春になったら苺を摘みに 梨木香歩

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今日も KiKi はLothlórien_山小舎に来ています。  つい先ほどまでは庭に出ていたのですが遠くから雷がゴロゴロと鳴り始め・・・・・と思ったらあっという間にまるで東南アジアのスコールのような大雨が・・・・・。  大慌てで洗濯物を取り込み、濡れた身体を拭いてお茶をいっぱいいただいている間にその雨は通り過ぎ、今は夕方の日差しがまぶしく鳥たちが姦しい・・・・・ ^^;  何だか変なお天気ですよね~。  ま、この時間になってしまうと虫たちも大活躍し始めるのでそのままあがって PC に向かっています。  で、せっかくならば昨晩読了した本についてのブログ更新・・・・・と。  ま、てなわけで本日の KiKi の読了本はこちらです。

春になったら苺を摘みに
著:梨木香歩  新潮文庫

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「理解はできないが、受け容れる」それがウェスト夫人の生き方だった。  「私」が学生時代を過ごした英国の下宿には、女主人ウェスト夫人と、さまざまな人種や考え方の住人たちが暮らしていた。  ウェスト夫人の強靭な博愛精神と、時代に左右されない生き方に触れて、「私」は日常を深く生き抜くということを、さらに自分に問い続ける―  物語の生れる場所からの、著者初めてのエッセイ。  (文庫本裏表紙より転載)

「理解はできないが、受け容れる」  さらっと書いてあるこの言葉は人間にできる最大限の寛容の精神の行動パターン。  KiKi もね、もっとずっとず~っと若い頃は「人は言葉を操ることができる知的な動物なんだから、心をこめて、時間をかけて、じっくりと話し合うことさえできれば分かり合えるはず・・・・  今は時代が忙しすぎて時間をかけてじっくりと話し合うことができないのが問題」だと思っていたようなところがあります。  でもね、ある年齢を過ぎてからそれが幻想に過ぎないということに気がついたんですよね~。

だいたいにおいて「分かり合える」と思うこと自体が不遜・・・・というか、自意識過剰なんじゃないか?  そんな風に感じ始めたのは、このエッセイの中で著者が経験されたのと似たような海外の人たちとの接点を持つ機会を得てからのことでした。  でもね、当初はそれでもしつこく「いやいや、食文化も精神文化も異なる国の人たちとはなかなか分かり合えない部分も多いけれど、似たような食文化・精神文化のアジアの人たちとなら・・・・・」「いやいや、やはり国が異なれば似ているといっても限界があるから、同じ日本人同士なら・・・・・」「いやいや、世代が違うと体験してきた文化レベルが違うから日本人の同世代人となら・・・・・」というように少しずつ、少しずつ、そのエリアが狭まっていきました。

でも、今の KiKi は「同じ国に生まれ、同世代で、同じ地域で似たような環境で育ってきた人であってさえも、分かり合えるというのは錯覚にすぎない」とさえ思っています。  あ、別にその努力を放棄しようと思っているわけではないんですよね。  ただ、「分かり合えるはず」という思い込みは危険なもの・・・・・と捉えているとでも言いましょうか・・・・・。 

この本を読んで最初に感じたこと。  それは著者の梨木さんは KiKi とは違って「分かり合いたい」という気持ちは強いものの、どこかで最初から「それは幻想である」とわかってしまっていた人のような気がしました。  どちらかというと不器用で、常に「一般的」と呼ばれる何か・・・・とはほんの少しだけ距離を置いてきた(というより距離感を抱えていた)人だったんじゃないか?  ある種、現代の普通の日本人社会にどこか違和感を持ち続けてきた人だったんじゃないだろうか?と。  そして、そこから這い上がりたいが故に、諦め切れないが故に、生き様として「深く生きる」という方向性を志向されていらした人だったのではないか?と。

   

たまたま昨晩、KiKi は NHK の「ザ・スター」という番組を観ていました。  昨晩のスターは東儀秀樹さん。  その番組の中で 「Out of Border」というキーワードが紹介され、「Borderless という言葉は嘘くさい。  Border (境界線)というのはあって然るべきもの。  その Border の内側でしっかりとその Border 内の文化・血・生き方をきっちりと深めたうえで(≒ 本書で書かれている「日常を内省的に深く生き抜く」と同じことのように感じられます。)、そこから超えて出て行くべきもの。  だから Borderless ではなく Out of Border。」というようなことを話していらしたのですが、その考え方と梨木さんがこの本の中で繰り返し触れられているポイントとは重なるものがあるなぁ・・・・と感じました。

梨木作品と並行して KiKi が現在読み進めている内山節さんの本の中にもこれと同じような観点として、「空間的普遍性と時間的普遍性」という言葉や、「グローバルスタンダード vs. ローカルスタンダード」という考え方が出てくるけれど、KiKi が落ちこぼれ会計人をしている中で感じたある種の「息苦しさ」「生き難さ」「今の自分の生き方への疑問」といったものは、すべてここに凝縮しているようにさえ感じられます。

「信念を持ち、それによって生み出される推進力と、自分の信念に絶えず冷静に疑問を突きつけることによる負荷。  相反するベクトルを、互いの力を損なわないような形で一人の人間の中に内在させることは可能なのだろうか。  その人間の内部を引き裂くことなく。  豊かな調和を保つことは。」

これは KiKi の最近の「生き方のテーマ」と通じるものがあるんだけど、KiKi の場合は「内部を引き裂く」ほど深く考えるところにはまだ至っておらず、どちらかというとその信念と信念に疑問を突きつける精神との間で立ち止まってしまい、結局、何をどうしたらいいのかわからない・・・・・という状態にいる。  そんな風に感じます。

個人的に大好きだったのは「クリスマス」と題されたエッセイです。

「室内から日本語が聞こえている気楽さは、くつろぎと、くつろぎすぎる落ち着かなさ、のようなものを同時に招く。」  

「あなたが私の言うことを信じてくださらなかった、あのとき。  私は本当に悲しかった。」

「そうだ
 共感してもらいたい
 つながっていたい
 分かり合いたい
 うちとけたい
 納得したい
 私たちは
 本当は
 みな」

これらの1つ1つの言葉が、KiKi には何故かチクチクとどこかを軽く刺されているような、痛いわけではないけれど、むず痒いような、それでいて後をひく微かな痛みを伴うような、酸っぱいような、そんな刺激となりました。

「トロントのリス」と題されたエッセイも KiKi 好み。

「普遍の確かさなんてどこにもない、死以外は。  (中略)  ボーダーというよりグラデーションで考えよう。」

これは日本人の得意とする処世術(笑)

「五年後に」と題されたエッセイは正直なところ、KiKi を混乱させました。  

「K・・・、You are not capable・・・・・・」

う~ん、これは何に関してだったんだろう????  梨木さんじゃないけれど、KiKi もこの文字を見た瞬間、「She is not capable of what?」と思ってしまい、それが気になって気になって仕方ありません、人事(ひとごと)ながら・・・・・。  人と人が深く触れ合って、相手の考え方や求めていることがある程度察せされるようになって、それでも出てくる言い難そうな Not Capable という言葉。  今の KiKi には梨木さんが考えている「目指したいもの、死ぬまでには万分の一といえども成し遂げたいこと」が何なのか、まだよくわからないし、梨木さんの中で発生していたらしいこのエッセイ執筆時の「様々な逡巡と変化」がナニモノだったのかわからないけれど、英語文化と接してきた人たちには共通するショッキングな言葉だと思うんですよね~。

ただ、このエッセイの結論(?)には深く感銘を受けました。  曰く

ものすごく頑張れば何とかなるかもしれないこと。  初めからやらないほうがいいかもしれないこと。  やりたいことをやっているように見えて、本当にやりたいことから逃げているのかもしれないこと。  --いいかげん、その見極めがついてもいい歳なのだった。  けれど、できないとどこかでそう思っていても、諦めてはならないこともある。

う~ん、やっぱり梨木香歩さん、侮れません(笑)

 

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このページは、KiKi (Brunnhilde)が2010年7月10日 17:36に書いたブログ記事です。

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