たのしい川べ ケネス・グレーアム

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ここのところ梨木さんの本を読んでいる KiKi ですが、彼女のエッセイの中には時々「たのしい川べ (原題:The Wind in the Willows)」について言及されている箇所があります。  KiKi も子供時代には2,3回は読んだことがあるこの本。  でも、最近ではどんな物語だったかはっきりと思い出すことができません ^^;  このブログのそもそもの企画「岩波少年文庫全冊読破計画」も最近ではサボリ気味・・・・ということもあり、せっかくの機会・・・・ということもあり久々に手に取ってみることにしました。  ま、てなわけで本日の KiKi の読了本はこちらです。

たのしい川べ
著:ケネス・グレーアム 訳:石井桃子  岩波少年文庫

51NKCZ9ABZL__SL500_AA300_.jpeg (Amazon)

人里はなれた静かな川べで素朴な暮らしを楽しんでいるモグラやカワウソたち。  わがままで好奇心旺盛なヒキガエル。  小さな動物たちがくりひろげるほほえましい事件の数々を、詩情ゆたかに描いた田園ファンタジー。  (文庫本裏表紙より転載)

そうそう、こんなお話だった!!  読み進めていくうちにこの本を初めて読んだ小学生の頃に気持ちが少しずつ戻っていくようで、なんだかくすぐったいような、甘酸っぱいような不思議な感覚でした。  出てくる動物の種類は違えども新美南吉の本を読んでいるときと同じような、著者の小さな動物(命)に寄せる暖かい眼差しに気分がホンワカしてきます。  と、同時にこの本は「自然賛歌」の本でもあり、「家賛歌」の本でもあるように感じます。  「田園ファンタジー」という言葉がいったいいつ頃できて、市民権(?)を得たのか、そしてそれが意味するものが何なのか、正直なところ KiKi にはよくわからないけれど、ポコリ、グブリ、ボコッというような水音が今にも聞こえてきそうな自然描写に思わず頬も緩みます。

イマドキの感覚からすればこの物語の主人公は「波乱万丈ヒキガエル」になりそうなところですが、実際のところは穏やかにゆったり(?)と日々を過ごしているネズミ君とモグラ君。  実際、訳者の石井桃子さんがこの本を始めて翻訳されたときの邦題は「ヒキガエルの冒険」というタイトルだったのだそうです。  (日本に初めて紹介されたのは中野好夫さんの抄訳で「たのしい川べ」だったらしい)  でもね、KiKi にとってこの物語の主役はどう転んでも、やっぱりネズミ君とモグラ君なんですよね~。

  

挿絵は E.H. シェパードさん。  この方は「クマのプーさん」の挿絵画家として有名な方です。  この方が描かれた表紙の絵はホント「ザ・田園」って言う感じで素敵です。(もっとも今回 KiKi が手に取ったのは「岩波少年文庫 特装版」の方なんですけどね 笑)  

川のそばで暮らしているネズミが語る、以下の言葉。  今の KiKi にとってはある種の理想なんですよね~。  曰く・・・・

川は、ぼくにとっては、兄であり、姉であり、おばさんであり、友だちでもあるんだ。  それに、食べものであり、飲みものであり、(そして、もちろん、)洗濯場でもあるしね。  つまり、川は、ぼくの世界なんだ。  そして、ぼくは、もうほかには、なんにもいらないなあ。  川にないようなものなら、ぼくには必要ないし、川の知らないものなんて、ぼくたち知ってたって、しようがないんだ。  ああ、川とは、いろんなたのしいことをしてあそんだなぁ!  冬も夏も、春も秋も、川には、いつだっておもしろいことがあるし、はらはらするようなことだってあるんだよ。

子供の頃の KiKi はここはサラっと素通りしてしまって、どちらかというと「井の中の蛙だなぁ・・・・」ぐらいの感覚でそんなネズミ君を見ていたようなところがあるけれど、この年齢になると「本当に自分にとって大切なもの、必要なものっていうのは自分を育んできたところにあったもの。」というような感覚の方が鋭くなって、何だか妙に納得してしまうんですよね~。

ま、物語冒頭ではこんなことを言っているネズミ君もとある「旅人ネズミ」との出会いで「放浪熱」に浮かされちゃうお話が入っているところもなんとも微笑ましい・・・・・(笑)  

そしてもう1つ、かなり印象的な物語なのが迷子になったカワウソの子供を捜しに行ったネズミ君 & モグラ君が出会うパンの神の物語。  全体の流れからするとちょっと異質な感じがしないでもないお話だけど、西洋モノを読んでいるとときに顔を出す「キリスト教色」というか「キリスト教臭」とはちょっと異なる香りに何となくほっとしたものを感じました。

それにしても・・・・・。  この作品の中のネズミ君やモグラ君は、心優しく勤勉で、誠実で、善良で、まあ、一言で言えば、いわゆる小市民的なキャラクターなんですよね~。  で、そんな彼らを引っ掻き回す役回りなのがちょっとブルジョア的なトラブルメーカーのヒキガエル君。  とにかく破天荒な奴なんですけど、彼の破天荒さって言うのは財力の賜物なんですよね~。  で、ヒキガエルとは別の波乱万丈の冒険者が先ほどの「旅人ネズミ」なんだけど、彼の設定は言ってみれば船乗りなんですよ。  そう思って読むと以下のような構図があるようにも感じられます。

主人公のネズミ & モグラ; 小市民
トラブルメーカーのヒキガエル; 上流階級
放浪の冒険野郎ネズミ; 労働者階級

イギリスって結構階級社会だから・・・・・。  そんなこともちょっとだけ感じないでもありません。

でね、小市民のネズミ君とモグラ君は、ヒキガエル君のように金もなければ、海ネズミ君のように安定を捨てる勇気もなくて、そのどちらかが必要な冒険とは無縁の存在なんですよ。  だから彼らは小市民的に冒険できる人たちに憧れのようなものを持つんだけど、結局自分には同じことができないという現実の前でつまづいてばかり。  そんなものに対する切なさ・・・・・みたいなものも感じられるような気がします。  何て言うのか、ささやかな幸せに満足はしているんだけど、時折倦怠感を感じる・・・・とでも言うような。

この本を読んでいると、日々の三度三度の食事を大切にすること、自分好みにアレンジした居間で自分らしく寛ぐ時間を大切にすること、身の回りを見回してみて季節の移ろいを感じながら暮らすこと・・・・といったような、何の変哲もない生活の一こま一こまを大切にしたい・・・・というような気分になるんだけど、そんなことを考えるのは KiKi が紛れもない小市民であることの証左なのかもしれません(笑)


追記) 宮崎駿50選の中での宮崎氏のコメント

まあなんと上手な挿絵でしょう。  絵を見ているだけで充分満足します。  この画家がアニメーションをやったらものすごく腕の良いアニメーターになったでしょう。  それなのに、ぼくは何回読みかけてもこの本を最後まで読めません。  まったく不思議なことです。  (2011年12月15日転記) 

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このページは、KiKi (Brunnhilde)が2010年7月11日 18:33に書いたブログ記事です。

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