「創造的である」ということ(下) - 地域の作法から 内山節

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昨日に引き続き、内山節さんの「創造的であるということ」の下巻を読了しました。

「創造的である」ということ(下) - 地域の作法から
著:内山節  農山漁村文化協会(人間選書)

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これまでの私の研究史を振り返ってみると、農民や農山村の人々から教わったことの多さに驚かされる。  それとは無関係にみえるような思想上の課題でさえ、農山村の人々から教わったこととどこかで結びつくことによって、自分の研究領域に加えられている。  ・・・・・自然とともに、土とともに、村とともに生きてきた人々こそが、近代的世界の矛盾や近代的な思想の問題点を、深いところでつかんできたからである。  (単行本扉より転載)

う~ん、こちらもなかなか読み応えがありました。  読了して第一の感想としては、「ああ、この人のものの考え方と KiKi のものの考え方はかなり似ているところがあるな。」ということです。  多分問題意識の持ち方とか、「人間って何?」とか「人間の理想的(?)な生き方ってどうよ?」みたいなある意味一文の得にもならないことをああじゃこうじゃと考えるところも、その命題に対する自分なりの立ち位置の導き方も学者さんである内山さんのほうが理路整然とはしているけれど、かなり似ているような気がします。  ついでに「ごちゃごちゃ考えたりあれこれ言ってるより、とりあえず実践してみよっか」みたいな思い切りの良さも含めて・・・・・(笑)

近代思想の特徴は、人間の本質をその個体性、個体的理性におく、つまり関係的存在をとらえられない、その意味で個人主義に、またそれは人間のための思想、つまり自然との相互性をとらえられない、その意味で人間中心主義であった点に、さらに科学こそがすべてを明らかにすると考えた科学主義に、また歴史や進歩・発達としてとらえる発達主義にあったと考えています。

とは、この本からの引用なんだけど、これってまさに KiKi が感覚的に捕らえていた現代のあり方で、同時に KiKi が懐疑的な気分を持ち始めたこと・・・・でもありました。  ああ、これが KiKi がモヤモヤと考えていた現状分析をすっきりと整理した言葉なんだ!  そんな想いを抱きました。

この本の最後は現代日本の教育について、さらには「国って何?」みたいなことにも触れられているんだけど、これまた KiKi がここ10年ぐらい、とりとめもなく、論理的にでもなく、ああじゃこうじゃと弄繰り回していた命題です。  まあ、とっても残念だったこととしては、この本を読んでいてそれらの命題に対して「目から鱗」的に何かが解明した(もしくは解明しそうな予感があった)というような感慨を持つことはできなかったんですけどね ^^;  どちらかというと、「ああ、整理してくれてありがとう」というレベルで終わっちゃったと言うか・・・・・・。

 

この上下巻2冊を読了してみて、一番衝撃的・・・・というか、目からウロコだったのは以下に引用するような考え方です。

ヨーロッパの近代思想は、つねに秩序だった理論を形成することを目的にしてきました。  秩序だった理論とは、論理的な理論、合理的な理論と表現しなおしてもかまいませんが、この基盤には真理は秩序だって説明することができるというヨーロッパ的思考が存在しています。  そもそもキリスト教的世界とは、神がつくりだした秩序の世界のことであり、この秩序のなかに真理は表現されているという考え方は、古代の形而上学的哲学にまで起元をさかのぼらせることができます。  それに対して東洋の思想は、非秩序系の思想としてつくられてきました。  つまり、真理は秩序をこえたところにあると考えてきたのです。 (中略) 言葉では表現できないものにこそ深さがあると考える精神の習慣も、今日なお残されています。

日本の欧米の思想研究は、それがヨーロッパ、あるいはアメリカという独特の歴史、文化、自然、風土をもつ社会に成立した思想だということを不当に軽視してきました。  だからこの思想が世界思想にもなるかのごとき錯覚に陥ってきたのです。  (中略)  西欧、中欧の自然は、東アジアのモンスーン地帯に属する日本の自然とくらべれば、はるかに弱いものであり、人間が守らなければ滅んでしまうような自然がここにはあるからです。  ここから、人間が中心になって、自然をふくむすべてのものを管理していくのだという人間中心主義=ヒューマニズム的な発想が生まれてきました。  ところが日本の自然はそういうものではありません。  そのままにしておけば、人間の文明をすべて飲み込んでしまうかもしれない、強大な自然がここにはあるのです。  ですので日本では、自然の力を承認し、自然の循環にさしさわりが生じないように配慮し、自然の循環と人間の循環が共存しうるような村落社会をつくりあげることが、長い間大事なこととされてきたのです。

これらは言われてみると、「なるほど、そういう一面もあるかもしれない。」とは腑に落ちるのですが、KiKi 1人ではこの結論を導き出すことは多分一生できなかったんじゃないかと思うんですよね。  これ(↑)は2つの章に分かれて書かれていた言葉ではあるんですけど、宗教と言うものが人間が作り出したものである以上、「唯一神」「絶対神」を生み出した精神的土壌と「多神教」を生み出した精神的土壌はこういう自然と人間の関わり方から発生した違い・・・・・とも読み取れると思うんですよね。

うんうん、こういう視点を一方で持ちながら、もう一度「聖書」や「ギリシャ神話」や「北欧神話」や我が日本の「記紀」を読み直してみるのも、一興かもしれません。  実は KiKi がこのブログで神話関係を扱おうと考えたのは、「国や宗教による自然観の違い」を感覚的に掴みたかったという想いがあったような気もしてきました(笑)。

とりあえずこの「創造的である」ということの上下2巻を読了した今、一番感じているのは、内山さんの意見には100%の賛同をもっている・・・・・というわけではないけれど、KiKi と同じような問題意識をお持ちで、同じようなことをもっと学術的に考えられ、それを散文的に表現されていらっしゃる作家(というより哲学者)のお1人として、これから暫くはおつきあいしていきたいなぁということです。  何となく、この方の書かれているもの、この方が紹介されている「思想史の哲人」たちの著作を読み進めていくことによって、KiKi の思考が深められる予感・・・・・のようなものだけは感じられるので・・・・・。  そしてその思考が次の10年、20年の KiKi の「ものさし」を形作る基礎部分に何らかの影響を及ぼしそうな気がするんですよね~。

 

 

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このページは、KiKi (Brunnhilde)が2010年6月16日 23:10に書いたブログ記事です。

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