村田エフェンディ滞土録 梨木香歩

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村田エフェンディ滞土録
著:梨木香歩  角川文庫

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時は1899年。  トルコの首都スタンブールに留学中の村田君は、毎日下宿の仲間と議論したり、拾った鸚鵡に翻弄されたり、神様同士の喧嘩に巻き込まれたり...  それは、かけがえのない時間だった。  だがある日、村田君に突然の帰還命令が。  そして緊迫する政情と続いて起きた第一次世界大戦に友たちの運命は引き裂かれてゆく...  爽やかな笑いと真摯な祈りに満ちた、永遠の名作青春文学。  (文庫本裏表紙より転載)

ああ、この物語は好きだなぁ・・・・。  正直なところ「沼地の~」にはあまり感銘を受けなかった KiKi にとって、次の梨木作品に手を出すのにはささやかな抵抗・・・・というか、迷い・・・・のようなものがあったんですよね~。  でも、この物語はあの「沼地の~」を読んだ時点で感じた居心地の悪さみたいなものとは無縁でした。  今から遡ること百年以上前の土耳古(トルコ)を訪れた、古き良き日本人の美徳を満々と湛えたような留学生・村田エフェンディの、かの地で出会った各国から訪れた人々とのかけがえのない邂逅と離別の物語です。  いかにも知識人という雰囲気を持ち合わせた高潔且つ内省的な人たちも魅力的。  そしてそんな彼らが集うディクソン夫人の下宿屋(?)はあたかもサロンのようで、そこで語り合われる国家という枠組みを超えた世界観・人生観・・・・・のようなものには多くのことを考えさせられます。  

文中に出てくるローマの劇作家・テレンティウスの「わたしは人間である。  およそ人間に関わることでわたしに無縁なことは一つもない」 という言葉には是も非もなく頷かされました。  そして最後の場面で多くの苦難の末に村田のもとに辿り着いた、ディクソン・サロンの時間を共有した鸚鵡と村田の対話 「ディスケ・ガウデーレ」(楽しむことを学べ) by 村田 & 「友よ。」 by 鸚鵡 には胸を熱くさせられました。 

       

ず~っと昔、KiKi が大学生になる少し前、KiKi の父親が語ってくれた言葉を思い出しました。  曰く、

大学生という立場で過ごす4年間という時間はお前の心がけ次第で本当に大切な宝物になるだろう。  専攻する学問をどこまで究めるか・・・というのも大切なことだが、そこにはもっと大切なものがあるはずだ。  それは恐らく社会人になってしまったら考える時間も気持ちの余裕もなくなってしまうかもしれない一文の得にもならないようなこと、例えば「人生とは何か?」とか「自分は何のために生きているのか?」とか「自分が生かされている世界はどんなものか?」というようなことを、時間を忘れて友人と議論したりできるということだ。  そういう話を自分とは異なる環境で育った人たちと語り合うということほど大切な時間は一生の間でそうそう持てるものではない。

この言葉を言われた当時は気がつかなかったけれど、そして今だからこそわかることではあるけれど、KiKi が過ごしてきた青春時代に出会った多くの人たちとの細切れのワンシーン・ワンシーンが思い出されます。  幸いなことに KiKi 自身も大学時代に異国の空気の中で過ごす時間を持つことができたけれど、今、その時に出会った人たちを思い返すと懐かしさとともにある種の連帯感・通りすがりの人たちに対するのとは別の感情がハートの奥深く、底のあたりで蠢くような気分になります。  そして村田エフェンデイの言葉 「私は彼らに連なるものであり、彼らはまた、私に連なる者達であった。」 が沁み込んできます。

村田エフェンディはこの物語の舞台となっている時代から考えると、ある意味とても「現代的」な人物のように感じられます。  この時代の留学生の割には「飄々としている」というか「達観している」印象を持ちました。  あの時代の留学生だともっと「悲壮観」というか、「切羽詰まった感じ」というか、使命感」みたいなものに満ち溢れていても良さそうなのに・・・・と。  そう考えてみると、この村田エフェンディの立ち位置というのは、まさに留学時代の梨木さんご本人のものであるように感じられます。  何て言うか、KiKi にも少し覚えのある親近感・・・・・のようなものを感じるんですよね~。

この物語、真の主役は実は鸚鵡なんじゃないかと KiKi は思うんですよ。  とにかくこの鸚鵡が合いの手を入れるかのごとくに語る言葉があまりにもタイミング & ツボを押さえていて、同時に含蓄があるというか、ある種の真理をついているというか・・・・・。

この本 & 「家守綺譚」は KiKi にとって、何度も再読したい梨木作品です。

 

  

 

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