ぐるりのこと 梨木香歩

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梨木作品に戻ってきました。  本日の KiKi の読了本はこちらです。

ぐるりのこと
著:梨木香歩  新潮文庫

41BKWt-HoTL__SL500_AA300_.jpeg (Amazon)

旅先で、風切羽の折れたカラスと目が合って、「生き延びる」ということを考える。  沼地や湿原に心惹かれ、その周囲の命に思いが広がる。  英国のセブンシスターズの断崖で風に吹かれながら思うこと、トルコの旅の途上、ヘジャーブをかぶった女性とのひとときの交流。  旅先で、日常で、生きていく日々の中で胸に去来する強い感情。  「物語を語りたい」―創作へと向う思いを綴るエッセイ。  (文庫本裏表紙より転載)

このエッセイ、KiKi は好きですね~。  ただ読みやすいか、読みにくいかと言えばかなり読みにくいエッセイだと思うんですよね。  話が大きく飛ぶのは梨木さんの特徴・・・・・でもあるからさほどの戸惑いはないのですが、KiKi もこのブログでやりがちな()カッコ書きでの追記・・・・・がかなり多く、その()部分があまりにも長かったりするので、1つの文脈を2度、3度と読み直してみないと何の話だったのかわからなくなってしまった・・・・・ということも多々あって・・・・・。

ただね、これは論文ではなく、文学作品でもなく、エッセイであることを考えると、KiKi にとっては許容できる範囲の文脈の迷いなんですよね~。  逆に1つのことをああでもない、こうでもない、こっちの観点から見ると○○だけど、そう言い切っていいものだろうかと逡巡する姿勢そのものに、誠実さのようなものを感じます。  特に今回のこのエッセイで梨木さんが徹底的に拘っていらっしゃるのは自分は「わかったつもりになっている」けれどその実「何もわかっていないのではないか?」という想い、「物事を単純化、明解化することは悪いことではないけれど、今、誰もが思っているほど本当に正しいことなのか?」という想いがあるように感じられるからです。

イマドキの書き物は言い切り型の作品が多く、それはそれでその作者の立ち位置・主張がわかりやすいのでストレスを感じないですむ・・・・・のは事実ですが、自分がちゃんと物事を考えることができているのか?に拘っている KiKi にとっては、言い切ること ≒ 物事の単純化 ≒ 巧妙な思考停止の罠 に見えなくもなく、時々不安になったりもするのです。 

「自分の立ち位置を確たるものとしたい」

これは KiKi の永年の1つの目標でした。  特に仕事において「命じられたことを遂行する立場」から「ある立ち位置から判断をし、部下に実行を指示をする立場」に変わりつつある頃から、ぶれない視点を持ち、あるべき方向性を明確にし、確実にスピーディーに、自分以外の人間に実行を促せる人間になるためには必須のことだと考えていました。  仕事のうえではこれはとても必要なことだった(と信じている)し、ビジネスの世界では所詮、目指さなければならないゴールの核にあるものは「継続企業」 & 「利潤追求」 但しコンプライアンスは意識して・・・・・という観点を際立たせればよい、ある種シンプルなものだったと思うんですよね。  でも、そのある種の「物事の単純化」「合理的判断」の癖が、世界情勢だとか政治を考えるうえでは弊害になっているように感じ始めたのが40代の初め頃でした。

単純化するうえで切り捨てているもの、その切り捨てたものに関して「必要なし」という烙印を押したことにより深く考えなくなってしまっている自分に気がつきました。

 

 

  

今回のこのエッセイの中で KiKi が一番共感したのは「隠れたい場所」と題されたエッセイでした。  

大じかけな対立-世界を大きく二分するわかりやすい対立関係、かつての冷戦時代の資本主義対共産主義や、現在のブッシュ対(彼の言うところの)悪の枢軸国家などではなく、直線的でスピード感の強い動的な動き(原理主義的なもの、ブッシュもフセインもアルカイダもシャロンも、ついでにいえば過激なグリーンピースも)と、進歩ということがそもそも念頭にない(あるいは非常に意識的にそのことに懐疑的な)前近代的ともいえる静かでわかりにくい諸々で構成されたムーブメント。  スピーディーなものとスローなもの。  クリアなものとダルなもの。  有刺鉄線的なものと、生垣的なもの。  そういう、今まであまり表に出てこなかった、けれど本当はそもそもの最初から仕組まれていた、おおじかけな対立が、なんだか最近、とてもよく見えてきたような気がする。

それは世界地図をきれいに色分けできるものではなく、本当は個人をそれぞれグループ分けするものでもなかった。  溶け合うことなく「入り混じって」いたものだった。  クリアーにしたい欲求はよくわかる。  ほとんど生理的なものだ。  (中略)

たいていの場合、個人や集団の中で混沌としていたものが、その対立関係がその境界が、にわかにクリアーに突出してきたような気がする。  さあ、おまえはどっちなのだ、と日本は迫られ、個人も迫られ、そのたびに重ねていく選択が、知らず知らず世の中の加速度を増してしまう。  いいとか、悪いとか、いう二分法ではないところで、私たちはうかうかとこの世界の加速度を増してゆく何かに加担していってしまう。  境界をクリアーに保ちたいと動いてしまう。  ただ、わかっていることは、クリアーな境界に、ミソサザイの隠れる場所はないということだ。  蛇の隠れる場所もないかわりに。  それは皆、わかっているはずなのに。

わかったつもりになった瞬間に人間はそのことをじっくりと考えることをやめてしまう生き物だと思うんですよ。  でもね、これは仕方のないことだと思うんです。  なぜって「わかっているつもり」なのだから・・・・・。  「わかっている」から敢えて考え直す必要性も感じられないのですから・・・・・。  でも、この「わかっているつもり」ということほど怪しいものはないと40代以降の KiKi は感じるようになりました。  そしてそれを疑ってかかる人に KiKi は誠実さ・・・・のようなものを感じます。

「ぐるりのこと」≒「自分の身の回りのこと」。  では「自分の身の回り」っていうのはどこまで??  そして彼女独特の「境界線」という観点にたどり着く。  境界線の内側と外側って言うのは何がどう違う??  内側にこもることは卑怯なこと??  外側に出て行くことは冒険?勇気?  世界が広がるということ??  広がること≒いいこと??  広く浅く vs. 狭く深くはどちらが価値がある??  両方を極めることは果たして一人の人間で達成できること??  そしてこの思想の先には、「国家って何?」という疑問も出てくるし(特にイラク関連のニュースが姦しい頃は、結果的にそこに辿りつきがちの観点だったと思います)、「日本人とは?」という視点があり、「自分を育んだ世界の精神性とは?」という視点が出てきます。  これって KiKi も何年も抱え続けている1つの(・・・・というより一連の)思考過程とほぼ近いものがあるだけに、彼女の思想的逡巡にも何となく共感できます。 

う~ん、やっぱり彼女の思考過程には興味が尽きません。

 

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このページは、KiKi (Brunnhilde)が2010年7月16日 19:18に書いたブログ記事です。

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