道は生きている 富山和子

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さすがに小学校中級からというレベル設定(?)の本は、あっという間に読み終えてしまうものです。  とは言っても「さらっと読めるけれど深く考えさせられる」という点では、大人向けの娯楽本とは比較にならない奥深さがあったりもするのですが・・・・・ ^^;  昨日の「川は生きている」に引き続き同じ富山和子さんの「自然と人間」シリーズの「道は生きている」を読了しました。

道は生きている
著:富山和子  講談社青い鳥文庫

21TKW7KM03L__SX230_.jpg (Amazon)

道の成り立ちを辿りながら、並木の道、石の道、絹の道、塩の道などのもつ不思議な働き、道を通して脈々と流れる歴史のもつ重い意味を考えさせてくれます。  また、歴史を調べることの素晴らしさ、豊かさを教えてくれます。  「生きた社会科」のための副読本。  (文庫本裏表紙より転載)

こちらは「自然と人間シリーズ」の中の1冊と言いつつも、昨日読了した「川」とは異なり、長い歴史の中で人間が築いてきた、言わば人工物の「道」のお話です。  人間はどうやって道を築いてきたか、道は人間に何をもたらしてきたか、人間と道はこれからどのように関わっていくべきかということが、これまた難解な言葉を排し、具体的な例を挙げながら綴られています。

あとがきによれば著者の富山和子さんは「交通の研究」を長くされていらしたとのこと。  「川は生きている」のあとがきで書かれていた川とは地図に描かれた1本の線としてとらえ・・・という表現を借りれば道とはA地点とB地点を結ぶ地図に描かれた1本の線としてとらえ・・・てしまいがちな現代人に「そもそも道っていうのはね・・・・・」とその生い立ちから歴史的、そして地理的な因果のもつれを紐解きながら丁寧に語りかけてくれます。

 

読了した今、印象に残っているのは以下のようなくだりです。

道は人や物をはこんだだけではありませんでした。  道は人や物をとおして、ニュースや歌や景色まで、運んでくれていたのです。  (中略)  道は人間の心まで、運んでくれていたのです。  テレビもラジオもなく、飛行機も電話もなかったずっと昔の時代から、道はそんな風にして人々の心と心をつないできてくれたのです。

人間が道の両側に1本1本木を植えていくということは、大昔から、奈良時代、日本の国が統一されて、奈良の都がつくられると、朝廷は大がかりな道づくりをはじめます。  (中略)  そして、道ばたには、並木が植えられていったのです。  並木ばかりではなく水のみ場も、きちんきちんとつくられていきました。  いったいなぜ、そんなことをしたのでしょうか。  ただ眺めをよくするために木を植えたのでしょうか。  そうではありませんでした。  それは道をいく人たちの命を守るためでした。  それというのも大昔の旅は、命がけだったのです。  (中略)  焼けつくような暑い日差しの真夏には、並木のこずえはすずしい木陰を作り出してくれました。  雨が降れば、雨宿りの場所になりました。  夜が来れば、木陰は寝る場所になりました。  そして、食糧のない旅人には、木の実を提供してくれました。  ですから大昔の並木は、今と違って、カキやナシなど、くだもののなる木だったのです。

でも、一口に並木道といっても、ただ木を植えただけではすみません。  木が育つよう、たえず面倒を見ていかなければなりません。  風や雨で倒れたり、病気で枯れたりすれば、次々に植え足していかなければなりません。  火事で燃えたりしないように落ち葉を取り除いたり、雑草をからねばなりません。  街道のそばに住む人たちは何百年もの間、そんな世話をし続けてきたのでした。

今の道は、歩く人には、たいへん厳しい道ですね。  あっちを見たり、こっちを見たり、きょろきょろしたりしなければ、自動車がこわくて歩けません。  いちばん強い自動車が一番おおいばりで走っています。  弱い歩行者は道のすみで、小さくなって歩いています。  (中略)  今の道は、弱い立場の人たち(お年寄りや病人、からだの不自由な人や、乳母車のお母さん)のことを、忘れているようです。  でも、昔の道は違いました。  (中略)  ゆるやかな坂道には「女坂」、急な坂のほうには「男坂」と、名前がつけられてありました。  (中略)  女坂は今では自動車道にかわってしまっているのかもしれません。

今、静岡県の海岸線には、いったい何本の道が、並んで走っていることでしょう。  東海道本線・新幹線・国道一号線・東名高速道路・旧東海道、それにバイパス-。  五本も六本もの幹線が、同じ方向に走っています。  同じ方向に人や荷物が、いったりきたりしています。  なんとたくさんの人と物がいったりきたりしていることでしょうか。  なんと忙しく、いったりきたりさせなければ、くらせなくなったことでしょうか。  

道は人間がこの地球上に生きていくかぎりは、なくてはならない大切なものです。  獣たちにさえ、必要なものなのです。  その道は、もともとは、人々の暮らしの中から生まれ、人々の知恵が寄せ集められ、育てられ、守られてきたものでした。  そんな大切な道、素晴らしい道をどうしたら、私たちの暮らしの中に取り戻すことができるのか、もう一度、みんなで考えてみようではありませんか。

今の物質的にはとても恵まれた生活。  それが「豊かさ」だろうと誰もが疑いもしなかった進歩、発展。  それがすべて悪だったと思うわけでも、「昔は良かった」的な懐古趣味に陥りたいわけでもないけれど、私たちが良かれと信じてきた進歩のその影で私たちが意識しないまま失ってきたものはまだまだ他にもありそうです。  

ところで、この本の「並木道」に関する記述の中で、一里塚に関してもさらっと・・・・ではあるものの言及されていました。  昨日ご紹介した KiKi の実家近くの「柿田川湧水公園」のすぐそばには一里塚があります。  

2010_Jun21_216.JPG

この写真の円錐形の盛り土の上に立っている立派な木。  これが旧東海道に植えられていて現代に残っている一里塚です。  箱根路にもいくつかの一里塚が残っていたように記憶しています。   

 

 

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このページは、KiKi (Brunnhilde)が2010年6月25日 06:21に書いたブログ記事です。

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