小人たちの新しい家 M. ノートン

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ジブリの映画「借りぐらしのアリエッティ」公開を機に、久々に読み返してみた「小人の冒険」シリーズ(もっとも最後の数冊は初めて読んだような気がしないでもない・・・・ ^^;)。  とうとう最終話が終わってしまいました。  本日の KiKi の読了本はこちらです。

小人たちの新しい家
著:M. ノートン 訳:猪熊葉子  岩波少年文庫

51QCYeyRWbL__SL500_AA300_.jpeg (Amazon)

劇的な脱出をはたした小人の一家は、ふたたび川をくだり、ようやく静かな古い牧師館にたどりつきます。  はたして、そこは一家にとって安心してくらせるすみかとなるのでしょうか。  「小人の冒険シリーズ」最終巻。  (文庫本裏表紙より転載)

文庫本のあとがき(訳者のことば)によれば、この最終話「小人たちの新しい家」はその前の「空をとぶ小人たち」から21年という年月を経たのちに再び書かれた物語なのだそうです。  発表されたのが1982年。  その時には既に「大人」と呼ばれる年代に入っていた KiKi は英文学を学んでいたとは言えども、この作品のことは一切知らず、気にも留めないで過ごしていたことになります。  今にして思えば当時の KiKi は花のお江戸で自由を満喫し、将来に対するさしたる不安も感じることなくコンパだなんだと浮かれていた時代です。  そんな時代にノートン女史はある種の危機感をもってこの物語を描いていたんだなぁと思うと、時代に踊らされていた(率先して踊っていたというべきか ^^;)自分が情けないような気分になりました(苦笑)。

ちょっとポッド父さんの語り口がこれまでの4冊とは変わってしまっているのが残念(これは訳者の違いからくるものなのか、英文そのものも既に21年という年月を経て変わっているのかは不明)ですけど、相変わらず含蓄のある言葉が満ち溢れています。

そうだ。  わしらは想像力を使わにゃいかんよ。  そしてむかしのやり方にもどるんだ。  できるだけな。  (中略)  借り暮らしやは、それなしには生きられんものだけを借りるんだ。  遊びごとにやるんじゃない。  貪欲のためでもない。  それに怠けるためでもないんだ。  借り暮らしやにとって、借りるってことは - あんたらにゃよくわかっとるだろうが、たったひとつの手だてなんだ・・・・・  生き残りの、だ。

この言葉を読んだとき、KiKi の頭には先週末に収穫したこのトウモロコシの映像がまざまざと浮かんできました。

2010_Aug08_021.JPG

う~ん、「それなしには生きられんものだけ」だったかもしれないけれど、これはちょっと借りすぎってもんじゃないだろうか??(笑)

小人っていうとどうしても KiKi がイメージしてしまうのは、「指環物語」のホビット族じゃないけれど、ウサギとネズミの化身・・・・・みたいなイメージなんだけど、我が家の収穫物の多くはウサギなのか、ネズミなのか、モグラなのか、タヌキなのか、はたまた鳥なのか定かではないんだけど、多くの野生動物に借りられっぱなしです。  でもまあ、それでも自分のお腹を満たす分ぐらいは何とかなっているし、もっと言えば、これらの収穫物も種を蒔いたり、水をやったり、肥料をやったりはしているものの「大地からのインゲン(≒ 人間)の借り物」とも言える訳だから、「それなしには生きられん分」までやられなければ良しとすべきなんでしょうね(笑)    

この物語で描かれているアリエッティとミス・メンチスの関係は、梨木さんの作品の中に出てくる「理解はできなくとも受け容れる」という精神に近いものを感じます。  借り暮らしやの生き方を頭では理解できているつもりのミス・メンチスと理解してもらっているつもりのアリエッティだけど、そこには悪意の欠片もなく逆に善意の塊みたいに読めなくもないけれど、「悪意がない ≒ 理解しあえる」は夢かもしれないけれど現実ではないっていうことが、この「小人の冒険シリーズ」全編にさりげなく書かれていると思うんですよね。

KiKi はね、特にLothlórien_山小舎で過ごすようになってから尚更感じるようになったんだけど、例えばこのキジさんの襲来のときにも思ったのです。

2010_Apr07_005.jpgのサムネール画像

確かにこの子は KiKi に興味をもって寄ってきたかもしれないけれど、近づきすぎてはいけないほどほどの距離感っていうものがあるはずで、KiKi にはそれがどのくらいの距離なのかわからない以上、自分から近寄っていくことだけはすまい・・・・・と。  そうしたらびっくりするぐらい近くまで寄ってきたわけだけど、それもこれも KiKi が「見て見ぬ振り」をしていたから、あからさまには見ないようにしていたからだと思うんですよ。  そしてその時の自分の心理状態を考えると、小人たちが「人に見られる」ことを恐れているということも、何となく・・・・ではあるんだけどストンと腑に落ちるんですよね。

今にして思うと、KiKi はこのキジさんと出会った時、可能な限り「同じ自然界の生き物としてあるべくしてあるだけで、それ以上でもそれ以下でもない」というスタンスを貫きたかったわけで、だからこそ観察者のようにジロジロとは見ないようにしていて、今この瞬間にこの場所にたまたま居合わせたのがインゲン(≒人間)とキジだった・・・・それだけ という雰囲気にしたかったんだなぁと思うんです。

いるべくしているもの、あるべくしてあるもの。  それは人間とても同じ・・・・・。  そんな風に感じることが多い昨今です。

この最終話で出てきたピーグリーンの言葉はとても意味深だと思います。

「本当にぼくたち、安全かねぇ?  いつまでも?」

これはそのまま私たち人間に対する問いかけでもあると思います。  少なくとも小人たちの安全な生活は「借りられている人間の安全な生活」を抜きにしてはありえないし、その人間がどんな心持ちで生きているのかにも彼らの安全は大きな影響を受けているわけです。  小人一家を「見世物」にして金を稼ぐことばかり考えるようになってしまったプラター夫婦のような人間ばかりになってしまったら、当然のことながら小人たちの安全なんて望むべくもありません。  「金を稼ぐ」というほど下世話なものでなかったとしても「愛玩物として手元に置く」でも彼らにとっては似たりよったりだし、そう考えると、TVか何かで見せられた珍しい生き物をペットとしてほんのひと時手元に置いて、面倒を見切ることができなくなったらどこかに捨てて、生態系を壊しまくっている人間の行為の罪深さも一入感じずにはいられません。

そう、この物語は小人一家の波乱万丈の冒険を描いているのは間違いないんだけど、「人間はどう生きるべきか」「人間はどうあるべきか」を問い続ける物語なんだと思うんですよね。  そして「金を稼ぐ」という行為を「文明化された生活」(文明化された社会ではすべてを金で入手するから)と置き換えて読んでみると、現代の私たちの自然を省みず、文明化に依存しきった生活に対するアンチ・テーゼであるとも読み取れます。

話はちょっと変わるけれど、Lothlórien_山小舎で生活していると、家の外のみではなく家の中でも多くの虫さんと遭遇します。  何故かゴキブリには出会わないんですけど、我が物顔で家の中を闊歩しているアリさんやら、どこかから入り込んだアブ、蚊、ハエの類、昨年なんかはテントウムシがうじゃうじゃいたし、バッタみたいなピョンピョン飛び跳ねるヤツもいれば、ヤスデの類とか・・・・・。  東京で暮らしているとゴキブリ以外の虫には滅多にお目にかかることもなくなってしまった昨今、最初のうちは「なんじゃ、こりゃ!」と思わないでもなかったけれど、山小舎暮らしもいたについてくると慣れっこになってしまい、逆に家の中を闊歩する虫の種類で季節を感じたりします(笑)。

そしてこの物語を読み終えた今、強烈に感じることは、ひょっとしたらあの虫さんの1人がポッドで、もう1人がホミリーで、さらにもう1人がアリエッティなのかもしれない・・・・・・というより、そうであって欲しいということです。  今も「借り暮らしや」たちが

「たしかに安全だとは誰にも言えないだろ?」

な~んて言いつつも、想像力を駆使しながら逞しく生き続けていて欲しいと思うのです。  なぜなら彼らがいついてくれている家こそが「そこそこ安全」で「そこそこ整頓されて」いて、「必要なものには満たされているそこそこの暮らし」である確かな証左であるように思えるから・・・・・・(笑)

さて、せっかくの「岩波文庫発刊60周年記念 Year」を迎えようとしているので、ここらでドドド~ン!と「岩波少年文庫全冊読破企画」を推し進めていきたい・・・・・・と思わずにはいられない気分を抱えつつも、今日からはちょっと別の路線に寄り道したいと思います。  やっぱり日本人としては「終戦記念日」あたりぐらいには、昭和史を振り返ってみることも必要だろうと思いますので・・・・・。  ま、てなわけで、ずっと「積読」状態だった半藤一利さんの「昭和史」に着手したいと思います。

 

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このページは、KiKi (Brunnhilde)が2010年8月13日 23:50に書いたブログ記事です。

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