、脱帽です。  まあ、インフラ整備にはことのほか熱心だった古代ローマ人には共通している資質だったのかもしれないけれど・・・・・。

ところで・・・・・

キケロも、小林秀雄も、そして塩野さんも絶賛しているカエサルの「ガリア戦記」なんですけど、実は KiKi は未だにちゃんと読み通したことがありません ^^;  塩野さんはこの本の中で、なぜカエサルが「まえがき」的なことを書いていないのかについて論考されていらっしゃるけれど、いきなり

ガリアは3つの部分に分かれている

で始まるこの本。  どんな文化をもっているどんな人間が住んでいるエリアなのかは読んでいて「ほぉ、ふんふん」と思うし、カエサルほどではないまでもそこそこ好奇心の旺盛な KiKi にとってものすご~く興味深いんだけど、続々と出てくる民族の名前やら人の名前、土地の名前がなかなか頭に残らなくて、途中で挫折しちゃったこと多々あり・・・・・で ^^;  で、「ガリア戦記」さえも読み通すことができていないために、読み始めることさえできていないのが「内乱記」なんですよね~。  でも、これを機会にせっかく蔵書の中にはあるこの2冊も、読んでみたい気分がムラムラと湧いてきました。  ま、今回も途中で 匙を投げる」結果になっちゃうかもしれないんですけどね(笑)

トラックバック(0)

トラックバックURL: http://poco-a-poco.chu.jp/mt/mt-tb.cgi/627

コメントする

2015年2月

1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28

Current Moon

CURRENT MOON

東京のお天気


山小舎のお天気


Booklog



ブクログ

アーカイブ

ウェブページ

Powered by Movable Type 4.261

TrackbackPeople

クラシック・ピープルの Trackback People Site


チェロ ラヴァーズの Trackback People Site


Piano~ぴあの Trackback People Site


ピアノオススメ教本の Trackback People Site


ピアノ教室の Trackback People Site


Book Love Peopleの Trackback People Site


本好きPeople・ぴーぷるの Trackback People Site


今日読んだ本の Trackback People Site


ファンタジーが好き♪の Trackback People Site


この絵本がすごい!の Tackback People Site


児童書大好き♪の Trackback People Site


ハヤカワepi文庫の Trackback People Site


岩波少年文庫応援団の Trackback People Site


薪ストーブの Trackback People Site


週末は田舎暮らしの Trackback People Site


野菜育てPeopleの Trackback People Site


ガーデニングの Trackback People Site


パッチワークキルトの Trackback People Site


あなたの訪問は?


日めくりカレンダー


Real Time News


カテゴリ

ノルンはいくつ?

本が好き!


読書メーター

KiKiさんの読書メーター
KiKiさんの読書メーター

最近読んだ本

KiKiの最近読んだ本

今読んでいる本

KiKiの今読んでる本

読了目標





今やってるゲーム

KiKiの今やってるゲーム

このブログ記事について

このページは、KiKi (Brunnhilde)が2010年6月 7日 15:51に書いたブログ記事です。

ひとつ前のブログ記事は「バルトーク 舞踏組曲 Sz.77」です。

次のブログ記事は「銀のスケート(ハンス・ブリンカーの物語) M.M.ドッジ」です。

最近のコンテンツはインデックスページで見られます。過去に書かれたものはアーカイブのページで見られます。

高速運賃





Edita

ブロガー(ブログ)交流空間 エディタコミュニティ

名言黒板


作家別タグ