戦争という仕事 内山節

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今週末も KiKi はLothlórien_山小舎で過ごしていたわけですが、天気予報ではず~っと雨模様・・・・ということだったので、恐らく読書がグングン捗るだろうなぁと思っていたのに、実際には一日の大半が曇り空。  結果的に読書は思っていたほどは進まず、ひたすら雑草と虫を相手に格闘する日々を過ごしていました。  ま、そんな中、ようやく読了したのがこちらです。

戦争という仕事
著:内山節  信濃毎日新聞社

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なぜ私たちの時代は、いまも戦争を続けるのか?  鍬と釣竿を手に山里から世界を見据える哲学者が、私たちの時代の入り込んでしまった迷路を解き明かす。  2004~2005年『信濃毎日新聞』連載の単行本化。  (Amazon より転載)

この本で語られていることは、すでに読了した「創造的であるということ」の2巻で語られていることとほとんど大差はないなぁというのが率直な印象です。  ただ、それを新聞連載のエッセイとしてとても短い文章で小気味良く、難解な言葉を廃して(これは「創造的であるということ」とも共通することですが・・・・)書かれているので、あとがきも含め333ページの比較的重量感のある本のわりにはサクサクと読み進めることができます。

内容的には KiKi がずっと抱え続けてきたいくつかの命題にある種の目線を与えてくれる本だし、1人で考えていると堂々巡りに陥りがちだった思考に一筋の光り輝く道を示してくれているような気がしないでもないので、とても共感を覚えるのですが読了した今、実は KiKi は全然別のことが気になって気になって仕方なかったりします。  それはこの本のタイトルなんですよね~。

 

内山さんの物事を捉えるスタンスには常に「労働」という概念がついてまわっていると思うんですよね。  で、そこ自体は KiKi も大いに賛同するところで、机の上の思考で終わらせずに実践的に物事を考え、理想に走り過ぎないためにもとても重要な目線だと思うんです。  で、経済原理と労働という行為・もしくは観念の間に発生している乖離という考え方もとても新鮮だったし、KiKi がこのブログの中で「拝金主義」という言葉で呼んだものを「貨幣愛」という考え方で整理されている部分もとても共感できたんです。  でもね、そこで、そうであるからこそ尚更考えてしまったこと・・・・・  それはどうしてこの本のタイトルが「戦争という仕事」なんだ?? ということでした。

確かに「戦争という仕事」という章はこの本の中にあります。  そこで書かれていること、例えば以下のような文章には「なるほどねぇ」と思わないでもありません。

(アメリカの建国の歴史は)2つの教訓を私たちに残している。  ひとつは、このアメリカの建国をめぐる戦争においてはじめて、異文化を持つ者たちに対して、その異文化を根こそぎ消滅させるという方法がとられたことである。  (← インディアン迫害のこと)  先住民たちの文化を、その記憶まで破壊しようとした。  異文化とのささやかな共存さえ、アメリカは許そうとしなかったのである。  第二の教訓は、こうして自分たちの秩序を拡げ、同じ文明、同じ価値観が支配する領地を拡大していくことが、市場や自分たちの経済ルールの通用する範囲を拡げ、強い国家をつくることに役立つという現代の構造を、アメリカはもっとも完全な形で実現した国家だということである。

はっきり述べてしまえば、アメリカは先住民を抹殺という恥ずべき行為の上に成立した国である。  だがその恥を認めることは、建国自体が不正であったことを認めることにつながる。  たとえこの過程で少々の問題があったことは認めても、建国とその後の歴史は、文明の偉大な発展として肯定する他にないのである。  そしてそれを肯定するかぎり、自分たちに同調しない異文化の社会はその記憶をふくめてその社会に自分たちの文明を提供しながら、その文明の支配圏を拡げ資本主義の利益と合致せるという方法も、アメリカ的自由を守る武器として肯定されつづけることになる。  私は現代の戦争の出発点はここにあると考えている。

この本が2004~2005年に『信濃毎日新聞』に連載されたエッセイ(?)の単行本化として発刊されたという事情を鑑みると、明らかにこのエッセイ(この章)は当時の「テロとの闘い」「悪の枢軸国」「大量破壊兵器がどうしたこうした」というアメリカのスタンスを意識しながら書かれたものであることは明白だし、ここで述べられていることはある種の真実を含んでいると KiKi も思います。  そして、この本が発刊されたのが2006年10月。  その年の12月にサダム・フセインの死刑執行が行われているという時間軸の中、世の中では「あの戦争は何だったのか?」という空気が色濃く残っていた時期であるという時代背景が透けて見えます。

一方、この本の目次を並べてみると・・・・・

はじめに   1-2 頁
目次   3-6頁
第1章 戦争という仕事   7-40頁
第2章 政治という仕事   41-68頁
第3章 経済という仕事   69-106頁
第4章 自然に支えられた仕事   107-140頁
第5章 消費と仕事 141-166頁
第6章 資本主義と仕事   167-200頁
第7章 社会主義が描いた仕事   201-222頁
第8章 近代思想と仕事   223-256頁
第9章 基層的精神と仕事   257-288頁
第10章 破綻をこえて   289-327頁
おわりに   328-333頁   

ということで全体の1割程度しか「戦争という仕事」に触れているわけではないのです。  全編を通じて扱われているテーマに「仕事」があり「労働に伴う価値とは何ぞや」という目線があるので、KiKi にしてみれば「仕事の本質を考える」というような類の本であるとは思えるのですが、「戦争という仕事」に関して論考した本には見えないんでよね。

ここに KiKi は「売るためのタイトル」という、ひょっとしたら出版社側独自の、ひょっとしたら著者を含めての思惑を感じずにはいられません。  そして、そのこと自体の是非をとやかく言う気はないんだけど、この本・・・・・というより内山さんの主張の根本に「資本主義とは何だったのか、もう一度考えてみようよ」「経済原理と労働の関係をもう一度冷静に振り返ってみようよ」というものが一貫して流れていると感じているのですが、その主張とこの本のタイトルが「売るためのタイトル」に感じられるところに発生する矛盾・・・・というか、「結局、この本に書かれていることは事実かもしれなくても、この本自体は内山さんご自身が懐疑的な目を向けていらっしゃるはずの資本主義的商品の1つなのか」というような感覚を持ち、居心地の悪さ・・・・・みたいなものを感じずにはいられないのです。

まあ、イマドキ、「哲学」っていうのは流行らない学問だし、でも本来であればもっと大切にしなければならない学問だと KiKi は個人的にず~っと思い続けているのですが、そういう意味ではその「流行らないもの」に目を向けさせる・・・・・という意図があったのかもしれません。  でも・・・・・・。  

 

ま、それはそれとして、本の内容は結構 KiKi 好み・・・・でした(笑)

 

 

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このページは、KiKi (Brunnhilde)が2010年6月22日 12:18に書いたブログ記事です。

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