デルフィニア戦記第1部 放浪の戦士Ⅲ & Ⅳ 茅田砂胡

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何となく・・・・・読了した1冊ずつで Review を書くのがちょっとしんどいなぁと感じていたので、とりあえず第1部の「放浪の戦士」の残りを一挙に読み終えてしまいました。  ま、てなわけで本日の KiKi の読了本はこちらです。

デルフィニア戦記第1部 放浪の戦士Ⅲ & Ⅳ
著:茅田砂胡  中公文庫

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緒戦の大勝利に沸く兵士たち。  しかし国王の陣幕だけが重く沈んでいた。  軍を解散せよ、さもなくば―敵は養父・フェルナン伯爵を盾にした露骨な脅迫にでたのだ。  大義か?  ペールゼン侯爵の専横に屈するのか?  苦渋の選択を迫られたウォルは逆転を賭して、バルドウの娘に伯爵救出を託したのだが!?  (文庫本Ⅲ裏表紙より転載)

流浪の国王ウォルとリィの率いる軍勢は王都コーラルの目前に迫った。  だが、救出すべき父はすでに亡く、王座奪還の目算も潰えた。  欲するは父の敵の首ひとつ―!  同胞相討つ内乱を避け、わずかな手勢で城に乗り込むウォルの運命、そしてデルフィニア争乱の行方は?  第1部放浪の戦士篇完結。  (文庫本Ⅳ裏表紙より転載)

今回の2冊の中の最大の山場は養父・フェルナン伯爵の臨終の場面でしょうか。  前2冊のこのままの筆致で進むと本当に「デルフィニアおとぼけ合戦物語」となってしまいそうなこの物語の中で、このシーンが描かれることにより、ようやくこれが「おとぼけ合戦」ではなく「戦記」であることが納得できた・・・・そんな秀逸な場面だったと思います。

相も変わらずリィの超人的な働きにより堅固な守りで有名な北の塔からあっさりと伯爵を救い出すことができたものの、日も差さない牢獄での半年以上に及ぶ幽閉生活 & 度重なる拷問により「身体はかろうじて動いているものの生きているものの匂い」を失ってしまっていた伯爵と養父を助け出すことを第一の目的としてここまで前進し続けてきたウォルの再会はそれだけで感動的になるのはお約束のところへもってきて、ここにリィの言葉を借りれば

伯爵はたいへんな頑固者で、人がいなくてもウォルのことを陛下と呼んで態度を崩さなかった。 (中略) 今が最後の機会なんだよ。  ウォルとあの人を親子として会わせてあげられるのは今しかないんだ。  

というような何とも切ない親子関係という伏線があり、さらにはこれまたリィの言葉を借りれば

俺を引き取りさえしなければ、俺に関わりさえしなければ、父上はこのようなことにはならなかった。  スーシャの領主として安泰に、幸せに暮らしていられるはずだった。  -伯爵にはこの声が聞こえないか?  ぼくにはずっと聞こえていたんだ。  (中略)  伯爵。  今の自分の有様をちょっと見てごらんよ。  ひどいもんだよ。  (中略)  ウォルがこれを見たらどうなると思う?  自分のせいだと嘆きに嘆いて使い物にならなくなるよ。  (中略)  これが最後だ。  言わなきゃわからない。  臣下としてじゃなく、父親として、息子にこれからどうすべきかを言わなきゃいけない。  

という状況の中、結局表面的には臣下として姿勢を貫きつつも、リィに語るという形でリィを介在して心情を吐露する伯爵の姿には崇高なものを感じました。  そしてずっと秘め続けてきた伯爵のホンネ

二度と息子とは呼ばぬ。  己に誓いを課した以上、騎士たるものが破るわけにもいかぬ。  だがな、小戦士。  甘いとお笑いになるかもしれんが、わたしはいつも、できるものなら、息子と呼びたかったのだぞ。

さすがにこの場面では目頭が熱くなりました。  うんうん、こんな親子だったからこそ、その後ウォルの血統疑惑が再浮上した際のウォルの一言

王冠も王座も今さらいらん。  だが、俺にもひとつだけ譲れないものがある。  欲しいのはペールゼン(ウォルの反対勢力の頂点にいるヤツ)の首ひとつだ。

がこの物語での情景描写以上に凄みをもって迫ってきます。

    

戦記と呼ぶ以上、もっと戦闘シーンでハラハラ、ワクワク、ドキドキさせてもらいたいもの・・・・ではあるのですが、そのあたりは正直何となく読み流し・・・・・に入ってしまうのがこの物語の最も残念なところです。  と言うのも、ウォル陣営の桁違いの強さ(特にリィの)が際立ちすぎてしまっていて、まあ言って見れば「水戸黄門的」と言いますか、「暴れん坊将軍的」と言いますか、ハラハラしないのがお約束・・・・・みたいな感じがするんですよねぇ。  そして予定調和的に、最初からはっきりとわかっていたとおりにウォルが様々な問題を解決して王位を奪還しめでたし、めでたし・・・・・っていう感じ。

個人的にはペールゼンをもっと深く掘り下げて欲しかったなぁ・・・・と思うのですよ。  もちろん悪役っていうのは最初から「悪」の要素をプンプンと撒き散らしていてくれてもいいんですけど、「悪には悪なりの論理」みたいなものがあると、そしてその論理が誰もが持っているホンの些細なきっかけで知らず知らずのうちに嵌っていくような類のものであれば尚更物語にある種の深み・・・・みたいなものが感じられると思うんだけど、この物語のペールゼンはちょっと薄っぺらいなぁ・・・・・。  

そこそこ利口でそんな自分の小賢しさに溺れちゃった小物っていう感じがものすご~くするんですよね。  で、その割には人心をそこそこ掴んでいるらしいっていうところに嘘っぽさを感じちゃうんですよ。  確かに人は欲で動かされる動物であるのは真理だと思うし、仮に相手のことを「いけ好かないヤツ!」と思っていたにしても、利害さえ一致すれば もしくは 共通の仮想敵さえあればそれなりに団結できたりもするものだけど、それでも仮にも一度は王冠を被った人間を策謀によって追放し、その後も1国を牛耳り、さらには帰還しようとする評判を盛り返しつつある男を追い詰めるほどの人材ならもう少し人を惹きつける魅力みたいなものを持っていて然るべき・・・・と思うんですよねぇ。

さて、ここまではデルフィニア国内の「内乱記」っていう感じだったんだけど、この「デルフィニア戦記」はまだまだ続きがあるようです。  巻頭の地図からするとデルフィニアに隣接する国として「タンガ」と「パラスト」があるみたいだけど、ここまではかなり影の薄かったこの2国。  ここからはやっぱり「他国との戦争」が物語られるのではないでしょうか??  まあ、せっかく全冊揃えてあるので、先へ進めたいと思います。

  

 

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このページは、KiKi (Brunnhilde)が2010年7月25日 11:32に書いたブログ記事です。

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