ハゲタカⅡ 真山仁

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「ハゲタカ(上)(下)巻」に引き続き、その続編、「ハゲタカⅡ(上)(下)」巻を読了しました。  この本はハードカバーのときは「バイアウト」というタイトルだったものが、TVドラマヒットの影響で文庫本化された際に「ハゲタカⅡ」というタイトルになったらしい・・・・・ ^^;  いかにもっていう日本人っぽいマーケティング戦略(とさえ呼べないような気がしないでもない)に則ったネーミングに苦笑しつつ、本日のKiKi の読了本のご紹介です。

ハゲタカⅡ(上)(下)
著:真山仁  講談社文庫

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「いつか日本を買収(バイアウト)するーー」。  1年の海外放浪を経て、帰国した鷲津政彦が、まず標的(ターゲツト)に定めたのは、繊維業界の老舗「鈴紡」。  一方、鈴紡は元銀行員の芝野健夫を招聘し買収防衛を図る。  その裏に、かつての芝野の上司で、UTB銀行頭取、飯島の思惑があった。  激烈な買収戦争で最後に笑うのは?  (『バイアウト』改題)  (文庫本上巻裏表紙より転載)

鈴紡の次に、鷲津が狙いをつけたのは、巨大電機メーカー・曙電機だった。  曙は買収阻止と再建の切り札として芝野を頼る。  再び相対する二人。  攻める鷲津、守る芝野、さらにアメリカの有力ファンドも買収に参入し、事態は混沌としていく。  企業買収を舞台に、壮大なスケールで描いた話題作。  (『バイアウト』改題)  (文庫本下巻裏表紙より転載)

ドラマより数段面白い!!  そして今回この2作(ハゲタカ & ハゲタカⅡ)を読んで一番感じたのは久々に新渡戸稲造の「武士道」と坂口安吾の「堕落論」を読み返してみようかな・・・・ということです。  「ハゲタカ」でチャプターが変わるたびに新渡戸稲造の「武士道」からの引用があるのは何故か、正直なところ???だったのですが、このハゲタカⅡに結ぶための1つの伏線みたいなものでもあったのですねぇ・・・・・。  ただ逆にこのⅡで同じようにチャプターが変わるたびに坂口安吾の「堕落論」「続堕落論」からの引用があるのには「上手いなぁ・・・・」と感嘆しました。  KiKi は「ハゲタカ」を読んでいる時に「武士道」よりも「堕落論」の方が脳内イメージとしては濃厚に浮かび上がっていたようなところがあるだけに尚更です。

そう、そういう意味では「鷲津」さんを「武士」扱いする展開には正直なところ疑問が残るんですよね~。  まあ、これは KiKi 自身が「武士とは何たるか?」に関して、未だに定義できていないところに原因があるような気もするのですが・・・・・・。  武士及び武士道って KiKi にとってはある種の「美学」ではあるように感じられるけれど、それでも日本人のメンタリティの根幹を作っている「お国第一」というか、「寄らば大樹の陰」的な部分を熟成している根幹のような気もするし・・・・・・。  まあこれは KiKi が大嫌いな「正義」という言葉が頻発していることにも影響されているのかもしれません。

KiKi はね、「正義」という一見美しそうな、その実、正体不明な言葉ほど、自分の思考停止を招く危険な言葉はないと思っているんですよね。  「正義≒善」「正義≒正しいこと」「正義≒万人受け」みたいな安易さが正直なところ怖い・・・・・。      

そういう意味では KiKi が感銘を受けるのは以下のくだりなんですよ。

チベットのラサで鳥葬を目の当たりにした時、所詮自分はこの鳥と同じ役割を果たしてきたに過ぎないと感じた。  つまり、俺もまた企業や人が生まれて死ぬ連鎖の1つに過ぎない。  それにいちいち感慨を持つこと自体、反自然的なのだ。  自然界には正義もなければ、悪意も善意も存在しない。  弱肉強食の中で、食うか食われるかの生存競争があるだけだった。

かつて亡父から「正義のために死ねるか」と問われたことがある。  長い間、鷲津はその答えを必死で探してきた。  それが鷲津にとってエネルギー源にもなった。  死ぬに値するほどの正義とは何か。  彼はそれを追い続け、その結果として、1つの小さな正義を果たした。

だが世の中は微動だにしなかった。  それどころか、この世には正義など存在しないかも知れないという懐疑を感じるだけだった。  結局、愛して止まないこの国を追われることになり、後に残ったのは虚しさと孤独だった。

人は1人で生まれ1人で死んでいく。  ラサで過ごした3カ月で俺はそんな当たり前の真理に気づいた。  そして悟りの境地を手にして帰国したと思った途端、心から信頼していた若者の死を知り、再び混沌の闇に放り込まれた。

結局、鈴紡や曙の一件も、すべては混沌の闇に対する闘いということだ。  この闇を引き裂き、自分がまだ生き続けていいのかという答えを求めていたに過ぎない。

KiKi はね、必ずしも海外メディアの言っていることに心の底から同調するわけではないけれど、かつて(特にこの物語で描かれているような買収劇が盛んだった頃)、海外メディアが日本に関して「日本は世界で最も成功した社会主義国」とぶちあげていたけれど、そう言われても仕方のない状況であったし、今もその延長線上にあると思っています。  そこに社会主義の是非という厄介な価値判断は入れていませんが・・・・・。

そしてもう1つ悔しいけれど深く頷かざるを得ないのが、以下のくだりです。

それは日本企業のというよりも、日本人の特徴なのかも知れない。  理解できる言葉と親近感を持つリーダーを味方だと思った瞬間、多くの人は盲従を始める。  この人についていけば安心だ、幸せへと導いてくれる。  戦後の日本経済を支えたのは、そういうリーダーとその信仰者だった。  それがやがて欧米諸国から驚異とみられた経済大国を生み出した。  しかし、その盲従はバブル以降の迷走から抜け出せない元凶にもなった。

まあ、この文章の正しい主語は「日本人は」ではなく「人間と言う存在は」だと KiKi は思うんだけど、日本人は情緒的なものに弱いし、官僚主導の政治・経済システムにどっぷり浸かっているということを考えれば「人間と言う存在は(そして殊に日本人は)」という主語になってしまうだろうなぁ・・・・と。

ハゲタカのエントリーにも書いたことだけど、KiKi はこの物語を読んでいて、一番感じることは「村岡」的な日本人のサラリーマン・スタンダードに対する一種の提言(苦言)がメインテーマなんじゃないかと思うんですよね。  悪っぽいわりにはカッコイイ(カッコヨク見える)鷲津がヒーローなわけでもなければ、優秀なんだけど誠実さみたいなものがウリの芝野がヒーローでもない。  まあ、彼らの動きに目が奪われがちではありますが・・・・・(苦笑)

ま、もっと言えば、あの手の騒動が起きていた時代、アメリカさんはすでに金融破綻が起き始めていて(別にリーマンショックが引き金ではない)、そこに端を発するあれやこれやの端的な一例があの「不良債権処理キャンペーン」ではあったわけだけど、そういう意味ではわが日本国は「えらい迷惑」を被ったのも事実だし、生活がかかっている私たち一般人の怒りや嘆きには正当性がないわけじゃないけれど、それでも「戦争責任」と同様に被害者ぶってばかりはいられないのも事実だと思うんですよね。  

著者の真山氏の以下のコメントは私たちが肝に銘じるべき内容だと KiKi は思います。

私が小説の取材で痛感したことは、日本人はイメージ操作に弱くて、誰かが外資が襲ってきた、ハゲタカが来たと声高に騒ぐと、本質を見ないで価値判断をしてしまう、という点です。

う~ん、やっぱりこの小説は侮れません。 

さて、このハゲタカⅡの終章の最後には to be continued ....... の文字が・・・・(笑)  う~ん、これは Back to the Future と同じ終わらせ方ですねぇ。  で、今はこの続編ということで「レッドゾーン」が単行本では出ていて、それが「映画版 ハゲタカ」の原作なのだとか。  文庫本化されるのはいつになるのかなぁ。  面白い本だとは思うけれど、こういうエンターテイメント性の高い「本当っぽい話」はなかなかハードカバーでは手が出しにくい KiKi なんですよね~(笑)。

 

   

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このページは、KiKi (Brunnhilde)が2010年8月26日 23:48に書いたブログ記事です。

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