日本人はなぜキツネにだまされなくなったのか  内山節

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KiKi はE-Bookoff をよく利用し、ここで送料無料になる1,500円以上分の本を注文しています。  このショップが気に入っている理由は自分が欲しいと思っている本を検索し、在庫があればすぐ購入できるのみならず、もしも在庫がない場合には「入荷通知メール」をもらえるようにしておくと、その本が入荷した際にメールをもらえること。  実店舗の(会社組織は別みたいですが)BookOff もよく利用するのですが、いつ入荷するかわからないというのが最大の難点で、定期的に通わないと入荷時期を逃してしまうし、定期的に通うと、本屋さんやCDショップからは手ぶらで帰ってきたことのない(^^;)KiKi の習性ゆえに、探していた本とは別の本をついつい購入してしまい、ふと気がつくと当初予定していた目的本が入荷する頃には「予算不足」ということになって臍をかむ・・・・ということが起こりがちなんですよね~。  

ま、そんなこんなで、梨木作品を読み続けようと思っていた矢先にこの本の入荷通知を受け取った KiKi は早速発注。  入手してしまった以上、どうしても読まずにはいられなくなって、「りかさん」を読んでいる途中で急遽、こちらに着手し、昨日読了しました。  ま、てなわけで本日の KiKi の読了本はこちらです。

日本人はなぜキツネにだまされなくなったのか
著:内山節  講談社現代新書

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かつては、日本のキツネが暮らしている地域では、人がキツネにだまされたという話は日常のごくありふれたもののひとつだった。  それも、そんなに昔の話ではない。  キツネに悪さをされた。  キツネに化かされた。  そういった話は、いまから五十年くらい前の二十世紀半ばまでは、特にめずらしいものではなかった。...  ところが一九六五年頃を境にして、日本の社会からキツネにだまされたという話が発生しなくなってしまうのである。  一体どうして。  本書の関心はここからはじまる。  そのことをとおして、歴史学ではなく、歴史哲学とは何かを考えてみようというのが、本書の試みである。  (新書本裏扉より転載)

このタイトルが今の KiKi にとってキャッチーだった理由のひとつは、5月に上橋菜穂子さんの「狐笛のかなた」を読んだときに感じた

「太古からの日本文化の中でお狐さまとはどんな存在だったのだろうか?」

という疑問、そして、

神社とかお稲荷さんで「お狐さま」を何度も見かけているくせに、日本人の文化の中で「お狐さま」はどんな存在だったのか、「お狐さま」にどんな想いを抱いてきたのかに関してはまったくと言っていいほど無知であることにあらためて気がつかされた

という想いがあったから だと思うんですよね。  で、内山さんの著作リストを見ていて、このタイトルに目が留まり、「そういえば昔語りには狐にだまされたっていう話がいっぱいあったなぁ」と今更ながら思い出し、さらに、新美南吉のお話には「ごんぎつね」といい、「てぶくろを買いに」といい、狐がたくさん出てくるなぁと。  ところが、実際のところ KiKi は野生のきつねというのを自分の目で見たことがなくて、見たことがあるのはTV番組(ネイチャー番組系)で紹介されるキツネの姿か、図鑑や本に掲載されている写真か絵だけなんだよなぁ・・・・・と今更ながら思い至ったのです。  

昔語りにあれほど頻繁に出てくるキツネ。  神社やお稲荷さんでも石像や木像を数多く見かけるキツネ。  日本人とキツネの間の関係って昔はかなり近しいものがあったはずで、「だます」「だまされる」はともかくとして、その近しかったはずのものが映像か作り物の像だけになってしまったのはどうしてなんだろう?  KiKi はLothlórien_山小舎付近の林や森の中でも未だに「キツネ」には遭遇していないんだけど、それはなぜなんだろう??  環境破壊の一つの例なのかもしれないけれど、それだけではない「何か」がそこにあるような気が漠然としていました。  でもそれが「何なのか」はまったくわからない・・・・・。  ま、そんなときに出会ったこの本のタイトルだったわけです。  

        

内山さんの説(フィールドワークの結果?)によれば、「キツネにだまされた」という話が日本人の中から消え始めたのは1965年ごろからなのだそうです。  ということは KiKi が生まれたばかりの頃(60年代前半)はそれでもまだ「キツネにだまされた(と信じている)」人がいたけれど、KiKi が子供時代を過ごした頃には、「キツネにだまされた(と信じている)」人がいなくなったということになります。  そして、KiKi 自身も田舎者ではあるけれど、生まれてこのかた野性のキツネを見たことがないという事実とは符合(?)します。  

なぜ、そんな話がなくなっていったのかに関して内山さんはこの本の中でいくつかの説を紹介してくれています。  曰く、

1. 高度成長期(経済成長)に人間が「経済的動物」に変貌し、「経済的価値があらゆるものに優先する価値になった」ことにより、かつては日本人が持っていた「非経済的なもの(≒自然の生命・神)に包まれて自分たちは生命を維持しているという感覚を失った。

2. 科学的に説明できないものはすべて誤りという風潮が広がり、科学的にとらえることを進歩的態度とみなす精神がひろがり、結果として、科学では捉えることのできない世界を掴むことのできない人間が増えた。

3. 1960年代から情報・コミュニケーションのツールが電話やTV、漫画雑誌を含むいわゆる「マスコミ」経由が主軸となり、村社会では慣例的だった「農業暦」をはじめとする自然からの情報取得・自分の中での選択・咀嚼というプロセスが減り、自分の周りにいる人を経由しての情報伝達が減ることにより、意思疎通も疎遠になりがちになり、伝言ゲームにありがちな「話が変わる(≒伝える人なりの脚色)」ことはなくなり、よきにつけ悪しきにつけ、与えられた情報を事実として受け取り、その感想のみを感じ、自分なりに捉えなおすというプロセスが衰退した。

4. 受験教育化することにより学校教育が偏差値をあげるための合理主義に支配されるようになり、必ず「正解」があるような教育を人々が求めるようになったことにより、「正解」も「誤り」もなく成立されていた「知」が弱体化していった。

5. 自然の中に己が帰りたい祈りの世界を見なくなり、人の自然観・死生観が変わった。

6. 元来、人間をだますキツネは普通のキツネではなく、霊力を身につけた老獪なキツネだったが、そんなキツネが生息する環境がなくなり(森が人工林になったことや、焼畑が行なわれなくなったこと等々)、更には養殖狐(野性の能力を低下させ、霊力のない人工化されたキツネ)も放たれて、人間をだます老キツネそのものが棲息できなくなった。

それぞれの原因が良かったことか、悪かったことかはともかくとして、「日本人はなぜキツネに騙されなくなったのか」という命題に関して、かくも多面的な考察があること自体が、知らず知らずのうちに「思考停止」しているという自負(? 汗)のある KiKi にはなかなか面白く感じられたし、そのいくつかは KiKi 自身が漠然とイメージ的に考えていつつも言語化できていなかったことであるだけに、大いに納得してしまいました。

特に4.に関しては KiKi が大学時代に最初に考えたある種の迷いがまさにコレだったことを懐かしく思い出しました。  当時の KiKi は「これまで自分が正解だと思っていたことが、本当に正解なのか、正解だと思い込むことによって視界が狭くなっているのではないか?」ということを疑問視し始めていました。  で、たまたま上京していた母にそれを打ち明けたところ「これまで過ごしてきた時間の中で、正しいとされてきたことの何が間違っていると思うからそんなことを言うのか?  正しいことは正しいに決まっているじゃない。  そんなことを考えるのは堕落の一歩だ。」と一言で切り捨てられ、とは言うものの論理的に反駁できるだけのものを持ち合わせているわけでもなく、「間違っていることを証明できるほどのもの」を持ち合わせているわけでもなく、落ち込んだものでした。

でも根っこが自分が納得できないことに関しては、結構しつこいタイプなだけに、その想いはその後の KiKi の人生の中でも根強く残っていて、まあそこからいろいろなことがあった末に KiKi が辿りついた結論が「絶対の真理なんていうものはないかもしれない」というものだったりもするわけですが・・・・・。

いずれにしろ内山さんの作品は KiKi に色々なこと(一銭の得にもならないけれど、KiKi が心のどこかで拘らずにはいられないこと)に関して、様々な視点や問題を提起してくれる・・・・・・ということを、この本を読むことによりさらに確信することができました。  

 

 

  

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このページは、KiKi (Brunnhilde)が2010年7月 4日 09:52に書いたブログ記事です。

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