あの戦争は何だったのか 保坂正康

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本来であれば「昭和史 戦後篇」を読み進めていくべきところだとは思うのですが、せっかく頭の整理が少しできたように感じられるところなので、「戦争関連本」を何冊か読んでおこうと思い立ちました。  で、とりあえず過去に一度は読んでいる本ではあるのですが、まずは比較的読みやすいところで「新書」にでも手を出してみようかな・・・・・と。  てなわけで本日の KiKi の読了本はこちらです。

あの戦争は何だったのか
著:保坂正康 新潮新書

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戦後六十年の間、太平洋戦争は様々に語られ、記されてきた。  だが、本当にその全体像を明確に捉えたものがあったといえるだろうか―。  旧日本軍の構造から説き起こし、どうして戦争を始めなければならなかったのか、引き起こした"真の黒幕"とは誰だったのか、なぜ無謀な戦いを続けざるをえなかったのか、その実態を炙り出す。  単純な善悪二元論を排し、「あの戦争」を歴史の中に位置づける唯一無二の試み。  (新書本扉頁より転載)

前回の「昭和史」とこの本を2冊続けて読むことにより、ある意味でポイントになる様々な出来事の時間軸 & 因果関係みたいなものがある程度頭に定着できたような気がします。  まあ、それがいつまで持続できるのか?と言うと、最近の KiKi は甚だ心許ないんですけどね ^^;  この本で結構面白かったのは第1章の「旧日本軍のメカニズム」でしょうか。  まあ、こういうことは男子はそれなりに興味を持っていて知っていたりもするのかもしれませんが、少なくとも KiKi はこういう機会でもないと、自主的に調べてみようとは思えない分野だったので・・・・・。  ただ、せっかく陸海軍士官の養成方法や徴兵制、軍隊の組織にまで触れるならさらにもう一歩踏み込んで、職業軍人の教育の核には何があり、徴兵制の中で(もしくは当時の時代の空気感の中で)、一兵卒がどんなメンタリティを持っていたのかにまで言及してくれるといいのになぁと思いました。

で、問題は第2章の「開戦に至るまでのターニングポイント」。  事実(起こったこと)を淡々と述べているあたりまでは、まあいいとして「真の"黒幕"の正体・・・・」という節で KiKi はびっくり仰天してしまいました。  この本は再読本だったはずなんですけど、こんな大事な(・・・・というかびっくりするような)ことが書かれていたことに何ひとつ注意を払ってこなかったなんて・・・・・・。  曰く、東條さんの「項目再検討会議」での海軍第一委員会の調査報告では当時の日本の石油の備蓄量は2年も持たないとの結論だったが、実は、日本には石油はあったのだ・・・・・・と。  それのみならず開戦理由の正当化をしたかった海軍が意図的にとある民間会社が海外で石油合弁会社を設立するというプロジェクトを立ち上げたのに、軍が圧力をかけて意図的に潰してしまったのだ・・・・・と。

  

そうなの?????

    

まあ確かに、著者が色々と書き並べている当時の状況から考えてみると、海軍にも開戦したい理由はいろいろあったかもしれないし、それはそれで一つの推論としてありえる話かもしれないとは思えるんだけど、ここでこの本の一番弱いところは、これを証明できる統計的データがあるわけでもなし(実ははっきりしたところは誰にもわからなかったのかもしれないけれど ^^;)、この話の論拠が「陸軍省軍務課にいたある人物によると・・・・」という甚だ心許ない出典だというところ。  にも関わらず、

太平洋戦争開戦について、最初に責任を問われるべきなのは、本当は海軍だったのである。

ってそんな乱暴な・・・・・ ^^; 

まあね、気持ちはわからなくもないんですよ。  だってあの東京裁判を見ても、戦犯として裁かれた人たちのほとんどは陸軍の人たちで、あたかも「海軍は良識派」みたいな風潮(空気?)があったけれど、それは疑問だとは KiKi も思っているし・・・・・。  ただねぇ、「真の黒幕」「裏の黒幕」「表面的な黒幕」ってそんなに拘る必要があるんでしょうか???

 

KiKi はね、正直なところ「戦争責任って何よ????」って思っているところがあって、人類の長い歴史の中で夥しい数の戦争があったけれど、「戦争責任」な~んていう言葉が出てきたのはつい最近のことだと思うんですよね。  まあ、これに近代戦になって以降、戦争で亡くなる方の人数が半端じゃなく増えちゃったことと無関係ではないと思うんだけど、この言葉が出てきてからますます真実が見えにくくなったと思っているところもあるんです。  だいたい戦争っていうものは所詮「勝てば官軍、負ければ賊軍」なわけですよ。  書かれた歴史っていうのが「勝者の言い分」であることも厳然たる事実だし・・・・・。  さらに言えば、戦争っていうのは相手があって初めて成り立つもので、その両者にはそれぞれの「言い分」っていうものがあって然るべきだと思うんですよね。

一方には一方の「理由」もしくは「正義」があり、他方には他方なりの「理由」もしくは「正義」があって、それの折り合いがどうしてもつかないから「戦」になるんだと思うんですよね。  仮にそれが「後付け」であれ、「かりそめのもの」であったとしても・・・・・。  で、その正義にはその正義なりの立場がある。  立場が変われば正義も変わる。  絶対的な正義な~んていうものはこの世の中には恐らく存在しえないんじゃないかと思うんですよ。

そうやって考えていくと KiKi は「戦争責任」を追及することにあまり意味があるとは思えないんですよね。  もちろんそれぞれの国での反省(・・・・と言うと自虐的になっちゃうかもしれないから、総括かな?)は必要だと思うんです。  だから KiKi が拘りたいのは「誰のせい?」とか「真の黒幕は?」な~んていうあまり意味のないことではなく、「どうしてこの戦争が起こったのか?」とか「他の解決策は本当になかったのか?」とか「どうして被害が大きくなりすぎる前に手を打つことができなかったのか?」とか「終わらせ方は正しかったのか?」とか、そういうことなんです。

この本の著者の総括としては、当時の日本は「思想や理念の欠如」、「対症療法にこだわりすぎ」、「冷静な現実分析をせず、願望や期待を事実に置き換える性向」、「終わらせ方の Vision なし」という問題があったということだと思うんだけど、KiKi はそこには若干の疑問を呈したいような気がするんです。  「思想や理念」は欠如していたわけではないように思うんです。  ただ Vision というか「あるべき姿」の具体的なイメージの落とし込みがなかった(別の言い方をすれば美辞麗句で飾られた実体不明の言葉だけが先行していた)んじゃないかと・・・・・。  でもこれって恐らく日本だけじゃないし、あの時代だけじゃない。  「対症療法にこだわりすぎ」は事実だと思うけど、恐らくはそれ以上の余裕がなかった・・・・。  終わらせ方の Vision は持ちようがなかったとも言えるような気がしないでもない・・・・。  何せ連合国側は「日本の戦争能力の全面的殲滅」を掲げちゃっているし、具体的な要求は「無条件降伏」だし、原爆は落とされちゃっているし・・・・・・。  まあ、だから「仕方なかった」とまでは思わないけれど・・・・・・。

いずれにしろ、こういう「戦争」を扱っている本を読んでいて常に思うのは、もっと当事者国すべてのその時の状況を冷静に分析した「総括」をするためのガイドが欲しいなぁ・・・・・と。  まあ、そのためには新書みたいな薄っぺらい本では無理だとは思うんですけどね(苦笑)  

  

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コメント(2)

>「戦争責任」を追及することにあまり意味があるとは思えないんですよね。
これ、私も同感なんです。
総括することには意味があっても戦争責任という意味で総括することには無理があるような気がします。
飛躍し過ぎって言われるかもしれないけど、キリンや馬、牛が草を食べて、ライオンやトラがそれらを襲って食べることに責任を追及することのような気がします。
でも、なぜそうなったかの歴史と進化のプロセスを学ぶことは有意義だと思うのです。
歴史って責任を追及するものではにですよね。
でも、その歴史を正しく学ぶことがより難しいというのも事実であると思うのですが。

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このページは、KiKi (Brunnhilde)が2010年8月17日 05:38に書いたブログ記事です。

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