夢十夜 夏目漱石

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梨木さんの「家守綺譚」を読んでいたら、何となく、何となくぼんやりと頭の中に浮かんできた映像のようなもの・・・・・がありました。  ちゃんとした像を結んでいなかったので、それを「映像」と呼ぶにはちょっと躊躇があるんですけどね ^^;  そしてそのぼんやりとした映像もどき・・・・・を見つめていたら「夢」「夜」というようなキーワードが頭の中を飛び交い始めました。  そうしたら無性にこの本が読みたくなってきてしまいました。  ま、てなわけで本日の KiKi の読了本はこちらです。

夢十夜
著:夏目漱石 絵(版画):金井田英津子  パロル舎

51V9M2VVM5L__SL500_AA300_.jpeg (Amazon)

「こんな夢を見た」で始まる、夏目漱石の幻想的文学「夢十夜」。  作品の世界をさらに盛り上げるモノトーンの版画入りで収録する。  (Amazon より転載)

この本はね、KiKi が絵本の世界に嵌り始めたとき、いわゆる「子供向けの絵本」とは別格のものとしてガブリエル・バンサンの絵本とかを集め始めた頃、目に留まって入手した1冊です。  おさえたトーンの色調と版画という手法独特の朴訥さと、そして「夢十夜」という文学作品世界の持つ一種独特の雰囲気が相まって、文句なく「大人のための絵本」と言い切れる本の1冊ではないでしょうか。  ま、時に金井田さんの絵が雄弁すぎて、・・・・と同時に KiKi が文字から連想する絵とは異なったりもして、それがちょっとうるさく感じることもなくはないのですが、漱石による厳選された言葉で描かれた世界とそれを読んだ金井田さんの感じた絵画的風景の両方を楽しめるという、お得感が満載です。

ただ、この作品に初めて接する方にはできれば文庫本とか、文字だけの世界を堪能していただきたいなぁ・・・・とも思います。  青空文庫みたいにテキストのみの媒体で・・・・・。  日本が誇る明治の文豪、夏目漱石の世界は、可能であれば映像には頼らず、じっくりと言葉を読み返しながら、何とははっきりとは言い難い、でも着実に失いつつあるように感じられる「スローで深い日本人の感情の襞」のようなものを味わうのが王道のような気がします。

 

「夢」という言葉には幻想的でロマンチックなイメージがつきものだけど、でははて、自分がこれまでに見てきた夢はそのイメージほどに「幻想的でロマンチックだったか?」と思い返してみると、時にものすごくリアルだったり、残酷だったり、恐ろしかったりすることがあります。  最近でこそあまり「恐ろしい夢」は見なくなってしまった KiKi だけど、ぼんやりとした幻想的でロマンチックな夢を見たときと比べると、そんなリアルな夢であればあるほど、夢の中で出会った人や出来事、その時の感情を必死で思い出そうする。  そんな気がしないでもありません。  そして、その回想の過程で感じる実体のなさに、別の意味での「幻想的な何か」を感じたりもします。

この「夢十夜」もある意味でそんな「リアルで残酷で恐ろしい夢」を見た直後の感じ、夢なのか現実なのかわからないまま目覚めた、そんな感じのお話だと思います。  

フロイトだったら「夢診断」でもしたくなるかもしれないような、摩訶不思議なお話ばかりだけど、そっちの世界にはあまり興味のない KiKi としては、一つ一つの夢が何を暗示しているかとか、そんな夢を見させた(実際に漱石がこういう夢を見たのかどうかは知らないけれど・・・・・)心理状態みたいなものにはさほど興味がわかなかったりもするんだけど、この夢の世界の持つ不思議さって確実に昔の KiKi の中にもあったものだったような気がするんですよね。  で、知らず知らずのうちにそういう世界観(というか空気感)を「非現実的なこと」と切り捨ててしまってきていて、夜も明るくなって昼間と変わらない明晰さで遠くが見通せるようになって(特に都会では)、であるが故にこんな雰囲気の夢を見なくなった・・・・・・そんな気がするんですよね。

思うに昔の日本人って「暗いが故に見えるもの」を信じて、ものすご~く大切にしていたんじゃないかと思うんですよ。  ここで見えるものは視覚的に見えるということではなくて、ひょっとしたら「感じられるもの」であり、「感じることによって見えた気になっているもの」だったかもしれないのだけれど・・・・・。  そしてそんなある意味で研ぎ澄まされた感性を持っているが故に守ることができた道徳・・・・・のようなものがあったんじゃないかと。

合理的で論理的で、誰にもわかりやすく(わかりやすいということは、思考を停止させても答えが出せるということに通じると思うんだけど)・・・・・・という現代的価値観とは一線を画したところにあるように感じられるこの「夢十夜」の世界。  う~ん、ほんと久しぶりの再読だったけれど、やっぱり好きだなぁ、この世界観。

 

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このページは、KiKi (Brunnhilde)が2010年7月15日 09:09に書いたブログ記事です。

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