フィオリモンド姫の首かざり ド・モーガン

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こちらのエントリーでご紹介した「針さしの物語」でメアリ・ド・モーガンの世界に魅せられた KiKi。  ならば第2作のこちらは????ということで早速手を出してみました。  本日の KiKi の読了本はこちらです。  (えっと因みに「針さしの物語」はエントリーとしては今日9月1日に書いているのですが、実は8月31日に静岡出張の際、新幹線の中で読了した本だったんです。)

フィオリモンド姫の首かざり
著:ド・モーガン 訳:矢川澄子  岩波少年文庫

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世にも美しいフィオリモンド姫には、おそろしい秘密がありました...。  表題作のほか、若いさすらいの竪琴ひきとその妻の哀切な物語、民話風な楽しい話など7編をおさめた、幻想的で不思議な童話集。  (文庫本扉より転載)

こちら(↑)もあちらに負けず、とっても素敵な表紙 & 挿絵だと思うし、スタイル・・・・というか絵の格式のようなものがかなり似ているので、最初は同じ人(ウィリアム・ド・モーガン; メアリのお兄さん)の手によるものかと思っていたのですが、実はこちらの挿絵はウォルター・クレインという別の方の手によるものなのだとか・・・・・。  ちょっと興味をもって、ウォルター・クレインに関しても調べてみたんだけど、メアリ & ウィリアムのモーガン一家とほぼ同時代に、ウィリアムとほぼ同じような職業を経て、ほぼ同じような芸術運動に身を投じた人だったようです。  まあ、KiKi が調べた限りではこの2人の具体的な接点みたいなものは見つけられなかったんだけど、きっとモーガン家のサロンにはやっぱり彼も出入りしていてメアリとの接点もあったんじゃないかな?と思います。

「針さしの物語」でも書いたけれど、こちら「フィオリモンド姫の首かざり」は彼女が残した出版物としては2冊目です。  1冊目に比べるとさすがに中身がより充実し、多くの示唆に富み、より哲学的・・・・というか、人間描写に深みみたいなものが出てきていると思うんですよね~。  もともと彼女の作品は女性らしい感性にあふれた女性目線の物語が多いと思うんだけど、その女性たちがグリム童話集などの女性に比べるとより主体的で、自らが行動し、そして得られる「何か」をベースにした女性目線ならではの社会批判のようなものが色濃く出ているように感じられるのですよ。  

と、同時に兄を通じて親交のあったとされる、ウィリアム・モリスらの唱えた反物質主義的なユートピアへの志向に共感していたことも作品の性格を決定付けるひとつの大きな要素になっているんじゃないかなぁ・・・・・と。  それがクラシカルでありながら、どことなく現代的で、童話世界のお約束に従っているようでいて、「えっ!  そうなっちゃうの?」と思わせるエンディングを迎えたりする彼女の作品なりの個性を生んでいるような気がするんですよね~。

 

例えば表題作の「フィオリモンド姫の首かざり」なんだけど、主人公の美しいお姫さまが実は悪い魔女と大の仲良しで、その魔女の助けを借りて言い寄る婚約者たちを1人ずつ宝石の珠にしてしまい、それを首かざりにしてしまうんだけど、最後の最後には罰を受けるという物語。  その大まかなプロットだけだととってもクラシカルなおとぎ話の1つのパターンで「悪はいずれ滅びる」という路線をしっかりと踏襲しているんだけど、ここに善良な腰元のヨランダという登場人物がいます。  で、多くの童話ではこのヨランダに感情移入できるような物語があったりするわけだけど、この作品では「邪悪なお姫さま」の存在感が凄すぎて、ついでにヨランダの印象は悲しいほど薄いんですよ。  で、メフィストフェレスの如く「フィオリモンド姫」から目が離せない・・・・・と言うか、「悪の魅力」に魅入られちゃうんです。

表紙の挿絵はそのフィオリモンド姫が婚約者たちが姿を変えた宝石を首かざりにして纏いつつ、うっとりと鏡を見ている姿なんだけど、この絵(というか設定)もすご~く暗喩的で、いずれは自分の首を絞めることになるこの所業に惚れ惚れとしているというところに深い意味を感じます。

2作目の愛する妻が邪悪な魔法で黄金の竪琴に変えられてしまったことを知らずに、その竪琴を持って姿を消した妻を探して諸国を歩き回る楽師の物語「さすらいのアラスモン」では、「大切な探し物はどこか遠くにではなく、自分の足元にある」ことに気がつかされる物語だと思うんだけど、長い苦難の末、ようやく妻を取り戻したアスランは死んじゃうし、その妻もあっという間に彼を追って亡くなってしまうという、ハッピーエンドの物語を書こうと思えば書けるプロットなのにも関わらず、ハッピーエンドには終わらせないあたりに彼女の社会観・・・・・というか、人間に対する一種の冷めた目線みたいなものを感じます。

ちょっと高慢ちきだった王妃様が妖精の怒りをかって彼女の呪いを受けたお姫さま(心を盗まれてしまった)の絵姿に一目惚れした王子が、彼女の心を取り戻す旅に出る物語「ジョアン姫のハート」なんかも、お約束で頑張った王子が見事に目的を達してハッピーエンドになるという従来の童話とは、プロットはそっくりなんだけど、一味も二味も違うんですよ。

まあ、以上の3作がこの本の中では比較的長いお話で、残りの4作、「行商人の荷物」、「不幸のパン」、「三人のりこうな王さま」、「賢い姫君」はどちらかというと短編で、どれもこれも現代人こそ読んでみたい「満足するということはどういうことか?」みたいなテーマを手を変え品を変え、優しく諭してくれるようなお話ばかりで、読んでいてちょっと痛かったりする素敵な物語です。

う~ん、メアリ・ド・モーガン、侮れません。  ちょっと異質な現代にも通じるフェアリー・テールだと思うんですけど、こちらも現在の岩波少年文庫のラインナップからは外れちゃっているんですよね~。  と~っても残念!!!(2回目です 笑)

 

 

 

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このページは、KiKi (Brunnhilde)が2010年9月 1日 16:58に書いたブログ記事です。

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